夢を見る
―――彼女の夢を
誰も居ない教室に俺が座っており机には彼女が座っている
「明日からは彼女が生徒会長になるんだっけ」
彼女は楽しそうに言う
「僕としては、彼女と君が組むのは楽しくないんだけどね」
独り言のように
「まぁ、君に限って無いと思うけど、浮気はしないでくれよ。君の彼女は僕だけで十分だ」
そんな彼女に言い返す
「……今は違いますよ、俺とあなたは他人だ」
俺が言うと、彼女は悲しそうな顔をする
「酷いこと言わないでくれよ。傷つくじゃないか」
「……知りませんよ」
俺が俯きながら呟くように言うと、彼女は俺の頭を撫でる
「忘れないでくれよ、僕が愛してるのは君だけだ」
彼女―――安心院(あじむ)なじみは俺に優しく言う
―――優しい嘘を俺に言う
―――――
そんな彼女の嘘を聞いて、俺は目覚める
……今日もやな夢を見た
そんなことを思いながら、制服に着替える
―――今日から彼女が生徒会長になるんだっけ
思いだすだけで学校に行きたくなくなる
俺が所属している13組では、登校義務が無いため本来なら行かなくてもいいのだが、行ったほうが面白いことを『知っていた』俺としては行くしかない
俺は大人しく学校に向かった
―――――
放課後、俺はおとなしく帰路につく
―――が
「何処に行く気だ、駿河」
教室から出てすぐに声を掛けられる
このクラスには駿河という名前の人(というか、クラスには殆どの人が居ないが)は俺しか居ない
俺は声を掛けてきた人を見る
そこには、指定された制服とは違う服装をした彼女―――黒神めだかがいた
「……先輩にため口なのはよく無いと思うなぁ」
「『私と貴様の関係』には礼儀なんて必要無いだろ」
当たり前のようにめだかちゃんは言うと、俺の手を取る
「……俺とめだかちゃんの関係って何?」
俺の手を取りながら歩きだす彼女に合わせながら俺は聞く
「決まっているだろう」
そう言うと、彼女は足を止めて俺の方を見る
「かつての宿敵だ!!」
……かつての宿敵には礼儀なんて必要無いのか?
「そして、昨日の敵は今日の友つまり、私と貴様は友達だ」
……めちゃくちゃだ
彼女は真顔で俺に言う
恐らくだが、本気で言ってるんだろう
「現に、貴様は『この学校では私の仲間』だからな」
……そう
彼女の言葉を借りるなら、かつての宿敵である彼女だが、この学校では俺は彼女の仲間だ
―――でも
「それは、時間限定だけどね」
時間限定とはいえ、めだかちゃんの仲間になるのは嫌だ……
彼が生徒会長を続けてればよかったのに
「……わかってるさ
だが、私は嬉しいのだ
貴様が私の―――時間限定でも
私の仲間でいてくれるのに
―――私は嬉しい!!」
彼女は俺の目を見ながら言う
凛とした態度で、堂々と
「……そう」
俺がため息混じりに返事をすると、彼女は満足そうな笑みを浮かべて前を向き、歩きだす
先程とは違い、その瞳も戻っている
そんな彼女に聞く
「今から生徒会室に行くの?」
「あぁ、やることは沢山あるからな」
「先ずはさ、メンバー集めからやりなよ」
彼女は歩きながら首を傾げる
「メンバー?私と貴様で充分じゃないか」
「……俺は生徒会じゃないから」
「似たようなものだろ、なんだったら、生徒会に入ってもいいぞ、むしろ入れ」
「全然違うから、俺はあくまでも生徒会の手伝いをするだけだし、それに入らない」
俺が足を止めるとめだかちゃんも止まる
「俺は生徒会室に先に行っとくからさ、めだかちゃんは彼を連れてきてよ」
「彼……善吉のことか?」
「そうだよ、彼だったらさ、何だかんだ言いながらもめだかちゃんに付いてきてくれるはずだし」
「……善吉が私に付いてきてくれることを『知ってた』のか?」
「まさか、今の俺は『自分が興味あることしか知ってないよ』、俺は彼には興味無いからさ、彼の事は何も知らない」
俺が苦笑いを浮かべながら言うと、めだかちゃんは俺の手を離す
「……知ってなくていいさ、貴様は何も」
それだけ言うと、彼女は俺に背を向けて歩きだす
―――俺の能力もずいぶんと可愛くなったな
俺は生徒会室に向かって歩きだす
―――口元にのみ薄らと笑みを浮かべながら
誤字脱字などがあれば教えてくれたらうれしいです
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“報われない愛なんて悲しいだけだろ。 そんな愛情捨てちまえよ”
中学時代、何でも知ってると謳われていた少年“羽川駿河”
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