キャロに引っ張られるがまま俺が着いたのは六課の訓練場。
今はFW達の訓練を少し離れた場所でヴィータと見ている。
「ヴィータは訓練に参加しなくていいの?」
俺の隣に立っているヴィータに話し掛ける。
「まぁ、なのは1人で充分だろうしな」
今俺達がやっているのは動きのチェックだ。
「それに、お前の隣にいたいしな。
朝会おうとしてもシグナムに邪魔されるし。
昼は隊長格の奴らが、夜はなのはとフェイトが邪魔するしな。
たく、揃いも揃ってあたしの―――」
「ヴィータちゃんの何なのかな?」
ヴィータがいい終わるより先になのはさんが此方に近づきながら言う。
「……FW達の訓練はいいのかよ」
「自主訓練させてるから大丈夫だよ」
軽く睨みながらヴィータが言い、ニコニコとした笑顔でなのはさんは応える
「それよりも早く教えてよ
彼はヴィータちゃんの何なのかな?
何―――なのかな?」
―――なのはさんは言う そ―――の目は笑ってなく
―――静かにヴィータさんを睨みながら
「こいつはあたしの大事な人だ
―――あたしだけの
―――大事な」
ヴィータは俺の手を軽く握りながら言う
「そんなこと言わないでよ 「彼だって困っちゃうよ
彼は私の大切な人なんだから
ヴィータちゃんでも彼を困らせるようなことしたら―――
―――許さないよ」
なのはさんは俺の手を取りながら言う
「何でこいつがなのはの大切な人になってるんだよ
我が儘言ってるのは自分だろ
こいつはなのはのこと嫌いかも知れないんだぞ
それに―――
こいつが好きなのはあたしだ」
ヴィータは俺の手を握る力を強くし、なのはさんを更に強く睨む
「止めなよ、ヴィータちゃん
彼が好きなのはヴィータちゃんじゃないよ
彼は誰に対しても優しいから、ヴィータちゃんは誤解してるだけ
だって―――
彼が好きなのは―――」
なのはさんも負けずと俺の手を強く握り、ヴィータを睨み返す
「勘違いしてるのはなのはじゃないのか?
こいつは優しいからな―――
あたし以外の奴に優しくする意味なんか無いのに
なのはみたいに勘違いする奴が増えるだけだってのに」
「彼が優しくするべきなのは私だよ
彼は私だけ見てればいい 「彼は私の傍に居るだけでいい
彼は私のことだけ大切にしてればいい
彼は―――
―――私の」
―――お互いに口を閉じる
―――互いに互いを睨みながら
そんな2人は声を掛けられる
「何やってるんですか?」
声を掛けてきた彼女―――ティアナは首を傾げながら言う
「……自主訓練は終わったのかな、ティアナ」
なのはさんはティアナの方を向くと言う
「はい、一通り終わりました
それよりもなのはさん、隊長補佐の手を離してくれませんか
隊長補佐に触れていいのは私だけなんですから」
ティアナはなのはさんを睨みながら言う
「何でお前だけがこいつに触れていいんだよ
いつはお前達じゃなくて私の―――」
2人共駄目だよ
彼は私の大切な人なんだから
私だけの―――」
「違いますよ
隊長補佐は私の傍に居てくれる人です
ずっと私だけの―――」
なのはさんとヴィータが俺の手を離すと、睨みつける
―――自分以外の人を
―――虚ろな瞳で
―――睨み付ける
「ねぇ、2人とも、私とお話しようか」
そう言って歩きだすなのはさん
2人はなのはさんの後を追うように歩きだす
そんな3人の背中を見ながら
俺はため息をつく
―――今日の朝は、これで終わりだ
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これは、彼を巡る物語――― 自分の行動を邪魔されて、他人の行動を邪魔する――― これは、そんな物語『人間を愛することは必然だ』