No.501065

【小説】しあわせの魔法使いシイナ 『不思議なお客様』

YO2さん

普通の女の子・綾と、魔法使いの女の子・シイナは仲良し同士。
何事もマイペースなシイナを心配して、綾はいつもやきもき。
でも、シイナは綾に笑顔をくれる素敵な魔法使いなんです。

2012-10-27 22:27:23 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:638   閲覧ユーザー数:638

 

綾の住む「央野区」は、普通の街と少し違っています。

 

街の中央には「魔法学園」があり、街には魔法使いが住んでいます。

綾の家にホームステイしているシイナも、そんな魔法使いの一人です。

 

今日は月曜日。

早朝、綾は朝ごはんを用意しています。

綾より遅くまで寝ていたシイナも起きて、二階から降りてきました。

 

「綾ちゃん綾ちゃん、今日は月曜日だよ!」シイナが言いました。

「ん?そうね」綾は、何を当たり前のことを言ってるのだろう、と思いました。

 

「月曜日はお客様が来るよ!」シイナが言いました。

「えっ?どなたか家にいらっしゃるの?」綾は聞き返しました。

 

「うん、おもてなしをしなきゃ!」シイナが言いました。

「困ったわね、私はこれから学校に行かなきゃいけないし…お客様はいついらっしゃるの?」

綾はシイナに聞きました。

 

「お客様は、こちらの都合のいい時間に来てくれるよ!」

シイナが言いました。

「じゃあ、学校が終わってからでもいい? 帰ってきたら、おもてなしの準備をするわ」

綾は言いました。

 

「うん、大丈夫だよ!」

シイナがうなずきました。

 

それから綾は、学校に行きました。

学校に行く道すがら綾は、家に来るお客様がどんな人なのか、

聞くのを忘れていたことに気づきました。

 

綾が学校から帰ると、シイナはお客様をお迎えに出かけるところでした。

「綾ちゃんはおもてなしの準備をしててね!」

シイナはそう言って出かけて行きました。

 

『結局、お客様がどんな人なのか聞けなかったわ』

綾はそう思いましたが、急いでおもてなしの準備をすることにしました。

 

学校の帰りに買ってきた上等なチョコレートとクッキー、

そして綾のお気に入りのダージリンの紅茶を用意しました。

玄関とリビングには花を飾りました。

 

『とりあえず、やれることはやったわ』

綾はそう思って、お客様を待ちました。

 

ピンポーン、とドアベルが鳴りました。

玄関を開けると、シイナがお客様を連れて立っていました。

綾はお客様をまじまじと見つめました。

 

それは、とても美しい女性でした。

つややかな長い金色の髪。

彫りの深い顔立ちに白い肌。

柔らかそうな絹の衣装をまとっていました。

 

何よりも、その女の人の体はうっすらと輝く光におおわれていました。

 

『これはとても高貴なお客様みたいだわ』

綾はそう思いました。

 

「こちらは月を司る女神、アルテミスさんです」

シイナがお客様を紹介しました。

 

「はじめまして、沢原綾です」

綾は、まさか女神様がお客様だとは思わなかったので驚きましたが、

びっくりした気持ちをさとられないように礼儀正しく挨拶しました。

 

綾は精いっぱい丁寧なおもてなしをしました。

綾の出したお茶やお菓子をアルテミスはとても気に入ったようでした。

 

アルテミスは、美しさを保つ秘訣について長々と二人に語って聞かせました。

二人が真剣に耳を傾けていたので、アルテミスは満足した様子で帰って行きました。

 

次の日。

「今日は火曜日だよ!」とシイナが綾に言いました。

「もしかして、またお客様がいらっしゃるの?」綾は聞きました。

「うん!」

 

火曜日には、火星を司る神様、マルスがやってきました。

戦いの神マルスは、自分がいかに勇敢かという話をえんえんとして、帰っていきました。

 

『なるほど、月曜日だから月の神様、火曜日だから火星の神様がいらっしゃったのね』

綾はなんとなくわかってきたので、インターネットで水星や木星の神様について調べてみました。

 

水曜日には、綾の予想通り水星を司る神様、マーキュリーがやってきました。

 

木曜日には、木星を司る神様、ゼウスがやってきました。

 

金曜日には、金星を司る女神、ビーナスがやってきました。

 

土曜日には、土星を司る神様、サターンがやってきました。

 

皆、綾のおもてなしに満足して帰っていきました。

 

そして、日曜日。

「今日は日曜日だよ!」シイナが言いました。

「日曜日にはどなたがいらっしゃるの?」綾が聞きました。

 

「日曜日はお休みの日だから、誰も来ないよ!」

シイナが言いました。

 

「じゃあ、今日はゆっくり休みましょう」

綾はそう言いました。

 

綾は、花に水をやるため、庭に出ました。

すると、昨日まで何も植えていなかった花壇の一画に、大輪のヒマワリがたくさん咲いていました。

 

「これはどうしたのかしら?」

綾は不思議に思いました。

 

「その花は、お客様一同のおもてなしのお礼だってさ」

シイナが言いました。

 

「そう…」綾はヒマワリを見つめて微笑みました。

シイナも笑顔でヒマワリを見つめました。

 

ヒマワリは太陽の光をうけて、きれいな黄色に咲きほこっていました。

 

―END―

 


 
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