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真・恋姫無双 三人の天の御遣い 第二章『三爸爸†無双』 其の四

雷起さん


得票数4の愛紗のお話です。
懐妊前から懐妊確認直後の一幕+おまけです。

引き続き、どの恋姫メインの話が読みたいのかリクエストを募集しております。

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2012-10-12 17:24:49 投稿 / 全5ページ    総閲覧数:4010   閲覧ユーザー数:3025

 

第二章  『三爸爸†無双』 其の四

 

 

本城後宮 裏庭

【愛紗turn】

「すまぬ・・・愛紗・・・・・この甘興覇ともあろう者が・・・うっ!」

「思春っ!しっかりしろっ!!華佗はまだかっ!?誰でもいい!早く連れてこい!!」

 曇天の下、目の前で横たわり浅い息を繰り返す思春に、私は何もしてやることが出来ない。

 武神と呼ばれ、鬼神と恐れられ、皇帝陛下の青龍刀と己を誇示したところで所詮は戦友も救けられぬ未熟者だ。

 

「あいしゃ・・・・・あとを・・・たのむ・・」

 

「ししゅううううううううううううううううううんっ!!」

 

 ようやく現れた華佗が後宮警備の女性兵士に指示を出し、思春を担架に乗せて後宮の中に運び入れた。

 私はそれを呆然と見つめ、この女性兵士たちを鍛える話をつい今し方まで思春としていた事を思い出していた。

 空を覆った雨雲から、ついに雨が降り出し私を濡らしていく。

 秋の冷たい雨が私に目を覚ませと言うように・・・。

 

 

 それから五ヶ月後。

 

「で?・・・・・・私は『後を頼む』と言ったはずだが?愛紗。」

 

「面目ない・・・・・思春・・・・・その・・・油断した・・・」

 私が横たわる寝台の横でお腹を大きさが目立ち始めた思春が椅子に座り睨んでいた。

「蓮華様、華琳殿、桃香殿のご懐妊で国の内外が大きく揺れているこの時期に孫呉と蜀の筆頭武官が二人揃って戦線離脱など考えられん!」

「く・・・しかし、先に離脱したのは思春ではないか!」

「私は蓮華様達のご懐妊が分かった時、既に孕んでしまっていたのだ!しかしお前は何だ?」

 そんな事は言われなくても分かっている。

 私は桃香様に嫉妬したのだ。

 寂しさからご主人様に甘えてしまいそのまま・・・・・。

「まあ、授かってしまった物は仕方がない。取り敢えずここはおめでとうと言っておこう。」

「思春・・・・・」

 かなりぶっきらぼうな言い方だったが思春なりに祝ってくれているのは理解している。

「問題は残っているあのバカの事だ。」

「・・・・・・・・それは余りにも身も蓋もないのでは・・・・・」

「最大の防波堤であり、手綱を握る華琳殿がこの後宮にいる以上、放っておけばどのような騒動を起こすか・・・」

 ここ最近の春蘭の行動を思い起こせば確かに・・・。

 『この後宮にはねずみ一匹通さんっ!!』と言っては壁を剥がしてねずみを探そうとした。

 『屋根を伝って賊が入り込むかもしれんっ!』と言っては街中の屋根を走り回った。

 ご主人様たちの姿を視界の端に捕えれば必ず追い掛け回す。

 いずれも私が対峙している間に秋蘭をはじめとした曹魏の武将達が取り押さえ、最終的に華琳殿の前に連れて来てお説教。これの繰り返しだ。

「ここはやはり私が復帰して後宮の警護を担当しよう。春蘭は華琳殿の警護と称して常に華琳殿と一緒に居させ、手綱を握ってもらうしかあるまい。」

「思春!その体で剣を振るうのか!?」

「なに、仕事は後宮の見張りと女兵士の調練程度だ。かつて孫文台様は雪蓮様や蓮華様を身に宿したまま戦場を駆け、臨月でも敵を屠り続けたと祭殿から聞いた事がある。それに比べれば休んでいるのと変わらん。」

「なんと・・・・・孫文台殿とはそこまでの豪傑だったのか・・・私も見習わなくては・・・」

 私はつわりの苦しみを理由に、またご主人様に甘えてしまう処だった・・・。

「元々つわりが治まりどうしたものかと考えていた所だ。実を言うと愛紗が懐妊したのはいい切っ掛けになった♪」

 珍しく笑顔を見せる。しかもその笑顔には優しさが感じられる。

 母となると女はこうも変わる物なのかと思わされた。

「そ、そうか・・・・・私もつわりが治まったら復帰するからそれまで頼む。」

「それはどうかな?お前のつわりが治まる前にこの子が生まれるかもしれん。そうなったら無理やりにでも復帰してもらうぞ♪」

「成程、覚悟しておこう♪」

 二人でひとしきり笑った後、思春は立ち上がった。

「さて、私は行くが、直ぐに蓮華様、華琳殿、桃香殿がここに来る。一刀たちはその後だ。もう少し我慢しろ。」

「あ・・・・・」

「ん?どうした?」

「その・・・思春はご主人様たちの事を以前は『北郷』と姓で呼んでいたな。後宮に入ってから名で呼ぶようになったが・・・・・」

「子供の前で父親を姓で呼ぶのもおかしいだろ?生まれてから呼び方を変えて、自分の狼狽える姿を子供に見せたくはない。今の内に慣れる為だ。」

 私の知る思春の答えとしては充分納得のいくものだった。

 だが・・・何か違和感を感じもする。

 私が黙ってしまったからか、思春が先に口を開いた

「あぁ、そうだ。一つ警告をするのを忘れていた。」

「警告?」

「あのお三方は大変暇を持て余していてな・・・・・今のお前は飢えた獣の檻に放り込まれた肉だ。覚悟はしておけ・・・・・」

 

「・・・・・・・え?肉?」

 

 思春は何も説明せずに部屋を出て行ってしまった。

 

 

 

 

 思春の言った通り、直ぐに桃香様、華琳殿、蓮華殿がこの部屋へやって来た。

「おめでとう!愛紗ちゃん♪」

「おめでとう、愛紗♪」

 桃香様と蓮華殿が笑顔で手を握ってくれた。

「おめでとう♪愛紗♪しばらくはつわりで苦しいでしょうけど頑張るのよ。」

 華琳殿が向けてくれた笑顔は私が初めて見る優しい物だった。

 この方も母になって変わったという事なのか。

 私も笑顔で返事をする。

 すると・・・・・。

「さて、先ずお祝いは言ったから、ちょっと話をする事があるので付き合ってもらうわよ。一刀たちはそれまでお預け♪」

 先程までの優しい笑顔が、何やら背筋に冷たいものの走る笑顔に変わった。

 それは桃香様と蓮華殿も同じ。

 私の寝る寝台を取り囲む様に椅子へ座り、三人が顔を近付ける。

「愛紗ちゃんはどうやって(たね)をもらったのかなぁ♪」

 え?どうやって?

「私達がつわりで苦しんでいる時にしたよのね♪」

 れ、蓮華殿・・・・・ひょ、表現がかなり・・・・・。

「ここにいると暇で、この手の話でつい盛り上がってしまうのよ。思春からも聞いたのに貴女に聞かないのは不公平よね♪」

 華琳殿の目の光に、先程の思春の言葉の意味をようやく理解した。

 こ、これは・・・・・目の前に居るのは確かに獣だ・・・『女』という名の。

「ここには男の目が無いのだから気にしなくても大丈夫よ♪」

 そして私は餌の『捌かれた肉』・・・生きた兎ならば逃げる素振りも見せられるが、今の私にはそれすら叶わない・・・・・。

 

「「「さあ、洗いざらい全て、事細か~く、教えてね♪」」」

 

☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆

 

「へぇ、愛紗ちゃんそんな手管をいつの間に・・・・・」

「ふむ、思春とは違って・・・・・・」

「流石、蜀の筆頭武将。なかなかやるわねぇ・・・出来る事なら私も愛紗を・・・」

 

 わたしはなにをしゃべったのだろう・・・・・・・できればこのまま記憶が蘇らないでほしい・・・・・。

 

「さて、いい感じで場も和んだ事だし♪」

 ・・・・・・・・・・私の頭はかつて無い程に疲労困憊しております・・・。

「これから愛紗には一刀たちに関する重要な話をするわ。」

「ご主人様たちの・・・・・・?」

「愛紗は一刀たちの口から『外史』という言葉を聞いた事は無い?」

「がいし・・・ですか?」

 華琳殿の話に私は記憶を探る。

「一刀が夢でうなされる事は無かった?」

 そう言えば・・・・・。

「有りました!目を覚まされたご主人様が呟かれたのを覚えています。それと、ご主人様たちが話し合われている時にも時々口にされていました。」

「一刀たちの居た、普段『天の国』と呼んでいる世界を『正史』として、私達の居るこの世界を『外史』と呼ぶの。ここまでは理解できた?」

 華琳殿は真剣な表情で私の目を見つめている。

「は、はい。」

 

「では、この『外史』が複数存在する。と言ったら、貴女は理解出来るかしら?」

 

 

 

 

 正直、華琳殿の話は夢物語の様だった。

 しかし、ご主人様たちの存在そのものがその話を裏付けていると私には感じられた。

 華琳殿の言うように、もし私自身がご主人様を殺める『外史』があり・・・その場を夢で見るような事があれば・・・私は気が狂って己の首を青龍刀で刎ね飛ばすだろう・・・。

 ご主人様たちは己の過酷な運命をどこまで理解し、どこまで受け入れておられるのか・・・。

 華琳殿の言われるよう、私もご主人様たちに幸せを少しでも多く感じて頂きたい。

 桃香様も蓮華殿もこの思いを胸に秘めてこられたのか。

 そして大喬と小喬、紫苑も。

 貂蝉、卑弥呼、炙叉には一度話を聞かねば。

 思春・・・・・・・・成程、あの違和感はこの話を聞いて、意を決していた為か。

 

「後で私が『外史』についてまとめた本を持ってきてあげるわ。詳しい事はそれを読んで頂戴。但し、くれぐれも一刀たちにその本を見せないように気を付けて。」

 私は無言で頷く。

 私の思いは眼に込めた。この目の前にいるお三方ならば、それを理解してくださる。

「結構話し込んでしまったわね。一刀たちも痺れを切らしている頃かしら♪」

 華琳殿が笑顔を見せ、それを合図のように私達は緊張した空気を洗い流す。

「一刀たちを呼びに行かせるわね♪」

 蓮華殿が立ち上がり、扉の向こうで控えていた女性兵士に声を掛ける。

 二、三話をしてから戻ってきた蓮華殿は苦笑していた。

「もう、一刀たちから矢の催促だったそうよ♪」

「あはは♪ご主人様らしい♪」

「ふふ♪・・・・・あら、もう来たわ。」

 扉の向こうから走って近付いて来る音が聞こえていた。

 

「「「愛紗っ!!」」」

 

 扉を開ける音と同時にご主人様たちの私を呼ぶ声が部屋に響いた。

 そのまま転がるように寝台まで来て、手を握ってくださる。

 

「「「ありがとう!愛紗!!」」」

 

 ・・・・・あまりの勢いにたじろいでしまった。

「気分はどうだ!?華佗から薬を貰ってこようか!?」

「寒くないか!?薪をもっと焼べようか!?」

「食べるものはどうだ!?酸っぱい物が欲しいとか無い!?」

 ご主人様・・・・・・・あぁ・・・やはりご主人様はご主人様だ。

 いつもと変わらぬ、気を回しすぎるくらい優しいご主人様・・・・・・。

「ぷっ・・・くくっ・・・」

 先ほど華琳殿の話を聞いた後の重い気持ちも、とたんに軽くなってしまった。

「「「・・・・・・え?なに?・・・・・なんで笑ってるの?」」」

「一刀、愛紗が心配だったのは解るけど、私たちに一言も無いのはどういう事かしら?」

「「「あ、あれ?華琳・・・桃香と蓮華も・・・・・いつの間に・・・・・」」」

「初めから居たわよ!」

 お三方はご主人様たちが扉を開ける前に壁際に移動していたのだから、ご主人様たちが気付かないのも無理のない話なのだが・・・。

「まあいいわ。私達は談話室の方に行っているから、愛紗との話が終わったら来なさい。いいわね。」

「「「・・・ああ・・・わかった・・・」」」

 お三方を見送り、部屋には私とご主人様たちだけになる。

「いやぁ、愛紗の姿を見たらあの三人が先に来てたの忘れちゃってたよ♪」

「あの・・・ご主人様、ご心配をお掛けしました。」

「え、いや、愛紗は気に病むことないって!」

「そうそう、俺たちは心配するしか出来ないんだから、心配させてくれよ♪」

「ホント、して欲しい事あれば言ってくれ。出来る限りの事はするからさ。」

 ご主人様たちの笑顔に、はいと返事をしかけた処で思春の顔が思い出された。

「い、いえ!ご主人様!ここで私が我侭を言っては後に続く者たちに勝手を許す事になります!それは後々庶人に迷惑をかけ、ひいては国の行く末に影を落としましょう!」

 ご主人様たちは驚いた顔をされている。

 桃香様と華琳殿、蓮華殿は王の矜持を示すため、それなりの事をされてはいるが決して華美や贅沢に成り過ぎない様に己を律されている。思春に至っては質素と言っても良い程だ。

 多くの者たちは大丈夫と思うが、心配なのが何人かいる。特に麗羽や七乃あたりが・・・。

 成都にいた頃に比べればかなり大人しくなったが、油断は禁物だ。

「そのような事にならぬよう、私は今この時もご主人様たちの青龍刀であり続けたいと思います。」

 驚きの顔だったご主人様たちが微笑みに変わる。

「うん、愛紗のその言葉。しっかり胸に刻んでおくよ。」

 見つめているご主人様の顔が近づき・・・・・・はっ!

 桃香様達がもしかしたら扉の向こうで聞き耳を立てているかも・・・って、扉が僅かに開いているっ!!

 聞き耳どころか、絶対覗いているっ!!

 

「ご、ごご、ご主人様っ!!」

 

 慌ててご主人様の肩に手を置いて遠ざけた。

「ひとつだけお願いしたいことが思い付きましたっ!!」

 実際には思い出したと言った方がいいのだが。

「こ、この子に真名を戴けますかっ!」

 香斗様達の真名をご主人様がお決めになったと聞いた時、私は羨ましいと思った。

 そして先程、華琳殿からその経緯を教えていただき、それではこの子もと期待したのだ。

「・・・・・ご主人様?」

 だがご主人様たちの顔は引きつって固まっていた・・・・・。

「え、え~とね・・・愛紗・・・・・・実に言いにくいんだけど・・・」

「思春の時もそうだったんだけど・・・・・」

「子供の真名は炙叉に占ってもらってからじゃないと決められなくなったんだ・・・」

「ええっ!?」

「炙叉の面子もあるし、『三人の王の神秘性を高めるため』って、冥琳が・・・・」

 ご主人様たちが揃って手を合わせ、

「「「だからゴメン!!」」」

 拝むように頭を下げられた。

 

「そ、そんなあぁ!」

 

 冥琳殿・・・・・丞相という立場を考えれば、意図するところは理解できるが・・・少し恨みますよ・・・・・。

 落ち込む私の耳に扉を叩く音、続いて紫苑の声が届く。

「失礼致します。ご主人様。愛紗ちゃん。この度はご懐妊おめでとうございます♪」

 相変わらず優雅な物腰で挨拶をした紫苑が寝台の傍にやってくる。

「ご主人様方、申し訳ありませんがこれから愛紗ちゃんに妊娠中の注意や心構え等を伝授致しますので、二人だけにして頂きたいのですがよろしいでしょうか?」

「「「ええ?俺たち、さっきこの部屋に来たばかりなのに・・・・・」」」

「殿方にはお聞かせできないような話もしなくてはいけないのですが・・・ご主人様が、そんな話をして恥じらう私と愛紗ちゃんをどうしてもご覧になりたいと仰られるのであれば・・・・・お止めできませんわねぇ♪」

「「「今すぐ退出しますっ!!」」」

「あ・・・・・」

 入って来たときと同様、転がるように扉に向かうご主人様たちに、私は無意識に右手を伸ばしていた。

 

「「「愛紗♪紫苑との話が終わったらまた来るよ♪」」」

 

 扉を締める前に笑顔で言って下さる。

 それだけで私の心は明るい日差しを浴びたように暖かくなった。

 ご主人様・・・・・・・・思春がご主人様たちを名で呼ぶのを、少し羨ましく思っていたが・・・やはり私の想いを表す呼び方は『ご主人様』だ。

 戦乱の日々の中で培ってきた、この想いを載せられる言葉・・・・・・・。

 

「桃香様達が何やら怪しい笑顔でご主人様たちをお待ちしていた様だけど・・・・・愛紗ちゃん、何か知ってる?」

 

 ・・・・・・しまった・・・先程の尋問をご主人様たちに伝えるのを忘れていた・・・・・。

 

 

 

 

おまけ

愛紗の長女 関平 真名『愛羅(あいら)

四歳

【緑一刀turn】

「ちちうえ♪ははうえ♪これあげる♪」

 愛羅の小さな両手に掲げられたのは、包み紙の上に乗ったゴマ団子。

「これって今日のおやつ?」

「どうした?愛羅は食べきれなかったの?」

 俺と愛紗は、愛羅の具合でも悪いのかと心配になったが、ニコニコしている所を見るとそうでは無いらしい。

「とってもおいしかったから、ちちうえとははうえにも食べてほしかったの♪」

「うぅ、愛羅は優しいなぁ♪」

「本当に♪ありがとう、愛羅♪」

 二人で頭を撫でてあげると、目を細めて更に嬉しそうになった。

「それじゃあ早速いただこうかな♪」

 愛羅の手の上にあるゴマ団子は三個。

 今日は俺が来るのを覚えていて、三人で一緒に食べたかったという事なのだろう。

 愛紗もそれが分かったから、晩ご飯前にもかかわらず笑顔でゴマ団子を手に取った。

「「いただきます♪」」

「いただきま~す♪」

 三人で同時にゴマ団子にかじりついた。

 お、やっぱりこれは!

「あーしぇ媽媽のゴマだんごだよ。おいしいでしょ?」

「亞莎め、また腕を上げたな・・・・・」

 愛紗は亞莎のゴマ団子食べるの久しぶりだもんな。

「うん。冷めても硬くならないし、子供が食べやすいように小さく作って、ゴマも軽く擂ってある。流石だなぁ。」

 愛羅も美味しそうに食べて・・・あれ?さっきまでニコニコしながら食べてたのに、ゴマ団子にかじりついたまま俺を見つめていた。

「どうしたの、愛羅?」

「・・・ねぇ、ははうえ。あいら、ははうえがつくったおかしが食べたい。」

 

「「え゛」」

 

 しまった!愛羅は俺が亞莎を褒めたので、愛紗を褒めて欲しいという対抗心が生まれてしまった様だ。

「う、う~ん・・・私はお菓子を作ったことが無いし・・・・・」

 愛紗は冷や汗を流して引きつった笑顔でしどろもどろに答えていた。

 愛紗も自分の料理の腕は把握している。

 今の愛紗が作れるのは炒飯のみ。

 特訓の成果もありかなり美味しいのだが、それ以外は何故か作れない。

 さすが呂蒙。その気が無くても関羽を追い込むとは!

 

「・・・・・ダメェ?」

 

 悲しそうな上目遣いで繰り出された愛羅の一撃に、昔から可愛いもの好きの愛紗が耐えられるはずがない。

「分かった!明日からお菓子作りを学んでくる!」

「ホント♪」

 愛羅の顔が再び輝きを取り戻すのとは逆に、俺の顔から血の気が引いていく・・・。

「ああ!この母、関雲長に二言はない!但し、時間をくれ。(食べ物になるまで・・・)」

 最後の部分は愛羅ではなく、俺に目線を向けて呟かれた。

 くっ!可愛い娘の願いだ!叶えてやろうじゃないかっ!!

「明日は朱里と雛里がおやつを作るって言ってたから、教わってこよう!俺たち(**)も付き合うから!」

 赤と紫にも付き合ってもらおう・・・・・・。

 

 それからの愛羅は終始ご機嫌だったが、俺と愛紗は愛羅に気付かれない様、時折溜息を吐いていた。

 

 

翌日

【エクストラturn】

 北郷学園の教室の一つは子供たちを預かる保育園となっている。

 今はおやつの時間になり、子供たちはプリンに舌鼓を打っていた。

「あいらちゃん、きょうはごきげんだね。どうしたの?」

 眞琳が愛羅を覗き込んで訊いた。

 愛羅はテーブルについている間も足をパタパタさせ、顔はニコニコだった。

 香斗に蓮紅、思春の娘の烈夏などが不思議そうな顔で見ている。

「えへへ♪きょうのおやつ、ははうえがてつだってるの♪おうちでもつくってくれるかなぁって♪」

「へ~、いいなぁ!かとの媽媽もつくってくれないかなぁ♪」

「れんほんの媽媽も!」

「れっかも・・・」

「まりんも媽媽のおかしたべたいなぁ♪」

 眞琳のみ意味が微妙に違うが、子供たちは皆、目をキラキラさせて期待に胸をときめかせていた。

 

 一方同じ頃、厨房では愛紗の作成した化学兵器・・・・・もとい、プリンを口に含んだ大人たち、三人の一刀、愛紗、朱里、雛里、その他プリンの匂いに釣られやって来た者数名が、死屍累々の体を晒していた。

 

 

 

 

 

あとがき

 

 

真面目で凛々しい愛紗だけに

困ったりデレる姿が可愛いので

ついつい『いじられキャラ』にしてしまいますw

 

冒頭部分の思春がどうしてああなったかは

思春の回に書きますのでお楽しみに♪

 

三国志演義では関平が養子として登場しますが

正史ではその様な記述がなく

実子であったとの見方が最近の研究者さん達の意見だそうです。

なので愛羅を関平と致しました。

 

 

《次回のお話&現在の得票数》

 

☆風  5票

という事で次回は風に決定しました。

以下、現在の得票数です。

 

祭  4

恋  4

思春 3

蓮華 1

凪  1

雪蓮と冥琳1

蒲公英1

美羽 1

紫苑 1

翠  1

 

※雪蓮と冥琳は一つの話となりますのでセットとさせて頂きます。

 

引き続き、皆様からのリクエストを募集しておりますので

よろしくお願い申し上げます。

 

 

 


 
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