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真・恋姫無双 三人の天の御遣い 第二章『三爸爸†無双』 其の三

雷起さん

得票数4の鈴々のお話です。
懐妊前と妊娠三ヶ月頃の一幕+おまけです。

引き続き、どの恋姫メインの話が読みたいのかリクエストを募集しております。
リクエストの多い恋姫(TINAMI、Pixiv双方の合計)を優先的に書きたいと思いますのでよろしくお願いいたします。

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2012-10-05 17:12:51 投稿 / 全5ページ    総閲覧数:4383   閲覧ユーザー数:3276

第二章  『三爸爸†無双』 其の三

 

 

焼き鳥屋店内

【エクストラturn】

 一刀たち三人の最初の子供、曹沖が生まれて四年。

 その間子供たちは順調に増えて行き、今では年内にもその数が四十人を超えるのは確実だった。

 

「どうやったら子供ができるのだ?」

 

 晋建国以前と変わらぬ澄んだ瞳で問い掛けてくる鈴々に対し、白蓮は眉間に皺を寄せて困っていた。

「どうやったらって、お前・・・・・・」

 瞳の輝きは変わらないが、鈴々の見た目は大きく変わっていた。

 ちびっ子だった鈴々の背丈が今では白蓮とほぼ同じ、バストに至っては既に追い越していた。白蓮も子供を産んで以前より大きくなっているというのに。

 それでいて顔にはまだ幼さが残っている。

「(まさか今更子供の作り方を訊いてる訳じゃないよな?)」

 酒家の喧騒の中で周りに聞こえないよう声を潜めて問い返した。

 時は宵の口、店の中はいい感じで酔っぱらいが出来始めている。

「それは当たり前なのだ。鈴々だってお兄ちゃんのち「オヤジ!ネギマ六本追加だっ!!」てるのだ。」

 白蓮はゼェゼェと肩で息をしながら目をカマボコの断面みたいにしていた。

「何で鈴々の話を邪魔するのだっ!?」

「お前はもっと周を考えて話せっ!!」

 鈴々が辺りを見回すと聞き耳を立てていた客が一斉に杯を(あお)った。

「みんなお酒を飲んでるだけなのだ。それで、鈴々が聞きたいのは何で鈴々が妊娠できないかなのだ。」

「もういいよ、分かったよ。私も諦めて相談に乗るよ・・・・・で、私に相談する前に華佗に訊いたのか?毎月検診受けてるんだから。」

 鈴々と白蓮の再開した会話を周りの客達はしっかりと聞き耳を立てていた。

 その半数は女性客で男性客よりも聞き方が露骨だった。

「華佗は別に異常ないって・・・子供はさずかりものだから気にするなって言うのだ。」

「華佗がそう言うなら大丈夫だろ。鈴々以外にもまだ子供のいないの居るんだし。季衣とか流琉とか。」

「それでも鈴々は早く子供が欲しいのだ!桂花なんかもう三人目なのだ!」

「そういやそうだな・・・・・桂花も大変だなぁ・・・」

「だから桂花にも訊いてみたのだ。」

「訊いたのかよ!!・・・・・で、桂花は何だって?」

 自分も興味を引かれて白蓮が先を促す。

「それが、訊きに行ったとき丁度お乳を飲ませてて、それを見て鈴々が『そのおっぱいでもお乳が出るのだなぁ』って感心したら追い出されたのだ。」

「・・・・・・・・・言ってやるなよ、そういう事は・・・」

 桂花の膨らみは子供が出来た事で以前より()増えていた。しかし、今の鈴々が言えば桂花がどんな反応をしたかは想像が容易だ。

 周りの客たちも桂花に同情し、涙を流して杯を掲げている。

「桃香お姉ちゃんと愛紗においてけぼりにされてるみたいで嫌なのだ・・・・・」

 鈴々の声のトーンが落ちた。義理の姉妹とはいえ・・・いや義理の姉妹と誓い合った仲だからこそ疎外感が強いのかも知れない。

「朱里や雛里、それにコリンや白蓮お姉ちゃんにも鈴々は負けてるのだ!」

「いや、別に勝ち負けじゃ無いだろ・・・・・コリンって誰だ!?まさか一刀の奴、城下の女に手を出して隠し子が!?」

 白蓮の言葉に店内にどよめきが起る。

「コリンは鈴々の飼ってる犬なのだ。」

 客全員がズッコケた。

「犬かよ!って、私は犬の次かよっ!!」

「白蓮お姉ちゃんは一番自然で無理がない気がするから普段の生活を参考にしたいのだ。」

「な、なんだよいきなり・・・・・でも鈴々も私の事を分かってくれてたんだなぁ♪」

「冥琳お姉ちゃんが白蓮お姉ちゃんに相談するときはこう言えって。普通って言うと気にするから。」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・冥琳の気遣いが却って痛いなあ・・・・・」

 さめざめと涙を流し、すすった酒はとても苦く感じた。

「で、どうなのだ?」

「え?どうって・・・何が?」

「だから普段の生活なのだ!」

「ああ、そうだな・・・あの頃は朝起きたら、軽く鍛錬をしてから朝食。それから仕事をして昼飯。午後の仕事が終わったら近くにいた奴と晩飯食って酒呑んで、部屋に戻って寝る。」

 またしても店内の客たちの涙を誘った。

「・・・・・とっても地味なのだ。」

「普段の生活なんだから当たり前だろっ!!」

「そんな生活でパイハンみたいないい子が生まれるのだ?」

「褒めてくれてるのは分かるけど、白煌(パイファン)な。その発音だと将来毛が生えなさそうで不憫だ・・・」

「?」

 白煌は白蓮の娘、公孫(しょく)の真名である。

「でもそうだな。話してて思い至った事が一つある。」

「なんなのだ!」

 期待に鈴々が顔を近付ける。

「鈴々、お前は一刀が好きだから一刀の子供を産みたいのか?それとも、私を含めた周りが子供を産んでるから自分も欲しいのか?どっちだ?」

「え・・・・・」

「その辺履き違えてると後でひどい目に会うぞ。これは先に一刀の子を産んだ先輩からの忠告だ。しっかり考えろよ♪」

「う、うん・・・・・・考えるのだ・・・・・」

「それじゃ私はもう行くな。白煌を月に面倒見てもらっているのに、へべれけで帰る訳にはいかないからな♪」

 そう言って立ち上がった白蓮を見送り、出て行った扉を見つめ続ける鈴々だった。

 

 

 

 

数日後 本城内医務室前

【エクストラturn】

 今日は定期検診の日だった。

 華琳達の妊娠発覚騒動以来、全員が毎月一回華佗に気の流れと病魔の有無を確認してもらう事になっている。

 既に検診を終えた鈴々が廊下に置かれた椅子に座って、いま検診を受けている二人を待っていた。

 扉が開き出て来た二人に声を掛ける。

「季衣、流琉、結果はどうだったのだ?」

 かつては会えば喧嘩になっていた鈴々と季衣だが、今では気の合う親友と言ってもいい関係になっている。

 他の将軍たちが妊娠出産で動けない時、二人は揃って三国各地に飛び回っていた。

 小規模な反乱、国境での紛争、災害での救助活動も含め常に一緒にいる内に自然と気を許しあう様になっていた。

 勿論そうなるように首脳部が謀ったからだが。

「今回もダメだった・・・・・」

「ボクも。ま、今日からまた頑張ればいいじゃん♪」

 流琉が溜息混じりなのに対して季衣は気にしていない、と言うより前向きだ。

 季衣と流琉も、鈴々と同様に背が伸びている。未だ少女の域を脱してはいないが以前と比べれば充分に大人びていた。

 二人は鈴々に比べると背が少し低い。胸の大きさも季衣はやや負けていて、流琉は更に小さかった。

「季衣は余裕があるのだなあ・・・・・何か有ったのだ?」

 身長も胸も鈴々に負け始めた頃から季衣はかなり焦っていた時期もあったが、今一番心に余裕が有るのは季衣だ。

「んふふ~♪ちょっとね。でも鈴々も先月と何か違うよな。なんだろうなぁ?」

 覗き込むように鈴々の顔を中腰になって見上げると長いフワフワした髪が揺れる。

 以前はまとめていた髪も今は春蘭を真似てオールバックから自然に流していた。

「それは白蓮お姉ちゃんに相談したからなのだ。」

「白蓮さんは何って言ったの?」

 流琉も気付いていた様で鈴々から話を聞きたいという態度が素直に出ていた。

 髪型も服も以前のままだが、スラリと伸びた手足は可憐とさえ言えた。

「うん、ええと・・・子供が欲しいのはお兄ちゃんたちが好きだからか、それとも対抗心からかって・・・・・それで考えてみたら対抗心ばっかり強くなってたのに気が付いて・・・」

「そうだね・・・私も兄さまたちを好きなのは当然って気持ちが有ったから、つい対抗心ばかり燃やしちゃってた・・・」

「なんだよ二人共!そんなの対抗心分も全部兄ちゃんたちを好きな気持ちに変えちゃえばいいだけじゃん♪」

「なによぅ!季衣だって先月まで同じように悩んでたくせに!」

「えっへへ~♪ボクはもう悩むのやめたもんね~♪」

「どうして悩むのをやめれたのだ?鈴々は普段なら忘れられるけど、チビどもを見るとどうしても思い出すのだ。」

「う~ん、そうだな~・・・・・ボクが言うより実際に会って話を聞いた方がいいよ。」

「「誰に?」なのだ?」

 

「春蘭様♪」

 

 

 

 春蘭は鈴々が相談相手候補から最初に削除した名前だった。

 相談とは頭のいい人間にするものだと思っていたからである。

 しかし今は藁にも縋る、もしくはダメで元々という気持ちで春蘭に会いに来た。

 

「おお!鈴々ではないか!なんだ?十本勝負か?よしやろう!すぐやろう♪」

 

「よおし!負けないのだっ!!」

「じゃあボクが審判やりますねー♪」

 

「違うでしょおおおおっ!!鈴々!あなた春蘭様に話を訊きに来たんでしょっ!!」

 

 ノリで始まりかけた試合を流琉が一声で何とか止めるのに成功する。

「おっと、そうだったのだ!」

「なに?私の話を訊きたい?どういう事だ?」

 お互い武器を下ろし、本城曹魏館前庭の一角で立ち話が始まった。

 それを見つけた秋蘭もやってくる。

「三人とも検診は終わったのか?鈴々が曹魏館に来るのは久しぶりだな。」

「春蘭に相談があって来たのだ。」

「姉者に・・・・・相談?」

 秋蘭は「気は確かか?」と言いかけた言葉を飲み込んだ。

「春蘭は光琳(コウリン)を身ごもる前に何か特別なことをしたのだ?」

 光琳とは春蘭の二歳になる娘の事である。

「は?子供を身ごもる為にする事と言えば・・・・・・・・って!言えるかあっ!!」

 春蘭が真っ赤になって暴れだした。

「姉者。」

 秋蘭が春蘭に小声で耳打ちする。

「(鈴々は自分が子供を授からない事を気に病んでいる。助言が欲しいのだよ。)」

「なに!?そういう事か!季衣、お前に言った事を教えてやれば良いではないか!」

「いやあ、あの言葉は春蘭様の人徳がなければ心に響かないって言うか・・・・・」

 言葉とは裏腹に季衣は苦笑混じりだった。

「そうか?では教えてやる。」

 鈴々は勿論、流琉も教えてもらって無かったので真剣な顔で言葉を待った。

 

「そんな物は知らん!!」

 

「「は?」」

 

「妊娠とはいつ来るか分からぬ奇襲と同じ!常に備え、いつ攻め込まれても慌てぬ心構えと鍛錬さえしていれば恐れるに足らず!!」

 

「おおっ!なるほどなのだ!」

「えぇ!?納得しちゃうの!?」

 鈴々の心に響いた様だった。流琉には無理だったが。

「(流琉、一刀たち三人は天の遣いだ。時期が来れば必ず子を授かる。戦乱の頃には誰も妊娠しなかっただろう?特別なのだよ、一刀たちは♪)」

 懐妊した者は後宮に移った初日に華琳から外史の話を聞かされる。

 秋蘭の言葉はそれを踏まえた上での言葉だが、流琉にも充分納得のいく内容だった。

「はい、秋蘭様♪」

 

「納得できたならもうよいな!では十本勝負だ!鈴々♪」

「応!望むところなのだっ!!」

 

 

 

 

四ヶ月後 本城後宮

【鈴々turn】

「う~~~~・・・・・ひまなのだ~~~」

 寝台から出るのを禁止されるなんて思わなかったのだ。

 でも今日は・・・。

「あはは、昔はよく抜け出して昼寝してたのにな♪」

「お腹の赤ちゃんが安定すれば許してもらえるから、もう少し我慢な♪」

「今が一番大変な時期だ。つわりも少しはましになるよ。」

 お兄ちゃんたちが居てくれるのだ。

「お兄ちゃんたちは当事者じゃないから気楽に言ってるんでしょ・・・」

 うぅ、つわりで気持ち悪いからつい意地悪な言い方になるのだぁ・・・本当はもっと甘えたいのに・・・。

「う~ん、そうだなぁ。でも俺たち四十回も見てきてるベテランだからな♪」

 そう言ったのは緑のお兄ちゃんだけど、三人が両手を握って頭を撫でてくれた。

 鈴々がして欲しいことを分かってくれてるのだ♪

「にゃ~・・・・・お兄ちゃんに頭撫でられるの・・・やっぱり好き♪」

「身体は大きくなったのに、変わらないな鈴々は。」

「それって鈴々がまだまだ子供って事?」

「お腹に赤ちゃんが居るのに子供じゃ困るよ♪頭を撫でられるのが好きな所もそうだけど、心の根っこが変わらない。みんなが笑って、みんなが幸せになる世の中を目指してる。」

 それは鈴々がお兄ちゃんと初めてデートした時に言った鈴々の言葉・・・。

「将のみんながお産で大変な時に鈴々は頑張ってこの国を守ってくれただろ。だから今度は鈴々が笑って、鈴々が幸せになる番だ。」

「お兄ちゃん・・・・・」

 嬉しい・・・・・嬉しくって涙が出たのって初めて・・・・・。

「・・・・・でも、つわりは苦しくって大変なのだ。」

 なんか恥ずかしくってそんな事を言ってしまった。

「それじゃあ俺がつわりを楽にする魔法の言葉を教えてあげよう♪」

「そんな言葉が有るのだ?」

「ああ・・・『つわりは赤ちゃんが元気だよって言ってる合図』・・・・・産婆さんから教えてもらった言葉なんだけど、どうかな?」

「・・・つわりは赤ちゃんが・・・元気だよって・・言ってる合図・・・・・」

 ひとつひとつ言葉を噛み締める度に気持ちが明るくなっていく。

「うん♪鈴々も頑張ろうって気持ちになったのだ♪」

「効果覿面だな♪」

 緑のお兄ちゃんがそう言った瞬間。

 

ぐうううううううううううううううううううう

 

 鈴々のお腹が鳴った。

「「「本当に効果覿面だな♪」」」

 三人で声を出して笑い出した。

「お兄ちゃん・・・お腹すいたのだ・・・・・」

「この時期にお腹鳴らしたのは恋以来だな♪」

「何が食べたい?好きなものを作ってもらうぞ♪」

「量は様子見ながらな。あんまり食べ過ぎてお腹が苦しくなると赤ちゃんに負担が掛かるから。」

 食べたいものはたくさんあるけど・・・・・。

 

「鈴々はラーメンが食べたいのだ♪」

 

 お兄ちゃんと食べるのはやっぱりラーメンがいいのだ♪

 

 

 

 

おまけ

鈴々の長女 張苞 真名『爛々(ランラン)

三歳

【エクストラturn】

「かとおねえちゃ~ん、まってなのだ~」

 少し泣きべそをかきながらトテトテ走って香斗の後を追いかける爛々。

 本城の中庭で遊ぶ子供達の中で爛々は特に香斗に懐いていた。

「ありゃ?爛々ちゃん、ごめーん。ほらこっちにおいで♪」

 おいてけぼりにしたのにようやく気付いた香斗が両手を開いて爛々を待った。

「かとおねえちゃん♪」

 飛びつく爛々を受け止め・・・・・きれずに押し倒された。

 鈴々の子供だけあって三歳でもその片鱗が現れている。

 七歳になる香斗に力で負けていない。

「きゅ~・・・」

 香斗は目をグルグル回して芝生の上でのびている。

「香斗ちゃん大丈夫?爛々ちゃんのタックルをまともに喰らうなんて・・・もう何回目?」

 香斗を心配してやって来たのは一刀たちの長女である眞琳だった。

「爛々ちゃんも、香斗ちゃんは力が強くないんだから加減してあげなきゃダメよ。」

 四十人以上いる子供たちのリーダーである眞琳は、お姉ちゃんらしくみんなの躾も忘れない。華琳の娘だけあって頭も良く、歳よりも幾分大人びた処があった。

 そんな眞琳の言葉も爛々には届いていないようだった。

「かとおねえちゃぁん♪」

 暖かい日差しの中、爛々は香斗のお腹に顔をスリスリしていた。

 

 

 

 

 

あとがき

 

 

鈴々たちの年齢は中O生ぐらい・・・・・

いえ、十八歳以上ですよ。業界的にw

 

白蓮や秋蘭を含め「北郷」と呼んでいた人たちは

呼び方を「一刀」と改めています。

 

春蘭の娘の真名『光琳』は東洋蘭(春蘭)の品種からw

 

鈴々にはもう一人、張紹が生まれる予定です

張苞と敬哀皇后張氏

張紹と張皇后を混ぜた設定で考えています。

※敬哀皇后張氏と張皇后は共に張飛の娘で劉禅の妻

 

 

現在の得票数

 

愛紗 3

風  3

恋  2

思春 2

祭  2

蓮華 1

凪  1

桃香、鈴々、他 0

 

鈴々の票は今回で0に戻します。

次回は愛紗を予定しております。

 

 

 


 
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