「本当に行っちゃうの?」
「俺だって離れたくはない。直ぐに戻る。」
二人をしっかりと抱き寄せて愛情(と言う名のエネルギー)を充填すると、軍服姿のラウラ(最早小柄ではなく、今では一夏より少し低い身長とスレンダーな体格になった。眼帯は外している)と一緒に軍用ジェットに乗って消えて行った。
「兄様、本当によろしいのですか?」
「あいつらとの時間も大事だが、妹分の正体を断る訳にも行かない。何より、お前の部隊を鍛える良いチャンスだ。ドイツに遊びに行くとも約束してたしな。ボーデヴィッヒ中佐。」
「言わないで下さい・・・・私がヴァルキリーになれたのは、兄様のお陰です。それに、兄様は大佐になったじゃありませんか!」
「ああ・・・・そういやそうだったな。俺今大佐だっけ?あはははは・・・・(自由国籍持ちなのにね)」
一夏は乾いた笑い声で過去の事を振り返っていた。以前ビジネス旅行(と言うのは名ばかりのデート)の途中でドイツはテロリストに頭を悩ませていた所を、一夏とラウラがたった二人で全員を片付けたのだ。この時の一夏はデートを邪魔された所為か、人間の顔をしていなかったと言う。片手でグレネードランチャー、もう片手で対戦車ライフルを持つその姿は正に戦場の鬼だった。
「まあ、でも、正式にって訳じゃないから、良いだろう?VTシステムを使っていた馬鹿共も消えた(と言うよりも消した)し。」
「はい。」
十時間弱で、ドイツ軍の飛行場に着陸した。降りて来る所で、シュヴァルツェア・ハーゼが既に整列していた。彼女達も眼帯を外している。
「隊長に敬礼!」
クラリッサを含む全員が居住まいを正し、敬礼をする。
『よう、お前ら。久し振りだな。相変わらず元気そうで。俺の部隊の奴らはどうしている?あ、楽にしろ。その体勢もキツいだろう?』
『はい、大佐の部隊のレッド・デビルズも元気です。しかし、驚きました。まさか対IS部隊を短時間で作り上げてしまうとは・・・・』
流暢なドイツ語で話す二人に、ラウラは面白く無さそうな顔をする。中佐になってからと言う物、仕事も忙しくなり、滅多に会えなくなっているので仕方無いが・・・・
『レッド・デビルズ。隊長に敬礼!』
軍服姿の若い男達が一夏に敬礼をする。
「楽にしろ。
「はい!」
「なら良い。うっし、着いて早速だが、訓練を始める。」
一夏は羽織っていたジャケットを脱ぎ捨て、カーゴパンツとタンクトップ姿になった。現在ドイツは冬に近付いている為、それなりに寒い。だが、そんな事は物ともせずに鍛えられた上半身が露わになる。
「今からこの飛行場を十周する。遅れて行く奴は俺が後ろからぶっ飛ばして行くからそのつもりでいろ。全力疾走だ。」
途端に一夏の目付きと声が変わり、ラウラを含めた全員が走り出した。それもその筈、一夏は木刀を片手に、もう片方にはアサルトライフルを構えて後ろから追って来るのだ。韋駄天並みの速さで追って来る鬼から逃げ、少しでも遅れよう物なら木刀を振り回し、銃を遠慮無くぶっ放す。十週終わった頃には、まだ立っているのは一夏、ラウラ、そしてクラリッサの三人だけだった。
「どうした?この程度でへたばってちゃISには勝てないぞ?」
「汗一つかかずにIS部隊を生身で壊滅させられる隊長に言われても・・・・・俺らなんか一機倒してやっとなんすから・・・・」
「まあ、それでも充分進歩だよ。頑張れ。さて、休憩終わりだ。いつも通りのメニューだ。はい、始め。まずは片足立ちの屈伸から。両足で合計百回。」
「えーーー!!??」
「黙れ。良いからやれ。怠けた奴は俺とのスパーリング一時間コースをプレゼントしてやろう。こっちの方が断然キツいと俺は断言する。下手をすれば・・・・死ぬかもな。地獄の様な訓練か、本当の地獄か。どちらか好きな方を選ばせてやる。」
(鬼だ・・・・・鬼がいる・・・・・!!!)
文句を言いそうになった彼らは直ぐに沈黙する。一夏の後ろに聳え立つ阿修羅が余りにも恐ろしい顔をしている為だ。言えば最後何をされるか分からない。だが、こうして扱かれるシュヴァルツェア・ハーゼと新部隊、レッド・デビルズは、ドイツのみならず、世界各国から一目置かれる存在となり、世界的に活躍する事となるが、それはまた別の話である・・・・
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はい、番外編パート2です。どうぞ。