No.494270

IS~音撃の織斑 番外編1:蜜月の甘い一時

i-pod男さん

番外編です。どうぞ。これからも書くかどうかは定かではありませんが、よろしければ読んで下さい。

2012-10-09 22:17:31 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:3461   閲覧ユーザー数:3306

「ようやく着いたな・・・・・なんか長く感じた・・・・」

 

「暑いわねー、ここ。」

 

「ハネムーン・・・・楽しみ・・・・」

 

水色の髪の毛を持つ姉妹を連れて、一人の男がホノルル空港に降り立った。

 

「ねえ一夏、これからどこ行くの?」

 

「まあ、丁度この時間だから、チェックインは出来るし、レンタカーも用意してあるから・・・・一先ず荷物をホテルに預けてシャワーでも浴びよう。」

 

出口では、既に一台の黒い車が用意されていた。ヴォルクスワーゲンである。乗って来た男にいくらかの紙幣を握らせて礼を言うと、鍵を受け取ってトランクを開け、中に荷物を運び始めた。誰が助手席に座るかで二人が睨み合っていたが、二人を後部座席に座らせる事でどうにか場を納める事に成功した。それから運転する事二十分後・・・

 

「着いたぞ。ここだ。」

 

「「あ・・・・すごーーーーい!!!!」」

 

二人が見たのは、巨大なリゾートホテルである。摩天楼並みの高さのホテルと青々と広がる海、そして雲一つ無い太陽が照りつける空。正に楽園の二文字に相応しい所である。ボーイに車を駐車場に停める様頼むと、ベルキャプテンが台車に荷物を載せて中に案内した。

 

『スイートを予約していた更識です。』

 

流暢な英語で予約を確認する。

 

『承っております。ようこそ当ホテルへ。カードキーはこちらでございます。係の物がご案内しますので、しばらくお待ち下さい。』

 

カードキーを受け取り、宛てがわれた部屋はベランダ付きの豪華な部屋だった。

 

「ようこそ、マイ・レディース。ここが、一週間泊まる宿泊地だ。」

 

「一週間って・・・・・・ここ、スイートでしょ?高いでしょ?」

 

簪が心配そうに一夏を見る。

 

「大丈夫だよ。俺、元々物欲無いだろう?だから結構溜まっててさ。幾ら婿入りしたからとは言え他人様の金を勝手に使うのは嫌なんだよ。だから、これは全部俺の金でまかないました。」

 

「でも、そこまで無理しなくても良いのに・・・・」

 

「いやいや、結納は生活費と養育費に充てたいからさ。俺の本当に良く知ってる血縁者って姉貴しかいないだろう?だから、大きめの家族が欲しいなと思って。」

 

それを聞いて、一夏の漢らしさと気遣いを見た二人は目に涙を浮かべ、口元には満面の笑みを浮かべた。キスの雨を降らせ、一夏は引っ張りだこの様に海に連れて行かれ、海の中に比喩表現で無く投げ込まれた。(当然この時三人共水着を着ているが)

 

「お前らなあ・・・・いい加減にしろー!」

 

二人が逃げるのを面白がって一夏は持ち前の体力と筋力を活かしたバタフライで追跡し、五分とかからず捕まえた。

 

「ありがとうな、二人共。気に入ってくれて良かった。」

 

「ううん、お礼を言うのは私達だよ、一夏?」

 

「お姉ちゃんの言う通り。いつもありがとう。知ってるんだよ?色々計画してた事も、大家族が欲しいって事も。いつも頑張ってるんだもん。」

 

一夏は照れくさくなったのか、顔を背けて頬を掻いた。

 

「まあ、やる気出ない方がおかしいだろ?こんな可愛くて綺麗な奥方二人がいて。俺には勿体無さ過ぎるぞ。」

 

そう言うと、二人を抱き寄せ、海の中に潜った。二人と代わる代わるキスをしながらも酸素を確保し、五分弱は水中にいた。一時間半は泳いでいたので、三人はようやく浜辺に引き返し、敷いたタオルに寝そべった(一夏の腕を枕にしながら)。

 

「なあ、今、幸せか?」

 

「うん。幸せだよ?」

 

「私も。」

 

「そうか。・・・・・・そうか・・・・・・なら良いんだ。なら、良いんだ。」

 

一夏は自分にそう言い聞かせる様に呟いた。

 

Part 2

 

冬場では、こんな事もある。

 

「う〜、出来ない・・・・」

 

「お姉ちゃん、何してるの?」

 

何やら姉が悪戦苦闘して意気消沈しているのがいたたまれなくなったのか、簪が部屋に入って来る。

 

「うー・・・実は一夏に編み物をプレゼント使用かなーと思って・・・・苦手克服の為にも。」

 

「ふーん・・・・やっぱり姉妹だねー。」

 

「え?」

 

「ジャーン。」

 

簪は『猛』の漢字が刺繍してある深い赤色のマフラーを取り出した。

 

「あ・・・・」

 

「私も編み物ってあんまりやった事無いから、無難にこれにしようと思って。お姉ちゃんは、何々、手袋?いきなり高難度の物やっても難しいのは当たり前だよ〜?私も手伝うから、一緒に作ろ?」

 

「う、うん・・・・・」

 

そして試行錯誤の後・・・・・

 

「一夏、ちょっと・・・」

 

「ん?」

 

「はい!」

 

二人が差し出した紙袋を開くと、その中にはマフラーと指先の部分を切り落とした手袋が入っていた。

 

「あ・・・・すげー・・・・これもしかしなくとも手作り?」

 

「うん・・・・苦手だから・・・・簪ちゃんに手伝って貰ったけど・・・・」

 

恥ずかしそうに楯無がモジモジする。

 

「ありがとう。凄く良く出来てる。」

 

マフラーを首に巻き付け、楯無を抱きしめた。そして数分程掛けた濃厚なディープキスを贈って骨抜きにしてしまう。だが、簪はそれを面白く無さそうに見ていた。

 

「簪もありがとうな。」

 

簪にも同じ様にすると、満足そうな顔をしていた。新しく貰った手袋とマフラーを巻き付け、一夏は魔化魍の討伐に向かった。


 
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