side一夏
初日の授業が終わった。
俺が固まった体を伸ばしていると扉が開いて二組にいる鈴が入ってきた。
「一夏!生徒会室に行くわよ」
そう言って手を掴んできた。
「お~い。鈴。なんで生徒会室に行くのか大体の理由は分かるが一応言ってくれ」
「あ、ごめん」
俺がそう言うと素直に謝ってくれた。ただし手は放していないけど。
「楯無さんが私達を呼んでいるのよ。さっき簪が二組に来てね。あんたと本音を呼びに来たのよ」
教室の外を見ると簪が俺たちのことを待ってくれているのが見えた。
「わかった。それじゃ行くか。お~い本音」
俺がそう呼ぶと本音がいつものゆっくりとした動きでやってきた。
「ほいほ~い。話は聞いていたから、もう準備は出来てるよ~。私は用意しゅ~と~なのだ~」
いつ聞いてものんびりした声だな。そして、その声でほんわかのんびり空間を常時展開する。緊張したときなんかは本音をそばに置くことが一番効果的だったりする。
まあ、それはともかく。
「それじゃあ行くか」
そういって俺たちが教室を出ると
グイ
グイ
ガバ
「「「「「「「「「「ああああああああああ!!!!!??!!」」」」」」」」」」
何が起こったか説明しよう。
まず鈴が俺の右腕に抱きついた。(?!)
そして、簪が俺の左腕に抱きついた。(!!?)
最後に本音が背中に抱きついてきた(!!?!)
「っておい三人とも何やってんの!?」
「いや、だってさ~」
「こうして、おかないと」
「みんなにいっちーが誰のものかわかってもらえないでしょ~?」
といいました。はい相変わらず仲がいいですね!というか本音!当たってる。普段は服のせいで分からない二つの柔らかいふくらみが背中に!
ぎゅ~×2
「いった!?」
「一夏」
「今あんた何考えたの?」
二人に両側からにらまれました。
「いえ。何も考えていません!」
そういうと二人は睨むのをやめてくれました。
俺がそれにほっとしたのもつかの間、二人は体をさらに密着させてきました。
二人の体の感触が!?
いろいろ二人の柔らかい感触も伝わってきて俺がそれにさらに緊張していると背中におんぶのような形でぶら下がっていた本音がさらに抱きついてきた!
俺が三人の感触にさらにどぎまぎしていると
「どうしたの?」
「足が止まってるわよ?一夏」
「さあさあ、出発進行~」
「お、おう」
俺は、俺達を見て唖然としている女子生徒たちの中をゆっくりと歩いていった。
side out
side秋人
僕は兄さんたちの様子を見ていたが
「なんかすごいな」
「ああ。すごい」
僕はそうとしか言えず隣にいた箒もそうかえした。だって突然兄さんに会いに来た子が僕の小学校時代の知り合いの鈴だったことに驚いたけど、そんな彼女とクラスののんびりした雰囲気の女子(兄さんたちは本音って呼んでいたっけ)と教室の外で三人を待っていた青い髪の女子と腕を組んで(本音さんはぶら下がっていたけど)いった。兄さんはあわてていたけど、その顔は、僕にはどこか楽しそうに写った。その顔は、幼いころの僕の覚えている兄さんが決して浮かべることのなかった顔で、とても寂しい気持ちになった。
Side out
side楯無
やっと私の視点ね!おねえさん待ちくたびれたぞ☆
「どうかなさいましたか?お嬢様」
今話しかけてきたのは布仏 虚ちゃん。この私更識家十七代目当主更識 楯無こと更識 初音の幼馴染みにして専属メイド。この学校の三年生で学年主席。IS整備に関してはもうプロといってもいいと思う。
「なんでもないわ。それよりお嬢様はやめてよ~」
「そうですか。申し訳ありません楯無様」
ただ少し硬いのよね~。でもでもそんな虚ちゃんも悠輝の前だと結構甘えるのよね。見てるこっちが恥ずかしいぐらい。
「何を言ってるんですか?自分だって悠輝様のまえだとものすごく甘えて周りのみんなに砂糖をはかせていらっしゃるではありませんか?」
「え、そう?っていうか私声に出していた?」
「はい」
「う~ん、まあ否定しないけどね♪」
私たちがそんな会話をしていると生徒会室のドアがひらいて簪ちゃん、一夏、鈴ちゃん、本音ちゃんが入ってきた。
三人が一夏に引っ付いた状態で。
side out
side一夏
あの後、そのままの体勢で生徒会室についた。そのまま、歩いてこれた俺にもびっくりしているが、ずっと引っ付いたままの本音にもびっくりしている。見た目に反して体力はかなりあるのだ。
中に入るころには三人とも離れてくれた。
「失礼します。いったいなんなんですか?」
「実は、書類仕事が溜まってしまいまして手伝ってほしいんですよ」
机を見てみるとものすごい量の書類があった。例えるなら、スカイツリーだ。
「なんですかこの書類の量は!?」
「春休みにたまったものです。今年はいろいろ例外なことがありますから。」
「あ、わかりました。すいませんご迷惑をおかけして」
「いええ、デートしてサボっていた私たちにも責任がありますから」
「はあ、そうですか、ってなんか聞き捨てならないこと言いましたよね!?」
「気のせいです」
「とにかくさっさとやるわよ、3日以内で」
「3日!?いろいろギリギリでしょ!!」
「さあさあ手を動かす!簪ちゃんはこれお願いね、鈴ちゃんはあれ、本音ちゃんはそっち、一夏はそれ、よろしくね~」
「うん、わかった」
「わかったわ」
「は~い了解です~」
「会長もこれよろしくお願いします」
「う、は~い」
そうして俺たちは作業を開始した。
正直いって3日連続での深夜までの書類作業になると思い、俺は覚悟を決めた。
・
・・
・・・
俺達が書類作業をしている(本音はサボろうとしたが全員の無言の圧力にしぶしぶ断念した)と、山田先生が入ってきた。
「え~と、更識君、更識さん、いますか~?」
「はい、います」
「わたしも」
「あ、よかったです。これ部屋の鍵です。お届けに来ました。」
「「ありがとうございます」」
「お二人は、2026号室です。」
「「はい?」」
「二人は同じ部屋にしておいたわ。そのほうがいろいろ都合がいいし。」
俺達は最初驚いたが、義姉さんの言葉に納得した。
In2026室
何とか今日の作業を終わらせた俺と簪は寮室で話し合いをしていた。
「とりあえず、シャワーと就寝時間なんかを決めるか」
「うん」
そうして俺たちが話し合いをしていると
「はあ~い。一夏」
「おっじゃましま~す」
鈴と本音が入ってきた。
「いらっしゃい」
「引っ越しもう終わったのか?」
俺がそう聞くと二人は「当然」と返してきた。
「そうか。まあ、何しに来たのかは大体想像がつくよ。ドアのカギしめるな」
俺がドアの鍵を閉め、開かないのを確認すると全員が懐から一つの機械を取り出す。
それをかかげ図らずも全員同時に
「「「「リアライズ」」」」
と言う。
するとその機械、デジヴァイス―Dアーク・ブラストから光が放たれて、四つの影が出てきた。
「アグモン!」
「ふ~。やっと出れた~」
俺のアークからは黄色い体にブルーのラインの入った恐竜、アグモンXが現れた。
アグモンX
属性 ワクチン
世代 成長期
恐竜型
X抗体有り
必殺技 ベビーバーナー
得意技 スピリットファイア
成長して二足歩行できるようになった、爬虫類型デジモン。まだ成長途中なので力は弱いが、性格はかなり獰猛で怖いもの知らず。両手足は硬く鋭い爪が生えており、戦闘においても威力を発揮する。力ある偉大なデジモンへの進化を予測させる存在でもある。必殺技は口から火炎の息を吐き、敵を攻撃する『ベビーフレイム』。X抗体によるデジコアへの影響として恐竜型として特に優秀なグレイモン種へ進化する資質が向上しており独特のブルーラインが体色に表れ、爬虫類型ではなくもはや恐竜型に分類されている。爪は研ぎ澄まされ更に殺傷力を増し、獰猛性がより強く引き出された結果、単発の『ベビーフレイム』を口内に溜めてから一気に吐き出す『ベビーバーナー』を放つことが出来るようになっている。
「ガブモン!」
「はい。お嬢様」
簪のところには毛皮を纏った角を持つ2足歩行の獣、ガブモンX。
ガブモンX
属性 データ
世代 成長期
獣型
X抗体有り
必殺技 プチファイヤーフック
得意技 リトルホーン
毛皮を被っているが、れっきとした爬虫類型デジモン。とても臆病で恥ずかしがりやな性格でいつもガルルモンが残していったデータをかき集めて毛皮状をかぶっている。他のデジモンから恐れられているガルルモンの毛皮をかぶっているため、身を守るための保護の役目もしている。毛皮をかぶると性格が180°変わってしまう。必殺技は『プチファイアー』X抗体によるデジコアの影響として元々爬虫類型デジモンに分類されていたが、大好きな獣型の毛皮のデータを取り込み自らも獣型となった。臆病で恥ずかしがりやな性格は変わらないが、毛皮を被ると野性的な戦い方を好み、獣型らしい敏捷性ある攻撃をしかけられるようになった。『プチファイアー』を右手にとり敵を殴る打撃技『プチファイアーフック』を身に付けている。よって右手には大事な毛皮をつけていない。
「テリアモ~ン」
「は~い。本音」
本音のところには頭に一本の小さな角をはやした、テリアモン。
テリアモン
属性 ワクチン
世代 成長期
獣型
必殺技 ブレイジングファイア
得意技 プチツイスター,空中プチツイスター,テリアパンチ,空中プチツイスターショット,テリアバルーン
頭部に1本角を生やした、謎に包まれたデジモン。体構造から獣系のデジモンであることは分類できるが、どのような進化形態を経たのかは依然分かっていない。また、稀に双子で誕生するという噂も存在する。非常に可愛らしいタイプのデジモンで、ゆったりとした行動からはとても“戦闘種族”としてのデジモンを実感することができないが、戦闘の際には、その見た目以上のパワーを発揮する。得意技は両耳をプロペラの様にして小型竜巻を起こす『プチツイスター』。必殺技は高熱の熱気弾を吐き出す『ブレイジングファイア』。
「ドラコモン!」
「おうよ!」
鈴のところには青い体に小さな翼の生えた龍、ドラコモン。
ドラコモン
属性 データ
世代 成熟期
竜型
必殺技 ベビーブレス、ジ・シュルネン
得意技 テイルスマッシュ
すべてのドラモンタイプのデジモンの「祖」であるといわれている古の純血竜型デジモン。小柄な体躯からは想像できないほどの身体能力を持ち、力・俊敏性ともに成長期デジモンの中でもトップクラスである。性格は非常に獰猛であるが、ドラコモンが認めた相手のみ従順な一面を見せることがある。翼を持っているが、発育が不十分であるため飛ぶことはできない。また、大きな特徴として「光るモノ」を収集したがる性質を持っており、特に宝石や金属類には異常な執着があり、気に入ったものは食べて摂取してしまう。必殺技は、高温の吐息を相手に吹きかける『ベビーブレス』と全身を回転させシッポで打撃を与える『テイルスマッシュ』。ドラコモンの全身を覆う鱗のうち一枚は「逆鱗」といわれるウロコがある。ここに触れてしまうとドラコモンは怒りのあまり意識を失い、頭部の角を激しく発光させた後に口から放つビーム弾『ジ・シュルネン』を無差別に放ってしまう。
アークから出てきたみんなは思い思いに体を動かしたり、本音が持ってきたお菓子を食べたり、俺たちと話を始めた。
こいつらはデジタルモンスター。通称デジモン。
今、俺たちがいる世界、リアルワールドとは違う世界に住んでいる生き物だ。
デジモンたちが住んでいるのはデジタルワールド。すべてが電子でできている世界だ。
そこでデジモンたちは暮らしている。
デジモンには様々な属性や世代があり、多くの種類がいる。
属性とは大まかに分けて、データ、ワクチン、ウイルスの三つがある。例外として、無、フリー、不明、ヴァリュアブルなどに分けられるものもいる。
世代とはデジモンの進化段階のことだ。
デジモンはその成長とともに進化していく。
初めに、デジモンの卵、デジタマから生まれ、幼年期Ⅰ、幼年期Ⅱ、成長期、成熟期、完全体、究極体となり、力も大きくなる。
また、進化にもいろいろあるがここで言う必要はないだろう。
そんなデジモンがなんでこんなところにいるのかと言うと俺たちがテイマーだからだ。
俺達はデジモンテイマーと呼ばれるデジモンをパートナーとし、絆を紡ぐものだ。
テイマーはデジモンとの絆を認められることでその証である、デジヴァイス―Dアークを手に入れる。
Dアークにはいろんな機能があって、デジモンを中に収納したり(中は結構快適らしい)、デジモンを進化させたりできる。
四年前、俺達はデジタルワールドを旅し、その時、デジタルワールドに迫っていた危機を救うことになった。
いろいろあったがなんとかした。あの時のことをしゃべりだしたら、一日二日じゃ済まなくなるからこの話はまたの機会に。
その冒険のあと、いったんパートナーになったデジモンたちとはお別れになったけど、桜花さん、義姉さんたちの婚約者のお姉さんが冒険の二年後に何とかして、デジタルワールドへの道をつなげてくれた。そして俺達は再会することができて、今一緒にいるんだ。
以上、これで説明終わり。って
「俺一体誰に説明してんだ?」
「どうしたの?一夏」
「いや。なんでもないよアグモン」
「そう~?」
「ああ」
そう言ってみんなの中に混ざる。
簪とガブモンはいっしょにパソコンをやっており、鈴とドラコモンはテレビで野球観戦、本音とテリアモンはお菓子を食べていた。
俺達も雑談をしていると
ズガンッ ズガンッ ズガンッ
という音が聞こえてきた。
「これは・・」
「木刀で板を貫いた音だな。まったくどこの誰だ?」
中の様子が見えないようにドアを開けてすぐにしめる。
廊下に出てみると、女子に囲まれた織斑がいた。
「なにしてんの?お前」
「あ、に、いや、更識。いやこれは」
「はあ、もういい大体分かった。」
男である俺が簪と同室ならこいつも必然的に女子と同質になる。おそらくその女子を怒らせたのだろう。
とりあえず俺は2025号室(穴があいてるのですぐ分かった)のドアをノックした。
「おーい少しあけてくれ。」
「なんだ?」
ドアからは不機嫌そうな声が聞こえてきた。この声は篠ノ之か?
「向かいの2026号室の更識だ。少し話がある。」
「な、なんだ」
俺がそう言うと少しあわてたようにドアが開かれた。
「篠ノ之、今はかなり遅い時間だ。それなのに周りの迷惑になるようなことするな。例え織斑が悪くても周りのことを考えろ」
「う、わかった」
「わかったならさっさと織斑を中に入れろ。」
「な、なぜおまえが命令する!」
「さっきも言ったよな。遅い時間だと。話し合いなら防音設備がある程度ある部屋の中でしろ。廊下で痴話げんかされたらたまらん」
「ち、痴話げんかなど!」
「こっちは生徒会の書類仕事で疲れているんだ、さっさとしてくれよ」
「う、分かった」
俺が少しイラついたように(殺気も少し混ぜて)そう言うと篠ノ之は気圧されたように返事をした。
「おやすみ~」
そうして俺は部屋に戻り、みんなとの遊びもあまり遅くならないようにし、簪との話し合いも済ませて就寝した。
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四話 デジタルモンスター