Side一夏
IS学園入学から数日。
その日の一限目はの授業で、その前に織斑先生が
「織斑、お前のISだが準備に時間がかかる」
と言った。
「へ?」
「予備機がないのでな、学園側で専用機を用意することになった」
その言葉にクラスがざわめきだす。
「専用機!?一年のこの時期に!?」
「それって政府からの支援が出るってことよね!?」
「いいな~。私も専用機欲しい」
なぜ、みんなが織斑を、というより織斑が専用機をもらえることを羨ましがっているのか。
それはISの数に限りがあるからだ。
ISにはその中心であるコアが必要だ。このISのコアは開発者である篠ノ之束博士にしか製造することはできず、完全なブラックボックスとなっている。
しかも、博士はコアを現在世界中にある467機以外作ることを拒絶、行方不明となっているので、各国家、企業、組織、機関ではそれぞれ割り当てられたコアを研究している。
ISは世界最強の兵器だが大量生産できないのが弱点と言えるだろう。
その貴重なISを個人の専用機として与えられるのは一握りの、国の代表の様な立場になるような人間しかいないのだ。
ただ、織斑の場合は男性操縦者のデータが欲しいからと言う理由だろうけどな。
まあ、俺には関係ないけどな。
俺はそんなことよりも、机の上に積んである書類の山に向き合う。
先日から取り組んでいるこの書類だが、本当に終わらない。
一番古い書類で二月のものがあり、本気で義姉さんと虚さんに怒りがわいた。
ああ、しかも今俺の机の上にあるのは今日が処理する締切のやつばっかり。
昨日から簪、鈴、本音と徹夜でやって何とかここまで終わらせられた。
今頃、簪と鈴も机で書類と向き合っているだろう。本音?本音なら今は保健室で寝ている。
あの本音が二日も徹夜できたんだ。これくらいしてあげないと、ということになって今朝は力尽きた本音を運んだんだ。
そうこうしているうちに授業が始まったけど俺には関係ない。大体、知っていることだし。とにかくこれを終わらさなくてわ!
Side out
「あの、先生。篠ノ之さんって、もしかして篠ノ之博士の関係者なんですか?」
専用機の話題になったからかIS開発者篠ノ之博士の話題が上がった。そして、篠ノ之と言う性から箒のことについて千冬に一人の生徒が質問をした。
姉のことを何度も政府関係者に聞かれ、そのことを嫌っている箒は束が自身の姉とばれて、また聞かれることになるのを恐れたが千冬の口から出た言葉は彼女が思っていたものとは少し違った。
「悪いが、生徒の個人情報を無闇に教えることはできない。知りたいなら自分で本人に聞け。ただし、あまり篠ノ之のプライベートにかかわるようなことは聞くな。他の者もわかったな」
「は、はい」
そう言った。この言葉に箒は少し安心した。
正史なら、千冬は箒と束が姉妹であることをばらしてしまい、それがきっかけで箒は少し孤立してしまうが、この世界の千冬は過去の一夏の一件で家族間のことに敏感になっていた。
そして、事前に箒の過去の事も聞いていたためあまり箒のことが騒がれないよう言葉を選び、生徒たちに釘を刺したのであった。
休憩時間
Side秋人
「安心しましたわ。まさか訓練機で対戦しようとは思っていなかったでしょうけれど」
授業が終わった後、オルコットさんがまた話しかけてきた。
はあ、しつこいな。こういう態度が自分の尊厳を損なっているって気づかないのかな?
「まあ、一応勝負は見えていますけどフェアじゃあ「一夏~!」何なんですの!?」
一組に入ってきたのは一応、小学校の時の知り合い、凰鈴音、通称鈴だった。
なんで一応なのかと言うと、鈴は兄さんが行方不明になった半年後に行方不明になった。そして、兄さんが見つかったのと同じ時期に戻ってきたけどそれからすぐに転校したからだ。
あの時は偶然だと思ってきたけど、今日の二人の様子を見てある仮説が浮かび上がってきた。もしかして鈴は兄さんに何があったのか知っているんだろうか?転校したのも、兄さんを追いかけていったのなら説明がつく。
僕がそんなことを思っていると、オルコットさんが兄さんたちの方に向かっていった。
「ちょっと、よろしいかしら」
話し合いをしていた兄さんたちは明らかに不機嫌そうに振り向いた。まあ、あからさまに見下していますよっていう雰囲気が出ているもんね。
「一夏。誰、この金髪ドリル」
「な!?誰が金髪ドリルですか!私は」
「セシリア・オルコット。今度、織斑と試合する頭の痛い代表候補生(笑)」
「なんですか!頭の痛いって!?しかも(笑)ですって!?男のくせにそんな口をたたいていいと思っていますの!?」
「確かに、頭が痛いわね。男のくせにとか言っている時点で」
「っ!大体あなたどなたですか!?」
「ああ、自己紹介してなかったっけ」
そういって、鈴はオルコットと向き合い、自信たっぷりに自己紹介を始めた。
「二組のクラス代表、凰鈴音。よろしくね」
「あら。あなたが二組の代表でしたの。クラス対抗戦では楽しませてくださいね」
「あんたが代表になるって決まったわけじゃないでしょ?」
「ふん。もう決まったも同然ですわ。わたくし、セシリア・オルコットにたかが男二人が勝てるわけありませんわ」
「二人?何?一夏。あんたも戦うの?」
鈴の問いかけに書類作業をしながら兄さんは答える。
「なんでかそうなった」
「ふ~ん・・・・手加減しなさいよ」
「わかってる」
最後に小声で何か言っていた?よく聞こえなかったけど。
「代表候補生ってことは専用機持ち?」
鈴がオルコットに尋ねる。それにオルコットは腰に手を当てて答える。
「ええ。もちろんですわ」
「なら、私と条件は同じね」
なぬ。まさか鈴も候補生?
「まさかあなたも候補生で専用機持ちですの?」
オルコットも少し驚きながら聞き返す。
「いやいや。代表候補なんて面倒くさそうなの、私には合わないって。私はフロンティア社のテストパイロットよ」
その言葉に周りにいたみんなは大なり小なり驚いた。
フロンティア社。
まだ設立から一年ほどしかたっていないが、画期的なISの武装の設計図やIS支援兵器の構想などを発表し一気に有名になった会社だ。
日本の自衛隊もフロンティア社の武器を多く採用していることからも、その有能さがうかがえる。
まさか鈴がそこのテストパイロットになっていたなんて。
「ちなみに一夏もテストパイロットよ」
「「「「「「えええええ!!」」」」」」
これには本当に驚いた。まさか兄さんまで。
「じゃあ、更識君も専用機持っているの?」
クラスの誰かが質問すると兄さんは顔をあげて頷いた。
誰かが「見せて見せて!!」というがタイミング悪くチャイムが鳴ってしまいみんな席に戻っていった。
ちなみに、オルコットさんは兄さんに何か言おうとしていたけど、詰め寄ってきたみんなに弾き飛ばされていた。
Side out
さらに数日後。クラス代表決定戦当日
Side一夏
なんとか、あの書類地獄を乗り切った。
昨日はやっとぐっすり眠ることができた。にしても、みんなに俺がフロンティア社のテストパイロットだとばれた日、鈴はなんであんなに元気だったのだろうか?俺と同じく徹夜だったのに(鈴の空元気です)。
フロンティア社は桜花さんが作った会社で社長は俺たちの義母さん、更識姫嬉だ。
桜花さんがなんでこの会社を作ったのかというと、いろいろ理由があるんだが一番大きいのは亡国機業に対抗するためらしい。詳しいことは俺達も知らされていない。悠輝や義姉さんたちなら知っていると思うんだけど。まあ、いつか話してくれるだろう。
フロンティア社はほとんど桜花さんと義母さんがスカウトした社員で運営している。そのほとんどが、難民や女尊男卑の風潮による理不尽な迫害を受け、行き場を無くした人たちだ。
そんな人たちを義母さんたちはスカウトし、その才能を正しく使ってもらっているってことだ。
まあ、フロンティア社についての説明はこんなもんだろ。
で、俺と簪、鈴、本音はいま第二アリーナのピッドにいる。
このクラス代表決定戦なんだが時間があまりないので、俺、織斑、オルコットのバトルロワイヤル形式だ。
今日、ここに俺の専用機が運び込まれてくるはずなんだが一向に来ない。
やっぱ、間に合わなかったのか。
これは訓練機で戦うしかないか。
そう思い、訓練機の準備をしようかと思っていると
バチィ!
「「「「!!!」」」」
目の前の空間にゆがみが生じた。それをアークを構え、警戒しながら見ているとそこから一人の少女が出てきた。
「ふう。こっちに来るのは久しぶりだな」
「「「「・・・・・」」」」
「ん?どうしたお前たち?」
俺達はそいつ、俺の妹、更識円夏に向かって思いっきり
「「「「紛らわしい(んだよ)(のよ)(よ~)!!円夏!!!」」」」
叫んだ。
~~~しばらくお待ちください~~~
「悪かったと言っていいるだろう!こうでもしないと間に合わなかったんだ!」
「だとしても事前に連絡くらいしろ!もし、関係者以外の人間がいたらどうする気だったんだ!?」
「ふっ。そんなもの頭を殴って記憶を消せば解決だ」
「解決してねえ!」
「うるさいぞ。貴様も私の兄なら細かいことを気にするな」
「細かくねえし。第一、お前も俺の妹ならもう少し常識を学べ!」
~~~もうしばらく兄妹げんかが終わるまでお待ちください~~~
その後、簪たちの仲裁で何とか場は収まった。
俺と円夏はお互いのDアークを向かい合わせる。
すると、円夏のアークから俺のアークに橙色の光が移る。
そして同じ橙色の光が集まり、半透明の少女の姿となった。
「さて、久しぶりだが」
俺はその少女に問いかける。
「いけるか?幽里」
「ああ、もちろんじゃ。わが主よ」
「なら、いくぞ」
俺の言葉にうなずいた幽理はまた消える。
「来い!鎧輝龍」
俺の体が光に包まれて、装甲が装着されていく。
鋭く角ばった装甲に
背中にはバーニアが装備され
両腕には盾に三本の剣が平行に取り付けられたような形状の武器、ドラモンキラー。
その色は力強さを感じるオレンジ色。
これが俺のIS、輝く陸戦の鎧竜の勇者『鎧輝龍』
「いってくる」
俺がそう言うと簪、鈴、本音そして円夏が
「がんばってね」
「見せてやりなさい。あんたの力」
「がんばって~」
「無様な戦いはするなよ」
そう言って送り出してくれた。
さあ、行こうぜ。幽里、鎧輝龍、アグモン!
アリーナに出た俺はすでに待機状態のオルコットと向かい合う。オルコットの専用機はイギリスの第三世代『ブルー・ティアーズ』遠距離射撃型のISで先ほどの試合で織斑を苦しめていたビット兵器がついたフィン・アーマーを装備し、二メートル以上の銃身をもつ六十七口径特殊レーザーライフル《スターライトmkⅢ》が握られている。
少し遅れて織斑も出てきた。
織斑のISは真っ白な装甲で、まだ|一次移行《ファーストシフト》を済ませていない武骨な姿をしていた。
「あら?ようやく出てきましたの?てっきり逃げ出したのかと思いましたわ」
まあ、遅れたのは事実だがホントこいつの態度は、代表候補生としてどうよ?っていうものばかりだな
「最後のチャンスをあげますわ」
「チャンス?」
さて、俺はどうしようか。バトルロワイヤルだが織斑の実力も少し見たい。
なら、あいつが一次移行するまでオルコットに相手をさせるか
「わたくしが一方的な勝利を得るのは自明の理。今、ここで謝るというのなら、許してあげないこともなくってよ」
織斑はオルコットに何言ったんだ?(実は自分にも向けて言われているのに気付いていない)
「そういうのはチャンスとは言わないな」
「そうですか。それなら―――」
『更識一夏VS織斑秋人VSセシリア・オルコット。試合開始』
「お別れですわね!」
俺と織斑にいきなり一発ずつライフルを撃ってきた。
あとがき
本当は試合内容も書くつもりでしたが予想以上に長くなってしまったのでここで区切ります。
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五話 代表決定戦開始