No.487638 IS-インフィニット・ストラトス- きゅー組物語 102012-09-23 16:13:29 投稿 / 全1ページ 総閲覧数:1021 閲覧ユーザー数:993 |
「ったく、ロジーナ!やり過ぎだ!!!アルセリア、担架の準備して!!相手の子を医務室まで運ぶから手伝ってくれ!!!!」
たしか、9組のメンバーもこのアリーナに来てた筈だから………っと、居た!!!
『1年9組、セレネ・ティシェラ。1年9組、セレネ・ティシェラ。至急第3アリーナ場内まで下りて来なさい。至急第3アリーナ場内まで下りて来なさい。』
アリーナ場内放送で、観客席にいたセレネを呼び出しておく。
後は、防御用のシールド解除して………
「先生、担架準備出来ました!」
「よし、それじゃ行くぞ!」
俺たちは、場内に急いだ。
下りて行くと、そこではセレナが既に件の生徒を診ていた。
ロジーナはISを待機状態にしてつっ立っている。その表情は、何か考え込んでいる様な思いつめている様な、あまり見ない表情だった。
「セレナ、その子は?」
ISには、絶対防御と呼ばれる機能がある。この絶対防御はシールドエネルギーを消費する事であらゆる攻撃を防いでくれる、ISを最強の兵器たらしめる機能の一つだ。
しかし、今回の様にシールドエネルギーが切れなくとも搭乗者が戦闘不能に陥るケースも存在する。
「命に別条はないのですが、G-LOCを起こしてます。まぁ、後遺症の心配はまずないでしょう。念のため私も医務室へ向かいますので。」
G(操縦者にかかる重量加速度)によって、脳へ血液が行かなくなり視界が暗転する症状。これをブラックアウトと呼ぶ。その状態がさらに悪化すると、脳虚血により失神をおこす。それがG-LOCという訳だ。
ISは、基本的に空戦を行う兵器だ。しかも、現行のISは
「………春告、この学園おかしい。」
不意に、ロジーナが口を開く。
「………は?そりゃ、ココは特別な学校だけど、今さらどうした?」
「………後で話す。取りあえずコイツを医務室に運ぼう。」
何時ものロジーナらしくない。一体どうしたってんだ?
「まぁ、それもそうだ。セレナ、悪いが医務室でこの子を診てやってくれないか?」
「分かりました。」
医務室へと向かう道で、セレナが俺に質問を投げかける。
「そう言えば、今回の状況は春告先生でも十分に対処出来る筈の状況ですよね?何故わざわざ、私を呼んだので?」
「………生徒を思う気持ちが7割。」
「………あぁ、大人の事情が3割ですね。………はぁ、利用された様であまり気分のいい話ではありませんが、先生たちの苦労も分かっているつもりですので。」
「理解してくれるようで、非常に助かる。」
「9組生徒と先生は一蓮托生ですので。………
………セレナを呼んだのはパフォーマンス的な意味合いもあった。
9組の教師及び生徒、つまり俺たち9組の雇い主は国連である。つまりは国連所属の人間が学院に間借りしている訳だ。もちろん、同時にIS学園の人間としても扱われるのだが、所属の比重は国連側の方が重い。そんな俺たちがIS学園所属の人間を傷つけたりする事は、IS救助隊の屋台骨を揺るがす大事件になる可能性がある。そうなれば、9組の人間が学園から追い出される可能性も出てくるのだ。今回はきちんと学園側の許可を取った上での
ロジーナもようやく、其の事に思い至ったらしい。顔が引きつっている。
「………ヤバい?」
「「当たり前だ(です)!!!」」
十数分後、医務室のベッドの上で不良少女は目を覚ました。
「………ん。」
「………よかった、気がついたか。」
ロジーナは職員室への報告へと向かっている。今この部屋に居るのは、この少女と俺、そしてセレナの三人だ。
「………なんだ、あんたか。………っと。」
不良少女は体を起こそうとして、失敗する。
「先輩、もう少し横になっていて下さい。先生?診察しますので外で待っていて下さい。」
「了解。」
俺はセレナに促されて医務室を出た。年頃の娘の診察風景に興味は無い。
無いよ?
「………春告先生、生徒はどうですか?」
廊下に出ると、ばったり教頭に出くわす。
後ろには、ロジーナが非常に真剣な顔をして付いて来ている………あ、ひょっとして9組かなりヤバいの??
「今、目を覚ました所です。教頭先生………」
学園側からの見解次第では、9組解体の可能性もある訳で………訊ねる俺の表情が引きつっているのが分かる。
「今回の事で、学園側からそちらに何かを言うつもりは有りません。むしろ、本来なら我々が該当生徒の指導をしっかり指導すべきでした。9組のお二人には、御迷惑をお掛けしました。」
そう言って、教頭は頭を下げた。
「や、止めてください教頭先生!」
予想外の言葉と行動に、慌てる俺。そんな俺を余所に、教頭先生は言葉を続ける。
「………ISは、非常に強力な兵器です。しかし、生徒たちには其の意識が殆ど無い。命の危険が無く、非常に人気の高いスポーツ器具としてISを意識しています。この傾向は年々強くなっていて、今では教師の中にもそんな意識の持ち主が出てきている始末。」
「………アイツな、アタシに銃口向けて笑ってたんだぜ?ISがどんなものか、全く分かって無い。さっきアリーナで言おうとしたのも、其の事についてだ。」
………人間は、慣れる生き物だ。
ISの事故によって死亡する例は殆ど無い上に、兵器でありながら戦場での使用が禁止されている。そんな状況がもう十年も続いている。ISによって流れた血が少なすぎるのだ。ISが危険なものだとしっかり認識しているのは、人を殺す為の訓練も受ける各国軍人達位なのかも知れない。
「春告先生。貴方も今回の件で、ISが完全に安全を保証される物では無いと意識されたでしょう?そもそも、未だに全てが解明された訳ではない代物です。」
………人を簡単に殺せるだけの力を持った、良く分からない物。それを軽い気持ちで扱う人間。
うわぁ、そう思うとかなり怖い。
「先生方、先輩の診察終わりました。」
少々呆けていると、医務室のドアが開きセレナが仕事を終えた事を伝える。
「あ、ああ悪い。ありがとうな。」
「いえ、では私はこれで。」
そう言って、寮へと足を向けるセレナ。その表情には、緊張が張り付いていた。
あー、こりゃ聞かれたかな?
「………では、二人とも。行きましょう。」
「「はい。」」
教頭に促されて、俺たちは医務室へと足を踏み入れるのだった。
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やっとの事で十話目です。ここまでの間、拙い文章にお付き合いいただきありがとうございます。
お礼の直後にこんな事を言うのも気が引けるのですが、前回投稿した話を少し修正しました。推敲不足です、申し訳ございません。