第七十三技 とある釣り師の太公望(ニシダさん)

キリトSide

ユイとの別れから二日が経ち、俺とアスナも元の生活へと戻った。

そして現在、俺はこの層で最も大きな湖で釣りをしているのだが…。

「やっぱりこの湖では釣れないな…」

そうなのだ。他の湖では魚が釣れるのだが、何故かこの一番大きな湖では釣れない。

「スキルの問題なのか…？」

まぁ、今日の分のノルマは達成しているからもう少し続けてみよう。

そのようにしばらくの間釣り糸を垂らしていた。そこへ、

「釣れますかな？」

一人の男性が声を掛けてきた。

少し驚いた。俺が驚いたのは男性の容姿、つまりは外見からした年齢にある。

見たところ50代ほどの男性のようだ。もしかして……。

「NPCじゃありませんよ」

「あ、すいません…」

「いえいえ」

俺は図星を言われたので後味が悪くなってしまったが、男性は気にしていないらしい。

「隣、いいですかな？」

「どうぞ」

男性は俺の隣に腰を下ろして、釣り糸を水の中に投げ入れた。

俺は名乗っていない事を思い出した。

「自分はキリトです。最近、上層の方から引っ越してきました」

「これはご丁寧に…。わたしは東都高速線の保安部長をしている、ニシダといいます」

ニシダさんは東都高速線の保安部長といった。ということは…。

「もしかしてニシダさんは、SAO回線保守の方ですか？」

「はい。一応、責任者という事になっています」

そうだったのか。それならば納得できる。

差し詰め最後の確認でこのゲームをプレイした時に、このデスゲームの宣言をされたんだろう。

「まさか、こんな事に巻き込まれてしまうとは思いませんでしたよ」

「………」

ニシダさんの言葉に俺はさすがに何かを言おうとは思わなかった。

「おや？」

「おっ？」

そんな時、ニシダさんの竿に反応があった。

次第にその揺れは大きくなりニシダさんは立ち上がって一気に竿を巻き戻した。

そして大きな鯉のような魚が釣れた。

「お見事」

釣り上げられた魚はニシダさんのアイテム欄に収納された。

「いや～、ここの釣りはスキルの値次第ですからね。しかし、料理の方はどうも…。

　刺身や煮付けで食べたいのですが、この世界で醤油は…」

ニシダさんがそう言ったので俺は少々考えた。

元々、俺とアスナは人目に付かないようにするためにこの層に来た。

あまり目立つことはしない方がいいと思うが、この人なら大丈夫かもしれないな。

「よかったら家(うち)に来ませんか？　醤油に似たものならありますよ」

「ほ、ほんとですか！？」

俺の言葉にニシダさんは目を輝かせて言った。俺はニシダさんを連れて家へと帰った。

「ただいま」

「おかえりなさい。お客様？」

ニシダさんを連れて中へと入った俺を迎えてくれたのは、

麻のシャツにスカート、エプロンとスカーフを身に着けたアスナだ。

「こちら釣り師のニシダさん。ニシダさん、妻のアスナです」

「はじめまして、アスナです。ようこそいらっっしゃいませ」

「あ、これはどうも、厚かましくもお招きにあずかりまして……」

ニシダさんはどうも驚いた様子だ。

「いや、驚きました。こんなに綺麗な奥様をお持ちとは」

「ありがとうございます///」

褒められたアスナは微かに頬を紅く染めた。

俺はニシダさんをテーブルに案内してアスナは料理を始めた。

料理の材料は俺が釣った魚とニシダさんが釣った大きな魚だ。

俺とニシダさんはテーブルで料理が出来るのを待った。

キリトSide Out

To be continued……

後書きです。

このキリトはちゃんと釣りが出来ていますｗ

と言いますか一部の人は勘違いされていますが、キリトは釣りで碌に魚が釣れなかったのではなく、

スキルが高い訳でもないのに、主のいるあの湖で釣りをしたから釣れなかっただけなんですよね～ｗ

というわけですので、このキリトはちゃんと釣りができています。

それでは次回で・・・。