No.481755

The Duelist Force of Fate 7

Anacletusさん

戦って・・・そう少女は言い・・・全てを証明する為、彼の人は立ち上がるのです。

2012-09-09 13:09:09 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:1082   閲覧ユーザー数:1061

第七話「勝利者の凱歌」

 

私はいつも驚いてばかりかもしれない。

彼のマスターになって以来。

【決闘者】のサーヴァント。

名前も分からぬ彼。

今まで接触してきた他のサーヴァントは三人。

ランサー、セイバー、バーサーカー。

つまり、彼は残りのアーチャー、キャスター、ライダー、アサシンのどれかであるはずだ。

しかし、彼はデュエリストを名乗っている。

聖杯戦争という儀式に何らかの歪みが生じたのか。

それとも他の遠因があるのか。

普通のカードゲームのレアカード一枚で呼び出されてしまった彼は不可解の塊だ。

彼と出会ってからというもの私の心には何か言い知れぬ狂いが生じている。

違和感の正体は未だ不明で説明できるような感覚ではない。

デュエルが好きで好きでしょうがなかったり、止めないとずっとカードを弄り回していたり、よく分からないカードを使っては何かを具現化して騒動を起こしたり、誰彼構わずデュエル仲間に引き入れようとしたり、カードを送って周辺を買収してみたり、苦労は尽きない。

それでも彼の強さは身に沁みている。

恐らく最強のサーヴァントであっただろう十二回の自動蘇生能力を有するバーサーカーを彼の宝具【決闘者の作法】(ルール・オブ・デュエル)の8000ライフ制で打ち破ったのだから。

今まで二戦二勝。

ランサーとバーサーカーの宝具をカードとして手に入れている。

残りカードは三十一枚。

後五人のサーヴァントの内、セイバーを除く四人を倒すまでデッキの枚数は持つはずだ。

問題は残りのサーヴァントとマスターの居場所がまったく分からないと言う事だけ。

これから先どうなるのか正直に言って予測不能であるものの、私は確かに彼と共に勝ち残っていると感じていた。

「何してんのよッッ!!」

スパーンと彼の頭を叩(はた)く。

彼がいそいそと衛宮邸のテーブルの上にカードを堆(うずたか)く積み上げていた。

「・・・・・・」

「これから全員分のデッキを作るからカードを出してるですって!? 全員分って何よ!? 全員分って!!」

「・・・・・・」

「此処に住まわせてもらうお礼? いや、どっちかと言うとお礼を言われるのは私の方でしょ!?」

バーサーカーを破ってから三日。

私と彼は衛宮君の家に住み込む事となっていた。

衛宮君との共同戦線。

更には魔術修行を見る為だった。

遠坂家の改装工事が終わるまで好意で住まわせてもらうという表向きの理由を盾にして毎朝朝食を作りにくる桜にも認めさせた為、問題はない。

バーサーカーとの戦いで橋が落ちて休校になっていた学校はもう再開されている。

市が特別予算を組んで橋の代わりにフェリーを運航し始めた為だ。

午前四時。

学校から速攻で戻ってきたのは衛宮邸に残してきた彼が心配になったからだが、案の定だった。

「あ、凜」

「イリヤ・・・起きてたの?」

「ええ」

カードの山の裏からひょっこりと現れたのは小さな少女。

白い髪に赤い瞳。

妖精のような可憐さと儚さを持つバーサーカーの元マスター。

正式名称イリヤスフィール・フォン・アインツベルン。

「あなたねぇ。仮にも貴女のバーサーカーを倒したコイツが恐ろしかったり憎かったりしないわけ?」

私の最もな言葉にイリヤが首を横に振る。

「凜。貴女はサーヴァント同士の勝負で自分のサーヴァントが負けたからって、相手を恨むの?」

「え、いや・・・それは・・・」

「勿論。悔しいし、私のバーサーカーを返せって思いはあるわ。でも、それは彼への憎しみじゃない。私は私の不甲斐なさを憎む。バーサーカーをもっと私が上手く戦わせていれば、あの場で引かせて体制を立て直していれば、結果は逆だったかもしれないんだから・・・」

「侮辱した事、謝るわ。イリヤ」

私の言葉にイリヤが頬を赤くした。

人に謝られるという事に慣れていないのかもしれない。

「別に・・・謝られるような事じゃないもの」

「・・・・・・」

「わぁ、ありがとう」

イリヤが彼からカードの束を受け取っていた。

「で、何をアンタはいそいそとイリヤに手渡してるのかしら?」

「・・・・・・」

「麗しきビジュアルファンデッキ? イラストアドでハァハァ可愛いよ天使と妖精さん? 爆アド過ぎてご飯三倍はいけてしまう恐ろしいデッキだが実質的にあまりシナジーも無い紙束である事は否めない? でも、一応天使も混ぜたから使えるはず?・・・・・・何だか頭痛くなってきたらもう喋らないで、って言うか喋るな!?」

私の拳に吹き飛んだ彼がカードの山に追突した。

イリヤをカードの津波が襲った。

「あぅ!?」

「あーもう!? 何してるのよ!! 大丈夫イリヤ?」

私がカードの海から引き上げるとイリヤは体をグンニャリと弛緩させていた。

「?・・・イリヤッ!?」

様子がおかしい事に気付いてイリヤを抱き寄せて顔を上げさせる。

「・・・あ・・・はは・・・そろそろダメみたい・・・・・・」

「な、何言って・・・」

私の顔が強張る。

イリヤの顔には生気が乏しかった。

「・・・バーサーカーはね。わたしが・・・冬木に来る前に召喚した英霊だったの・・・」

「何ですって!? そんな事・・・まさか貴女!?」

私はその一言でイリヤの状態がどうなっているのか解った。

解って、しまった。

「・・・けど、やっぱり無理があったみたい・・・」

私は唇を噛む。

英霊を甦らせる奇跡を大聖杯の加護無しに一人の人間が担えば・・・どうなるか。

少なくとも普通の魔術師ならば即死だろう。

どんな高い魔力資質を持っていても、それは生贄と変わらない。

英霊を大聖杯無しに現界させ続ければ途方も無い魔力消費の圧力が掛かるのは理解できる。

そんな圧力に体を蝕まれていたとすれば、どんな人間であろうと結末は一つ。

「本当なら・・・まだ持つはずだったんだけど・・・どうしてか・・・何かがおかしくなってて・・・・・・わたしの体・・・限界みたい・・・」

英霊が消えて、莫大な魔力消費の圧力が消え去ったとしても、残った魔力はゼロに等しいはずだ。

だが、イリヤはバーサーカー戦の最後に膨大な魔力を発生させた。

その魔力の源が何だったのか。

考えれば、すぐに見当が付いた。

「すぐ処置に入るわ! 今、道具を取ってくるから!?」

「・・・お願い・・・最後は・・・」

「な、何言ってるのよ!? 最後になるわけないでしょ!! 衛宮君に私なんて言えばいいのよッッ!!」

首を横に振るイリヤに私は必死に話し掛ける。

「おにーちゃんに・・・謝っておいて・・・助けてくれたのに・・・ごめんなさいって・・・」

「イリヤ!?」

少しずつ生気が消えていく。

失われていく鼓動の回数が私の心を揺さぶる。

「ッッッ、魔力を補給するわ!! 悪いけど貴女を死なせたりしない!!」

私は最も単純な儀式で魔力を補給する。

そっと唇を接触させる。

呼気に混ぜた魔力で回復を図る。

しかし、ありったけの魔力を与えてもイリヤの症状に何の改善も見られなかった。

「何で!?」

「・・・寿命・・・だから・・・無駄よ・・・」

「ッ?! 私はッ、私はッ、そんなの認めないわ!!!」

「おにーちゃんに・・・あげるはずだったんだけどな・・・ファーストキス・・・」

「馬鹿!! 死んだら一回だって出来ないわよ!!」

「・・・・・・」

「な!? アンタ何して!?」

彼が己の腕にデュエルディスクをセットしていた。

「・・・・・・」

「どうするつもり!?」

一刻を争う事態に動じた様子もなく。

いつも通りの彼が私の瞳を見つめる。

「・・・・・・」

「デッキを減らしてもいいなら助けられるですって!?」

彼が頷く。

「・・・・・・」

「私がデュエルって、そんなのした事ないわよ!?」

「・・・・・・」

彼がイリヤのデッキを私の手に乗せる。

「やるしか、ないのね。いいわ・・・やってやろうじゃない!!」

彼が私の腕に触れると魔力によってデュエルディスクが具現化された。

イリヤの胸に一枚のカードが置かれる。

「・・・・・・」

「私・・・助かるの・・・?」

消えてしまいそうな細い声。

「・・・・・・」

「デュエル・・・すれば・・・いいのね・・・」

「・・・・・・」

「あはは・・・あなたやっぱり変・・・な・・・サー・・ヴァント・・・ね」

イリヤの弱々しい息に私はもう一刻の猶予も無いのだと知る。

受け取ったイリヤのデッキをディスクにセットした瞬間。

私の中で何かがガチリと嵌った。

「・・・・・・」

「解った。あんたの言葉を信じる。全力で行くわよ!!!」

「・・・・・・」

【【Duel】】

彼の咆哮。

ドローの雄叫び。

【手札から三体のモンスターカードを墓地に送ってモンタージュドラゴンを特殊召喚】

彼が手札を墓地に送る。

【レベル12×3×300=攻撃力10800】

彼の言葉が終わらぬ内にソレが私とイリヤの前に姿を現し。

【ギャアオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオンッッッッ!!!!!】

衛宮邸が、崩壊した。

「え?」

台風のような咆哮。

私とイリヤを・・・数十メートルを越す三つ首の怪物(ドラゴン)が見下ろしていた。

吹き飛んだ屋敷の残骸がバラバラと私とイリヤを避けるように落ちていく。

「え? え? えええええええええええええええええええええええええええッッッッ!?」

私が驚いている間に彼はターンエンドしていた。

「・・・・・・」

「集中しろですって!? いや、でも・・・」

「凜・・・」

「イリヤ・・・?」

「わたし・・・何となく・・・解るわ・・・どうすれば・・・いいのか・・・お願い・・・」

「・・・一緒にやりましょう」

私は頷いてドローした。

イリヤが弱々しい声で私に指示を飛ばす。

「私はカードを一枚セット。モンスターを一枚セットしてターンエンド」

弱々しいながらも未だ諦めていないイリヤの顔に私も気を引き締める。

彼の再びのドロー。

【モンタージュドラゴンでセットされたモンスターに攻撃】

「ちょ!? 何考えて!?」

慌てる私に彼がフルフルと首を横に振る。

「・・・・・・」

「どんな時も手抜きをしないのが本当のデュエリスト? いや、それ何か違うから!?」

しかし、私の叫びも虚しく怪獣の足が私達の上に降り注ぐ。

その時、セットした虚空のモンスターカードがドラゴンの足を跳ね返した。

私が上を見上げる。

そこには神々しくも何処か道化を思わせる一体のモンスターがいた。

「私達を守ってくれた?」

私の呆然とした呟きにイリヤが呟く。

「アルカナフォース・・・ザ・フールは・・・戦闘で破壊されない・・・」

「イリヤ。あなたそれが解ってて?」

「ううん。この子が・・・私に教えてくれたの・・・自分なら・・・耐えられるって・・・ッ?!」

ビチャリとイリヤの口から赤いものが飛び散る。

「イリヤ!?」

「大丈夫・・・だから・・・」

【ターンエンド】

手番が移ってきた。

ドロー。

しかし、己のターンになっても私は不安になる。

私には彼に勝てるビジョンもイリヤが治るビジョンも感じられなかった。

「本当にこれでイリヤは治るの!?」

彼は何も答えない。

ただ、私の腕の中で震えるイリヤを見つめていた。

「・・・・・・」

「立てって、そんな無茶苦茶じゃない!?」

イリヤに対する彼の言葉に私が激昂した時、イリヤが私の腕の中からゆっくりと離れた。

今にも崩れ落ちそうな体で、それでも私に指示を飛ばす。

囁きかける。

「く、メインフェイズ罠(トラップ)カード『レインボーライフ』発動。ザ・フールを攻撃表示に変更。これでいいのイリヤ!?」

イリヤを中心にして七色の光が広がっていく。

イリヤが膝を地面に付いた。

「大丈夫!?」

「大丈夫・・・大丈夫だから・・・」

「このモンスター・・・よく見れば攻撃力ゼロじゃない!? それに守備表示にできない!? これじゃ次のターンに負け―――」

「ううん」

イリヤの声に遮られる。

私を振り返ったイリヤが口元を赤く汚しながら、それでも微笑んだ。

「このターンで全部お終い。この子達が教えてくれた。それにバーサーカーも・・・」

「なッ、何言ってるのよ!?」

死を間際にしてイリヤは覚悟を決めたのかと私の鼓動が不規則に動悸する。

「ねぇ。カードゲームの英霊さん。どうして・・・あなたは私にここまでしてくれるの?」

今までの途切れ途切れの声が嘘のようにハッキリと聞こえる。

蝋燭の最後の灯火。

そんな不吉な言葉が脳裏に浮かぶ。

「・・・・・・」

「答えてくれないんだ・・・そっか・・・うん・・・それじゃあ・・・いつか聞かせて・・・」

私が何かを言う前にイリヤが巨大なドラゴンに対して向かい合った。

「これが・・・わたしがマスターとして戦う最後の一戦・・・」

私が止めようとした時、私の腕にあったデュエルディスクが光となって飛び散る。

「な!?」

次の瞬間、飛び散った光がイリヤの腕に集中し、再具現化した。

「バトルフェイズ。アルカナフォース・ザ・フールでモンタージュドラゴンにアタック!!!」

「イリヤッッッ!!!」

彼は黙って何もかもを見つめていた。

「速攻魔法『狂戦士の魂』(バーサーカーソウル)!!!」

イリヤの言葉と共にその胸が輝きだす。

いや、それはカードの輝き。

彼がイリヤに渡した一枚のカードだった。

カードがドラゴンへと向かうザ・フールへ彗星の如く奔り、輝きが吹き込まれる。

「なッッ、バーサーカー!?」

輝きがあの夜に見た巨躯を形作っていく。

「お帰りなさい」

バーサーカーは振り向かない。

しかし、そんな背中に向かってイリヤは微笑みかけた。

「行こう。バーサーカー!!!」

ただ、雄叫びだけが応える。

グオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!!!!!

その声は台風の如きモンタージュドラゴンの咆哮を打ち消した。

それどころか圧倒し、ドラゴンを後退させる。

「バーサーカーでモンタージュドラゴンにアタック!!!」

バーサーカーが跳んだ。

獲物である岩塊の如き剣がドラゴンの首の中央を捉える。

ドゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオン。

冬木市を揺るがすような大音響。

ドラゴンの足が一歩後退する。

刹那、バーサーカーの体が粉々になり―――再構築される。

バーサーカーを構築する光の粒子の一部がイリヤへと降り注いだ。

「ドローッ、モンスターカード!!!」

すでにイリヤの手に手札は無かった。

カードの効果なのか。

ドローと同時に再びバーサーカーが動き出す。

ドラゴンの右の首が岩塊の一撃と共に圧し折れる。

再びバーサーカーが粉々になり、再々構築された。

「ドローッッ、モンスターカードッッ!!!」

突撃。

ドローしたカードを墓地に捨てての再ドロー。

バーサーカーの死と再生の度にドローが繰り返される。

それは終わらない輪舞(ロンド)にも見えて。

「バーサーカー。わたし達良いパートナーだったよね」

バーサーカーは後ろを振り向かない。

ドラゴンの尾に一撃を加え、爆散し、再び現世へ舞い戻る。

「わたし達、本当に最高のマスターとサーヴァントだったよね」

ドラゴンの腕を掻い潜り、岩塊を胸に打ち込んで、払われる腕で押し潰され、再生しての跳躍。

「わたし達が出会った日。凄く寒かったの覚えてる?」

もはや、ドローすら叫びはしない。

ただ引き抜いては墓地へとイリヤがカードを捨てていく。

捨てられるカードは全てがモンスターカード。

その輪舞を邪魔する運命など在りはしないとでも言うのか。

何もかもがただ二人の為にあるような、カードが二人の姿に応えているかのような、そんな光景。

「あの日、わたしはあなたのマスターになった。あなたが苦しくてのた打ち回っていたわたしに手を差し伸べてくれた」

死と再生と少女の声。

三拍子が繰り返される度に誰にも倒せないだろう怪獣が後退し、傷つき、苦しみの声を上げる。

少女の声がもはや星屑の雨となった輝きの中で力強く響く。

巨躯の英霊は振り向かない。

己の死と再生を持って少女へと命(ライフ)が還元されていく最中も振り向きはしない。

「たとえ、どれだけ世界が巡っても、きっとわたしあなたのマスターだったって忘れないから!! あなたが本当は誰よりも優しい英霊だったって、絶対忘れないから!!!」

ドラゴンの腕とバーサーカーの岩塊が真正面から激突する。

結果は言うまでもない敗北。

しかし、英霊は諦めない。

再びの一撃。

押し負けるならばと。

二度、三度、四度。

己の死を重ねて、英霊はその腕を押し返す。

「だから、だからね。バーサーカー」

最後の一枚にイリヤが手を掛ける。

「――――――」

初めて、イリヤが言葉に詰まる。

「・・・って」

その言葉は「ありがとう」でも「ごめんなさい」でも「さようなら」でも無かった。

二人の最後に刻まれるべき、最初から決まっていた唯一の答。

「戦って・・・バーサーカー・・・そして、勝とう・・・わたし達が最強だって、証明しよう!!!」

応えるは雄叫び。

最後の咆哮。

如何なる者を前にしようと戦い続ける狂戦士の魂が歓喜を持ってマスターの命令に拳を突き上げる。

「嘘・・・バーサーカーが・・・啼いてる・・・」

私はその光景に心の奥底から震える。

理性など捨てて、狂気に惑い続けるだけの英霊が、一筋の雫を零す光景は壮絶を通り越して凄絶だった。

「ドロォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」

イリヤが叫ぶ。

何もかもを込めて。

ただ、最後の一撃の機会を己のサーヴァントに与える為に。

最後の一枚。

それが、デッキから抜き取られる。

デッキレス。

敗北の瞬間。

されど、勝者と敗者の明暗はすでに分かれていた。

バーサーカーが高く、高く、高く、跳んだ。

全てを掛けて、マスターと己の為に、世界を震わせ、気高い魂が化け物へと激突する!!!!!!

 

それは何処か、西欧で神世の時代に生きた化け物退治の英雄(ヘラクレス)のようで。

 

――――――――――――――――――――――――――――――。

 

倒れたドラゴンの上。

 

誇らしげに振り返る英霊は何も語らず。

 

ただ、その姿をマスターの瞳に焼き付けて、消えた。

 

計33回攻撃。

 

計33ドロー。

 

総ライフ回復量356400ポイント。

 

敗者(しょうしゃ)はただ一人。

 

幼子のように、誇らしげに、泣いていた。

 

もはや、その姿に死の影も無く。

 

この世の果てに届けと言わんばかりに泣き声は大きくなる。

 

勝者(はいしゃ)はそんな彼女に何を言うでもなく。

 

いつまでも、いつまでも、ただ空を見上げていた。

 

違和感がまた、私の上に降り積もっていく。

 

To be continued


 
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