~根源区画・奥~
「え、え~と………?まさか……今ので終わり??あたし達、まだ何もやっていないのに……」
パズモ達の電撃的なすざましい連携攻撃を呆けて見ていたエステルは戸惑った後、苦笑した。
「はは……さすがパズモ達だね。」
「へっ。まさか戦う前から勝負が付くとはな。」
「ハッハッハ!美味しい所を奪われちゃったねぇ♪」
「フフ………さすがエステルさんをずっと守り続ける頼もしい方達ですね。」
ヨシュアとアガットは苦笑し、オリビエは笑い、クローゼは微笑んでいた。
(私達の怒り………思い知ったかしら!?)
「わ、私なんかがこんな大事な場面でお役にたてました……!」
「フフ、少しスッキリしましたわね!」
「クー!」
「グオオオオオオオーッ!」
パズモは地面に跪いているワイスマンを睨み、テトリとニルは嬉しそうな表情をし、クーとカファルーは雄たけびを上げ
(クク……ようやく一矢報いてやったぞ……!)
そしてサエラブは不敵な笑みを浮かべた。
「一矢って……どう見てもやり過ぎなんですけど……ま、いっか!みんな、ありがとう!一端戻って!」
サエラブの念話を聞いたエステルは呆れた後、パズモ達を一端戻した。
「さ~てと!とっとと降参した方が身のためよ?教授。」
「おのれ………”蛇の使徒”たるこの私に舐めた真似を………!」
勝ち誇った笑みを浮かべているエステルをワイスマンは睨んだ後、自分の傍に落ちてあった杖を無事だった片手で拾い、”輝く環”の真下に転移した。
「あ……!」
「……どうするつもりだ!?」
「このまま”盟主”に献上するつもりだったが気が変わった……。貴様らが歯向かった相手がどのような存在かを思い知るがいい。」
その様子を見たエステルは声を上げ、ヨシュアはワイスマンを睨み、ワイスマンはエステル達を睨んだ後、”輝く環”の中心に入り込んだ。 すると、”輝く環”から波動が流れ始めた。
「な、なんなの……」
「こ、これは……」
「まさか………”環”と融合している………!?」
ワイスマンの行動を見たエステルは戸惑い、ヨシュアは驚き、クローゼは信じられない表情で推測した。そしてワイスマンは巨大な何かに変わった!
「あ……………………」
「こ、こいつは……!?」
「こ、この霊圧は……!」
「ククク……この感覚……思った以上に悪くない……。さて……まずは試させてもらおうか……。人を新たなる段階へと導く”天使”の巨いなる力をね……!」
エステル達が驚いている中、ワイスマンは不気味に笑った。そしてエステル達は何度もワイスマンに攻撃したが、一切攻撃が何かに阻まれて、通らなかった。
「フフ……やっと思い知ったようだね。これが真の力というものだ。」
戦いで疲労しているエステル達にワイスマンは不敵に笑って言った。
「そ、そんな……。何でこっちの攻撃がぜんぜん当たらないのよ……」
「何らかの障壁を展開し続けているんだ……。でも……ここまで通用しないなんて……」
「クク、七至宝の中でも”輝く環”は空間を司る存在……。導力魔法とは比べ物にならない圧倒的な『絶対障壁』を展開できる。もはや私と君たちとでは存在の次元が違いすぎるのだよ。」
エステルの言葉にヨシュアが答えたその時、ワイスマンは凶悪に笑って答えた後、エステル達に魔眼を放って、動きを止めた!
「うぐっ……」
「ま、魔眼………!」
「やれやれ……見事なまでの悪趣味だ……」
「チッ……サド野郎が……!」
「ワイスマン……貴方は……」
エステル達が悲鳴を上げている中、ヨシュアはワイスマンを睨んだ。
「クク……その目……やはりお前は殺すには惜しい……。じっくり調整しながら再び『聖痕』を埋め込んでやる……。そしてまた希望を与えてからその芽を摘み取ってやろう……。希望が絶望に変わる表情……今から楽しみだよ……ククク……」
ワイスマンが凶悪な笑みを浮かべて言ったその時!
「やれやれ……。もはや悪趣味と言うより病気と言った方が良さそうだな。」
ドラギオンに乗ったレーヴェが現れた!
「あ……!」
「レーヴェ!?」
レーヴェの登場にエステル達が驚いている中、レーヴェはドラギオンに攻撃を仕掛けさせた!
「フン……止めを刺しておくべきだったか。しかしレーヴェ。君が来たところで何ができる?いかにドラギオンといえど”環”の障壁を破ることは不可能だ。」
「……だろうな。ところでワイスマン。一つ聞いておきたいことがある。『ハーメルの悲劇』……貴様はどの程度、関与していた?」
「!?」
ワイスマンの言葉に答え、レーヴェが問いかけた言葉にヨシュアは驚いた。
「おお、人聞きの悪いことを言わないでくれたまえ。あれはあくまで帝国内の主戦派が企てた事件だろう?どうして私が関与するのかね?」
「それは貴様が“蛇”だからだ。弱味を持つ人の前に現れて破滅をもたらす計画を囁く……。そして手を汚すことなく、自らの目的を達成してしまう……。……それが貴様のやり口だろう。」
「あ……」
「実際、主戦派の首謀者たちは当時あったという政争に敗れて後がない者たちばかりだったと聞く。もし、10年前の戦争すら今回の計画の仕込みだったのなら……全てのことに説明がつくと思ってな。」
「ククク……なるほどな。まあ、おおむね君の指摘通りと言えるだろう。」
「!!」
ワイスマンの信じられない答えを聞いたヨシュアは目を見開いて驚いた!
「もっとも私がやった事は、彼らに猟兵くずれを紹介してハーメルの名を囁いただけさ。それだけで事態は動きだし、瞬く間に戦争へと発展してしまった。クク……人間の業を感じさせる実験結果だったよ。」
「……さすがにそれは洒落になっていないな………!」
「……貴様……。……貴様のせいで……ミーシャは……俺の妹は……」
「………許せない……貴方は………最低です………」
ワイスマンの話を聞いたオリビエ、アガット、クローゼは怒りの表情で睨み
「……吐き気がしてきたわ。」
エステルはワイスマンから目を逸らして言った。
「なるほど……。大方、予想通りということか。」
一方レーヴェは冷静な様子で答えた。
「……おや、意外と冷静だね。私としてはもう少し、憤って欲しいところではあるが。」
「フフ、俺の心はとうに冷め切っているからな……。しかし先ほどの、貴様に背後から昏倒させられた失態、”剣帝”としては屈辱の極みだ。その借りだけは返させてもらうぞ。」
「なに……」
レーヴェの言葉にワイスマンが驚いたその時、レーヴェは自らの剣――ケルンバイターを『絶対障壁』に叩き付けた!
「ば、馬鹿な……。”環”の絶対障壁が……。!!!そうか……その剣は!」
「そう……。俺が”盟主”より授かった剣……。貴様の杖と同じく、『外』の理で造られた魔剣だ……」
「クッ……迂闊であったわ……。……ええい……離れろ……離れろ……この痴れ者がッ!」
レーヴェの言葉を聞き、狼狽えたワイスマンは何度もレーヴェとドラギオンを攻撃した!
「ガッ!?」
ワイスマンの攻撃によって、ドラギオンは破壊され、レーヴェは吹っ飛ばされた!
「グッ……」
そしてレーヴェは地面に倒れたまま、呻いた。
「クク……死ねっ!!」
そしてワイスマンは光の槍を頭上に作って、レーヴェに向けた!
「レーヴェ!逃げて!!」
それを見たヨシュアは悲鳴を上げた。
「クク……もう遅い。」
そしてワイスマンは光の槍をレーヴェに放った!
「レーヴェ―――ッ!!」
それを見たヨシュアが叫んだその時!
「させない!……ハアッ!!」
プリネがレーヴェの前に飛び込んできて、レイピアを振るって、槍を弾き飛ばした…………!
Tweet |
|
|
3
|
2
|
追加するフォルダを選択
第343話