~根源区画・奥~
「ようこそ……大いなる秘蹟の源たる場所へ。」
エステル達が奥に到着するとそこにはワイスマンとヨシュアがいた。
「ヨシュア……!」
「………………………………」
エステルの呼びかけにヨシュアは何も答えず黙っていた。
「フフ、最後の試練も何とか潜り抜けたようだね。それでこそ”環”の復活に立ち会う資格があるというものだ。」
「そんなものに興味はないわ!あたしが望むのは今回の異変を終わらせること!それと……あんたがヨシュアを解放することよ!」
「フフ……残念だが、それは無理だな。」
エステルの言葉を聞いたワイスマンは不敵な笑みを浮かべて答えた。
「!!!」
「君たちが幾ら取り繕ってもヨシュアの心が造り物であるのは否定できない事実なのだ。この肩の『聖痕』がその証……”身喰らう蛇”の―――私の所有物である証明なのだよ。」
「……あんた………………」
(どこまでも外道の者め………!)
(これほど浄化したくなる敵は初めてよ………!)
ワイスマンの言葉を聞いたエステルはワイスマンを睨み、またエステルの身体の中にいたサエラブやニルもワイスマンを睨んだ。
「フフ、あるいはヨシュアが自分の意志で『聖痕』を消せたら真の解放もありえたのだが……。残念ながら今回は、そこまでは至らなかったようだ。唯一の気がかりは”聖女”達がこの『聖痕』を消す恐れもあったのだったが……ヨシュアはその可能性がある事に気付かなかったようだからね。今しばらく私の研究素材として在り続けてもらうことにしよう。」
「………………………………」
「……なんて人……」
「……感動的なまでの悪趣味だ。」
「舐めやがって……」
ワイスマンの話を聞いたエステル達はそれぞれワイスマンを睨んだ。
「やれやれ、人聞きが悪いな。おそらくヨシュアは、肩にある『聖痕』の意味に気付いていたに違いない。そして、この事態が起こり得ると予想して悩んでいたことだろう。」
「!!!」
しかし呆れた様子で語るワイスマンの言葉を聞いたエステルは顔色を変えた。
「にもかかわらず、彼は君達に一言も相談しなかったようだ。そして君達もまた彼の悩みを察してやれなかった。クク、ヨシュアが君達に相談し、”聖女”達に助けを求めれば、”聖女”達の力なら『聖痕』を消す事もできたというのに。クク……君たちの『絆』などその程度ということではないかね?」
「…………ッ………………」
「……………あ…………………」
「…………チッ………………」
「………………………………」
そしてワイスマンの言葉に全員は黙ってしまった。
「まあ、そう悲観することはない。ここに辿り着けた時点で君たちには資格が与えられた。後は正しい選択をするだけだ。」
「……資格……選択……。それって……どういうことなの?」
「フフ、君たちはどの程度知っているのかな?―――この”輝く環”を巡って1200年前に何が起きたのかを……」
「あ……」
「やはりそれが”輝く環”……」
ワイスマンの言葉を聞いたエステルはワイスマンの背後にある金色の輪に気付いて声をあげ、クローゼは真剣な表情で呟いた。
「その通り……。無限の力を生み出し、奇蹟へと変換することのできる究極のアーティファクトの1つだ!しかし、古代人は1200年前、この大いなる至宝を封じてしまった!一体、どうしてだと思う?」
「く、詳しいことは分からないけど……。人や社会の在り方が悪い方向に変化したからだって裏の塔の記録には残されていたわ。」
「ほう、あれを解析したのか。フフ……ならば話は早い。その真相を君たちに教授しよう。」
エステルの話を聞いたワイスマンは感心した後、説明を始めた。
「―――数千年前。女神は人に”七の至宝”を授けた。それらは『世界の可能性』をそれぞれ異なる方法で利用することで奇蹟を起こすアーティファクトだった。そして至宝ごとに七派に分かれた古代人たちは様々な形で『理想』を追い求めた。
その一つこそが、”輝く環”を中心に建造されたこの実験都市、”リベル=アーク”だ。汎用端末の”ゴスペル”を通じてあらゆる願いが”環”に叶えられる人の手によって築かれた空の楽園……。
そこで人は、一切の争いのない豊かな生活を享受できるはずだった。しかし人は”ゴスペル”を通じて”輝く環”がもたらす人工的な幸福に次第に魂を呑み込まれていった。物質的快楽はもちろん、”環”が構築する夢―――仮想現実に精神的な充足すら見出してしまったのだ。
……そして人は麻薬のように奇蹟に依存することで破滅への道を歩き始めてしまった。倫理と向上心を失い、精神的に失調してゆく市民たち……。出生率が低下する一方、自殺・異常犯罪は増加し続け、社会全体が緩慢な死に向かい始めた。しかし”環”は我関せず、求められるまま奇蹟を与えてしまう。
そうして空に築かれた楽園は、虚ろで醜悪な培養槽と化していった。リベール王家の始祖たちが”環”を封印する計画を立てたのはそうした背景があってのことだ。”環”が妨害のために放った”守護者”に苦しめられながらも封印区画とデバイスタワーを建造し……そして遂に、”環”は浮遊都市ごと異次元に封印されることとなった。」
「それが……1200年前に起こった事……」
「まさか………そんな事があったなんて………」
「……とんでもねぇ話だぜ。」
ワイスマンの説明を聞き終えたエステルは呆け、クローゼとアガットは信じられない表情をした。
「確かに、王家の始祖たちは良くやったと言ってもいいだろう。―――しかし、考えてもみたまえ。その代償として、人は混沌の大地へと放り出され一からやり直すことになったのだ。そして今も、覇権を巡って飽くなき闘争を繰り返している……。果たしてそれは正しい選択だったのだろうか?」
「………それは………………」
「そして一方で人はオーブメントという技術を手に入れ、再び豊かな生活を享受し始めている。だが、今のままでは行き着く先は2つしかあり得ない。飽くなき快楽を求め、自ら律することも叶わぬまま世界を巻き込み滅びてゆくか……。もしくは古代人のように全てをシステムの管理に委ねることで家畜のような生を続けてゆくか……。物質的な破滅か、精神的な破滅か、どちらかしかあり得ないのだよ。」
「………………………………」
「それを防ぐためには、人自身が進化するしか道はない。―――いかなる誘惑、逆境にも揺らぐことのない絶対の理性!感情に囚われることなく、正しい答えを出せる究極の知性!その両者を兼ね備えた段階に人という種を導いてやること……。まさにそれこそが『福音計画』の最終目的なのだ!」
「こりゃまた、大きく出たねぇ……」
「……どうかしてるぜ……」
高々と叫んだワイスマンにオリビエは呆れ、アガットは蔑みの目線でワイスマンを見た。
「クク……そんな誇大妄想狂をみるような目で見ないでくれたまえ。人は想像を絶する事物に直面した時、畏れとともに変革を余儀なくされる生き物だ。その意味で”輝く環”はまさに格好の存在と言えるだろう。私はこの巨いなる至宝をもって人を正しい進化に導いて見せる……。それこそが”盟主”より授かった”使徒”としての使命なのだ!」
「はあ……。正直、余計なお世話なんですけど。」
「………………………………」
高々と説明をしていたワイスマンだったが、溜息を吐いたエステルの言葉を聞いて驚き、黙ってエステルを見た。
「―――いかなる誘惑、逆境にも揺らぐことのない絶対の理性?感情に囚われることなく、正しい答えを出せる究極の知性?そんなものにどんな価値があるっていうの?」
「……君は人の話を聞いていなかったようだね。物質的、もしくは精神的な破滅を避けるために人は進化するしか……」
呆れた表情のエステルの言葉を聞いたワイスマンは再度説明をしようとしたが
「そんな話をしてるんじゃないわ。あたしが言いたいのは……そんなご大層な存在になる前に出来る事があるんじゃないかってこと。」
「………………………………」
エステルの言葉を聞いて黙り込んだ。
「ヨシュアも言ってたけど……あたしたちは無力な存在じゃない。今回の異変にしたって、みんな最初は戸惑いながらも次第に協力して前に進もうとしていた。王国各地を巡って……あたしはそれをこの目で確かめた。別に進化しなくたって何とかやっていけると思わない?」
「……群れて生き延びるのは獣や虫ですらやっていることだ。その程度の行動をもって君は人の可能性を語るつもりかね?」
「別に同じでもいいじゃない。あたしたちだって生き物であるのは確かなんだし。それが生きているってことの強さなんじゃないかな?」
「なに……?」
「もちろん人は……それだけの存在じゃないと思う。そうした命の輝きを原動力に自分らしく生きて行こうとする……そんな存在だと思うの。でも、それはあんたの言うような万能超人である必要なんかなくて……みんなが、ちょっとした思いやりでお互い助け合うだけでいいんだと思う。」
「………………………………………」
「多分……”輝く環”を封印した人たちも同じ考えだったんじゃないかな?奇蹟に頼りきっちゃうことも良くないことかもしれないけど……それ以上に、人と人がお互い助け合う余地がなくなることが何よりも良くないことだって……」
「エステル……」
「エステルさん……」
「フッ………さすがはエステル君だ。その指摘……かなり的を得ていると思うよ?」
エステルの話を聞いていたアガットは口元に笑みを浮かべ、クローゼは微笑み、オリビエは感心してエステルを見つめた。
「クク……何を言うかと思えば助け合いか……。そのような事は、歴史を振り返ってから言いたまえ。例えば幾度となく繰り返されてきた戦争という名の巨大なシステム……。その狭間において、人の絆は無力な存在でしかなかっただろう?」
「―――そんなこと、ない!」
一方ワイスマンは嘲笑したが、エステルが大声で否定した!
「お母さんは戦火の中、命がけであたしを守ってくれた!そして聖女様とリフィアは戦火の中、お母さんの命を救ってしてくれた!その事がきっかけで、あたしは遊撃士の道を志してそして今……ここに立っている!この異変を止めて戦火を未然に防ぐために!それでも……人は無力だと言えるの!?」
「フン……。……ああ言えばこう言う……」
「もし、あなたが本気で人が無力だと信じてるのなら……。だから進化させる必要があるんだと思い込んでるなら……。だとしたら、あなたはとっても可哀想な人だと思う。」
「!!」
エステルの言葉を馬鹿にしたワイスマンだったが、エステルに哀れに思われ、顔色を変えた。
「だって信じ合って、助け合うことの喜びを知らないんだもの。あたしたちが……人が足掻いているのを見ることにしか喜びを見出せないなんて……。そんなの……寂しすぎるよ。」
そしてエステルは哀れみの目でワイスマンを見つめた。
「………………………………………」
「でも、あたしは遊撃士だから……。あなたが、自分の事情にみんなを巻き込むことは見過ごせない。悪いけど……力づくでも止めさせてもらうわよ」
そしてエステル達は武器を構えた!しかし
「………………………………………。クク……無知な小娘が大層な口を利く……。ならば、その身をもって己の言葉を証明したまえ。」
ワイスマンは凶悪な笑みを浮かべた後、指を鳴らした!すると魔眼が放たれ、エステル以外の仲間達の動きが止まった!
「あああっ!?」
「か、身体の自由が……!?」
「ま、魔眼というヤツか……」
「なっ…………!」
それを見たエステルは驚いて仲間達を見た。
「フフ、君たちはそこで大人しく見ていたまえ。さぞかし面白い見物になるだろう。」
「あ、あんですって~……」
「……ヨシュア。少し遊んであげたまえ。」
ワイスマンの言葉にエステルが怒ったその時、ワイスマンの指示によりヨシュアは武器を構えた!
「………………………………」
「ヨ、ヨシュア……」
「クク、エステル君。是非とも私に見せてくれたまえ。絶望の中、人という存在がそんな強さを見せてくれるのかをね。」
「くっ……!」
そしてヨシュアはエステルにSクラフト――幻影奇襲(ファントムレイド)を放って、一瞬にしてエステルを戦闘不能にした!
「………………………………」
「……くっ……ヨシュア……」
感情のない表情で自分を見つめるヨシュアにエステルは地面に膝をついた状態で見つめた。
「ほう……なかなか見事な技だ。どうやら”剣聖”の所に預けた甲斐があったみたいだね。これでまた、私の作品の完成度が上がったというわけだ。」
「あ、あんた……!」
感心した様子のワイスマンの言葉を聞いたエステルはワイスマンを睨んだが
「さて……真の余興はここからだ。ヨシュア、彼女を無力化したまえ。」
「!!」
ワイスマンの指示に驚いた!するとヨシュアはエステルの上に乗りかかった!
「あうっ……」
「エステルさん……!」
「エステル!」
「エステル君……!」
ヨシュアに乗りかかられ、悲鳴を上げたエステルを見た仲間達は心配そうな表情で声を上げた。
「フフ、どうやら君では人の強さを証明できないようだね。だが、私も学者の端くれとして実証の必要性は理解しているつもりだ。だから君の代わりに……ヨシュアに証明してもらうとしよう。」
「…………え……………………」
「なに、簡単な実験だ。……このままヨシュアに君の息の根を止めてもらう。しかる後、暗示を解いて元に戻してあげるというだけさ。」
「!!!」
「フフ……果たしてヨシュアはどんな表情を浮かべるのだろう?ゾクゾクするとは思わないかね?」
「ふ、ふざけんじゃないわよっ!そんなことになったらヨシュアは……ヨシュアは……」
ワイスマンの話を聞いたエステルは怒鳴り返して、悲痛そうな表情をした。
「はは、今度こそ完全に心が砕け散ってしまうかもしれないね。だがそうなったら、また私が新たな心を造ってやれば済むことだ。そしてもう一度、同じように人に戻るチャンスを与えるとしよう。フフ……今から楽しみだよ。」
「やめて…………そんなの……酷すぎるよ……」
「ククク……動かぬ身では何を言っても無駄だ。それではヨシュア……止めを刺してあげたまえ。」
悲痛そうな表情で呟くエステルを見たワイスマンは凶悪な笑みを浮かべて指示をした。
「………………………………」
そしてヨシュアは双剣をエステルの喉の上に持ち上げた!
(あ、あわわ~!どうしましょう!?)
(……落ち着け。これも小僧の予想通り……だが、小僧の頼み通り保険はかけておいたほうがいいな。)
(ええ。パズモ!)
(わかっているわ!)
その様子をエステルの身体の中から見ていたテトリは慌て、サエラブは静かな口調で言い、ニルとパズモは魔術をエステルにかけて、エステル身体全身に結界を覆った。
「……ヨシュ……ア……。ごめんね……絶対に死なないって言ったのに……。ごめんね…………一緒に歩くって約束したのに……」
一方その様子に気付いていないエステルは悲痛そうな表情で呟いた。
「ヨシュアさん……だめ!」
「頼む……目を覚ましてくれ!」
「ヨシュアあっ!とっとと目を覚ましやがれえっ!」
そしてクローゼ達もそれぞれ必死の様子で声を上げた。
「でも……あたしは……信じているよ……。ヨシュアは絶対に……負けないって……。あたしが居なくなっても…………現実から逃げたりしないって……」
エステルが呟いたその時!
「……ごめん。ちょっと自信はないかな。」
剣をエステルの喉元に向けているヨシュアが呟いた!そしてヨシュアはエステルから飛びのき、一瞬でワイスマンに詰め寄って攻撃をした!ヨシュアの攻撃に驚いたワイスマンは防御をして、一端下がった!そしてヨシュアも武器を構えたまま、エステルを庇うかのような位置に後退した!
「な……!?」
ヨシュアの行動にワイスマンが驚いたその時、魔眼の効果も切れて、クローゼ達も動けるようになった!
「あ………」
「おお……」
「金縛りが……解けたようだね………」
魔眼の効果が切れ、動けるようになったクローゼ達は明るい表情をした後、エステル達にかけよった。
「……ヨシュ……ア……?」
「……ごめん、エステル。ずいぶん辛い思いをさせてしまったみたいだね。」
起き上がって自分を見つめているエステルにヨシュアは優しい言葉をかけた。
「ば、馬鹿な……。あの状態から意志を取り戻せるはずが……」
一方ワイスマンは信じられない表情をした後、ある事に気付いた。
「待て……!お前……肩の『聖痕』はどうしたのだ!?」
ワイスマンはヨシュアを見て、ヨシュアの肩の刺青がなくなっている事に気付いて驚いた表情で尋ねた。
「………………………………。もう僕の深層意識に貴方が刻んだ『聖痕』はない。たった今、砕け散ったからね。」
「な、なにッ!?」
「『聖痕』のある一点に、暗示の楔を打ち込んでもらったんだ。そして、そこに負荷がかかった時、『聖痕』が崩壊するような自己暗示を僕はずっと繰り返してきた。」
「!!!」
「あ、暗示の楔……」
「―――このままだと君との約束が果たせなくなりそうだったからね。都市に不時着した直後にケビンさんにお願いしたんだ。」
「ケ、ケビンさんが!?あ、あはは……。そうだったんだ……じゃあ、パズモ達を呼んだのも………」
ヨシュアの説明を聞いたエステルは驚いて声を上げた後、苦笑した後、尋ねた。
「そう。彼女達にも説明をして、念の為に僕が君を殺そうとしたその時、君に結界をはるように頼んだんだ。」
「へ……?あ!い、いつの間に………!」
ヨシュアの話を聞いたエステルは自分の状態に気付いて、驚いた。
(フフ………もう必要はないみたいね……)
(ええ……よかった……サティアのような悲しい最後にならなくて………今度は私の大好きな人を守れたわ…………!)
その様子を見ていたニルは微笑み、パズモも嬉しそうな表情をした後、結界を解いた。
「ケビン・グラハム……。騎士団の新米と侮っていたが小癪な真似をしてくれる……」
一方ワイスマンは悔しそうな表情で呟いた。
「正直、彼には感謝してるよ。そして………この事を僕に気付かせてくれた人にもね。」
「な、なに………」
ヨシュアの言葉を聞いたワイスマンは狼狽えた後、考え込み、そしてある答えに至った。
「まさか………カシウス・ブライトの入れ知恵か!」
「あ………」
ワイスマンの言葉を聞いたエステルは出発前にカシウスがヨシュアに手渡した封筒を思い出した。
「そっか……あの時の……」
「うん……手紙にはこうあったんだ。『お前の呪縛を解く鍵はケビン神父が持っているだろう。だが、その鍵をどうやって使いこなすかはお前自身の問題だ。ワイスマンとやらの行動を見抜いて自由を勝ち取ってみせろ』ってね。」
「へへ……あのオッサンらしいぜ。」
「まったくもう……ほんと父さんらしいわ」
「………………………………」
ヨシュアの説明を聞いてエステル達が明るい表情をしている一方、ワイスマンは歯を噛みしめた。
「正直……かなり悩んだよ。再び僕を操った貴方が一体、何をやらせるだろうと。そして僕は……その一点に全てを賭けてみた。貴方が、僕が最も恐れることを僕自身の手で行わせる可能性にね。そして貴方はその通りに命じ、結果的に『聖痕』は砕け散った。もう僕は……完全にあなたから自由だ。」
「ヨシュア……」
ヨシュアの言葉を聞いたエステルは嬉しそうな表情をした。
「……愚かな……。このまま私に従っていれば遥かな高みに登れたものを……。新たなる段階へと進化させてやったものを……」
「エステルと同じく……僕もそんなものに興味はない。それに道というのは……他人から与えられるものじゃない。暗闇の中を足掻きながら自分自身の手で見出していくものだ。」
「はは……それが出来れば世話はない!人の歴史は、闇の歴史!大いなる光で導いてやらねばいつまで経っても迷ったままだ!」
「違う―――!人は暗闇の中でもお互いが放つ光を頼りにして共に歩んでいくことができる!それが……今ここにいる僕たちの力だ!」
ワイスマンの叫びの言葉に対し、ヨシュアも叫びの言葉で返した!
「ヨシュア……」
「……クク……出来損ないの執行者風情がずいぶん大きな口を叩くものだ。ならば見せてみるがいい……。闇の中でも輝くというお前たちの光とやらをな……」
ヨシュアの言葉にエステルは明るい表情をし、ワイスマンは嘲笑をした後、小型の人形兵器を召喚した!
「”盟主”の忠実なる僕―――”蛇の使徒”が一柱、”白面”の力、見せてやろう!」
ワイスマンが杖を構えて高々と叫んだその時!
(フン!そんな暇を与えると思っているのか?)
なんとサエラブ達がエステルの身体の中から全員出て来た!
「グオオオオオオオオオーッ!!」
さらにカファルーも自分からエステルの腕輪から出て来た!
「そこです!精密射撃!!」
「なっ!ぬっ!?」
そしてテトリが放った技によって驚いたワイスマンの手から杖が弾き飛ばされ
「光よ!降り注げ!爆裂光弾!!」
「グッ………!?」
ニルが放った魔術によって、ワイスマンは怯み、また周囲の人形兵器達もダメージを喰らい
「クー!!」
「ガッ!?」
クーが放ったアクアブレスによって人形兵器と共に吹き飛ばされ
「グオオオオオオオッ!!」
「グワアアアアアッ!?」
カファルーが放った爆炎スマッシュを受けたワイスマンは大ダメージを受けて吹き飛ばされ、また、人形兵器達は完全に破壊され
(聖なる意思よ、我が仇為す敵に断罪の稲妻を!……ディバインセイバー!!)
「ガアアアアアアアッ!?」
パズモが放った魔術に悲鳴を上げ
(フン!)
「ガアッ!?ギャアアアアアアアッ!?わ、私の手が………!」
神速で近づいて爪の斬撃によるサエラブの攻撃によって、片手を斬リ落とされたワイスマンは悲鳴を上げた後、信じられない表情をし
(ぬん!)
「ゴフッ!?……ガッ!?へ、”蛇の使徒”の一柱たるこの私が何故力も出す事なくこんな事に………」
サエラブのクラフト――”炎狐強襲”を腹に受け、吹っ飛ばされたワイスマンは受け身も取れず、柱に叩き付けられ、信じられない表情で跪いた………!
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第342話