No.458712

真・恋姫†無双~だけど涙が出ちゃう男の娘だもん~[第5話]

愛感謝さん

無難な人生を望み、万年やる気の無かったオリ主(オリキャラ)が、ひょんな事から一念発起。
皆の力を借りて、皆と一緒に幸せに成って行く。
でも、どうなるのか分からない。
涙あり、笑いあり、感動あり?の、そんな基本ほのぼの系な物語です。
『書きたい時に、書きたいモノを、書きたいように書く』が心情の不定期更新作品ですが、この作品で楽しんで貰えたのなら嬉しく思います。

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2012-07-24 20:31:29 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:4136   閲覧ユーザー数:3795

真・恋姫✝無双~だけど涙が出ちゃう男の()だもん~

 

[第5話]

 

 

後事を厳顔と黄忠に託したボクと魏延は、一路荊州の襄陽へ向かっていました。

漢中郡南鄭から上庸を通り、そこから襄陽へと続く運河を使って船での旅路です。

道中、魏延は船が苦手らしく酔って青い顔をしていて、いつもの元気がありませんでした。

途中で泊まった船着き場の宿で何かを試みようとしているのですが、酔いが酷い為にすぐダウンしてしまいます。

『何がしたいのですか?』と魏延に聞いても、彼女は『何でもない』と答えて要領を得ません。

何がしたいのでしょうね?

でも、何故だか分からないのですが、何かを回避出来た安堵感をボクは感じていました。

不思議です。

 

船での旅路を恙無(つつがな)く過ごして、ボクたちは無事に目的地へ到着する事が出来ました。

今現在いる場所は、ボクと同じ前漢皇族の劉表が治める襄陽です。

でも周りを少し見た所、余り活気が有るようには見えませんでした。

何故だか分かりませんが、ドンヨリ(よど)んでいるように感じられたからです。

 

「焔耶、大丈夫かい?」

「大丈夫だ……うっぷっ」

(全然、大丈夫じゃ無いじゃないか)

 

ボクは船着き場で魏延を介抱しながら話しをしていました。

そうすると「あの~すみません」と、後ろから若い女性の声がかけられます。

ボクは振り向いて、その人物と相対することにしました。

 

「はい?」

「この船は、長沙まで行きますでしょうか?」

「あ~、いいえ。この船は益州の漢中へ行くので、荊南の長沙へは行きませんよ?」

「そうですかぁ……」

 

この女性は、孫堅が太守を務める長沙への船を捜しているみたいでした。

けれど劉表と孫堅は、友好的どころか険悪の関係と聞き及んでいます。

そんな関係なら、ここから船なんて直接出ている訳も無い。

ボクは少し興味が湧いたので、詳しく事情を聞いてみることにしました。

 

「長沙に何か用事でもあるの?」

「え? はっ、はい。縁者がそこで仕官していまして、その縁を頼って私も仕官出来ないものかと」

「仕官先を探しているの?」

「はい、そうなんです。家は、その、余りお金が無くてですね。それで仕官しに豫州の汝南郡から商隊の護衛をしながら、ここまで来たんです」

 

仕官しに行くと言う彼女の見た目は華奢(きゃしゃ)そのもので、城勤めが勤まるとは思えません。

しかも護衛という事は、武官希望なのでしょうか?

ボクは疑問に思って彼女に問いかけます。

 

「護衛って事は、腕に覚えがあるのかな?」

「はい! これでも村一番でしたから。あっ、ごめんなさい。まだ名乗っていませんでしたね。私の姓は(りょ)、名を(もう)、字は子明(しめい)と言います」

「えっ?! 呂子明?」

「はい」

 

呂蒙は、史実では『呉』の知勇兼備の名将。

ここでは、こんな可愛いお嬢さんとは驚きです。

 

「あっ。ボクの姓は劉、名を璋、字は季玉。よろしくね?」

「えっ?! 劉季玉…さま? もしかして漢中太守の?」

「うん、そう。その劉季玉」

 

ボクは自分が名乗りをしていないのに気が付き、急いで名乗ると呂蒙は驚いて質問してきました。

 

「すっ、すみません! 太守様とは知らずに、ぶっ、無礼を働いて!」

「え? ああ良いよ、全然。無礼でも何でも無いしね」

 

いきなり頭をペコペコさせ出した呂蒙に、ボクは何でも無いと答えました。

それでも恐縮する事を止めない呂蒙に、ボクはある提案をしてみます。

 

「じゃあさ、子明。ボクに雇われないかい?」

「え? 雇われる……ですか?」

「うん。御覧の通り、ボクの護衛が船酔いでね。代りの護衛が必要なんだ」

 

酔いが酷くて座り込んでいる魏延を見ながら、ボクは呂蒙に状況を説明しました。

それを受けて呂蒙は、気後れするように返答してきます。

 

「……でも。私なんかで、良いのでしょうか?」

「もちろんさ。君さえ良ければ、そのままボクに仕官して貰っても良いよ?」

「ええ?!」

 

いきなりなボクの仕官勧誘に、呂蒙は驚いたようでした。

しかし、名将を獲得する絶好の機会です。

有効に活用せねば。

 

「ま……まて。ごっ、護衛には…ワタシが……うっぷっ」

 

とんとん拍子(びょうし)に話しが(まと)まりそうな時、それをぶち壊すかのような恨みがましい声が、下から聞こえてきました。

ボクは溜め息をつきたくなるような気持ちで、声の主である魏延に話しかけます。

 

「焔耶。そんな状態で護衛なんて、出来る訳も無いだろう? 少しは考えようよ。ね?」

「し……しかし。素性の知れない者に護衛は……任せられない」

 

魏延から (もっと)もらしい答えが、彼女を(たしな)めようとしたボクに帰ってきます。

ボクは魏延の放つ正論に、口を(つぐ)むしかありませんでした。

ですが、この絶好の機会を逃す訳にもいきません。

どうしようかと考えていると、名案が浮かんできます。

 

「じゃあさ、焔耶。この場で子明がボクに仕官して、真名を渡してくれたら良いかな?」

「そっ、それは。だ…だが……」

「はい、決まり! で、どうかな? 子明。 ボクに仕官してくれるかい?」

 

口ごもる魏延との会話を打ち切り、ボクは呂蒙を勧誘しました。

 

「え?! でっ、でも。わっ、私」

「ボクに仕えるのは、嫌かい?」

「そんな事ありません! でっ、でも。私には、自信がありません」

 

仕官はしたいが自分に自信が無い。

そんな躊躇(ためら)いを見せている呂蒙に、ボクは言います。

 

「子明。今の自分の気持ちに素直になって答えてくれれば、それで良いんだよ?」

「それは……仕官したいです。でも……」

「後の事は後の時に考えようよ、一緒にさ。ね?」

「は…はい。あっ?! わっ、私の真名は『亞莎』です! どうぞ、お受け取り下さい」

 

何だかんだとありましたが、呂蒙は配下になってくれました。

幸先(さいさき)が良いです。

 

「焔耶? 真名を受け取ったのだから、これで良いだろう?」

「いっ、いや。護衛としての力があるか……分からない」

「はあ~」

 

魏延の言い訳がましいい返答に、ボクは頭が痛くなって溜め息をつきました。

このままでは平行線を辿(たど)って、(らち)が明きません。

そこで、強硬手段を取るべく呂蒙に目配せをしました。

 

「?」

 

しかし呂蒙は、ボクの意図に気付かないのかキョトンッとしています。

もう一度ボクが目配せをすると、意図を理解したのか魏延の後ろに近づきました。

 

「ふがあぁ?!」

 

呂蒙の一撃を後頭部に食らい、魏延は驚愕の表情で気絶して倒れていきました。

 

「……(よろ)しいのですか?」

 

呂蒙が困惑気味にボクに問いかけてきました。

 

「良いんです」

「でも……」

「焔耶は“亞莎の実力”を疑問視したのです。だから “実力”を示したんです」

「……」

 

呂蒙は、まだ納得出来ていないようです。

 

「問題ありません。ボクが亞莎に命じたのですから」

「はあ……」

 

その後。気絶して伸びている魏延を、ボクは腑に落ちていない呂蒙と一緒に予約してある宿に連れて行きました。

 

でも魏延は何故、嫌っているボクの護衛にあそこまで執念を見せるのでしょう。

女性の考えは一生かけても男には分からない、と云う事なのでしょうかね?

 

ほんと、不思議な事だらけです。

 


 
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