真・恋姫✝無双~だけど涙が出ちゃう男の
[第6話]
魏延を宿に放り込んで……もとい、寝かし就けてから、ボクと呂蒙は郊外の司馬徽邸へと繰り出しました。
呂蒙はボクの魏延への仕打ちに首を傾げていましたが、それでもチャンと護衛らしく周りに注意を向け、ボクの安全を気にかけてくれています。
ありがたい事です。
「そう言えば。季玉様は、襄陽へは何をしにいらっしゃったのですか?」
「あっ。ボクの事は『刹那』って、呼んでくれて良いよ」
「真名を宜しいのですか?」
「うん。命を預けているしね。当たり前だよ」
「ありがとう御座います、刹那様。真名を預らせて頂きます」
ボクが真名を預けると、呂蒙は神妙に言葉を紡いで受け取りました。
その後にボクは司馬徽(字:徳操)という人物とその弟子たち、とくに諸葛亮(字:孔明)や
司馬徽に漢中へ来て貰って、建設する学校で教鞭をとって貰う事。
同時にボクの相談役になって貰う事。
弟子たちにも仕官して貰う事。
それらが襄陽へ来た目的だと話しました。
「いま向かっているのが、その人物の館なのですか?」
「そうだよ。場所はわかっているから大丈夫」
てくてくと小一時間程歩くと、目的地の司馬徽邸が見えて来ました。
ボクは先走りとして、呂蒙に館へ要件を伝えに行って貰います。
「ごめん下さい」
呂蒙が館の玄関前で挨拶して暫くすると、中から使用人らしき人物が現れました。
「はいはい。どんな御用でしょうかね?」
「こちらは、司馬さまのお館でしょうか?」
「ええ、そうですよ。皆は“水鏡先生”って呼んでいますがね」
呂蒙は自分の
「……そうですか。ですが生憎と、先生はお弟子さん達とお出かけになっていますよ?」
「ご不在ですか……。いつお戻りか、分かりますか?」
「いや~。あの先生は風来坊さんですからねぇ。とんと分からんのですわぁ」
「そうですか。分かりました、ありがとう御座います」
呂蒙は礼をすると、司馬徽邸を後にしました。
一連の使用人との会話を、呂蒙はボクに話してくれます。
「そうですか。不在ですか…」
「はい。いつ戻るか分からないそうです」
「それでは、仕方がありませんね。一旦、街に戻りましょう」
要件を果たせず、とんぼ返りで街に帰って行きます。
また、てくてくと小一時間程歩いて街に帰って来たので、ボクは違和感を覚えている事を呂蒙に聞いてみる事にしました。
「亞莎。そんなに、いつも周りを
「えっ? あの、別に睨みつけている訳じゃないです」
「そうなのですか?」
「はい」
詳しい事を聴くと、どうやらメガネのピントがあっていないようでした。
「では、これからメガネを買いに行きましょう」
「ええっ?!」
「必要経費ですよ。自分の護衛なのですから、当然です」
「でっ、でも」
じれる呂蒙を、ボクは無理やり店に連れて行きます。
店は大きくは無いが品揃えが良く、気持ちの良い店でした。
この店は街の人に色々評判を聞いて、その中で特に評判の良かった所でした。
店の雰囲気や品揃えを見渡すと、メガネ屋というより雑貨屋さんと云う感じを受けます。
趣味の良い小物なども置いてあるようでした。
幾つか店員さんに用意して貰い、納得いくメガネが手に入りました。
そのメガネを着けた呂蒙は、『世界が輝いて見えます』と言っています。
どんな世界を今まで見ていたのでしょうか?
ちょっと、聞くのが怖い気がします。
ふと陳列棚を見ると、可愛いブローチがありました。
魏延へのご機嫌取りに、ボクはそのブローチを購入して店を後にします。
店から出た後、街の雰囲気をぶらぶら楽しんでいると、夕暮れ時になってきたので宿に帰りました。
魏延の容体はどうかな? と思い、彼女が寝ている宿の部屋に行くと、そこには。
「お早いお帰り……お喜び申し上げる」
そこには、病弱な恨めしい顔をした幽霊(魏延)が待っていました。
「やだなあ、焔耶。気を遣って寝かしていてあげたのに」
「……」
身体をベッドに横たわらせつつ恨みごとを言う魏延にボクが言い訳していると、彼女は呂蒙に買ってあげたメガネに気が付いたみたいでした。
「……子明。そのメガネは、今朝していたのとは違うよな?」
「え? はっ、はい」
「どうしたのだ?」
「え~と。その、刹那様に買って頂きました。(嬉)」
そうすると魏延は、途端にギャーギャー喚きだしました。
『自分は今まで何も貰っていないのに!』とか、『古参の自分より、新参の呂蒙が大事なのですか?!』とか散々
取りつく島も無いので、ボクは買って置いたブローチを魏延に渡しました。
「……何ですか、これは?」
「いつも迷惑をかけているお詫びと、感謝を込めて焔耶への“プレゼント”だよ」
「……」
「受け取って貰えるかな?」
そうボク言うと、顔を真っ赤にした魏延は暫くブローチを手に持って眺めた後、おもむろに布団を頭にかぶって寝てしまいました。
どうやら気にいって貰えたようです。
やれやれと、ボクと呂蒙は安心して自分達の部屋に行きました。
(2~3日この襄陽の街を探索してから、もう一度司馬邸へ行ってみるかなぁ……)
部屋のベッドに体を横たわらせつつ、ボクはそう思います。
それから色々な事を考え込んでいると、気が付くと夜も更けて来たので寝る事にしました。
それから暫く経ってウトウトとしていたら、どこからとも無く。
『うふふっ……うふふふっ………』
と、薄気味悪い女性の曇った声がボクの耳に聞こえてきました。
さすがは荊州ですね。
益州とは違って、色々な事が起きます。
そんな風に感心しながら、ボクは布団をかぶって深い眠りに着いていきました。
でも、あの女性の声はどこか魏延の声に似ていました。
何故でしょうね?
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無難な人生を望み、万年やる気の無かったオリ主(オリキャラ)が、ひょんな事から一念発起。
皆の力を借りて、皆と一緒に幸せに成って行く。
でも、どうなるのか分からない。
涙あり、笑いあり、感動あり?の、そんな基本ほのぼの系な物語です。
『書きたい時に、書きたいモノを、書きたいように書く』が心情の不定期更新作品ですが、この作品で楽しんで貰えたのなら嬉しく思います。
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