真・恋姫✝無双~だけど涙が出ちゃう男の
[第3話]
ボクたちは兵の教練を終えたので、益州の州都・成都から漢中郡南鄭の反乱者である蘇固討伐に出立しました。
旅次行軍で南鄭周辺まで行き、その後は警戒態勢で進軍して行きます。
今現在は、実数3000人(呼称5000人+補給隊別)で目前に在る漢中郡南鄭の城を見ていました。
案の定と言うか、魏延は厳顔に就き従って漢中まで付いて来てしまいます。
仕方が無いので、ボクは魏延を配下に加えて兵を率いて貰う事にしました。
警戒してか蘇固は城を出てボクたちと対戦する気配を見せず、城に
このまま時を労する訳にもゆかず、ボクは厳顔・黄忠・魏延に、それぞれ1000人の兵士を分け与えて北門・東門・西門を包囲させます。
南門は益州にしか通じていないし、
城を包囲してから1日経った頃、北門前に一緒に居る厳顔がボクに話し掛けてきます。
「それで若。これから、どのように城を攻略する御積りですかな?」
「じゃあ。矢文を1矢射てくれるかな?」
「……矢文?」
「うん」
ボクの言葉を
「ふふふっ。“後は仕上げを御覧じろ”さ」
「…ふむ。詳しい事は後で聞かせて頂きますぞ、若?」
疑問に思いながらも厳顔は、ボクの言う通りに渡した文を城に向けて矢文として射てくれました。
矢文の文面は、
一つ、罪は首謀者・蘇固と共謀者個人に帰す。家族に罪を連座させない。
一つ、城内の兵は抵抗しないならば反逆の罪は問わない。家族も同様。
一つ、上記の事は漢中太守・劉璋の名において確約する。
などでした。
それから更に1日経った夕暮れ時に、急に城内が騒がしく怒号が飛び交うようになって、ボクたちの目前に在る北門が開かれました。
恐らく
この好機を
「桔梗、突撃を命じる。だけど降伏する者は、可能な限り生かすように。いいね?」
「承知
厳顔の指揮する突撃した兵が他の東西の両門を内側から明け放つと、黄忠・魏延の指揮する兵たちも突入を開始します。
それから暫くして敗戦濃厚な雰囲気を悟ったのか、城内の反乱兵たちは降伏し出しました。
もともと同じ益州の民なので戦意は低い、そのうえ蘇固は民を
そんな蘇固に
もっとも。そういう雰囲気になるように、情報操作を間諜に命じて置いたんですけどね。
思いの外、旨くいってくれたので良かったです。
「城内の兵に告げる! これ以上の戦闘は無意味である! 罪は反乱の首謀者・蘇固のみに帰す。よって兵に罪は無い!
速やかに武器を置き、投降せよ! 命を無駄にするな!」
敵味方関係無く一人でも多くの兵を助ける為に、ボクは投降を呼び掛け続けました。
その甲斐あってか、戦闘は間もなく終わりを告げます。
だけど、ここで問題が生じた事を知りました。
首謀者である蘇固が、趙嵩と供に逃亡したという報告を受けたからです。
反乱の首謀者を逃がす訳にもいかないので、厳顔・魏延両名に蘇固・趙嵩の捜索を任せました。
ボクは城下の民意を安んじる為に、黄忠と供に治安に勤しむ事にしました。
(とにかく、これで拠点は確保しました。後は、どれだけ早く力を蓄えられるか? ですかね)
漢中郡下の他県は反乱に迎合せず静観していたようでしたが、ボクが戦闘に勝利して新しく漢中太守に就任した事を知ると、我先にと挨拶に来るようになりました。
(こんなに慌てて来る事自体が、『自分はヤマしい事を隠しています』と言っているようなモノなのですけどねぇ。
まあ、折角の機会です。汚職官達を一掃しましょう)
ボクはそう思って、漢中郡下の南鄭を始めとした各県の一斉査察を実行しました。
証拠は予め諜報機関に調べさせていたので、容赦はしません。
そうすると、ゾロゾロと出るわ出るわ。
帳簿の誤魔化しを始め、商人からの賄賂、仕舞いには売官による収益など、全てを合わせると漢中郡の税の何十年分にもなりました。
(良く、これだけの財を貯め込んだものですねぇ。何をすれば、これだけ集められるのでしょうか?)
ボクは押収した財産の報告書を読んでそう思い、ある意味において感心しました。
しかし、感心してばかりもいられないので、今後の統治の為の布石を打っていきます。
汚職官に嫌われ
従わざるを得なかった者たちは、理由の軽重により罪を決めます。
売官により地位を得た者たちでも、その能力・罪のある無しにより分けました。
情状酌量の余地無い者たちは、その罪科に応じて刑を定めて執行していきます。
こうして漢中郡下各県の風通しを良くしていると、厳顔・魏延の両名が南鄭に帰還して来ました。
報告を受けると、蘇固は逃亡中に趙嵩と分かれて一人の時に捜索隊に発見されて、あえなく御用。
趙嵩は、蘇固捕縛を知ると本陣に突撃して来たところを、これまた御用。
反乱者になるような人物にしては、呆気無い幕切れでした。
「そうですか、分かりました。無事に両将が帰還してくれて一安心です。
今夜は戦勝と慰労を兼ねて祝宴の準備がしてあります。兵共々、これからの漢中郡統治の為に英気を養って下さい。
御苦労さまでした」
「「はっ! ありがとう御座います」」
両名が太守の執務室から下がった後、漢中反乱鎮圧の詳細を書いた書簡を作成します。
更に成都に向けて蘇固・趙嵩移送の手続きを取ると、祝宴が始まっている頃遭いになりました。
(さて、ボクも一息付きましょうか)
ボクが城内の祝宴場では無く城壁上へ行くと、皆それぞれが喜び会い、再会を祝っている
その光景を眺めている内に、ボクは何だか嬉しくなります。
宴もたけなわになった頃、厳顔・黄忠・魏延の3名がボクの所へやって来ました。
「ご主人様。こんな所に護衛も就けず、不用心ですわよ?」
と言う黄忠の言葉を皮切りに、あーだこうだと3名の小言が始まりました。
曰く、人の上に立つ者は配下に心配をかけるな。
「そうだね、その通りだ。これからは気を付けるよ。ありがとう。」
ボクを気遣ってくれる言葉に感謝しきれません。
良き配下を持って、ボクは幸せ者ですね。
曰く、仕事で苦労しているのに
曰く、勤務状態の割に給料が少ない。
「ええ?! それは、どうだろう? そんな事ないんじゃないかなぁ?(汗)」
何やら雲行きが怪しくなってきました。
曰く、男の癖に髪がサラサラで肌が綺麗なのはムカつく。
曰く、男の癖に自分より女らしいのは許せない。
「……」
もう何でしょうね?
ドンドン発言が変な方向に向かっています。
諺の『朱に交われば赤くなる』って本当でした。
師匠が酒乱なら弟子も酒乱。
ボクがこの場を離れようとすると魏延がボクを
こんな夜は、飼い猫のミーシャを危ないからと成都に置いてきたのが悔やまれます。
潤いが欲しいです。
癒しは、もっと欲しいです。
マイ・エンジェル・ミーシャ!
ヘルプ・ミー!!
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無難な人生を望み、万年やる気の無かったオリ主(オリキャラ)が、ひょんな事から一念発起。
皆の力を借りて、皆と一緒に幸せに成って行く。
でも、どうなるのか分からない。
涙あり、笑いあり、感動あり?の、そんな基本ほのぼの系な物語です。
『書きたい時に、書きたいモノを、書きたいように書く』が心情の不定期更新作品ですが、この作品で楽しんで貰えたのなら嬉しく思います。
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