拠点:蓮華 題名:戻れる場所があるってこと
一刀SIDE
季節の変わり目。
特に夏となると、いろいろ準備しなければいけないものがあった。
今回連れも増えるということで、食料など以外に、特別に必要なものを雛里ちゃんと一緒に考えていた。
「今使ってる荷馬車、結構ボロくなってきたからな。人が増えるとなると、修理しておかないと不味いだろうな」
「一刀さん、出来るんですか?」
「まあ、元の世界では道場の屋根とか直してみたことあるし…なんとかいけるだろう。となるとそれに必要な材料に…後は……」
「あ、でも四人も増えるとやっぱり荷馬車をもっと大きいものに変えないと…」
「………」
そういえば、蓮華と甘寧たち三人全部連れてくるつもりなのだろうか。
一応、今までの僕たちは四人だった(あとプラス一人)
そこで倍になると言ったら……ちょっと厳しいか?
コンコン
「うん?はい」
誰かがノックする音がすると思ったら、入ってきたのは蓮華だった。
「孫権さん」
「ほ、鳳士元も居たの…?と、取り込み中だったかしら」
「いや、別にそんなわけじゃない。旅に必要なものをね…そう、丁度蓮華に聞きたいことがあるんだけどさ」
「じ、実は私も一刀に話したいことが……あなたから聞いて良いわよ」
「…取り敢えず、座ってください」
「え、ええ」
なんだか少しそわそわ感が出てる蓮華の姿に、僕と雛里ちゃんは何かを察した。
「で、だ。蓮華、甘寧たちって皆付いてくるって?」
「え?ええ…本人たちはそう言ってるのだけど…さすがにそれは迷惑でしょうね」
「迷惑とまでは言いませんけど、人数が一気に倍になるんですから、こちらからもいろいろ準備するものが必要です」
「魯子敬が必要なものがあったらなんでも言ってください、とは言ったけど、一応確認な」
「……実は、私、誰も連れて行かないつもりだったのだけど……」
「…え?」
「あわ?」
蓮華SIDE
昨夜、私は思春と明命、そして亞莎に私の気持ちを話した。
既に私が一刀と一緒に行くという約束をしたことを知っていた三人だったけど、この日に及んでまで私に一言も言ってなかった。
お姉さまから、私を連れてくるようにとされたという話も聞いていない。
「三人に話したいことがあって集めたわ」
そして昨日、私は夜三人を集めさせた。
「お姉さまは、私がここに居ることに付いて何もおっしゃらなかったの?」
「……その、蓮華さま」
「我々がここに来たのは、そもそも『氷龍』の件だけのだめでした。雪蓮さまは蓮華さまがここにいらっしゃることを存じていません」
「え?どういうこと?でも、あの時貴方達、私が徐州に来たって知ってたんじゃ…」
「報告していませんでした」
「……!」
私が元居るはずの場所に居なかったのに、それをお姉さまに知らせなかった。
まさか…
「…あなた達…」
「私が他には言わないようにしたのです。責任を持つなら私でしょう」
「思春殿」「思春さま」
「……あなた、自分が何をやったのか解ってるの?」
仮にも私は孫呉の姫。
お姉さまが再び孫呉の復興のための土台を作ったと言っても、まだまだ力が足りない時期。元々なら、私もお姉さまの元で手伝わなければならない。
だけど、私は帰れない。
私が帰ったら、深月は他のお姉さまが王になるのを良しとしない奴らと、お姉さまに従い家臣たちの間の亀裂ができる。
「我々に何も言わずにここまで来たのは蓮華さまです。それこそ、雪蓮さまに知られたくなかったのではないのですか」
「うっ…それは……」
「……我々も一緒に行きます」
「え!?」
「そうです。最初から蓮華さまがここにいたら、蓮華さまがどう決定なさるとしても共に行くって決めたのです」
「私も一緒に行かせてください、蓮華さま。まだ蓮華さまと出会って日も浅いですが、蓮華さまのためになら命も賭けれます」
「………」
・・・
・・
・
「…と、いうわけなの」
「「……」」
そして、話は一刀と鳳士元が居る場に戻る。
「……それで、どうしてそれが何故誰も連れて行かないという結論に辿り着くのですか?」
「だって、考えてみてよ。私が彼女三人を全部連れて行ったら、姉さまに酷い迷惑でしょ」
私一人が消えるだけでも、孫呉にとっては大きな損失なのに、将軍級の子を三人も連れて行ったら、それはもう逃げるとかそういうんじゃなくて、どこかで新しい軍を作られるぐらいよ。
それこそお姉さまとは他の勢力を作るという風に見られるかもしれない。
「別に孫策はお前たち以外でも連れてこれる将なんて沢山居るだろ。実際元々孫呉に居た将なんて、あの中じゃ周泰だけだし、甘寧は元々蓮華に従う将に、呂蒙だって僕が教えてくれなかったら見つけてなかっただろ」
「それはそうだけど…でも…」
「そもそも、蓮華が気にする所が僕が理解できない」
「…何がよ」
「蓮華と孫策と対立構図になるという話」
「え?」
だって…そうでしょ?ここの深月だって私が孫呉に戻ったらお姉さまを引きずり下ろす気満々よ?
「いえ、一刀さん、それは本当にちょっと不味い感じです」
「そうなのか?でも本人がそのつもりないのに家臣たちが勝手にそんなことするのか?」
「孫呉の地は、昔から豪族たちが強いんです。豪族たちに認めてもらえないと江東の長として動けないんです」
「ふーん……」
鳳士元の言う通り。
だから、こんな状況で私がお姉さまが居る豫州に行くことは、お姉さまの立場、ひいては孫呉の安寧を揺らすことになる。
「……家族が家に戻るってだけだろ。蓮華は孫策が生きてる間には永遠孫呉に戻らないつもりか?」
「そ、そういうわけでは……」
「だって蓮華の言い方だとそうなるじゃないか。そもそも家族というのは、そういう小さいことでバラバラになったりしたら勿体無いと思うんだ、僕は」
「………」
「僕は個人的に孫策が嫌いだけど、それは僕個人的な理由で、蓮華がそれで孫策が嫌いになって欲しいとは一度も思ったことないよ。だって姉妹じゃないか。僕と旅しながら、姉や孫呉の今までの視線と違う風に天下を見て、その後いつでも孫策の所に戻っても一緒に孫呉のために頑張る。そんな感じになって欲しかったんだよ、僕は。それが嫌で、単に僕との旅を孫策から遠くへ逃げることに利用するつもりだったら、僕は蓮華を連れて行く気はないんだけど」
「そんな…!」
「私も、孫権さんにとっても戻れる所があることは、この旅にとってとても大事だろうと思います」
鳳士元も私に説教風にそう言った。
「私たちや真理ちゃん、倉ちゃんも、もう親はもうこの世に居ません。真理ちゃんは姉たちが居ますけど、私や倉ちゃんはそうでもありません。でも、今でも荊州の先生の所に戻ると心を安らげて、『故郷』と呼べる場所があります。孫権さんがもしこのまま孫策さんたちから逃げる形で私たちに付いてくると、いつも私たちとくるこの道が不安なものになるだろうと思います」
「そう…なのかしら」
「そうです。そもそも、後々孫策さんが孫権さんを連れ戻しに軍を連れて私たちを追ってきたらどうするんですか」
「そ、そんなことあるわけ……は」
あるわね…そもそもそうなるのが自然……。私は孫家の姫なのだから、こんな勝手なことが許されるはずがない。
「まあ、僕たちがどこにいるかは知らないだろうと思うけど、大体は絞れると思うし…そうなるとこっちも結構迷惑だからね。取り敢えず、孫策にはちゃんと説明した方が良い。僕も孫策に手紙送るからさ」
「か、一刀が?!」
「あいつも僕が連れていくって言ったら文句言わないだろう。大体、言った所で帰らせるつもりもないけど…」
「……!」
そ、それって………
「…一刀さん?」
「うん?何?」
「……ちょっと良いですか」
「なんか…目が怖いんですが…」
「孫権さん、私、ちょっと二人で一刀さんと話したいことありますから、この辺で出ていってもらえますか?」
「え、ええ…あ、でも、そうなったらやっぱ全員付いてくるって言いそうだけどどうすれば…」
「これで決めてください」
そう言って鳳士元は私に『あるもの』を渡して、部屋から私を追い出した。
その後そこで何があったかは…私は知らない。
「……籤?」
「そう、籤引きで決めるわ。連れていくのは一人。他の二人は私の手紙を持ってお姉さまの所に戻ること。そして私に誓ったその忠誠、そのまま孫呉に誓ったものを知ってお姉さまに尽くしなさい」
私の手に握られているのは、竹簡で作った籤が三つ。
手で握って隠してる中の部分に、一つだけ『当たり』の標識があって、他の二つは何も書かれていない。
「さあ、誰かするの?」
「わ、私から…」
「待て、私が先に引く」
「ふ、二人とも、ここは後輩に譲ってください」
三人とも譲る気はなさそうね。
……それ程私に付いて行きたいというのかしら。
人望……?
ふっ、そんなもの、これからの私には必要ないものよ。
そもそも欲しくもない。
この先私が欲しいものは…ただひとつだけ。
「それも同時に決めましょうか。なんでも好きなものに早く手をつけなさい」
「「「!!!」」」
そう言ったら三人とも素早く籤に各々手を付けた。
これで準備は完了。
「今更変えられないわ。さあ、それじゃあ引きなさい」
「「「はい!」」」
・・・
・・
・
蓮華拠点。
なんか変になっちゃいました。
元はここで拠点作るつもりじゃなかったのに、なんか色々物語的にここでしなきゃいけないし…
いろいろ愚痴ってみます。
とにかく今までの拠点の中で一番手こずって、一番適当に書きました。すみませんOrz
それとは関係なく、
蓮華と一緒に行く娘を決めてもらいましょう。
一人だけです。
それ以上はTAPEtの筆力に乗って真理ちゃんを次ぐ空気キャラを作っちゃいますので勘弁ください。
1.思春
2.明命
3.亞莎
ちなみに作者に一票使わせて頂きますと
1.です。
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クソ長くなっちまいました。
なんだか人類書きすぎてこっちの一刀の感じが変になっちゃった。
さあ、さあ早う行こう。最後にアンケートにご協力くださいな。