第十五話「馬鹿と王女が消閑中」
二日ほどかかったが、ようやく王城に帰ってこれた。そして
「ところでゼクト。
「ん? アリカ姫がナギを引き連れて町に行ったぞ。リュビは護衛としてついて行ったが」
デートか。ったく――TPOを弁えんとは、ずいぶんと歪んだ性根だな。リュミスが付いて行ったのが救い、か?
「まあ、それはどうでもいいな。リュビがいる以上、そうそうアリカに傷が付くことはあるまい」
「信用、ですか。そういえばアラン、ひとつ聞いておきたいことがありました」
「何だ、アルビレオ・イマ」
「貴方は、リュビさんとどこまで行ったんでしょうか?」
「――ふ、貴様に期待した
魔法世界編など覚えていないが、これはこんなキャラだっただろうか? いや、
「だがまあ、否定したところで勝手に想像を膨らませるが馬鹿の基礎。教えておこう。あれと
「つまらないですね。ではその言葉に嘘がないか、アーティファクトへ登録してもよろしいでしょうか?」
そう来るか。ここで否定すれば囃したて、肯定すれば我の名が知られる。ふむ、少々きつい二択ではあるが。
――現状維持、か。大戦後であれば別に正体が知られようと関係ない。なぜなら、この大戦に参加するために
「構わん。が、この戦いが終結してからにしろ。現状で
「今は教える気はないと?」
「何のための仮面とフードと偽名だと思っている? 個人特定を難しくするためであろうが」
まあ、
『ごめんなさい、今大丈夫かしら?』
『どうしたリュビ。
念話の声色を低くする。念話では周囲の音が聞こえないため何が起きているのか判断することは…………何だ、今の爆音は? 城外――街の方だな。
『アラン、問題発生よ。「
『普通に考えろ。護衛対象を危険に巻き込むなど言語道断だ』
『その護衛対象が、ノリノリで攻め込もうとしているのだけれど……』
溜息すら聞こえてきそうな、リュミスの呆れたような念話。
さすがにこのような状況は想定していなかったからな……人間生活の短いリュミスでは、このような状況下でどうすればいいのか分からず戸惑っているんだろうが。
『構わん。護衛に徹しろ。護衛対象が望むなら、その状況下で守り通せ』
『了解。ならしばらく「
が、
「おい、アルビレオにゼクト。悪いニュースだ。聞きたいか?」
「聞かないとさらに悪くなりそうなので、聞くことにしたいですね」
「そうじゃの、情報はほしいからの」
「では一度しか言わんからよく聞け。
最後の一言に、ゼクトは『あの馬鹿弟子は……』と唸り、アルビレオはうすら笑いを凍結させ、今さっき来たばかりであるが故|
リュミスSide
魔法が敵を吹き飛ばす。
これだけならいいんだけど、その前に『あんちょこを見ながら』と付くことだけが問題ね。詠唱遅くなるし、片手ふさがるし。
「んと……『雷の暴風』!」
それ以上に……広範囲攻撃を街中で使うのは、さらにどうかと思うわよ。大抵は余波だけだから魔法障壁で止められるけど……万一直撃したら、障壁程度じゃ止まらないわよ、この威力だと。
ああもう、思ってるそばから余波で店が倒壊したわ。これに市街戦なんてやらせない方がいいかもしれないわね。
「行くのだ、ナギよ!」
アリカも煽らないでよ……ナギの腕の中にいられると、私が守れないのに。
ああ、もう。仕方ないわね。頻繁にブレスにさらされ、獲物を障壁ごと噛砕き、なお欠けることなど滅多に無い自慢の牙を研ぎ澄ました
さあ、私が露払いをするから、アリカに傷一つ付けるような真似をしたら後で百倍返しものよ、ナギ。
「死にたくないなら――――どきなさい!!」
咆哮。それに気を上乗せし、衝撃波として叩きつける。これは、アランに聞いて以降使用している、ブレスの変化系。
そもそも龍の吐息は息だけでなく、そこに気を乗せて属性変換することで、
吹き飛ばされた
「ナギ、追い打ちは少し待ちなさい」
「なんでだよっ!」
馬鹿ね、やっぱり。仕方ないわね、少し講釈してあげるわ。
「今すぐに追えば、叩き潰して終わりね。でも、少し逃げさせて追えば、本拠地を叩けるわ」
「わあったよ。姫さんもそれでいいか?」
「うむ、少しでも多く潰せるほうにしよう。彼らは少しやりすぎた」
会話の最中も目を離していないことに気づいていないのか、
「さて、追いかけましょうか。逃げ切れると勘違いした哀れな狐を、ね」
その後すぐ、私たちは
マクギル元老院議員との相談によって、明日には法務官を呼ぶらしいわ。国内の勢力を一掃する気だと思うけど、うまくいくといいわね。
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ナギとアリカのデートシーンの裏です。表はありませんが。