いつもみたいにお願い、エターナルパルス」
『はい。マイマスター』
早朝の広場に私たちの声がある。
『それでは、スタート』
その声を合図に複数の銀色の魔力弾を浮かべ、用意していた的に当てていく。
『右後方の魔力弾にもう少し意識を向けてください』
言われた通りに意識を向けるが、いまいち加減がまだわからない。
『それではやり過ぎです。他のものが雑な動きになってしまいます』
案の定、注意をうけてしまった。
私が今やっているのは魔法の特訓だ。この頃は毎朝やっている。
何故こんなことをしているのかというと、魔法を使うということに対する経験が不足しているからだ。
私は時空管理局というものに所属している。そこでは、犯罪などを止めるためにやむなく魔法を使うこともある。
つまり、そこに所属している以上、魔法を使いこなすことは絶対条件。早いうちに経験不足を補なわなければならないのだ。
そんな理由から私はこんな特訓を始めた。
『マスター、徐々に的から外れてきています』
少し時間が経ってきた頃、魔力弾は的にはなんとか当たってはいるが、確かに外れてきていた。
(もっと、集中しないと……)
だが、そうやって意識し始めると逆に焦りが出て、さらに逆効果になってしまった。
正確に当てることもできなくなり速度も遅くなってしまった。
『……マスター、ここまでにしましょう』
エターナルパルスに止められ、今日の特訓はこれで終わりにすることにした。
とてもじゃないが今日の内容は良かったとは決していえない。少し前の頃のほうがまだましだった。
「どうして、こうもうまくいかないんだろ?」
『何か悩み事でもあるのでは? それが無意識のうちに気になってしまい、動きが悪くなっているという可能性もあると思いますが……』
……悩み事とまではいかないが、気になっていることはある。
数日前にみた夢のことだ。
妙に現実味があった気がした。
(でも、本当にどうしてここまで気になるのだろう? 今まで夢なんていくらでもみてきたのに。そもそも私が大罪人ってどういうこと?)
いくら考えてもどうしてここまで気になっているのか答えは出なかった。だから気になり始めたころから考えないようにしていたが、どうしても頭から離れなかった。
(これじゃ、本当に悩んでるみたい)
『マスター、どうしたのですか?』
「えっ?」
『やはり何か悩み事があるのですか?』
「……悩んでいるように見える?」
『はい。もしよければ話してもらえませんか? 何かアドバイスができるかもしれません』
私は話すべきどうか少し悩んだ。
正直こんなことを話しても、ただ余計な心配をかけるだけかもしれない。けれど……
(話して少しでも気が楽になるなら無駄じゃない)
『マスター?』
「……話すから、聞いてくれる」
『はい、もちろんです!』
「実は……」
『なるほど。そういうことでしたか……』
「どう思う?」
『心配する必要はないと思います。普通ならそう言ってしまいますが、マスターがそこまでその夢だけが気になるのならば、もしかしたら何かがあるのかもしれません。その何かまではわかりませんが……」
「そう。わかった」
『お力になれず、すみません……』
「気にしないで。それより、話を聞いてくれてありがとう」
『いえ。それではそろそろ戻りましょうか?』
「うん」
結局、何も解決はしなかったが、幾分は気が楽になった。
そうして私たちは、管理局の宿舎へと戻って行った……
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第一話です。コメントなどを残してくれると嬉しいです!