またまたいつもの昼に善吉と半袖は学食にいる もちろん半袖は今日も大量に注文して、数人分のテーブルをほぼ一人で占領していた
「人吉は何食うの?」
「流石に金がないから今日は弁当だ ……あ?」
「どしたの?」
「……忘れたみたいだ」
そういう日に限って忘れることはよくあるのだが、成長時期の高校生に昼抜きは辛いものがある
「一つもあげないから☆」
「わかってるよそれくらいな!」
半袖が昼を分けてあげることはなかった
その時食堂に一つのざわめきが起きた だんだんと人溜まりができていく場所がある 中心には何があるのか……?
と思ったら皆が善吉たちの方を向いて指を差す
『人吉善吉はあそこにいるのだけど』
「あっいた! どうもありがとう」
小柄な少女 ランドセルを着用してるあたりは小学生にしか見えないのだが
「あ……」
「もうっ善吉くん、あれほどお弁当を忘れないでって言ったよね!」
「だからって何で届けにくるんだよ!」
「人吉~、もしかして妹だったり☆」
「的外れなこと言うなよ不知火、妹だったら偉いって誉めてるよ てか俺に妹はいねぇ」
「ふっうーん? じゃあ誰なの」
「お母さん」
「お母さん☆」
「お母さん!」
驚いたのは半袖だけでなく、食堂にいた全員がその事実に叫びをあげていた どこからどうみても小学生にしか見えない小柄な身体、大人を感じさせない可愛らしいという言葉が似合う童顔 無邪気な笑いは子供そのもの
ただ見れば可愛い小学生 ただし内情は42歳、職業元心寮外科医の善吉の母親
「人吉瞳です よろしくね」
「よろしくね、じゃねえ! いったい何をよろしくするんだよ!」
「あひゃひゃひゃひゃ☆ 人吉のお母さん! あひゃひゃ☆」
意味のわからない自己紹介にツッコム善吉、そのテーブルの向かい側で大爆笑をしている半袖、ニッコリと微笑む瞳 小さい女の子二人に疲れる高校生男子といった図ができあがっていた
「ふぅ まあ弁当を届けにきてくれたのには感謝するよ」
「よかったじゃん人吉、お弁当があって」
「善吉くん ところでこの子は?」
「ああ、同じクラスの不知火 俺のともだーーーー」
「ガールフレンドの不知火半袖です よろしくお願いします、お母様☆」
「こちらこそよろしくね」
「違うから! 不知火! お母さんで遊ぶな!」
ようやく落ち着いて自己紹介が始まったと思いきや、半袖のイジリが入りややこしくなる場 善吉が場を取り直すもすでに気疲れしている様子
「俺と不知火はただの都合の良い友達 それ以下でもそれ以上でもねぇ」
「都合の良い友達?」
「よーするに、どっちかが放課後に遊びたいけどツレがいないってなったら呼べる友達って感じだよ それ以外でなら見捨てたりなんかもザラにある」
「なーんか楽しそうな関係ね なるほど、最近善吉くんのお金の使い方が荒いと思ってたらそういうことね」
ふーん、と見定めるように半袖を見る瞳 当の見られている半袖本人は大して気にすることもなく昼食を食べている
ここで瞳のお節介が発動する ポケットから二枚の券を取り出した
「都合がいいなら今度これでも行ってきたら?」
「何だこれ? 箱庭テーマパークプレミアムチケット?」
「そっ 特別に一日乗り物は全部無料、さらに昼食も用意してくれるから」
「ただし“カップル限定”か……」
ある意味予想は的中してほしくなかったが当たってしまった 無料とはいえカップルとなると半袖が食いつくかどうかは微みーーーー
「行く」
「不知火がいいなら構わないけど」
「無料より安い飯はない☆ あたしが行くのに条件は十分だよ」
そう言って一枚を善吉が取る半袖 それを丁寧にポケットに入れた
「あたしは一緒に行く人いないし楽しんでね じゃあ帰るから」
「あぁありがとお母さん」
「ありがとうございますお母様☆」
「頑張ってね半袖ちゃん」
女の子同士でつながる所があるのか変な会話をする二人 それに善吉はどういうことか意味を聞いていた
「頑張れって何のことだ?」
「さぁね 気まぐれじゃないの? あひゃひゃ☆」
その頬は微かに赤かったらしい
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人吉善吉と不知火半袖オンリーの話です 作者は恋愛好きなので書きたかったんだ