第六章「到着!地獄街道!」
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鍾乳洞を歩いて約1時間。
俺達四人はそろそろ見えるであろう地獄に向かい歩みを進めていた。
ヤマメ「そろそろ見える頃だよ」
光助「よ、ようやくですか・・・」
俺は先ほどの肩の痛みと溜まる足の疲労でもうひょろひょろと歩くだけだった。
キスメ「光助、だらしない」
パルスィ「全く人間は貧弱ねぇ」
傍らの二人がほぼ同時に呟く。
光助「いや、俺普通の人間ですから・・・・よっと」
緑色の鍾乳洞の終わりに差し掛かり、少し元気を取り戻した。
先ほどとは違い、大分体も楽になってきた。
ひょっとすると。
光助「この疲れってさっきの鍾乳洞の影響とかじゃないのかn」
パルスィ「まぁちゃんとした人間には耐えられなさそうな大気じゃないの?」
サラッとパルスィさんに遮られる。
そうなんだ。
光助「でも生きてますがn」
キスメ「やっとな」
今度はキスメに遮られる。
・・・・・そんなに嫌われているのかな。
まぁ、俺ってば基本人間だしなぁ。
と、先に見えた岩場から何やら楽しげな歓声が聞こえてきた。
ヤマメ「あれぇ?今日は何かの祭りだったかねぇ」
先に岩場から顔を出して覗いていたヤマメさんが呟く。
確かにワイワイと騒がしい人の喧騒と、太鼓やお囃子が聞こえる。
パルスィ「ヤマメったら、知らなかったの?」
後ろから来たパルスィさんが答える。
パルスィ「この前から地獄街道の広場からお酒が吹き出て大騒ぎになってたのよ?」
光助「お酒が地面から?」
キスメ「酒かい?」
なんとも面白い現象である。
ヤマメ「へぇ~、不思議なこともあるもんだねぇ・・・」
でも、とパルスィさんが続ける。
パルスィ「また異変か何かで騒がしくなるのかしらねぇ」
はぁ、とため息を漏らす。
ヤマメ「はは、たまにはいいんじゃないか?こんな事があっても」
にやりとヤマメさんが笑う。
異変・・・と聞いて少し心に引っかかるが・・・
ヤマメ「光助、見てみな」
ちょいちょい、とこちらに手招きする。
呼ばれているようだ。
光助「え?は、はぁ」
呼ばれるままに岩場の先に移動する。
するとその先に広がっていたのは・・・・
ヤマメ「ここが地獄の中心街『地獄街道』さ!」
そこは何とも広大な町だった。
光助「うわぁ・・・」
町の造りは城下町の様になっていて、その中心を線を引くように街道が続いている。
それより驚いたのは、この町の広さだった。
優に山一つ分の面積があるだろう広さに所狭しと建物が配置されている。
その余りにも広大な風景にただただ息を呑むばかりだった。
光助「す、凄い・・・・」
ヤマメ「凄いだろう」
ヤマメさんが俺の横に立って同じ様な感想を呟いた。
と、その時。
パルスィ「さ、着いたわ。何処へでも行きなさい」
光助「へ?」
キスメ「お」
いきなりトンッ、と背中を押されてその岩場の下に落ちる俺。
押された先は・・・・・・崖であった。
光助「え・・・えぇ!?あぁああああああいやぁああああああ!!!」
状況を理解し、再び絶賛降下中。
先程と違う点は手元にキスメ入り桶を持っている事だ。
ヤマメ「あ~・・・パルスィ」
パルスィ「フン、知らないわよ」
遠くからそう聞こえて、ヤマメさんがこちらに降下してくるのが見えた。
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光助「うぅううううう・・・!!!」
バタバタと頬を風にたたかれて真下へ降下していく。
高層ビルから落ちてるみたいだ。
その頃、腕の中の桶妖怪は。
キスメ「コウスケ、だらしない」
何とも平然とした顔でこちらを見ていた。
普段から落ち慣れている桶妖怪ならこの程度の落下なら造作も無いのだろうが。
光助「らから、たらのにんれんらっていっふぇるへひょぉ~!!」
頬を風に叩かれながら何とか答える。
キスメ「よっと」
と、桶妖怪が身を乗り出した
その首の下は見えなかった服の部分が露になる。
光助「え、ちょ、お尻、ふわっ・・・・///」
彼女ったらなんとも透け透けな空色の衣を纏っているではないか。
・・・・いくら妖怪と言えども堂々とサービスしすぎだろうとか全力に思ってしまった。
そんな不謹慎なことを考えていると・・・
キスメ「それよ」
ビシュン!!
あまりの姿に目を覆う俺の目の前で両手を広げて縄を展開した。
その縄は上へ上へと昇り・・・
サクッ
っと、上で小さな音を立てて止まった。
どうやら上の天井に突き刺さったようだった。
キスメ「・・・よし」
キスメが小さな声で呟き、そして
キスメ「コウスケ、しっかりつかまってろ」
光助「ひぇ?」
次の瞬間
ヒュー・・・・ガッ!
光助「あオゥフッ!!」
急に落下が停止し、俺はその状態のまま勢いよく引っ張られて止まった。
数秒のち・・・
光助「・・・・これ、打ち所悪かったら鞭打ち病になりそう」
何とか息を吹き返し、呟く。
キスメ「命あったんだからありがたくおもえ、コウスケ」
キッパリと言い切る桶妖怪。
それもそうか。
光助「あ、あぁ・・・・ありがと、キスメ」
キスメ「さん、だろ」
光助「えぇ?」
キスメ「"さん"付けしろよ」
そういえば、この妖怪には「ヤマメさん」や「パルスィさん」みたいなさん付けしてなかったな。
・・・・なんでだろう、ルーミアやチルノには呼び捨てだったのに、
パチュリーさんや咲夜さんにはさん付けしてしまう。
多分、威圧感の違いなんだろうなきっと。
しかし、助けて貰った相手に対してそんな事言えないので・・・・
光助「いやだって、"さん"なんて付けたらフレンドリーじゃない感じしないか?」
なんとも粗末な理由を付けて切り抜けようとする。
そう、なんとなく。
キスメ「ふれんどりー?」
首を傾げる桶妖怪。
光助「いや、気軽に話せる仲って事さ」
キスメ「そんな仲だったか?」
そうはっきり言われると微妙なんだけど。
光助「いやね、ついて来た時からそんな感じしたんだけど・・・」
ここでもうちょいと理由付けをしておく。
キスメ「・・・・」
そして少し考える素振りを見せる桶妖怪。
ルーミアに食われそうななった時もそうだけど・・・・
こうやって何かを思案する女の子の様子って、容姿に合わずに真剣だよなぁ。
キスメ「・・・・それよりはやく降りろ」
暫く考える素振りについて考えに耽っていた俺に桶妖怪が言う。
光助「へ?」
キスメ「下に着いた」
光助「あ」
成程、見ればもう地面が真下に来ていた。
だいたい30cmくらい上で止まっている感じだろう。
ヤマメ「おぉ~い」
そこへ、ヤマメさんがスルスルと糸を伝って降りてきた。
ヤマメ「大丈夫だったかい」
光助「えぇ、なんとか」
キスメ「私のおかげでな」
ここぞとばかりにキスメが付け加える。
パルスィ「あれくらいの距離で妖怪に助けてもらうなんて、人間は貧弱の極みね」
そこへ、ふわりと上から降りてきたパルスィさんがやってきた。
いや、物凄い距離でしたが。
ヤマメ「すまないね、人間の扱い方が分かる妖怪はそうそういないんだよ」
てへへ、と申し訳なさそう(?)に頭を掻いてあやまる。
でも、キスメが居なくてもきっと間に合っただろうし、敵意は無さそうなので許してしまう。
・・・・地上から残り30cmでしたが。
光助「ははは・・・」
俺は心の中でそう一人ごちた。
ヤマメ「下にも着いた事だし、先に進もうかね?」
光助「は、はい」
俺はしがみ付いていたキスメの桶から飛び降り、地面に飛び降りた。
すると
光助「よっ・・・え、うわ、熱ッ!!」
急激に足を襲う熱。
すげぇ熱い!
靴を通してでも伝わってくる熱が感じられた。
言うならば真夏の砂浜を裸足で歩いている、といった感じだ。
ヤマメ「ど、どうしたんだい」
ヤマメさんが心配そうにこちらを覗く。
光助「いや、何だかここ熱くないですか・・・?」
足踏みしながら答える。
パルスィ「地底だから当然じゃない」
サラリとパルスィさんが答える。
あぁ・・・
なるほど、ここは地底だから地熱の影響を受けやすいのか。
しかしこれでは出る前に火傷で行動できなくなるかもしれない。
進めるのはここまでなのか・・・・そーなのか。
と、たしたしと足踏みしながらルーミアっぽい事を思っていると。
ヤマメ「・・・・熱いんだね?」
何だかヤマメさんが手から糸を引いてこちらに来る。
そう・・・・そのポーズはまるでどこぞやの世紀末殺人コマンド部隊の隊長のように。
ふふふーどうしたーおじけずいたのかー、みたいな
ま、まさか・・・
地獄に耐性のない人間と思って俺を処分する気では!!
そうか、やはり妖怪にとっては人間は食料であり害悪であるから消すに越したことはなかったのか!
ここで死んでしまってはパチュリーさんとの約束も、ルーミアの予約も取り消されてしまうのだろうな・・・
ごめん、かぁさん、ぼくのピアノ(謎
ヤマメ「ほいほいっと」
光助「ニコrー!!・・・・・へ?」
シュルシュルと細い糸はヤマメさんの手を離れ、俺の足元に集まっていく。
それは段々と靴の形に合わせて縫い合わされていき・・・・
ヤマメ「これでよしっと」
なんと、俺の靴を完全にコーティングしたのだ。
ヤマメ「これなら地熱の影響を受けずに歩けるだろう?」
ヤマメさんが得意そうに胸を張る。
光助「あ、熱くない!ぜんぜん熱くない!」
何だか妙に重くなった気がするが、熱から身を守る事が出来たのだからまぁ良しだろう。
ぱたぱたと地団駄を踏む。
それから、
光助「いやぁ、本当に何から何までありがとうございます・・・・」
なんとなく申し訳なさそうに。
ヤマメ「まぁ・・・・なんだね、それはちゃんと地上に着いてからにしな」
ヤマメさんはひらひらと手のひらを泳がす。
光助「これで何とか歩けるな」
キスメ「コウスケ、はしゃぐな」
光助「何かにコーティングって結構嬉しいのさ、贈り物しかりプレゼントしかり」
キスメ「そうなのか」
光助「そうなんだー」
そんな俺達のやり取りを見ていた二人の妖怪は・・・。
パルスィ「全く、そんな世話焼いて・・・・これだからおばぁちゃん体質は」
ブツブツとパルスィさんが愚痴る。
ヤマメ「いいじゃないかね。ここんとこ暇だったし、面白そうだしねぇ」
それに、と続ける。
ヤマメ「ここまで来たんなら妖怪としてのプライドもあるもんだろう?」
パルスィ「そういうものかしらね・・・」
そう言ってため息をする。
ヤマメ「さぁ、街道まで行くよ」
光助「はぃ」
ヤマメ「きびきび進め」
パルスィ「やれやれ」
そうして「街道」の道を歩み始めたのだった。
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あれからまた歩いて街道の入り口の巨大な門の前に立った俺達であったが・・・。
光助「こ、これは」
入り口から凄い人波・・・・いや妖怪波だった。
所狭しと並んだ町並みから出てきたであろう妖怪達がごったがえしており、出店も隙間無く陳列している。
所々から聞こえるお囃子、太鼓の音、妖怪達の喧騒・・・・。
それは大きな祭り、縁日、はたまた初詣の日の神社のようであった。
光助「凄い混み様だ・・・」
某夢の遊園地のような混んだ光景には慣れていたが・・・・
なにしろ皆、異形の妖怪である。
その大半はカラフルな色をした妖怪である。
青鬼赤鬼なんてカラー魔物は昔話にしか聞いたことなかったので、見慣れていない俺としては少々異様な光景だ。
ろくろ首やら百目やら小豆洗い・・・・あれはもしや砂掛け婆か?
ヤマメ「一度はぐれると会えなくなるかもしれないからね、しっかり手を繋いで行くよ」
先陣を切っていたヤマメさんがこちらに手を伸ばしてきた。
光助「あ、はい」
その手を掴む。
キスメは手に持っているのでパルスィさんをヤマメさんに繋がなければならないと思ったが・・・・
光助「パルスィさん?」
しかし振り返ると
パルスィ「何よ、私は迷わないし手は繋がなくてもいいわ」
屋台で手に入れたであろう食べ物や水風船ヨーヨーやお面を全身に纏い立っていた。
というか、速っ!
ヤマメ「まぁ、ここらではぐれて危ないのは光助だけだからね」
喧騒から聞こえてくるヤマメさんの声。
まぁ、迷子属性持ってるのは間違いないのだけど。
グゥ~
光助「あ」
キスメ「お?」
と、やはりお腹は減るもので、屋台の匂いに釣られてお腹が鳴ってしまった。
抱えたキスメには直で聞かれてしまったかもしれない。
ヤマメ「ありゃ、まぁ仕方ないね・・・・ここらで飯にしようかね」
光助「あっ、いやもう何かもう・・・・すいませんですハイ」
ヤマメさんが笑う。
いやもうなんともお恥ずかしい。
・・・・というか、この喧騒でこの音が聞こえるものなのだろうか・・・
キスメ「人間の体の状態なんて簡単にわかるぞ」
今の思考を読まれたのか、キスメが答える。
光助「そうなのかー」
なかなかどうしてこんな返答しか出来ない俺であった。
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俺達は屋台の喧騒を少し離れて、裏手の路地の公園へ向かった。
光助「というか、公園なんてあるんだな・・・・」
まぁ、妖怪にせよなんにせよ生活圏内なら公園の一つはあっても不思議ではないが。
意外とここには人・・・いや妖怪達は少なく、休むにはうってつけの場所だった。
よっこらせ、とベンチに腰を下ろす。
そういえば、さっきからヤマメさんが居ない・・・・
何処へ言ったのだろうか。
それはそうと・・・・
ジー・・・・
ベンチの隣の遊具に腰を下ろしたパルスィさんを見る。
パルスィ「な、何よ人間・・・・そんな目したってあげないんだから」
光助「エー」
パルスィ「エーじゃなくて!」
よく見てみると、先程購入したであろう焼きそばやらたこ焼きやらが彼女が持っている布袋に入っているようだ。
妖怪って人間だけじゃなくても食べるんだな・・・・とか思ってしまう。
しかし、うらやましい。
光助「と言っても、ここじゃどんな貨幣が使われてるのかわからんしな・・・・」
一応財布は持ってはいるが、ここじゃ役に立たないだろうと決め付けていた。
まぁ、この雰囲気からして江戸時代的な何かを感じる。
やっぱ・・・・文とか銭とかかな?
ヤマメ「はいよ」
光助「うぅん・・・・はい?」
俺がうんうん唸って考えていると、ヤマメさんが何かを差し出してきた。
光助「あの、これは?」
ヤマメ「あたしからの奢りだよ、食べな」
屋台といえばこの形、プラスチックケースにパックされた焼きそばだった。
なんとありがたい。
光助「あ、ありがとうございまs」
キスメ「おい、コウスケ、私にも寄越せ」
横に置いた桶からキスメが手を伸ばす。
光助「おぁ!ちょっと!」
キスメ「何だ、独り占めする気か」
光助「いやそうじゃないけど、いきなり手を出されたらこぼしちゃうでしょ」
そんな俺達のやり取りを見かねたか、ヤマメさんが言う。
ヤマメ「ほら、キスメ、あんたのもあるから」
キスメ「気が利くな」
いや本当に。
こうして少し遅めの昼食を取った俺達であった。
そこに・・・・
ザッ・・・・
?「んん?なんだね、面白そうなことになってるじゃないか」
忍び寄る赤い角・・・・
-続く!-
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やっと書けた・・・・六章目で御座います!
これ書いてる時夜中だから本当・・・・何書いてるのかだんだん分からなくなっちゃって、あかん