第七章「参上!地獄の姉御!」
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現代・・・・
孫「あぁ、おじいちゃん、これロック掛かっててパスワード分かんなきゃ開けられないよ」
僧侶「なぬ?"かすたーど"とな?」
孫「いや全然違うから」
例の光助が落とした携帯を僧侶の孫が見ていた。
この僧侶の孫はこの神社から遠くの大学に通う為に別居し、たまに帰ってくるのである。
孫「・・・・中身が見れないんじゃ落とし主もわかんないよ、きっと」
孫が首を捻った。
追記すると、光助の携帯は開いた状態では誰にも見られないようにパスワードで鍵が掛けてある。
孫「手っ取り早く警察に届け出た方がいいんじゃない?」
もっともらしい答えを提案する。
僧侶はうむむ、とかぐぬぬ、とか言うと首を縦に落とした。
そして一言。
僧侶「そうじゃな」
孫「ははは・・・・」
じゃ最初からそうしてよ、という心の声は孫だけではなかった。
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光助「・・・・・う~ん」
俺は気だるさと共に起床した。
この感覚はもう慣れっこになってしまってはいたが・・・・・
光助「ここ・・・・どこ?」
俺は今、とてつもなく長く広い大広間に居た。
床は全面畳張りで、天上は忍者が出てきそうな木の板か何かで出来たタイルが敷き詰められている。
何かこう・・・・旅館の宴会場みたいな。
それよりも問題なのが・・・・
光助「・・・・・うわッ!?」
そこらじゅうに、大量の妖怪だか少女だか何だかが突っ伏して眠っていたのだ。
光助「い、一体何が・・・・」
彼女達からは時々寝言のような鼾の様な音が聞こえる。
光助「これは・・・・お酒・・・・?」
ふとそこらを見ると、長テーブルやら座布団の上やら畳の上やらに転がっている酒瓶やおちょこ。
どうやら宴会をしていた様だ。
成程。
彼らからの匂いからしても見た目からしても・・・・どうやら酔っ払っている様だ。
最初の印象は・・・・そう、まさに地獄絵図。
光助「何で・・・うイテテ」
起き上がろうとした時に急激に頭痛が襲う。
どうやら自分も酔っ払っていたようだ。
二日酔いとか聞いた症状に似ている。
光助「って俺、まだお酒飲めないし・・・・」
と、未だかつて飲酒をした事が無い(19歳ですし)自分に驚く。
・・・・と同時に足元の"角"に気付いた。
光助「え・・・・うわギャ!」
と、唐突にも叫んでしまった。
そこには"赤い角付き"の金髪の女性が寝転がっていたのだ。
しかも纏っている着物は危なげにはだけていて、目のやり場に困る。
?「ん・・・・」
その女性が小さくうめき声を上げる。
光助「ッ!・・・・・」
思わず自分の口を塞ぐ。
何だか嫌な予感がして静かにその場を離れよう・・・・・としたが。
光助「・・・・!!(アッ?!何これ!?)」
先程はボケてて気が付かなかったが
なんと、その角女性は俺の足を膝枕にして眠っていたのだ。
これなんかデジャヴ・・・・
光助「(よっこいしょ!!・・・・っとこれは抜けそうに無いかな)」
細心の注意を払いながら足元の角女性を退けようとする。
光助「(っと)」
起こさないように慎重に足を・・・・抜く。
さながらイライラ棒のように。
そーっと・・・・そーっと・・・・
?「・・・・んあ?」
ガシッ!
光助「うっ!?」
あと少しの所で、足首を掴まれてしまった!
何てこったい!
更に・・・・
光助「(ういだだだだだだだ!!)」
急激に襲う足の痛み。
万力で締め上げられている感覚。
折れる!折れてまう!!
というか
光助「(何でこんな事になってしまったのだろうか・・・・)」
痛みを耐えながら回想を開始する・・・・
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ヤマメ「ほれ、光助、歯に青海苔ついてるよ」
光助「え?どの辺ですか?」
ヤマメ「このひぇん」
光助「ここれふぁ?」
ヤマメ「いや、そりゃ反対側だね」
地獄街道の祭り騒ぎから離れた俺達は、ささやかな食事会をしていた。
キスメ「おい、そのたこ焼き1つ寄越せ」
パルスィ「え?自分で買ってきなさいよ、すぐそこの屋台だし」
キスメ「・・・・落とすぞ」
パルスィ「チッ!わかったわよ!・・・・はい、あーん」
キスメ「あーん」
と、その横ではいつの間にか移動したキスメとパルスィさんが遊具の上で話していた。
なんとも微笑ましいやり取りに目を細めてしまう。
そういえばこの人(妖怪?)は水橋パルスィ。
ヤマメさん曰く、"内なる粗い心を引き起こす"能力があるとか何とか。
とても物騒な能力ではあるが、今は心配無さそうだ。
・・・・と、ここで先程の"落とすぞ"という発言について気になったので、ヤマメさんにこっそり聞いてみる。
光助「そういえば、さっきのキスメの"おとすぞー"って一体何なんですか?」
ヤマメさんがソースせんべいを頬張りながら答える。
ヤマメ「ん?・・・・あぁ、あいつら昔よく喧嘩してたんだけど、
ほら、つるべ落としの能力っていうのかね・・・・
いつだったか頭に桶をガーンって落とされて卒倒したもんだから、怖いんだろうさ」
変なジェスチャーを入れながら喋るヤマメさんが言う。
光助「ははは」
ドリフみたく頭に盥を落とされるパルスィさんを想像してつい笑ってしまった。
くるりとこちらを向くパルスィさん。
パルスィ「あぁ!?ヤマメ!余計なこと言うんじゃないわよ!それに人間ッ今、笑ったわね!?」
赤い頬に鬼の形相。
余計に可笑しい。
光助「いや!笑ってませんって!!・・・・くくく」
ツボに入ったらしく、こらえると余計におかしくて堪らない。
パルスィ「こら!待ちなさい!」
光助「いや!はっはっは!す、すいませんって!!」
追いかけてくるパルスィさんに追いつかれまいとベンチの周りを走る。
キスメ「お、チャンス、頂き」
ヤマメ「元気があるってのはいいことだねぇ・・・・あ、キスメ、あたしにもひとつおくれ」
キスメ「はいよ」
なんとものんびりした光景である。
?「おうおう、なんだか騒がしいと思ったら・・・・あんた達だったとはねぇ」
光助「いやサーセンギブギブ!・・・・え?」
走り疲れた頃に唐突に上から聞こえる澄んだ声。
空から聞こえたというよりは、どうやら隣の民家の屋根の上から聞こえた感じだ。
上を見上げると、何だか人影が見える。
?「よっ」
その声の主はそう小さく言うと、こちらに向かってジャンプして・・・・
ヒュッ・・・・ズザッ!!
っと着地した。
光助「おー」
何となくパチパチと拍手してしまう。
その着地点には・・・・
長いブロンドヘアに体操服・・・・
紫と赤の縞々のロングスカート・・・・
そして・・・・赤い角、に星マーク
ヤマメ「あぁ勇儀、やっぱあの祭囃子の太鼓はあんただったかい」
呼ばれたその妖怪・・・・鬼だろうか・・・は、こちらに振り返り
勇儀「よう、ヤマメ、パルスィ、キスメ」
腕をスッと上げて挨拶をかます。
・・・・彼女もゲームからではないが、見た事のある顔だ。
星熊勇儀。
確か3面のボスだったか何とかで、何でも山をも動かす怪力の持ち主だとか。
特徴はその額から生えた赤い角に、その角に貼り付けられているような星マークだ。
見た目からしてもそうだが、やはり元気そうな印象と・・・何故か凄い威圧感を感じる。
やはり"鬼"だからだろうか。
勇儀「と・・・・そっちはもしかして人間かい?」
喋り方とかヤマメさんに似てるなーとか考えていると、こちらに目を向けてきた。
光助「は、はい、光助と申します」
とりあえず自己紹介。
勇儀「ふーん・・・・・で、なんでまた」
光助「へ?」
勇儀「いやさ、人間がこの地獄に来るなんて珍しいなとか思ったのさ」
手をひらひらさせて答える鬼。
最もな質問である。
光助「あぁ・・・・実はd」
ヤマメ「実はかくかくしかじかかようかようでねぇ・・・・」
説明を始めようと思ったら隣のヤマメさんが代わりに色々と説明してくれた。
パチュリーさんの時もこんな感じだった気がする。
そのままヤマメさんに説明を任せる。
約数分後・・・・
勇儀「そうだったのかい・・・あの隙間妖怪がねぇ」
ヤマメ「そのようだねぇ」
うぅん、と二人して考え込む。
光助「もしかして、このお祭りの元であるお酒が噴出したのも関係あるかもしれませんね」
そうだ、紫さんは"結界が崩れる"とか言っていた。
ならばここでおかしな現象が起きるのも頷ける。
勇儀「そうさなぁ・・・・でもさ」
と勇儀さんが続ける。
勇儀「こんな大きな事件が起きるなら、神社の巫女も地獄に飛んでくるだろうに・・・・おかしいねぇ」
神社の巫女。
たぶん、ここの世界の主人公であろう博麗霊夢の事だろうか。
さっきの神社には居なかったが。
勇儀「本当に誰も居なかったのかい?」
再度尋ねてくるが・・・・
光助「はい、誰も居ませんでした」
これに限る。
勇儀「へぇー・・・じゃあどっかの異変でも解決しに行ったのかもねぇ」
ヤマメ「それが一番あてはまるねぇ」
うんうん、と考える一同。
何だか凄く申し訳ない気分になる。
いや、俺は何もしていない・・・・・気がするのだが。
そういや、紫さんがこっちに来る前に近所の神社の神様がどうとか・・・
パルスィ「まぁ、いいんじゃない?今日は結構楽しんでる奴ら多いし」
と、何かを思い付きそうになった所で今まで黙っていたパルスィさんが口を開く。
何をしていたかと思えば、ブランコを漕いでいたようだ。
キスメはその隣のブランコに乗っている。
勇儀「・・・・うーん、そうだな、とりあえず今はこの祭りを楽しもうじゃないかね」
ポン、と手を打ち勇儀さんが切り出した。
重苦しい空気(?)を打ち破り、提案を出す所等、やはりイメージ通りの人・・・・いや鬼だ。
勇儀「それで早速なんだけど、ヤマメ、ちょっと手伝って欲しいんだ」
と、勇儀さんがヤマメさんに話しかける。
ヤマメ「お?何だね」
勇儀「大体の祭りの時に上げる化け提灯あるだろ?あの糸がまた切れ掛かってるんだ、直して貰えるかい」
ヤマメ「あぁ、あれ・・・・というかまたなのかい?」
勇儀「だいぶ年季入ってるからねぇ」
化け提灯。
どうやらお祭りの時に使う提灯か何かだろうか。
こう・・・大きな提灯を想像する。
勇儀「後は・・・・・と、光助」
光助「は、はい!?」
唐突に名前を呼ばれてびっくりしてしまった。
勇儀「まぁ・・・・さっきに事情もあろうだろうけど、せっかくだしここの祭りを楽しんでいきな」
と、その内容は何とも暖かいものだった。
何だろうな・・・姉御さん、って感じだな。
勇儀「そういやパルスィ、あんた最近見ないけど」
パルスィ「え?そうかしら」
と、今度はパルスィさんの方に向かって何やら話していた。
後ろ姿をじっと見てしまう。
キスメ「惚れない方がいいぞ」
光助「へあッ!?」
急に下方から聞こえた声にびっくりした。
いつの間にかキスメが俺の足元に移動している。
さっきはブランコに居たと思ったけど・・・。
キスメ「あぁ見えても鬼だからな、人間なんて釣り合う相手じゃないぞ」
何を言っているんだこの桶は。
光助「だ、誰がだよ!そんな事思ってないって・・・・」
そうだ、ここは幻想郷。
俺の目的は一刻も早く自宅、いや元の世界に帰る事だ。
しかも架空の人物に惚れるなど・・・・いや架空か?分からんが・・・・
勇儀「おーい、何してんだい?早くいくよー」
ヤマメ「行くよー光助」
パルスィ「来るなら早くしなさいよ、人間」
光助「あっ、はーい!」
と、いつの間にか公園の出口にいる御三方に返事をしつつ、脇の桶娘を抱えて俺は出口に駆けて行った。
-続く-
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第七章目です
ついにあの御方がお見えになられます。
一番好きなキャラクターなので、気合入れて書きあげました・・・と言っても今回では触り部分でしたが