No.444852

幻想郷帰宅日記 第三章

wasarattelさん

三次会ならぬ三章目です。

※キャラの言動は原作とは一切関係ありません

2012-07-03 00:40:47 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:626   閲覧ユーザー数:619

第3章「混沌!紅魔館!」

 

 

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湖を抜けて早20分程・・・

 

 

すっかり定位置となった肩の人食い妖怪ルーミアと、

霧の湖でついてきた氷の妖精チルノとやらと一緒に「人里」を目指していた訳なのだが・・・・

 

光助「どこら辺にあるのか・・・その里は」

 

完璧に迷っていた。

しかも、最初と同じ様な構図の野山である。

湖を抜けた先もまた森林が続いており、朝ではあるが高い樹木に囲まれて薄暗かった。

見通しの良くない大自然の中を妖怪達と人間は進む。

 

ルーミア「そーなのかー」

チルノ「いいから早くあんねいしなさいよね!このバカ人間!」

光助「へいへい・・・」

 

と、前方で氷の妖精に罵倒される。

・・・案内な、という突っ込みは口の中で消えた。

 

そもそも里の場所を知っている(のだろうか・・)のはルーミアではあるが、

俺は彼らに"おいしいものがある場所"と言ってしまったので、俺の責任と言えば当然である。

 

光助「・・・・とはいっても、方向も何もあったもんじゃないからなぁ・・・」

チルノ「だいたい、けいやくせいが無さ過ぎるのよ!」

光助「・・・計画性な」

チルノ「何よ!?」

光助「なんでもねぇですよ」

 

まぁ妖精の罵倒は置いといて・・・・

一応、とはいっても発案者(?)であるルーミアに尋ねてみる。

 

光助「・・・なぁ、どこら辺とか覚えてないか?」

ルーミア「なんとなくとんでたら人間がいっぱいの場所にでたのー」

俺の肩の上でバランスを取りながらケタケタと笑いながら答える人食いの妖怪娘。

 

なんとなく、か・・・余計に探しにくくなるのではないか。

・・・そもそも妖怪には日数の経過とかあるのだろうか?

こうしている間に日が暮れてまた危なっかしい夜の山をうろつくのは勘弁願いたい。

 

チルノ「おっ、カエルはっけん!」

前方の妖精はというと。

 

チルノ「必殺!冷凍パッーク!」

カチーン!

 

ものの見事に遊んでいた。

 

チルノ「まったく!あたいったら性急ね!」

光助「最強ね・・・・と、こうなったら自分の勘で行くしかないかな」

 

ルーミアの意見が当てにならなくなった今、この中で頼れるのは自分自身と踏んだ。

と、考えて歩いていた矢先・・・

 

光助「おや、あれは・・・?」

 

前方に緑色ではない"何か"が見えた。

緑一色の森の中では違う色のものは一際目立つ。

更によく目を凝らして見てみると・・・・

 

光助「・・・・・・・・・・・なんじゃありゃぁ」

 

 

森の中には不釣り合いな「真っ赤」な屋根が見えたのだ。

 

 

今見えている部分は屋根だけであるのだが、その創りから洋風の建物である事が判る。

見た感じどうやら人間が建てたらしき構造である。

 

光助「・・・・こんな所に民家?・・・・・・や、やったか!?」

 

なんとも死亡フラグな発言だと思いつつも足は早まる。

・・・しかし同時に嫌な予感もする。

こんな場所に民家なんてある訳ないからだと思っていたからだ。

 

だが、物好きなお金持ちが森林に別荘を建てるなんて外国じゃよくある事だとは知っていたので、これもその手の類の建造物なのだろう。

なにはともあれ、この森林帯から抜け出せる事は有り難いと思った。

 

 

とにかく行ってみるか・・・・

 

 

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妖怪一人と妖精一匹を連れた俺はすたこらと歩いて建物の前に来た。

 

初め見た感じのまま、それは何とも真っ赤な建物だった。

建物・・・と言うには少々大きい感じではあったが、それよりはその異常な赤さが気になる。

"赤いお屋敷"と言った所かな。

 

光助「・・・・・・お、誰か居るじゃないか」

 

どうやら門の前で何かしてるらしい人間・・・・断定は出来ないから"人型"、を発見。

緑色の帽子と合わせたような緑色の中華服が特徴的だ。

よく見ると後ろ向きの仁王立ちで立っている。

 

光助「どう・・・・?怪しい感じに見える?」

とりあえず横と上の妖怪と妖精に聞いてみたが、

 

チルノ「あたいは性急だから怖気づいたりしないわ!とつげきぃ!」

光助「それを言うなら最強な・・・」

チルノ「あ?何だって?」

光助「いんや」

ルーミア「いってみよー」

 

この調子である。

肩のルーミアに頭をぱたぱたと叩かれ、やれやれとばかりにその門の前に向かう。

しかし、門の前の人・・・・は微動だにしない。

 

光助「・・・・すいませーん、ちょっとお聞きしても宜しいですか?」

 

なんとなく丁寧な言葉で聞いてみる。

まぁ初対面なら当然だろう。

 

?「・・・・・」

 

返答がない。

聞こえていないのだろうか?

少しだけ近付く。

 

光助「聞こえてないのかな?・・・・すんませーん!!」

 

今度は大声で話し掛けてみたのだが・・・応答なし。

これだけの大声で言っても動かないとは。

おかしいな・・・

 

ルーミア「えーい」

 

ガプリ!

その瞬間、なんとルーミアが肩から飛び降り、門の少女の頭に齧りついたのだ!

いきなりの事態に少々目を点にして間が空いてしまったが、なんとか意識を取り戻して状況を理解して叫んだ。

 

光助「・・・・アワァ!?ちょっ、や、やめろ!やめろって!!」

必死に門の前で立つ人間(この風貌からして少女か?)からルーミアを引き剥がす。

 

?「・・・・ん」

光助「あ!・・・・す、すいません!お怪我はありませんか!?」

 

頭に吸い付く様に齧り付いていたルーミアをなんとか引っぺがす事に成功し、謝りながら尋ねたのだが・・・・

なんとその少女。

 

 

?「・・・んがー」

 

 

ぐっすりと寝ていたのである。

それもさっきから変わらない直立体制で。

 

光助「・・・・な?!立って寝てる?!」

 

余りの事態に驚きつつも、彼女の正体を把握、理解した。

 

門番の少女、美鈴。

確かゲームの内容では紅魔館で門番をしている妖怪・・・・妖怪?

門番が寝てていいのかなという野暮な事は思わない。

 

光助「な、なんてこった・・・妖怪だったのか」

じゃあここは『紅魔館』って事か・・・・確かにその名の通り"赤い"な。

 

そんな事よりも人間じゃないのか、と少し残念な気持ちになり少し項垂れる。

が・・・・

 

ルーミア「そーなのかー」

チルノ「なになに、なにがどうしたってぇのよ」

 

・・・二人を見るとなんでも無くなる。

これ、慣れって言うのかな。

それとも他が居る事に対する安心っていうのかな・・・

妖怪相手に・・・・やばい、末期かも。

 

美鈴「んがー・・・zzz」

光助「と、とりあえず彼女に里への道を聞かなければ・・・」

と、もう一度聞こうと試みた時・・・

 

ギギィイイイ・・・・

 

チルノ「おぉー、あいてるじゃない」

なんとチルノが門を抜けて扉を開けてしまったのだ。

 

光助「おぉい!勝手に何を」

 

と、ここで考えが止まった。

確か、紅魔館って吸血鬼とか魔女とかDIO様みたいなのがうろついてるとか何とか聞いた事が・・・・

正直全部クリアしてないし、あんま見た事無いから的確な事は言えんが。

嫌な予感はする・・・と言ってもここ(幻想郷)に来てからいやな予感意外はしないのであるが。

 

・・・いや、その前に常識的に考えて他人の家に勝手に上がり込むなんて有り得ないし、失礼だろう。

 

光助「やばいって・・・絶対やばいって!」

そんな慌てたチキン人間野郎の俺を尻目にして・・・・

 

ルーミア「いこー」

チルノ「おもしろいかもしれないじゃないの!」

いつの間にか肩に乗り戻ったルーミアとチルノが急かす。

 

そう言う肩に乗るルーミアは下りようとしない。

・・・・そういやルーミアの言う"予約"って間は離れられないって事なのかなぁ。

腿から頭と肩に掛かる力が大分強くなった様な・・・

 

光助「・・・・仕方ない、中の人に聞くか」

 

素直に諦めた。

でも確か・・・・中に住んでいる魔法使いだか何だかは冷静で知的だったかも知れない。

まぁこの情報も友人の受け売りだし何が真実かなんて分からないが、少なくとも森に居るよりかは打開策があるんじゃないかと・・・・

 

もしかしたら、この妖怪達との契約(約束か)も切ってくれるかも知れないし。

と、俺は呑気・・・限りなく呑気に考えていた。

そうでなくてはこんな状況でやっていけないと思う。

 

光助「よし・・・・・・・・行くか!」

俺は決心し、チルノに続いて紅魔館に足を踏み入れたのだった。

 

 

 

 

・・・・・"人"は限りなく1人しか居ないという事を忘れて。

 

 

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あれからちょっと経った紅魔館の門・・・・

 

 

美鈴「んがー・・・・・・はっ!何奴っ!!」

 

 

頭に歯形を残した美鈴が起きた。

 

 

 

 

 

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紅魔館内部に見事潜入した俺達一人と一体と一匹は、途方もなく長い廊下を歩いていた。

 

玄関から入り、まず出たのがこの長い"回廊"だ。

通路には赤絨毯が長々と敷かれ、隅の方には彫刻と壁画が等間隔に飾ってあった。

何となく西洋の館を彷彿とさせる。

 

光助「何だか物凄く静かな館だな・・・・・」

 

館というからにはやはり使用人や執事やらが居るんだろうかと思っていたが、誰も居ないのである。

紅魔館と言ったら主と従者、と聞いた事があるような無いような・・・・

大体のホテルとかの場合だとベルボーイだかが出迎えて用件を聞くとかだよなぁ。

妙な静けさの中、うんうんと記憶を絞り出して歩いていると。

 

チルノ「お?・・・・おぉい!ここに扉があるよ」

ルーミア「そーなのかー」

光助「え?・・・あぁ、本当だ」

 

なんと、いつの間に壁画が並ぶ廊下の横に大きめの扉が。

 

・・・大きさは4m程だろうか、巨大である。

しかし巨大であるにも関わらず、この暗い廊下という事もあり非常に見難い。

このまま考えながら歩いていたらすっ飛ばしていたかもしれないな。

索敵も兼ねてくれたチルノには少しばかり感謝する。

 

光助「・・・・よし、開けてみるか」

何だかこの廊下は妙な寒気がしてずっと留まる気にはなれなかったので、早速扉を開けた。

ギギガゴゴゴゴ・・・・と、大仰な音がして扉が開く。

 

 

その先にはーー・・・

 

 

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美鈴「た、大変ですよー!咲夜さぁーん!!」

 

先程の事態から起きた美鈴が従者を呼びに館へ入った。

どうやら頭の歯形と冷凍されたカエルと開いた扉から侵入者と断定したのだ。

 

咲夜「何ですか騒がしい・・・」

 

擬音にするならばシュン・・・いう静かな感覚で廊下に音もなく"人型"が現れた。

スカートの丈が短い群青色のメイド服を纏ったメイドである。

 

十六夜咲夜。

紅魔館のメイド長で、この館の主の従者である。

 

美鈴「しししし侵入者ですよォ!咲夜さんっ!!」

慌てながら美鈴が上司である咲夜に報告する。

 

咲夜「はぁ、毎回毎回・・・・・・という事は美鈴!またガードサボったんでしょう!」

美鈴「う、うひぇい!す、すいませ~ん!!」

 

肩と首を竦めながら館のガードマンが答える。

 

美鈴「いやちょっと目を離した隙に睡魔が現れましてね!私、めっちゃ奮闘したんですが・・・・!」

咲夜「全くもう貴女って人は・・・・言い訳はいいから早く探しに行きなさい!!」

美鈴「え?!・・・・は、はいっ!」

 

そう言うと、館のガードマンはビュンッ、という凄いスピードで廊下を駆け抜けたのであった。

ガードマンである美鈴が走り去ってからややあってから・・・・

 

咲夜「・・・・・・この件、お嬢様に知らせた方がいいかしら?」

そうメイドは呟くと、音もなく消え去った。

 

 

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俺が開けた扉の先の場所、そこには・・・

 

光助「う、うわぁお・・・・凄いな」

ルーミア「おぉー」

チルノ「へぇー」

 

なんと、3階程の高さはある本棚がズラリと並んでいたのだった。

どうやらその肉眼では見えなさそうな奥の奥の通路まで続いている様子だった。

この感じだと、この屋敷の"大書斎"といった所か。

 

光助「こりゃ凄いなぁ・・・・国立図書館なんて目じゃないね」

 

スタスタと本棚の間を歩きながら感嘆を漏らしていた。

後の二人・・でいいのか、二人はと言うと・・・

 

ルーミア「うぁーへんなのー」

チルノ「んー?てんたいのあたいに読めないヘンテコな字ねぇー?」

早速、手元に近い本を漁っていた。

 

光助「あーっ!コラ!勝手に触るんじゃないよ!」

 

なんとなく図書館の人みたいに注意した。

そんな注意もいざ知らず奴ら

 

チルノ「なによひじょうしき!あたいに指図しないでよね!」

ルーミア「おいしくないー」

光助「非常食だって・・・・・ひゃ!?ちょっ、ルーミア!本を食べるなよ!山羊かっ!」

ルーミア「めぇひひー」

チルノ「そう言ったわよ!バカ人間!」

 

むぅ、もう突っ込みにも慣れたかな・・・・。

本を破る妖精と本を食べる妖怪を何とか諌めて(なんと小一時間)先に進む。

 

だがしかし、進むといっても・・・

先ほどの廊下の同じ様に、永遠と同じ様な場所を歩いている気がする。

さっき横から抜けられた扉も見えないし・・・

 

光助「こりゃあ一旦、引き返すしかないかな・・・・」

 

そんな事を考えて歩いていた時、なんとも広大な居間に出た。

そこには沢山のテーブルと椅子が揃えて置いてある。

なんと驚く事に、上部には本棚が浮遊して・・・・いや吊り下げられていた。

 

光助「・・・・ん?」

 

ふと、隅の方のテーブルに明りが一つ点いている。

光助「もしかして誰か居るのかな・・・・?」

 

警戒しながら恐る恐るその机に近付く。

因みに妖精はそこらの本を手に取っては下に積み重ねて遊んでいたので、問題はルーミアだけであった。

先程の様に急に噛み付かれては困る。

 

光助「・・・・なぁルーミア」

ルーミア「なにー?こうすけー」

光助「ちょっとだけ静かにしててくれるか?・・・・しーっ、だ」

ルーミア「んー・・・・わかったー、しーっ」

 

以外と素直である。

知り合った時もこんなに素直だったかな・・・・?

と、苦笑しながらとりあえず明りが灯った机に向かう。

 

明りの向こう側には、本が山の様に積まれていた。

・・・・・・しかもよく見ると"誰か"を囲うように。

 

 

?「・・・・・・・・・・・ブツブツ」

 

 

その本の城の中から何か聞こえる。

光助「・・・・あのー、もしもし・・・すいませんが」

小声で尋ねる。

 

なんといってもここは図書館の様な場所であるからして基本的には"静かに"が基本である。

そんなマナーを語る人間がマナーを破り、問いを投げた相手はというと・・・・

 

?「・・・・・を調合すると離散反応が起こる・・・・ブツブツ」

 

なにやら科学的な本の熱読中であるようだ。

人の読書を邪魔するのは気が引けるが、こっちも事情が事情なので今度は少しだけ大きな声で尋ねた。

 

光助「すいません・・・・」

?「ブツブツ・・・」

 

だがしかし・・・効果無し。

でもまぁ分からないでもない、俺だって本を読む時は周りの世界は見えなくなる。

それ程までに何かに熱中出来ているという事だろう・・・良い事だ。

・・・・・それでも、今はこちらの話を聞いて欲しい所。

唯でさえ許可も無しに他人の家に入り込んでしまているというのだから。

仕方ない、と息を吸い込んだ瞬間・・・・

 

 

ルーミア「ねぇー!!」

 

いきなり肩のルーミアが突如として大きな声を挙げたのだ。

沈黙に事切れたのか、俺の気持ちを酌んでくれたのかは分からないが、正直心臓が止まるほど驚いた。

 

?「・・・・・・むひゃぁああああ!!?」

 

ドガガガシャン!

なんとも滑稽な悲鳴と共に本の城が崩れた。

向こうはもっと吃驚したらしい。

そして・・・

 

埃がもうもうと立つ中で、一人の少女がすくっと立ち上がり、姿を現した。

紫色のローブをはたき、頭のナイトキャップを直す。

 

?「うぅ・・・・・・・・きゅぅ」

やや間があってから。

 

?「・・・・・あ、あなた達は誰・・・・?どこから入って来たの・・・・?」

 

至極真っ当の質問を浴びせられた。

・・・うん?何だか見覚えがある人だ・・・・。

 

確かパチェリー・・・なんとやら。

知り合いが入れ込んでたキャラだったはず。

なんでもこの紅魔館一の頭脳家でありこの本の山の主、同時に貧弱な体を持つと聞いた。

よく分からないが、まともに話が出来そうだと安心する。

上記のまともな情報以外はなんとなくの予測であるのだが。

 

光助「あぁ、驚かせてごめんなさい・・・・俺は神塚光助というものです」

 

とりあえず自己紹介。

どんな状況でもまずは相手の警戒を解く事から全ては始まると映画で聞いたセリフだ。

 

パチェリー「・・・え?・・・・ああ?え、ええ、わ、わたしは、ぱ、ぱてゅゆいーよッ・・・あ痛」

舌を噛んだ様だ・・・余程驚いたのだろうか。

 

光助「あ、あぁ、パチェリーさん、始めまして」

俺も少し慌てながら答える。

 

パチュリー「・・・・・・・違うわ、パチュリーよ、パチュリー・ノーレッジ・・・・・」

 

・・・・え?

小声で何か言ったのかな?

話す声が異常に小さ過ぎてよく聞き取れなかった・・・・

パチュリー・・・・そこまでは何とか聞き取れた。

"チェ"じゃなくて"チュ"だったな。

 

光助「あ、パチュリーさんよろしk」

パチュリー「・・・・・なんであなた達はここに居るの・・・・?」

光助「え、なんでって」

 

またもや小声であるが、今度は何とか聞き取れた。

・・・何か伝えようとしたが、何だったっけ。

この状況は何か伝えようと思ったのに途中でド忘れしちゃうとかいう・・・・

 

そんな仕草に痺れを切らしたのか、パチュリーさんはというと。

 

パチュリー「・・・・あなた、人間ね・・・・・・・レミリアに見つかる前にここから出なさい・・・・・」

とこちらに近付きぐいぐいっと俺の袖を引っ張った。

 

光助「あ、あぁ、はいはい」

 

誰?レミリア・・・?

この名前も聞いた事がある。

友人が言うには吸血鬼でゲームのラスボス・・・・と聞いたが。

 

 

・・・・・・・・う、うわぁああああああ!!

なんてこった!

忘れてた!

入り口で考えた警戒の"それ"とは"吸血鬼"とはこの館の主である事を!

そして吸血鬼と言えば・・・・血。

 

・・・・・命の危険に晒されるかもしれない。

という心は完全に身近な上の捕食者の恐怖を忘れ去っていたが。

今更ながら自分の危機感の持ち方を見直そうと考える。

次、命が危ない。

 

光助「・・・・そ、そうですね!すいません!やっぱ出て行きます!!」

なんとか同意の色を示した俺は、パチュリーさんに引っ張られるが侭はじの扉に向かった。

 

パチュリー「・・・・はやくここから・・・・・・っ・・・・」

彼女の俺を引く手が止まった。

何事だろうと見たその目線の先には

 

 

チルノ「ハッハッハ、おもしろい遊びを考案したわ!あたいってば根菜ね!」

 

 

千切った本の切れ端を凍らせて雪を降らせている妖精が居た。

俺の表情と心臓が一瞬止まる。

 

パチュリー「あ、あ、あ・・・・!」

 

何だか機械的に悲鳴が隣から聞こえる・・・これは声にならない悲鳴という奴か。

と、そんな事を言っている場合ではない。

なんとか・・・・

 

パチュリー「・・・・あぁあああああああああ!!」

 

なんとも形容し難い悲鳴が上がる。

同時にパチュリーさんが本を千切る妖精を指してあーあー言いながら俺をパコポコと殴ってきた。

片腕なのでそう威力もないが、肩叩き程度の威力だ。

・・・これは俺に何とかしろって事だ。

 

チルノ「ハッハッハ」

光助「おい、やめろって・・・!」

ルーミア「やめるのかー?」

 

相変わらず俺のズボンの裾を引っ張ってうーうー言ってポコポコ殴ってくる。

パチュリーさんを引きずりながらチルノに注意する。

 

チルノ「なによ人間!解凍されたいの!?」

 

それを言うなら凍結だろうか。

俺はZIPフォルダか、という突っ込みは置いといて・・・凍結、されたらたまったもんじゃない。

そこで俺は考えた。

 

光助「いいか!ルーミアがお前を・・・・」

ルーミア「ん?」

 

ルーミアに目配せをする。

超適当だが肩の人食い妖怪に頼んでみることにしよう。

当て水量、いや、あてずっぽうだが・・・・さぁ、どう出るか!

 

 

ルーミア「・・・・・・うがぁー」

ズモモモモモォ・・・・

 

なんと期待に答えてくれた!

両腕を上、横とゆっくりと動かしながら暗闇を展開したのだ。

こちらも期待通り、妖精は何だか焦っていた。

 

チルノ「・・・・?!う、うわぁー!まえがみえない!」

目の前でぶんぶんと手を振る妖精、その横では・・・

 

パチュリー「む、む、むきゅー!」

 

微妙に涙を流しながら散り散りになった本にすがるパチュリーさんが居た。

どうやら余程大事だったらしく、申し訳無いと認識させる。

本の主であるならば当たり前であるが・・・・と、この状況に乗じて。

 

光助「うぇぁあああー・・・・」

俺も肩のルーミアに習って両腕をバランスしつつ動かし始めた。

なんだか面白くなってきたぜぇおい。

 

チルノ「うわぁああ!やめる!やめるからやめてー!」

 

ようやくチルノが動きを停止し、うずくまった。

よし・・・期待通りだな!

ここまで来てこうも状況がうまく運ぶとは・・・我ながら恐ろしい。

くくく、と俺は笑うと暗闇を閉じたルーミアが突然俺の髪を何本か引っこ抜いた。

 

ブチン!

光助「うぃでぇっ!」

 

一体何が起きたのかと上を見上げると・・・・

 

ルーミア「きょうりょくだいきーん」

上の妖怪はそう答え、むしゃむしゃと俺の髪の毛を食べた。

そうだった・・・彼女は人食い妖怪であったのだ。

 

光助「うぅ・・・あぁ、うん・・・あ、ありがとな」

ルーミア「うんー」ムシャムシャ

 

代金?・・・対価って事か。

何となく解っていたがそう言う事か。

彼女はその協力の対価として俺の一部を自らの体に取り込んで代金としたのだ。

・・・どこぞやの錬金術師か。

 

しかし、腕一本じゃなくて良かった等と考えていた俺・・・・

自分の一部を食べられているとはいえ、そんな考え方をする俺もやはり末期なのだろうか。

軽い衝撃が走った頭をさする。

 

パチュリー「うぅ・・・・・・むきゅう」

 

さて、当のパチュリーさんはというと・・・・泣き疲れたのか、何だか項垂れていた。

 

光助「あぁ、あの・・・・ごめんなさい・・・・」

張本人は妖精なのに何だかこっちが悪い気がして謝った。

 

パチュリー「・・・・うぅ、いいのよ・・・妖精がした事だし、人間に止めてもらうなんて此方が謝りたい気分だわ・・・・・」

光助「は、はぁ・・・」

 

そうですか・・・・・と何とか聞き慣れた小声に相槌を打つ。

と、そこに忘れかけていた質問をした。

 

光助「・・・そういえば、俺達がここに来たのは理由があるからなんです」

パチュリー「・・・・・なにかしら?」

 

 

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俺はパチュリーさんに今までの事を話した。

紫さんに現代から幻想郷に(無理やり)連れてこられた事。

山に置き去りにされてそこの人食い妖怪に襲われた事。

なんとか開き直ってここまで来た事・・・・。

 

ありのまま、さっき起こった事まで全てを説明した。

 

パチュリーさんは興味深げにふんふんと頷き、俺に耳を貸していた。

その結果・・・・

 

パチュリー「・・・・成程、分かったわ」

いつの間にか机に用意された紅茶を一緒に啜ると返答が返って来た。

光助「分かって頂けましたか」

 

パチュリー「・・・・あなたの居る現代に興味が湧いたの・・・・」

光助「そっちですか」

 

俺が聞きたかったのは、とりあえず妖怪が少なそうな"里"なる場所である。

この微妙に物騒な妖怪たちとも慣れては来たが、恐怖ゆえに離れたい事には変わりはない。

 

パチュリー「・・・・だからついていく事にするわ・・・・!」

光助「えぇ・・・・えぇえええ!?」

 

急に何を言い出すんだこの人は?

そして徐に立ち上がってトンッと軽く胸を叩いた。

ケホケホ、という咳き込みの後・・・

 

パチュリー「・・・・勿論、この体じゃ里まで持たないの・・・・」

光助「・・・・・(ボソッ でしょうな」

先程も言ったが、友人の知識ではこの図書館にこもりがちで体も弱いとか・・・・

 

パチュリー「・・・・・だから代わりにこの子を連れて行って頂戴・・・・」

そういうと俺の横を指し示す。

何事かと横を見ると

 

 

?「えへっ」

光助「うわぁッ!」

 

 

いつの間にお盆を持った赤毛の少女が俺のすぐ真横に立っていたのだ。

 

パチュリー「・・・・私の使い魔の、小悪魔よ・・・」

そうして彼女に紹介された少女は・・・

 

小悪魔「はじめまして♪宜しく!」

元気よく挨拶をかましてきた。

 

小悪魔。

確か中間地点の中ボスのような。

成程、頭に小さな羽根、長くて黒い尻尾・・・・・

いかにもそれは正に"悪魔"といった感じだ。

 

パチュリー「・・・・この小悪魔を通してならあなたの行く場所、する事も全て見る事が出来るの・・・・」

 

お目付役みたいな感じかなぁ・・・

と、俺が思っていると急に小悪魔なる少女が俺の腕に飛びついてきた。

いきなりの接近に少しドキドキとする。

 

小悪魔「ね、人間さん」

光助「!?・・・・・・は、はい?」

急な出来事に調子が狂う。

 

小悪魔「アタシと契約しない?」

光助「け、契約?」

小悪魔「そ、け・い・や・く!アタシと契約したら大抵の望みは叶えてあげるよ~♪・・・代わりに魂貰うけどね」

 

ああ・・・・契約ね・・・・え?魂?

な、なんだってー?!

 

サラッと後述された衝撃的な一言。

魂貰うってどういうことなんだキバヤ(ry・・・まぁそのままの意味だろうが。

・・・・何だかんだ言っても悪魔なんだよなぁ、と心で思う。

 

なんだか冷静な対処が出来るようになるスキルでも身に付いたのかな。

始めて妖怪に会った時みたいに(恐怖的に)ドキドキしない。

と、上を見ると・・・・

 

ルーミア「けいやくーよやくー」

 

ケタケタと笑いながら手でバランスを取る人食い妖怪が笑っていた。

・・・そうだった、彼女との契約(非常食の)があるんだったな。

俺は少し冷静さを取り戻し、小悪魔なるものに言った。

 

光助「・・・上の先約があるからちょっと無理かなぁ」

何だか会社員の契約取りみたいだなとか考えながらも。

 

そう言うと小悪魔は。

 

小悪魔「ふぅ~ん・・・・まぁ、途中でも契約は出来るし、今回はいっか~」

 

と俺の腕を離れる。

俺はこの間、悪魔は上の妖怪と違って体温があるのなぁ・・・とか考えてた。

頭のルーミアよりは暖かかったので。

 

 

なにはともあれ、こうして旅のお供が一人(一悪魔)増えたのであった。

 

 

-------------------------------------------------------

 

 

パチュリー「・・・・・里はこの道を辿って行けば出るはずだから・・・・・」

光助「あぁ、はいはい」

 

今はパチュリーさんの地図で軽いレクチャーを受けている。

この地形からすると、ざっと3時間ってとこだ。

軽いレクチャーも終え、旅の支度(といっても特に何もないが)を整える。

 

光助「パチュリーさん、ありがとうございました」

軽く礼を言う。

パチュリー「・・・・・ええ、無事を祈るわ・・・・・」

 

ルーミアはいつも通りケタケタ笑っているのだが、チルノはまだガガガガと震えている。

先程の攻撃(?)が余程効いたのだろうか。

 

パチュリー「・・・・・・それじゃあお願いするわね・・?・・・・・・ッ!」

と、扉に手を掛けた瞬間、パチュリーさんの顔色が変わった。

 

光助「え?なんでしょ・・・・・・・え、あ」

それを理解し、俺も固まった。

 

 

 

レミリア「何よ、侵入者が居るからって聞いたから来てみれば・・・・・ただの妖精と妖怪と人間じゃない」

 

 

 

この館の主である吸血鬼、レミリア・スカーレットが本棚の上から俺達を見下ろしていたのだった。

 

 

 

-----------------------------------------------------------

 

 

ドダダダダダダダダ・・・・・・・

 

美鈴「うぇえええええええいい!!どこだー!侵入者ー!」

 

 

一方、美鈴は廊下をひたすら走りまわっていた。

 

 

 

 

-続く!-

 


 
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