第4章「激走!紅魔館廊下!」
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俺が幻想郷に入って約半日が経過した頃・・・
当然、元の世界では俺は居ない事になっていた。
しかし・・・
母「光助が帰ってこないなんてね」
姉「そのうち帰ってくるでしょ」
なんとも呑気なものであった。
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その頃の俺はというと、当に修羅場というに相応しい場面に直面していた。
レミリア「で、何で入って来たのよ・・・・ま、どうせ美鈴が入れたんでしょうが」
俺は焦っていた。
パチュリーさんのお陰で里への道を聞くという目標を達成出来たのだが、恐れていた事態に直面してしまったのだ。
そう・・・・この館の主に出会う事である。
レミリア・スカーレット。
確か悪魔という種族の吸血鬼という分類だったと思う。
これも友人の受け売りだが、吸血鬼という手前・・・やはり良い印象ではない。
話というのは見る立場と経験する立場では全く状況が違ってくるというものなのだから。
レミリア「なんの用で入って来たか知らないけど・・・・」
沈黙を破る様に話を続ける吸血鬼。
光助「じ、実はですね」
俺は理由を話そうとしたが、どうもうまく舌が回らない。
恐怖に直面した時というのは、こういう反応しか出来ないのかもしれない。
嫌な汗も染み出てくる。
俺が話そうとしたその直後、
レミリア「まぁ、どちらにせよ妖怪も"人間"もただで帰す訳にはいかないわ」
衝撃的な一言が主の口から飛び出る。
それは俺達を生きて帰さないという事か・・・・。
一応、妖怪や妖精はその手の攻撃をまともに食らってもまだ生存可能だろうが、人間の俺はどうかは判らない。
緊張がピークに達する。
パチュリー「・・・・ま、まってレミr」
レミリア「あなたもあなたよ、パチュリー」
静止にかかったパチュリーさんであったが、吸血鬼に遮られる。
レミリア「こんな何処の馬の骨かも分からない人間と妖怪に入れ込むなんて、貴女らしくないわ」
腕を組んでパチュリーさんに叱咤を長々と浴びせる吸血・・・・・レミリアさん、か。
まぁ、それもそうである。
館の主ともなると、侵入者というのはあまり歓迎出来なさそうであるし。
レミリア「・・・・という事だから、そこの人間」
主の長い説教が終わったらしく、今度は俺に話が振られた。
光助「ひゃ、ひゃい!!!?」
正直にびびってしまう。
その説教の内容は、この状況からどうやって逃げるかの考えで精一杯だったのだから聞いていない。
一体、何が"そういう事"なのだろうか・・・気になる。
レミリア「代償としてその血、私に寄越しなさい」
・・・え。
なんとも"吸血鬼"らしい言い分であった。
が、
光助「え、ぐ、具体的に、ど、どのくらいでしょうか」
そっちかと自分に突っ込みを入れつつ、緊張ながらも問いかける。
まぁ、血液なら、と軽く考えていたが・・・・そこでまたしても思考が巡る。
確か、人間ってたった三分の一の血液を失えば死に至るって・・・。
・・・・・・・やばい。
そんな思考をいざ知らず、目の前の吸血鬼は言う。
レミリア「そんなの、私が満足するまでに決まってるじゃない」
これはまずい非常にまずい。
多分、満足するまでって言われたら死ぬレベルだろうと考え、考え、考え・・・・
そこで肩に乗る人食い妖怪にまたしても賭けてみる事にした。
小声で上の先約に話しかける。
光助「・・・・・おいルーミア、逃げるぞ・・・・」
ルーミア「なんでー?」
こんな状況も気にせずケタケタと笑う肩の妖怪はいつも通りだ。
少しだけ安心し、続ける。
光助「・・・・あの吸血鬼、俺の血が欲しいって言うのよ・・・・」
ルーミア「だからー?」
光助「・・・・知らないのか?人間は血液が抜けるとまずくなるんだって」
ルーミア「まずいよやくこうすけがさらにまずいー?」
まずい予約?
あぁ、最初の「俺はまずいぞー」ってやつか・・・・・よく覚えてたな。
しかしその通り。
光助「・・・・あぁ、だから、あいつに血を吸われる前に・・・」
レミリア「ちょっと!そこの妖怪と人間!何こそこそ小声で喋ってるのよ!パチュリーじゃあるまいし!」
俺達の密かなやり取りに腹を立てたのか、ムスッとした顔の吸血鬼。
その発言にちょっと膨れるパチュリーさん。
レミリア「さぁ、さっさと私のものにー・・・・」
ここだ!
光助「逃げるんだってよぉおおおおおお!!!」
俺は叫び、目の前の扉を蹴り開ける。
ドガァ!!!
が・・・・そこには先程と同じ続く無限廊下!
さっきの廊下とは違うのか、蒼い絨毯が敷いてある。
しかし、もう戻る事は出来ず・・・
光助「うりゃぁああああああ!!!」
ドダダダダダダ・・・・
俺は走り出した。
肩には妖怪、横には妖精を引き連れて。
因みにチルノはまだ立ち直れないみたいなので、無理やり手を引っ張って連れて行く。
こんな所に置き去りも悪いと思ったし、おお・・・・割と軽いな妖精。
ルーミア「わーい」
チルノ「ガガガガ」
レミリア「へっ?あっ!・・・ま、待てェー!!」
あっけにとられた後、すぐさま俺達の後を追ってくる。
またしても命を賭けた鬼ごっこが始まったのだった!
パチュリー「・・・あ・・・そっち側・・・反対・・・・」
一人残ったパチュリーさんを置いて。
因みに小悪魔はというと
小悪魔「・・・・・・ッフゥー、やばかった♪」
ものの見事にパチュリーの後ろに隠れていた。
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そして現在の紅魔館の廊下では・・・・
光助「はぁっ・・・・!へはぁっ・・・・!」
レミリア「ま、待てぇええええ!人間んん!」
血を争う(巡る)追い掛けっこが始まっていた。
光助「血は人間にとっては命みたいなもんなんですよォ!!」
レミリア「人間の侵入者風情が何をいうかぁあ!」
大体こんな感じである。
とにかく追いつかれない内に外に出なくては。
ダンッ、ダンッ、ダンッとリズミカルに地面を蹴り走る俺・・・・
・・・・ふとさっきから感じていたが、走っているといってもなんだかスピードが尋常ではない気がする。
地面から軽く足を蹴るだけでビュン!という音がするんだけど・・・・
俺はこんなジャガーみたいには走れなかった気がする。
光助「こ、この廊下には、な、何かしら魔法でもかかっているというのか・・・・?!」
ルーミア「そーなのかー」
と、頭上の妖怪が両手を広げてバランスを取っていた。
・・・・もしや、と思いっきり地面を蹴ってみる。
ブオン!
凄い音と共に、俺の体が宙に浮いたのだ。
成程・・・・確か彼女、ルーミアは飛べたんだったか。
しかしそれ程高度は維持できず、すぐに地面を蹴る。
光助「・・・・ま、また助けられたみたいだな」
ルーミア「そーならだいきんー」
また髪の毛だろうか、と軽く考えると。
ガブッ!
光助「うぎゃぁ!」
なんと、頭に噛り付いて来たのだ!
ようやく本来の"非常食"としての役割が来たのか!?と考えながらやはり足は止めない。
片手のチルノを落とさないように頭をブンブンと振る。
ルーミア「んー、おいしー」
光助「うわぁああ!うわぁああ!・・・・ああ!?」
暫く頭に噛り付いた後、ルーミアは口元を赤くして俺の頭から離れた。
こやつ俺の脳を食べたとか、肉片がどうのこうのとか必死に足を動かしながら考えていると。
ルーミア「こうすけのちはおいしーよ?」
こんな事を言ってきたのだ。
どうやら頭からバリボリと食べ始めた訳ではなく、吸血鬼の様に血だけを吸ったらしい。
成程、髪の毛も食べるなら血も飲むって事か。
こいつのカテゴリは吸血鬼でもいいんじゃないかと考えていたが・・・・
レミリア「ま、待てー!止まれぇー!」
後ろからはもっと恐怖度が高い吸血鬼の方が猛ダッシュでこちらに追いつこうとしているのだ。
光助「か、勘弁してくださぁーーーー!」
と、兎の様にかっ飛びをしながら答える。
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光助「はぁ・・・・はぁ・・・・はぁ・・・・」
どれくらい経っただろうか・・・・
永遠と長い廊下をダッシュして走りながら俺は考えていた。
このまま走り続けたら俺の体力が切れて終わりだろうな・・・・何だかこの辺デジャヴ。
確かルーミアともこんな感じの"追いかけっこ"をした様な。
その間、何かいい方法は・・・と頭の中で必死に考える。
後ろを見ると、未だ根気良く追いかけて来る吸血鬼が。
レミリア「ま、まてぇ~・・・・!!」
どうやら向こうも同じ様な感じである。
走っている間中、後ろからバッサバッサと音がしていたのだが今はパタパタという音である。
やはり連続の飛翔は疲れるのだろうか。
どうしたものかと頭を捻りながら考えていると、前方の方から何やら緑色の影が・・・・
美鈴「あぁ!見つけましたー!侵入者ぁああああー!!」
なんと、あの入口の門番がこちらに向かってきているではないか。
この距離からすると・・・・だいたい1kmぐらいか・・・・
これはまずい、挟み打ちにされてしまうかもしれないな。
レミリア「あ、美鈴!そいつらを取り押さえるわよ!!!」
美鈴「はっ!御意です!!」
案の定その通りである。
もうあと200mと迫ってきた所で・・・・手元のチルノが起きたようだった。
あの後、手を繋いで走るのがきつくなった俺は彼女を抱えて走っていたのだ。
熟睡していたのか口から涎がつーっと出ている。
チルノ「ん~よくねた・・・・・んぁ?・・・あ、ああ!?な、なによ人間!?離しなさいよ!!」
起きたと同時にじたばたと顔を赤くして俺の脇腹を叩く。
光助「あっ!おいっ!暴れるなよ!!」
チルノ「あんたの肝胆は分かってるんだからね!あたいを溶解してどうにかしようってんでしょっ!!」
光助「魂胆と誘拐だっ!そんな事より後ろを見てみろ!!」
チルノ「あぁ!?・・・・えぇ?!なによ・・・・」
レミリア「も、もう少しよっ!美鈴っ!」
鬼の形相で追っかけて来る吸血鬼。
チルノ「なによ!ただのきゅうこんきじゃない!」
光助「吸血鬼だっ!」
チルノ「な、なによ!そう言ったわよ!」
走った状態なので語気が荒くなった俺に戸惑ったのか、少し戸惑いながら答えるチルノ。
チルノ「ふんっ!あんなやつなんか、あたいが一網打診よ!」
光助「一網打尽っ・・・!って、何を!?」
チルノが俺の脇を逃れ、手前に出てきた。
その直後。
レミリア「い、今よ!美鈴!!」
美鈴「はいっ!うぉりゃぁあああああ!!」
吸血鬼と妖怪が前後から飛びかかって来た。
光助「う、うぉわぁあああああ!!」
ルーミア「うわーっ」
チルノ「このさいきょうであるあたいが・・・!」
俺が叫んで・・・・・・
ルーミアが両手を広げて・・・・
吸血鬼が後ろから突進してきて・・・
美鈴さんが前から飛び蹴りをかましてきて・・・・
目の前にチルノが出てきて・・・・
ここで俺の記憶は止まった。
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気付くと俺は、深いまどろみの中にその身を置いていた。
なんだか柔らかい感触が全身を包んでいる。
光助「・・・・ん」
目をそっと開けてみる。
見慣れない窓と森林地帯の景色が見える。
ぼやっとした気持ちのまま首を正面に・・・・・・・出来ない。
光助「ん?・・・・・ん!?なんじゃこりゃ!!」
次の瞬間、自分のいる状況を把握し、理解した。
見慣れない部屋のベットで俺は横に・・・・・なんとベッドの上で拘束されていたのだ。
光助「なにがどうなってr」
咲夜「・・・・・やっとお目覚めになられましたか」
唐突に横から声が聞こえる。
更に目を上に移動させると、木製の棚の横に銀髪のメイド服姿の少女が佇んでいた。
光助「あ、あの・・・・これっt」
咲夜「申し遅れました。私、この紅魔館でメイドを務めさせて頂いております、十六夜咲夜と申します」
何かを尋ねる前にさらっと自己紹介されてしまった。
十六夜咲夜。
紅魔館のメイド長を勤めているメイドだと友人から聞いた。
これくらいが俺の知る情報だが、何だか他のネタを小耳にも挟んだ様な。
何だっけ・・・・・・・・・パッd
咲夜「コホン」
光助「あ、ああ、俺は光助という者で、す・・・・・それで、ちょっt」
咲夜「お連れの方々はそちらに」
またも話し終わる前にスパッと切られてしまう。
そんな咲夜さんが指す方の奥のソファーでは・・・・
ルーミア「んー・・・」
チルノ「んがー」
妖精と妖怪が重なるように寝ていた。
そんな微笑ましい事態はとりあえず置いておいて・・・・。
光助「あの、で、俺のこの拘束は一体・・・・・」
侵入者を拘束するからと言っても、ベッドの上に括るようにするこの拘束は何だろうと思い質問しようとした。
、
咲夜「それでしたら、こちらの鏡をご覧下さい」
そう言うと、少し大き目の鏡をこちらに見えるように近付けてきた。
言われるままに鏡を見ると・・・・・
後ろの方に、何やら人影・・・・・いや、これは・・・・・服、か?
俺の背中に抱き付くようにフリルがあしらわれたピンク色のドレス服がひっ付いていた。
光助「あの・・・・これ、何ですのん」
咲夜「お嬢様は鏡にはお写りにならないのです」
お嬢様?
・・・・・そういえば、あの時・・・・追い駆けっこなる逃走劇があって、チルノが前に出てきて・・・・門番と吸血鬼に挟み打ちにさr
光助「あぁ・・・・・・えぇ?あ、ああああああ!!?」
俺はある限りの力を振り絞って首を背中に向けた。
その甲斐あって、見えてきたものは・・・・
目を固くつむり、俺の背中に抱き付く吸血鬼の姿であった。
光助「れ、レミリア!っ・・・・・・さん、か・・・・な、なんでこんな所に・・・・!?」
咲夜「あまり叫ばれませんと・・・・・お嬢様、主に私めが不愉快です」
横の咲夜さんの目が一瞬きついものになったので、呼び捨てを即座に訂正する。
・・・・さっきからの背筋の寒気はこのせいかと思う。
咲夜さんが少し離れ、椅子に腰かけてコホンと軽く咳払いをした。
咲夜「それは今から説明致します」
そうして彼女は話を続ける。
咲夜「あの衝突の後、私が時間操作を施しまして、お嬢様を保護致しました
しかし、いつもならば侵入者を外に連れ出すまでは時間が止まりましたものが急に操作不能に陥りまして
非情に残念ながらお嬢様の時間操作だけ解けなくなってしまった次第なのです・・・・」
少し悲しそうな顔で続ける咲夜さん。
光助「成程、それで背中のレミリア、さん・・・・を保護する為に俺毎拘束すると」
そうか、侵入者が剥がせないとなると仕方のない事だと思う。
咲夜「ええ、一回は生皮を剥がしてからお嬢様を少しずつ分離しようとも考えましたが・・・」
サラっと物騒な事を・・・・
咲夜「お嬢様に万が一の事があると思うと」
と、よよよとばかりに目を覆う。
味方・・・・でも敵でもなさそうだなと。
まぁ最初からこちらが侵入者であるし、強くは言えない。
光助「あ、それと・・・・そこの妖怪達は何でここに?」
咲夜「ええ、お二方とも何だか貴方になにかあるみたいで色々言ってきましたが・・・・お連れ様では?」
光助「い、いや・・・・そんな事は」
何だろう・・・・
俺としては一応、離れたい存在達であるのだが・・・・
咲夜「なんでも"予約"があるのだそうで?」
あぁ、ルーミアの非常食の件事か・・・・でもチルノは?
咲夜「妖精はさっさと帰ろうとしたらしいのですが、そこの妖怪に術を掛けられたのでしょうね、一緒に行動を共にするそうで」
あの暗闇技の事か・・・・あれは凄かったな、俺も感謝してる。
そんな事等無かったかのように仲良く一緒に寝ている様に見えるのだが。
ルーミア「んくー」
チルノ「ンガっ・・・・ううう・・・ガガガ、ガー」
時々聞こえる歯軋りのような音。
光助「ふーん・・・・・ハッ」
その姿を二人で眺めていたのだが、大事な事を思い出す。
ここでの滞在時間の事である。
光助「すいません!咲夜さん!」
横の状態ながらも佇む咲夜さんに必死に話しかける。
咲夜「はい、なんで御座いましょうか」
光助「ここに俺・・・・・達が来てどれくらいになりますか?!」
ひょっとしたら3日くらいは過ぎているかもしれないと・・・・少し心が躍る。
ここに来る時の目標(謎)を忘れかけていた。
5日、5日耐えれば俺は元の世界に帰れるのだから。
咲夜「そうですね・・・・ざっと4時間といった所でしょうか」
4日!・・・・・って4時間ですか!?
光助「そ、それだけしか経ってないなんて・・・・」
正直、この気だるさから2日程眠ってしまったのではないかと思っていたのだが。
咲夜「何か不都合でもおありなのでしょうか」
光助「ええ、実は・・・・」
横で結構寝苦しい体勢の俺は口を開こうとしたが・・・
ここで俺は部屋にもう一人・・・・少女が居る事に気付いた。
パチュリー「・・・・ええ、私からも説明するわ・・・・」
咲夜「パチュリー様?」
光助「パチュリーさん?いつのまにs」
パチュリー「・・・・・さっきから居たわ・・・・・」
体勢のせいか、喋るスピードがゆっくりになっていた俺に間髪入れずに突っ込む。
パチュリー「実はね」
俺が話した事を咲夜さんにそのまま伝えるパチュリーさん。
少女説明中・・・・
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説明完了。
咲夜「・・・・そういう事だったんですか・・・・大変難儀な状況ですね」
光助「そういう事なんです」
パチュリー「・・・・そういうことなの・・・・」
俺とパチュリーさんが同時に答える。
咲夜「そういう事でしたらー・・・・」
と、咲夜さんは考える素振りを見せてこう言った。
咲夜「博麗神社の方へ相談に上がったら如何でしょうか?」
はく、れい・・・・
どっかで聞いたような・・・聞かなかったような・・・・・
まぁいずれにせよ"神社"って程なら人が建てたんだろうな。
近くには勿論、人間、里・・・・里!!
ここで里に近付くとは。
思いもよらないラックハプニング(適当)というものだ。
光助「で、では!その場所をっ・・・・あ、あれぇ・・・・・」
急に襲う気だるさに眩暈を覚え、ふぅううと息を吐き沈黙する。
何だ・・・・体が重く・・・・・
咲夜「光助様?・・・・ん?」
ふとこちらに寄ってくる咲夜さん。
そんな目の前の咲夜さんもぐにゃりと歪んで見える。
なんだか貧血のような・・・・・貧血?
咲夜「・・・・・あぁ!お嬢様!?」
レミリア「あら、咲夜じゃないの、丁度良かったわ」
なんだ、何が起こってr~・・・・
レミリア「せっかく生きている人間が目の前にいるんだもの、体温を楽しみながら血をt~~・・・・」
咲夜「では、先程から解けてたんですn~・・・」
ここでまたも意識が消えた。
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ふと、気付くと俺は長テーブルの並ぶ大広間で座っていた。
光助「あれ・・・・・」
何だか薄暗い大広間だなと思っていると、目の前には何だか豪華そうな食器に並べられた果物が。
まだ頭がボーッとしている・・・・夢を見ているのか?
光助「・・・・・あれ、何がどうなってr」
咲夜「やっとお気付きになられましたか」
サラッと切られる俺の疑問。
先程も交わされたこの一方的な言葉の応酬。
これは・・・・・咲夜さんかな、と気付く。
質問は許さないと、そんな感じの受け答えだ。
咲夜「レミリア様のお言付けで貴方を"最低限"もてなし旅支度を整えてやれ、と」
え・・・・?
あの吸血鬼の主が一体・・・・どういうことなんd
咲夜「どうやらあの隙間妖怪が絡んでいるとなると、余程重要な事なんだろうと仰っていましたが」
心での疑問さえも即座に打ち切られる。
・・・・まぁ答えが出ているならそれはそれでもいいのだが。
・・・・・隙間妖怪といったらやっぱり紫さんの事なんだろうなと考える。
やはり幻想郷の異変は皆に関係する異変なのだろうか。
光助「・・・・で、お前ら一体何をしてるんだ」
と、まずそんな事は置いておいて。
目の前ではもう食事に手を付けた妖怪と妖精が居た。
ルーミア「んーいっぱいー」
チルノ「なによばか人参!はやくたべないと全部たべきっちゃうわよ!」
光助「あー・・・人間な」
チルノ「そういったわよモグモグ!」
突っ込みを返しながらも頬張るものは頬張っている妖精。
対する妖怪もスィーっと食べ物を吸い込んでいた。
・・・ルーミアはああいう風に食べるのか。
咲夜「どうぞ、お召し上がりください」
と、いつのまにか俺の真横に移動した咲夜さんが俺の目の前に料理を並べる。
・・・・グゥー
光助「あぁ・・・・そういえば、朝のリンゴしか口にしてないんだった・・・」
少し恥ずかしくなり、すいませんと咲夜さんに言おうとした時。
レミリア「へぇ~、人間ってロクなものも食べてないのね・・・血はまともだったのに」
パチュリー「・・・・初めてここに来たのだから仕方ないと思うわ・・・・」
遠い向こう側の大きそうな椅子にレミリアさんとパチュリーさんが座っていた。
レミリアさんの片手にはワイングラス。
パチュリーさんの目の前には俺のと同じ様な銀色の食器が。
レミリア「そうは言うけど、あんたもいっつもロクな食事摂らないわねぇ、だからひ弱なのよ」
パチュリー「・・・・あまり食べないだけなのよ・・・・」
パチュリーさんが肩を竦めながら答える。
いつの間にかパチュリーさんの横に移動した咲夜さんが給仕をこなしていた。
・・・・どうやら俺をどうにかしようっていうのは無しになったのかな。
一応、不法侵入者ではあるけども。
そう心でやれやれと言いつつ、目の前の食事を見る。
バターの乗った中型のステーキ。
小さいボールに入ったサラダ。
薄くスライスされたバケット。
南瓜の冷スープ。
見るだけでもお腹が鳴る。
早速、食べ始めようと左右に置いてある銀製のナイフとフォークを取った時・・・
レミリア「あなたの"これ"結構おいしいわよ?A型にしてはね」
そんな言葉が横から飛んできた。
見ると、ワイングラスの中の液体を回しているレミリアさんの姿が。
何だか嫌な予感・・・・
光助「あの、それってまさか・・・・」
レミリア「ええ、あなたの血よ」
光助「ぎゃー!」
元気良く叫んだはいいものの、すぐに項垂れてしまう俺。
光助「あぁ・・・・・・・・・はぅあ」
やっぱり血が足りないのだろうか。
しかし、目の前で血をワインのように飲まれながら食事って・・・・どんなプレイなんだ。
というかいつの間に?
光助「いつの間に取ったんですか・・・・?」
レミリア「あなたが眠ってるうちによ」
そうレミリアさんが得意げにふふんと胸を張った。
そして目配せをされた咲夜さんが目を閉じながら語る。
咲夜「あの後、光助様が倒れたのをいい事に血液の採取、検査を行いました」
いい事にって・・・・貴女がしたんじゃないんですか。
レミリア「だから貴方にちゃーんと食事をあげてるじゃないの・・・・・感謝しなさい」
光助「は、はぁ」
ついでに体も洗ってあげたわ、感謝しなさいよと吸血鬼が鼻を鳴らした。
俺はサイドを横目で見やると咲夜さんが目を背けた。
少々複雑な想像をしつつも・・・・
光助「・・・・・」
・・・・まぁこうなってしまった事はなってしまった事なんだなと思い、ようやく食事に手を付ける。
これも慣れ、っていうのかなぁ・・・・末期かも。
と、目の前の妖怪と妖精は相変わらずの食べっぷりである。
チルノはフォーク一本で、ルーミアは手を広げたまま坦々と食事を吸い上げて行く。
・・・見ているとたまにフォークも吸い取っていくようだが。
光助「い、いただきます」
ナイフとフォークでステーキを一口サイズに切り、口に運ぶ。
光助「ん・・・・おいしい」
文句無しにおいしい。
これ程のものがこの状況下で食べれるなんて誰が思うだろう。
レミリア「一応それ、妖怪の肉なんだけどね」
光助「!?」
食べている時に吸血鬼がそんな事を言う。
結構ショッキングではあるが。
光助「・・・・・だ、大丈夫ですから」
と、なんとか続ける。
慣れだ、慣れと自分に言い聞かせながら。
パチュリー「・・・・所で、その今の現代っていうのは具体的にどんな所なのかしら・・・・?」
食事にも雰囲気にも慣れた俺にパチュリーさんが話を振って来た。
少し食を休めて答える。
光助「ええと・・・・この幻想郷より色々なものが雑多に混ざった世界ですよ」
パチュリー「・・・・ふぅん、雑多・・・・例えば?・・・・」
パチュリーさんが身を乗り出して聞こうとしている。
光助「そうですねぇ」
そこで俺は自分に出来る限りの説明した。
昭和から平成に入った現代の背景。
その時代の恩恵を受けた、様々な文化から生み出された便利な道具。
最近起きた事件や出来事。
そのどれを話してもパチュリーさんはふんふん、と興味深げに聞いては質問を繰り返した。
俺も出来る限り、知る限りで質問に答えた。
そんな問答が小一時間続く。
パチュリー「・・・・やっぱり貴方のいる時代をこの目で見てみたいわ・・・・」
終いにはこんな調子であった。
つかさず横でワイングラスを空にしたレミリアさんが言う。
レミリア「図書館から出た事もないあなたがその現代にねぇ・・・・」
その反応にパチュリーさんが少しムッとして言い返す。
パチュリー「・・・・ううん、私は行かないし、行けないから小悪魔をつかうのよ・・・・」
レミリア「そうなの?じゃあ人間、気をつけなさいよ?」
最後に出されたデザートのストロベリーアイス(だろうか)を口に運びながら俺は振りむいた。
光助「はい?」
レミリア「小悪魔は何でも契約にかこつけて貴方の魂を狙ってくるからね」
クスッとレミリアさんが笑う。
契約、魂。
悪魔にはありがちなんだろうなと思う。
そんな危険な存在と一緒に旅をしろというパチュリーさん。
まぁ・・・・
光助「多分、大丈夫ですよ」
軽く答えておく。
同時にパチュリーさんが安堵のため息をついた。
キャンセルされずに安心したのだろうか。
レミリア「あら?ずいぶん余裕なのね?人間にしては」
光助「まぁ・・・・・・この二人ですしね」
と俺は目の前の妖怪と妖精に目を移した。
二人とももう食べられないという顔を・・・・・一方は分かりづらいが、そこそこしている。
チルノ「うぃー、アタイもうたべられないー」
ルーミア「そーなのかー」
実際どうなのか。
妖精はいいとしても、この妖怪の胃袋はどうなっているのか気になる。
と、そこの蝋燭立も食べたのだろうか・・・テーブルの明りが俺たちのテーブルだけ一か所だけ足りない。
レミリア「妖怪妖精とは違うわよ?なんせ悪魔だからねぇ」
と、挑発的に笑うレミリアさん。
光助「それでも、助けてくれたお礼がしたいですし」
俺もそれに笑みで返した。
レミリア「ふふん、そんな蒼白面じゃ説得力に欠けるわよ?」
と今度こそクスクスと笑い始めたレミリアさんを見て俺は食べ終えた食器に自分の顔を映した。
確かになんとも白い顔である。
まぁ、血を抜かれたと言えばそうであるが、そのうち戻るだろう。
光助「えぇ、頑張りますよ」
今度はパチュリーさんに笑みを返した。
パチュリーさんは少し顔を赤らめてうろたえていたが、暫くして「・・・・よろしくね・・・・」と小さく返してくれた。
あまりにも小さい声ではあったが。
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咲夜「では道中お気をつけて」
食事を終えた俺達は、紅魔館の入り口の門で見送りを受けていた。
血色もさっきよりかは戻っていると思う。
俺の背中には少しさびれた背嚢と、手には地図がある。
これは全て紅魔館側で用意してくれたものだ。
初期装備が増えて少し安心する。
光助「こんなものまで用意して下さってありがt」
咲夜「いえいえ、お嬢様のお言い付けですから」
ニコッと笑うメイド長。
最後までサラッと区切られてしまう言葉・・・・もう慣れてしまったが。
因みにこの緑色の背嚢には"旅に必要なもの"と"役に立つもの"が入っているそうだ。
俺の選別で選んだ訳じゃないから眉唾ものではあるが。
パチュリー「・・・・いい?光助に迷惑掛けるんじゃないわよ?もし・・・・」
何やらパチュリーさんが影で小悪魔に耳打ちをしていた。
小悪魔が一瞬びくんと震えてパチュリーさんの元をを離れて此方側へ来た。
何やら注意でもされたのだろうか。
レミリア「その背嚢だけど、前にここに滞在した人間が置いて行ったものだから返しに来なくてもいいわよ?」
咲夜さんの日傘に入ったレミリアさんがクスクスと笑う。
脅しなのだろうか知らないが、背嚢には血が所々付着している。
しかし、貴重な装備は装備だ。
光助「はい、ありがとうございます」
俺は素直にお礼の言葉をレミリアさんに送る。
レミリア「え?・・・・・あ、う、うん」
少し間があって。
レミリア「い、いいえ、はやく行きなさい」
何だか照れた顔のレミリアさんが咲夜さんの後ろに回って言う。
それに合わせて咲夜さんの日傘が移動する。
光助「それじゃ、いってきます」
そんなレミリアさんにも向ける様に最後の挨拶をした。
パチュリー「・・・・気を付けてね・・・・」
咲夜「行ってらっしゃいませ」
レミリア「ふ、ふん、さっさと行きなさい」
門をくぐる時、門番をしていた美鈴さんにも声を掛ける。
光助「じゃ、さようなら、美鈴さん」
門番の少女は此方に気づくと、くるっとこちらを向いて満面の笑みを返した。
美鈴「あ!いってらっしゃいませ!・・・・今度会う時は、必ず捕まえますからね!」
グッと拳を握り、こちらに突き出す仕草をした。
光助「今度はちゃんと起こしてから話し掛けますよ」
俺は苦笑しながらその拳を拳でコツンと返した。
そして咲夜さんを見た。
何かに気付いた様に咲夜さんが美鈴さんに近寄り・・・
咲夜「美鈴!やっぱりあなた眠りこけてたんじゃないの!」
美鈴「は、はい!実はっ!」
咲夜「言い訳はいいですっ!罰として廊下掃除をなさい!」
美鈴「す、すいませ~ん!」
案の定こんな調子であった。
ルーミア「しゅっぱーつ」
光助「おぉ、ちょっと右に寄ってくれないか、バランス取れてないぜ?」
ルーミア「りょーかーい」
チルノ「めんしろいものがなかったらタダじゃすまないわよ!人参!」
光助「面白いと人間な・・・・というか漢字読めたのか?」
チルノ「そういったわよ!ふん、アタイは天才だからね!」
小悪魔「はいはーい、いきましょーう♪」
そして俺達一行は紅魔館を後にし、里ないし博麗神社に向かったのであった。
-続く-
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-サイド-
僧侶「んーこりゃなんじゃろうなー」
光助が消えた後、携帯を拾った僧侶がうんうんと携帯とにらめっこをしていた。
実はこの携帯には覗き見防止のロック機能が着いていて、住所どころか操作も出来ないのだった。
僧侶「わっからんのー最近のものは」
このにらめっこは僧侶の孫たちの登場で後2日程で終焉を迎える。
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四章目です
※キャラの言動と原作との関係は全く御座いません