第2章「凍結!冷凍妖精娘!」
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光助「ふわぁー・・・」
俺は不安と寒気で目を覚ました。
辺りはまだ薄暗く、霧が立ち込めている。
例えるならば朝のキャンプ場。
・・・寝床のせいか、少し体がギクシャクする。
慣れない場所で慣れない格好をして眠った為だろう。
ふと、自分の中で"慣れない場所"という言葉を反復させてよく考える。
そして思い立った。
光助「・・・ぁ、そうか、幻想郷かぁー・・・」
現代では衝撃的な発言をして目を瞬かせ、よく回らない頭で考えを設立させ体を起こす。
俺の名前は神塚 光助。
訳あって家の近所の神社からこの仮想世界『幻想郷』へと連れて来られてしまった。
俺をここへと連れてきた張本人である妖怪である「八雲 紫」・・・さんによると、どうやら幻想郷の大気に同調させる為、俺には"5日間の滞在"が必要なのだという。
・・・・確かそんな感じだったな。
何故"幻想郷"へ来る必要があったのかの説明はあった・・と思うが、正直パニックで良く聞いていなかったのではっきりとは分からない。
・・・だが、まずはこの状況を打破する方法として、この幻想郷内でも人間が生息しているという『里』へと向かう途中だったのだが・・・
光助「!?・・・・・うびぇあ!・・あ、足が・・・!」
回想中、突如として"変"な感覚が足を襲う。
どうやら足が痺れていたようだ。
何故か、と頭を膝辺りに向けると・・・・。
ルーミア「んくー・・・・」
あの人食い妖怪が俺の腿に頭を乗っけて眠っていたのである。
幻想郷に来て数分で出会い、俺を捕食しようとした妖怪『ルーミア』である。
昨日はその妖怪との取引(謎)で捕食は免れたのだ・・・・今は。
その優しい表情に心がほぐされる感覚がしたが、彼女の頭が非常に冷たい事がまず感覚として優先される。
光助「妖怪って意外と体温は低いのな・・・・」
まるで死人のような冷たい体温である。
と、一人ごちた後に足を動かすと。
ルーミア「ん・・・・・んぁ?」
人食い妖怪が目を覚ました。
光助「お、おはよう」
震え声ながらもなんとか挨拶を捻り出す。
昨日のリアル鬼ごっこがあったせいでまだ恐怖は振り払われないが、少しはマシになったようだった。
ルーミア「ん?おはよー?」
疑問系?
・・・なんだ、この妖怪はおはようという挨拶を知らないのか。
聞いた話では妖怪は不死の存在であり、普通の人間の様に群れて生きる必要が無いので他人との共存をしたことが無いという事も考えられる。
"人型"であってもやはり"妖怪"なんだな・・・・。
光助「・・・あぁ、人間は朝起きたらまず「おはよう」って言うんだよ」
ルーミア「なんでー?」
光助「なんでって・・・・なんとなくさ」
理由を答えようとしたけれど、言い切れなくて止めた。
まさか先程の思考通りに『群れて生きる人間は他人にいちいち確認を取って安心感を得る』みたいには余り答えたくなかったのだ。
俺は人を納得、安心させる説明が苦手だったのだ。
こんな暗い答えを答える位ならば"なんでって、なんとなく"でもいい。
・・・・・・それに朝だから頭が良く回っていないというのも理由に含めたいぜ。
ルーミア「ふぅーん・・・・・・おはよー」
そんな目の前の少女型妖怪は素直に返してくれたので、こちらも挨拶で返す。
光助「あぁ、おはよう」
暫く空く間・・・・
と、呑気に挨拶ごっこをしている場合ではないのだ。
今は安全な場所を探さなくては。
俺は両張り手で頬を叩くとすっくと立ち上がる。
ここも確かに安全かもしれないが、やはり妖怪の山なのだから他に攻撃的な妖怪が居てもおかしくはない。
まず第一に、山を抜ける事を優先に考えた。
・・・・・ぐぅ~
俺の腹が鳴った。
光助「そういえば・・・・ご飯を食べてなかったな」
幻想郷へ来る前はバイトをした帰りでお腹が空いていたので、今は更に空腹だったのだ。
そんな事を呟くと、膝立ちして両手を広げていた人食い妖怪がすたっと立ち上がった。
ルーミア「・・・・たべる?」
・・・何だか嫌な予感がした。
ルーミア「はい・・・・・え?!」
俺は自分の愚かさを理解して葛藤した。
朝でボケッとしていたという理由は死んだ後には役には立たないというのに。
"人食い妖怪"が目の前に居る時に「食べる」なんて・・・・迂闊な事をしてしまったな。
捕食対象者の俺が言うセリフではないと思ったが遅かった。
人食い妖怪が手をすっ、と差し出してきた。
光助「ギャッ・・・・?!」
変な声を出して飛び退き、捕食される前に逃げる為にダッシュ体制を取った。
だが、妖怪のその手に握られているものが此方に差し出されていると確認を取り、恐る恐る振り向く。
光助「・・・・・リンゴ?」
そう、その手に輝くのは、太陽の果実のリンゴだったのだ。
光助「なんでリンゴなんか持ってるんだ・・・・・あ」
ふと上を見上げると、いくつものリンゴがその木の枝に実っている。
昨日は夜中という事もあって良く見えなかったのだと思う。
どうやらここは林檎の木の下だったのだ。
ルーミア「ここに来た時見つけて食べたらおいしかったからすにしたのー」
人食い妖怪がけらけら笑って答えた。
その笑い顔は正に無邪気な子供の様で凶悪な妖怪とは程遠いとイメージさせるものがそこにはあった。
・・・・もう人食い妖怪はやめよう。
光助「あ、ありがとう・・・・えーっと、ルー・・・」
ルーミア「わたしルーミアー」
と目の前の少女"ルーミア"は両手を広げて一回転して言った。
そんな愛らしい動作に微笑んで俺も再度自己紹介した。
光助「あぁ、俺は光助・・・・神塚 光助だ、よろしくな」
ルーミア「よろしくーよやくこうすけー」
よやく・・・・予約、という言葉がどうしても気になるのだが・・・
きっと『非常食』という事なのだろう。
・・・まぁ、先日の件ではそういう事なのだろうから仕方ないのだが。
光助「(・・・・・いずれ逃げればいいかな)」
と昨日の事など忘れたように軽々しく考えた。
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あの後、ルーミアに貰った林檎をシャクシャク齧りながら彼女に方向を尋ねてルート確保を行った。
彼女の発言では昨日の山を降りてきた道の先に湖があるらしい。
まずはその湖に水を飲みに行こうと考えた。
そんなルーミアを肩車して歩いて約30分程・・・・・森が消えて景色が変わる。
どうやら山の麓まで降りてきた様だ。
光助「ここか・・・・・」
山を抜けた先、そこには広大な湖が広がっていた。
それも海と思えるくらい広々としており、この面積だけでもダムが作れるのではないのかと思える程だ。
ルーミア「ここを通れば"さと"に出るよー」
光助「な、なんだって?!」
何気なく上からルーミアが言い放った一言。
里・・・・希望が見えた!
これで俺以外にも妖怪ではない普通の人が居るかもしれない場所に行けるという事である。
期待せざるをえない。
光助「よし!その里まで・・・・と言っても」
湖沿いの辺りを見渡すが、舟なんて一隻もなかった。
それもそうである・・・ここは妖怪の山、人がうろつかないのに舟なんて転がっている事などあり得ないのだ。
そもそもここは野生の野山であるし。
光助「うぅーん・・・・・・舟、作るかな?」
舟を作ろうかと考えた。
前例としてはロビンソンクルーソーだってのび太声のコナンだって15少年だって作れたのだから。
まぁ向こうも物語ならばこちらも物語の世界、活路はあるのではないか。
・・・・いや。
あちらに比べればサバイバルの知識なんて皆無に等しい自分を考えれば無理だろう。
そもそもあんなに逞しくない・・・・・むしろそうなりたいが。
唸りながらそんな事を思考していると、いつの間にか"地面の感覚"が無かった。
光助「お・・・・・?」
確認の為に下を見る。
爪先を下に向けても余裕がある感じからして、地面と俺との間は
なんと、俺の体が宙に浮いていた。
光助「え?あ!・・・・うわぁああ!飛んでる!俺飛んでる!」
じたばたと足を動かすが浮遊しているだけだ。
アイキャンフライ!
ルーミア「そーなのかー」
見ると、ルーミアが両手を広げてケタケタ笑っている。
昨日の鬼ごっこの件で彼女が飛べる事は分かった。
あぁ、彼女のお陰で飛べたのだと悟る。
光助「って事は里まで跳べるんじゃ・・・!?」
このまま飛べるって事は歩かずに楽に人里に着けるのではないか。
物事がサクサク進む・・・なんと素敵な幻想卿!
ルーミア「里までは行きたくないー」
幻想滅!
能力保持者の当人(妖怪)にそう言われるとこちらとしては困ってしまう。
しかし・・・・行きたくないと言うなると、やはり陰陽師とか退魔師とかそこらへんの妖怪退治をする存在が居るからなのだろうかとか考えてしまう。
そしたら余計に行きたくなるものだ。
光助「じ、じゃあ途中まででいいよ・・・あとは歩くなり泳ぐなりするからさ」
ルーミア「こうすけはよやくー」
・・・・そう言えばそうだった。
食べられる予約をしていたのだった。
そこでまたいい加減な事をあて水量で言う事にした。
光助「多分・・・・・里の麓は安全で、俺よりおいしいものがたくさんあると思うぞ」
里は行った事ないけど超適当断言!
当人の反応はというと・・・
ルーミア「そうなのかー?」
いつも通りである。
ルーミアが小首を傾げ、何か考える素振りを見せた。
どこか先日の「食われてしまう」という要求を飲む前の表情と似ている。
ルーミア「うーん、わかったー・・・・じゃあいこー」
何とか了承したようだった。
万歳!流石あて水量!
光助「じゃあ・・・お願いするよ、ルーミア!」
ルーミア「うんー!」
こうしてふよふよと浮かぶ足で大地を蹴り、俺とルーミアは湖の向こうへと飛んでいったのだった。
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数分後・・・・
ルーミア「みえないねー」
光助「あぁ・・・・なんにも見えないな・・・・」
俺達は湖の真ん中で淀む霧の中に迷っていた。
俺は相変わらずふよふよと低速で飛ぶルーミアの腿に顔を挟まれて体全体を抓まれる事に流石に苦しみを覚えたので、両腿に手を添えさせてもらう。
この感覚は幼少時のキャンプの時にやった覚えがあるロープハンガーに似ている。
それぞまさに妖怪ロープハンガー・・・腿が冷いけど。
と、その時ルーミアの腿ではない冷たい感覚が傍を横切った。
光助「!?・・・・な、なんだ?」
朝ではあるのだが、身に纏わり付く様な痛い冷気に思わず吃驚して叫んだ。
ルーミア「あーようせいー」
養成?陽性?・・・ルーミアの口から飛び出した言葉に"また厄介な妖怪出現か!?"と警戒を強める。
しかし、その目線の先に居たのは・・・
?「・・・・んー?なんだお前ら?」
目の前に青い服を着た少女が浮いていた。
この娘も見た事がある・・・・
確か、妖精の・・・・
?「・・・・あぁ、暗闇妖怪じゃない・・・・こんなとこでなにしてるんだ?」
チルノ。
氷の妖精であり、湖付近に生息しているんだったな、確か・・・。
全てが友人の受け売りではなく、少しゲームをした時に見た顔である。
・・・・余談ではあるが、寓話の妖精の設定特徴である辺り、余り頭が宜しくないとか。
それ位の知識程度である。
ルーミア「あー、ちるのだー」
光助「・・・こんなところでなにをしてるんだっての」
同じ質問を繰り返す氷の妖精娘。
と、その前に・・・・
光助「知り合いなのか?」
ルーミア「まぁー」
俺はなんとか我に返り、その妖精に尋ねた。
ならばこの湖の抜け方ないし、里への道も知っているのでは無いだろうか?
光助「俺達はこれから里に行きたいんだけど、方向とか分かるかい?」
その瞬間、俺はハッとして自分の質問を返り見た。
相手は妖精・・・・しかも設定通りならば悪戯好きと見える。
質問の内容を直に言えば、悪戯に捻られて踊らされてしまうかもしれないのに・・・。
自分の質問に後悔した。
が・・・
チルノ「どこ行くって?」
ルーミア「里のふもとー」
そんな懸念等無いに等しく、腿に挟まれた俺など蚊帳の外だった。
いや・・・このまま事が進んでくれれば何も起きずに里にいけるかもしれない・・・
そう考えたが・・・
ルーミア「おいしいものがあるってー」
上の捕食指定者がそんな事を言い出したのだった。
いや、言い出しっぺ俺である。
チルノ「たもとにそんなものがねーへー」
麓(ふもと)である。
と突っ込みそうになる心を何とか静止させて二人の会話に任せてみる。
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二人の会話に任せたが、案の定・・・
チルノ「おもしろそうだからあたい、ついていくわ!」
妖精娘はこんな事を言い出したのだ。
ルーミア「そーかー」
人食い妖怪はと言うとけたけたと笑いながら頷いていた。
チルノ「それじゃさっそく・・・と、アンタだれ?」
やっと彼女に気付いてもらった・・・・というか今までの会話の中で微妙に発言してたじゃないか。
俺はアウトオブ眼中なのだろうが、とりあえず自己紹介くらいはしておこう。
光助「俺の名前は光s・・」
ルーミア「よやくこうすけー」
ケタケタ笑うルーミアからそんな紹介を先にされてしまった。
まぁ約束上、確かにその通りではあるが・・・
チルノ「・・・・・・ふーん?」
ジロジロとこちらを見る。
暫くして胸を大きく張って答えた。
チルノ「・・・あたいしってるよ、"ひじょうしき"っていうんだろ!」
更に指をこちら側にびっと差してくる。
・・・・非常識?何の事だろうか?
俺はそんなに非常識的な事を言っているだろうか?まぁ妖怪サイドからしたら非常識に見えるんだろうか。
いや?待てよ・・・・・・あぁ、非常食って事か。
光助「・・・非常食な」
堪らずボソッと補足する。
チルノ「そう言ったわよ!」
そう言うとムキになって答える妖精。
チルノ「じゃあ行くわよ!」
ルーミア「うんー」
そういってまたふよふよと漂い始めたのだった。
その瞬間、霧が一斉に晴れ、反対側の山に綺麗な朝日が昇った。
この霧はこいつのせいだったのか・・・・
氷の妖精であるし、これ位の事はやって退けるのだろう。
このまま彼女に出会わなければ永遠に湖を漂っていたかもしれない。
仲間(?)にしておいて正解だったようだ。
光助「・・・・霧を出してたのはやっぱお前だったのか」
ついついそれを口に出してしまう。
チルノ「何よ、驚いた?」
目の前の氷の妖精は得意げに言った。
チルノ「アタイは天才だからね!」
光助「へ、へぇー・・・」
そんな能力に天才も何もあるのか・・・・と突っ込みたくなったが止めておこう。
とにかく今は湖を抜ける事が先決であるのだから。
光助「朝か・・・・」
朝日に見とれながら俺は呟いた。
こうして幻想卿滞在の1日目が幕を開けたのだ。
-続く-
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東方の二次創作、一章の続きです。
相変わらず突っ走って行きます。
※キャラの言動につきましては、原作とは一切関係ありません