No.430077

眠れる森 エターナル 天界編 1話前編

1話うpします。
初見の方はプロローグから読むことをお勧めします。
第1話の初めから区切りのよいところまで載せてます。
オモシロかったら支援よろしくお願いします~
1話後編うpしますた~

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2012-05-30 08:14:58 投稿 / 全2ページ    総閲覧数:573   閲覧ユーザー数:572

第1話 天界の扉と案内人

 

 

空を飛んでいる夢を見た。

真っ青な頭上に真っ白な足元。雲の上で飛んでいた。

照りつける太陽は暖かく。俺は空を舞っていた。目的地があるのかないのか俺は適当に上昇しては下降しまた上昇する。

しばらくたつと、それが適当ではなく気流に乗っていたからだと気づいた。

暖かいと上昇し寒くなると下降する。鳥というより飛行機になった気分。

そこまで来てようやく俺はこの夢が前に見た夢と酷似していることに気付いた。

しかし、酷似しているのは状況だけで下の景色が少し違った。

前は気づかなかったのか真っ白な足元はまれに途切れているところがありそこから地上がうかがうことができた。

だが、そこから望める地上は小さくとてもではないが下にあるものがなんなのかわからなかった。

そこで視界が暗転する。今まで青かった空は漆黒に。足元には土気色の奇妙な壁。

俺はそこで立っていた。状況を思い出す。俺は学校の屋上で何者かに刺された。

肺に一発。脇腹あたりに一発。二つとも後ろからザクリとやられたため背中にまだ痛みが残っている。

その痛みで俺が生きている(?)ことがわかった。

もしかしたら、ここは死後の世界なのかもしれない。それとも走馬灯のような世界なのかもしれない。

ただ背中にある痛みだけが俺に現実感を与えた。

ふと、犯人を思い出す。刃物…おそらく包丁を持った犯人。俺は確か顔を見たはずである。

しかし、思い出すことはできない。俺が知っているはずの人間だった。でも、思い出せない。このもどかしさで死んでしまいそうだ。

犯人は悲しい顔をしていた。たぶん、俺を刺してしまった後悔からきたものだろう。

そう考えていると俺はこの場所に違和感を覚えた。

違和感自体はここに来た時からあったが今、感じた違和感今まで感じていた違和感とは違うものだ。

ここではない。

俺がいるべきはここではない。

そう、この世界に俺がいることへの違和感。

それを感じてしばらくすると世界は再び変遷する。

漆黒から青。土気色から真っ白へ。これは夢と同じ色。同じ世界。でも、これは夢ではない。なぜなら俺は飛んでいない。真っ白な地面の上に立って青い空に囲まれる。

そんな感覚。そこで再び違和感を覚えた。

今度はここにいてはいけないなどの違和感ではなく。

この世界に何かが入ってくるような。そんな違和感。

突如、声が響いた。

『あなたは知っていますか?』

『世界には誰もが”永遠”になれる場所があることを。』

その声はどうやら女性の声のようで俺に対して問いかける風だった。

『こんにちは。愚者よ。私はあなたを歓迎します。』

「だ、誰だ。」

俺は声を荒げる。不思議な声。誰がしゃべっているのかわからない声に向かって。

『突然の訪問。失礼します。あなたは意外と自由な方のようですから捕まえるのに骨が折れましたよ。』

冷静な声。その声は続けざまに俺に問う。

『雪を見たことはありますか?永遠に降り続ける雪を。』

意味不明な質問に黙ってしまう。

『私はおそらくそれです。ですがあなたは違う。あなたは形のない鳥。世界を飛び回る。籠の中の鳥。』

鳥という言葉に反応してしまう。鳥。それは俺にとって俺を現すような言葉。

空を自由に舞い。自由な意思で好きなところへ赴く。

俺はそんな鳥にあこがれを抱いている。

『でも、寂しい。あなたには鎖が巻き付いている。束縛という名の力に。でも、形のないあなたには束縛は効かない。ただ、束縛は見た目上あなたを拘束しているだけ。』

どういうことであろう。俺にはまったく意味が分からない。

そう声を聴いていると目の前にの青が扉状に変わり金色の輝きを放った。

『お行きなさい。私はあなたを歓迎しますから。』

無意識のうちに俺はその扉をくぐっていた。

 

 

目を覚ましたら空は真っ青ではなかった。

白い雲の色に所々に見える青。周りは明るい。

上半身だけ起き上がる。不思議と痛みは全くない。

「あ、やっと起きた。」

声が聞こえた。発信源は俺の後ろ側。

刺された時のことを思い出しゾクッとしてしまったがすぐさま後ろへ振り返った。

辺りはまったく知らない奇妙な場所。

彼女はちょこっと浮き出た椅子のような岩に腰を掛けていた。

「こんにちは。新人さん。」

女性だ。女性と言ってもあんまり年を老いた感はない。

おそらく20~25辺りの女性。そんな女性はやる気のなさそうに俺を見ていた。

「ええと……ここは?もしかして天国だったりするかな?」

今の状況がよくわからない俺は彼女に尋ねた。

「あながち外れではない。ここは天界。あなたも会ったでしょ?神様に。」

「神様?」

そんな人に会っただろうか?そう首をかしげていると彼女は立ち上がった。

「ついてきて。私の仕事はあなたを案内すること。」

余計なことはしたくないのだろうか彼女は俺を手招きする。

よっこいしょと立ち上がり体を確認する。

服は刺された時に着用していた学生服。刺された場所の痛みはまったくないし息も普通にできる。おそらくここは死後の世界だ。

さしずめ彼女は死後の世界の案内人。これから俺は閻魔大王にでも会うのだろうか。

「こっち。」

彼女の歩く方へ俺も歩く。そして、歩きながら俺は聞いた。

「なぁ、ここって死後の世界?なんか痛みとかまったくないんだけど。」

「違う。あなたはまだ生きている……生き返ったのよ。」

「生き返った?なんで?」

「天使になるため。あなたは神様に選ばれたのよ。」

彼女についていくとまだ遠くだが人工物が見えた。

明らかに人が作ったような建物。

「天使……天使ってあの天使だよな。」

「天使はここの住民。天使は下界を安全に守る義務がある。」

「ってことは君も天使?」

その質問にコクリと彼女はうなづいた。

「ねぇ、俺はどこへ連れて行かれてるの?」

「学校。天使になるための。あなたが望む仕事を目指せる所。神様が創った。」

「さっきから気になってるんだけど。神様ってどんな人?俺は見たことないんだけど。」

そこで彼女はいきなりこっちを振り向いた。

「神様に会ってないの?夢に出てきたでしょ。」

ものすごい剣幕で俺を見つめる。

「夢……夢って俺が空を飛んでたけど…。あ、そういえば女の人の声が聞こえたなぁ。」

「……声だけ?本人はみてないの?」

「う、うん。声だけ聞こえて最後に金色の扉が出てきた。それをくぐったら……。」

「そう。」

途中まで話したところで彼女が言葉を区切らせる。

「やっかいね……あなた。」

そう言って彼女は再び目的地に向かって歩き始めた。

先ほどよりもずいぶん人工物に近づき辺りも自分が見知ったような風景に変わっていた。

「ねぇ、あなた。死因は?正確には死にそうになった原因は?」

「死因は…刺殺。後ろからズドッといきなり刺された。」

「……現世に未練は?」

「ふぇ?」

「あなたが住んでいたところに未練はあるの?」

「ないと言えばないけど……ただ、俺は俺を殺した人が知りたい。見ていたはずなんだ俺は。そして、俺はそいつを知っている。未練と言えばそれが未練。」

「そう。」

彼女はそう言うとそれ以降無口になった。

しばらく俺も無言で歩いたがまた質問してみた。

「君は何者なの?どうして俺の質問に答えてくれるんだ?」

「私は案内人。あなたのような新人を導く者。これも天使の仕事の一つ。もっとも滅多に人は来ないから天界の門を見張る門番としての役割が大きい。質問に答えるのは答えるのも私の仕事だから。…これで満足?」

「ありがとう。」

なるほど。あらかた内容はわかった。一回、整理してみよう。

天界があって天使はそこの住民で仕事は下界(人間界)を守ること。

しかし、天使全員がその仕事に従事しているわけではなくこの人のように天界内でする仕事もある…はず。

天使になるには神様と会うらしいが俺は会っていない。だから、彼女にとって俺はやっかい(?)

神様と会って神様に認められたら天使(仮)になって生き返る。

そして、最後に俺が向かっているのは学校。天使にあるための教習所のような物だろう。

こんなところだろうか。

歩きながら考えているといつのまにやら、周りには見知ったような風景。

おそらくここが天使たちが暮らしている街なのだろう。

周辺には天使と思しき人たち。こちらを見ては笑顔になる。

都会ほどでもないが田舎ほど少ないわけではない住民。

ここが天使たちにとってどれほど大きな街なのかはわからないがこの街には俺には理解できないような技術が用いられているようだ。

例えば人が宙にうかんだり。例えば火の出るようなものが何もないところから火が出たり。

ずいぶんと不思議な光景だ。

俺らはそんな光景であふれる街道を真っ直ぐに進み途中で右折した。

右折すると今までの雰囲気が一転。ズドッと田舎にグレードがダウンした感じ。

たくさんあった建物の姿は見かけ倒しで街道から一歩ずれるとかなりさびしくなる。

さらにその道を真っ直ぐ進んでいくと小高い丘が見えた。

前には木や植物など道しかなく後ろを振り向けば先ほどの街がある。

小高い丘までは建物がなく俺が初めてここに来たときに見た風景と同じようだった。

丘の周りには大きな広場(庭?)がありそれを囲う様に大きな柵。そして、小高い丘の上には立派な建物が建っていた。彼女はあれを目指しているようだ。

しかし、意外と距離がある。時間にして15分ほど歩きようやく建物にたどり着いた。

柵を越え、建物の入り口の前で彼女は止まった。

建物はよくみるような鉄筋コンクリート(?)でできた感じの建物であまり古い感じではない。3~4階建。敷地面積は一般的な一軒家の約10倍といったところだろう。

彼女は振り向き俺にむけて声をかける。

「私はこれから、あなたの登録をしてくる。だから名前を教えて。」

名前……そういえば。天界についてから一度も自分の名前について話していない。

まぁ、まだついて間もないし彼女との会話でも名前についての会話はなかったな。

「俺は秋野未来(あきの みらい)。」

「苗字はいらない、ここでは苗字は役職名になる。」

どうやら、そういうことらしい。つまり俺は未来+役職名ってことになるようだ。

「それと私の名前を覚えておいた方が良い。あとあと便利。」

「君の名前?聞いたっけ。」

「言ってない。……私の名前はクロエ。クロエ・G・C。」

「クロエ……GC?」

「そう、私の役職はGuide Cherub。案内人と門番という意味。」

Guideは意味がわかるが Cherubという単語は初めて聞いた。

おそらく、天界での特殊な単語なのだろう。

彼女はそう言い終わると建物の方へと歩いて行った。


 
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