No.428926

眠れる森 エターナル 天界編 プロローグ

長らく休止しておりましたが新作置いておきます。
題名は仮名でおもしろいな~とか思ったら支援よろ~
いずれは下手でも挿絵を載せるつもりです。
1話です↓
http://www.tinami.com/view/430077

2012-05-27 14:56:30 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:583   閲覧ユーザー数:583

プロローグ 空を飛んでいる夢を見た。

 

 

あの日の前日の夜。俺は空を飛んでいる夢を見た。

真っ青な頭上に真っ白な足元。雲の上で飛んでいた。

照りつける太陽は暖かく。俺は空を舞っていた。目的地があるのかないのか俺は適当に上昇しては下降しまた上昇する。

しばらくたつと、それが適当ではなく気流に乗っていたからだと気づいた。

暖かいと上昇し寒くなると下降する。鳥というより飛行機になった気分。

俺はそんな夢を見た。おそらく気持ちが舞い上がっていたからであろう。

あの日の前日はとても良いことがあったのだ。

長年、腐った縁と称されていた俺の長馴染みが告白してきたのだ。

答えは保留した。なぜなら、次の日が特別な日だからだ。

彼女もそれがわかったから保留に納得した。しかし、俺の心は言わずもがな決まっている。

彼女も確実にわかっていただろう。だから、約束した。明日、ここでまた会おうねと。

それは学校の屋上。立ち入り禁止ではないが何もないため生徒が滅多に来る場所ではない。

教師がたまに巡回に来るので不良などの素行が悪いものが溜まることもない。

秘密の話をするにはもってこいの場所。俺たちはそこで会う約束をした。

明日……俺たちが初めて出会った日に。

 

 

9月26日 夕方

 

「…な、なん…で……。」

絞るようにしてようやく出せたのはそんな声だった。

今日はとても良い日のはずだった。

夕闇があたりを支配したころ。俺は俺の人生を噛み締めていた。

少し息を吸うとどこからかヒューという音が鳴った。

おそらく穴が開いているのだろう。あまり大きな穴ではないらしくそれほど息をするのがつらいわけではない。

だが、俺の体はもうダメだろう。息はかろうじてできるし意識はある。しかし、屋上には俺から散った赤い液体が流れていた。動くことはできない。目も開けているのがやっとだ。

俺は今日幸せの絶頂に至るはずだった。

彼女に告白の返事をして。俺たちは恋人になるはずだった。

それほどに舞い上がって空を飛ぶような夢もみた。

うきうきして約束の1時間前には約束の場所である屋上にも来ていた。

そう、幸せになるはずだったのだ。

あれは約束の時間の10分ほど前。俺の幸せは一気に崩れた。

後ろから刃物で刺された。幸いなのか不幸なのかわからないが心臓には当たらず左肺に刺さった。鋭い痛みが走った。刃物は刺さるとすぐに抜け再び別の場所に刺さった。

場所は普通なら肝臓のある場所。俺は全内臓逆位という病気で内臓の位置が全て逆になっているため本来なら肝臓のある位置に肝臓はない。

犯人は俺がその病気であることを知らないようだった。

俺は力を振り絞って後ろにいた犯人を見た。

犯人は黒いコートにフードを被っていて一見、誰なのかわからない風貌だったが俺は犯人が誰なのかわかってしまった。

「…な、なん…で……。」

そこでこの声を出した。まだ意識はあるがうつろな瞳。そんな瞳で犯人を見ると犯人が泣いているように見えた。いや、泣いているというのは少し違う。涙は出てないように見える。なんというか悲しい顔。犯人は悲しい顔をして俺を見下ろしていた。

そして、言い放つ。

「ごめんね。」

と。

その言葉を最後に俺の意識は途絶えた。

 

 


 
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