No.417395

アーク・エレメンタール・ブラッド 2話「君の剣」

カーネルさん

高校生、海宁鴻樹はふとした事から命を狙われる。
両親や兄弟と引き離され、友人たちの反対をよそに、闇の組織との闘争に身を委ねていく。

海宁鴻樹 かいね こうじゅーーーー 高校生
新堂門要 しんどう ようーーーーー 高校教師・鴻樹と泪華の担任

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2012-05-03 00:35:23 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:371   閲覧ユーザー数:359

俺は…。

そう、俺こと海宁鴻樹がたった一人で暮らしているのにはそれなりの理由がある。

俺がまだ小学生だった頃、根っからのアウトドア好きな父の希望もあって、父と母、姉と俺と弟で県外へキャンプに行った時のことだ。

俺はまだこの時、自らの超常的な力を知らずにいた。

 

 

キャンプ場に着くなり親父がテントを設営し、お袋は幼い弟を見ていた。

俺は中学生の姉と周囲を散策していた。

俺の住んでいる碧間市もそこそこな緑あふれる街なのだが、全身で、五感全てで自然を感じたのはそれが始めてで、テンション上がっちゃって、超気持ちいーってなってた。

姉もそれは同じだったようで、二人で森林を駆け回って、木の根っこにつまずいて転んでは笑い、姉に藪の中を匍匐前進させられ、NVAかヴェトコンの役だかをやらされてもノリノリであった。

今思えば物知りではあったが偏重な酷い姉だった。俺のにわか知識も姉の影響が強いんだろーな。

 

そんなこんなで奥地に進んできた二人きりの偵察隊は学校25mプールくらいの大きさの貯水池を発見した。

周りを木々が生い茂っており、全体像は掴み兼ねていた。

姉に「軍曹、行け!」と言われてその濁ったプールに蹴落とされた。

単なる悪ふざけだったのだ。それは。

水が溜まっているかもわからず、深さも木々の影で錯覚したのかも。

だが姉の笑顔がみるみる恐怖に凍りついていたのを覚えている。

俺は5mほどの深さのため池に落ちていき、意識を失った。

 

 

その後で気づいた時は自宅にただ一人だった。

「誰かいないの?姉さん?みんな!」

家には誰もいなかった。ただ、家族の靴や、親父のゴルフクラブ、お袋のミシン、姉さんの本、弟のオムツ、食器といった見慣れた物は残っていた。

一つだけ、出発前には無かった物が自室にあった。灰色の封筒に、通帳と手紙が入っていた。

 

海宁鴻樹殿

我々は先日の中邑市森林公園での貴方の能力の発現に感銘を受け、我々の資産を投資し、貴方のより良い能力の開発に助力させて頂くため、最適な環境をご用意致しました。

 

短くそう書かれていた。

最適な環境?これが?一体誰がこんなことを!?

俺は数年の後、今の碧間高校に入学した頃、その組織の存在を知る事となる。

 

アーク協会。

 

やつらは異能者をその能力の暴走等の理由で近親者を傷つけたりしないように、異能者を補助し社会で生活できるように援助するという大義名分を掲げている。

くそくらえだ。俺は保護なんて求めていない。俺は家族に会うためにいつかこの街を脱出し、アークのやつらをぶちのめしてやる。

 

事件直後後の俺は狂ったように回りにあたった。すべてが憎かったあの頃、教師や他の生徒、異能者を蔑むやつら、社会や、神さえも憎かった。、そしてそれまで親しかった友人たちは俺の八つ当たりを受け次第に離れていった。

 

 

 

 

 

俺は独りだ(Im alone)

俺はその日から確かに一人だったのだ。

「あの日から俺なりに色々調べた、俺はアークを暴走させ、ため池を蒸発させて意識を失ったんだ、姉さんは気絶した俺を担いで親たちの元に向かった。」

 

「それを、能力(アーク)の発現を誰かが見ていたの?」

千舎宿泪華は海宁鴻樹の足首の応急処置を終え、そう言った。

 

ああ(Yep)

「コウ、英語じゃなくていいから。さっきから発音できてないし」

「すまんな、英語は苦手なんだ。そうさ、運悪く見られてた。ESAoB(エレメンタル・ソーサラー・アーク・オブ・バタリアン)に。監理機関、いいや、運悪く生まれ持っちまった能力を持つ人間を迫害する奴ら」

 

ESAoBとはアーク協会の勅令を実際的に遂行する期間で、異能を発現した者の監視、保護、異能を使用し、殺人を犯したもの、またはしようとしている者と抗戦し、抹殺することを生業とする組織。

よって構成員は必然的に異能者である。特殊な戦闘訓練を受けた異能者が異能を使った犯罪を駆逐する。

 

「コウ……」

「なぜ親たちはこの街に住む事にしたんだろうか、他の街なら異能者になんてならなかった。碧間市じゃなきゃ、離れ離れにされずにすんだのにな、独りにならずに……」

「コウ!自分を責めないで、私や、学校のみんながいるわ」

 

「おいらもいるぜ」

 

ふと背後から聞き慣れた声がした。

「お前ら夜中にでかい声で喋ってんなよ、近所迷惑を考えてないだろーな」

「壬生冬優聞」

「フルネームっ⁈ かよ! しゃーねーな」

 

壬生冬優聞は、鴻樹と同じく、他の都市からこの碧間市に移住させられた異能者である。異能が碧間市以外でアーク協会によって発覚した未成年者はこの街に移住させられる。

 

「鴻、泪お前ら水臭いじゃねーか。俺は一応異能の事はお前らに言ってあったっていうのに」

 

冬優聞は世界的な競技者の大半がそうあるように、その髪を五厘とまで行かないまでも限りなくそれに近いまでに刈り込んだーーそれはよく手入れがなされた運動競技場の芝生をおもわせたーー髪を掻いて言った。

 

「いつから聞いていたんだ?新堂門要先生が俺を、いや、異能者の生徒を殺害しているのは聞いているか?」

 

鴻樹の問いに深く頷き、ハッと何かに気づいた冬優聞は身を強張らせた。

「っ!お前ら、先生はどうしたんだ!? 逃げてきたんじゃないのか」

 

 

 

 

 

 

 新堂門要は違和感を感じていた。ついさっき異能の発現を確認した二人の生徒と合間見えていた時からそれは大きくなっていった。

そのことに考えを割いていたために生徒二人の逃走を許してしまったのだが。

しかし、いまはそれよりも、この違和感がなんなのか突き止めたい。生き死の境で身に付いた鋭敏な感覚が、己の生存に深く関わってくると告げている。

まるで何かに監視されているような。

 

「気づかれましたか?」

 

要は瞬間的に声の発せられた方向を見る。

要の体格に比して華奢な女が風変わりな迷彩服を着て立ったいた。

年のころは二十歳前後といったところか、神は黒髪で、長髪だ。

なぜか抜き身の日本刀を右手に持っている、要はその風変わりな迷彩服に見覚えがあった。

 

「意外と早かったなESAoB」

 

「ご存知でしたか、なら……」

 

その刹那銃声が轟き、会話が終了した。

会話していた二人のうち一方が3mほど吹き飛び、地に伏した。

一方はその後すばやくその場所を後にしていた。

要の腕にはアークが顕現していた。

 

 

 

 


 
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