No.426720 アーク・エレメンタール・ブラッド 3話 「俺たち!尊きは日常」カーネルさん 2012-05-22 22:51:47 投稿 / 全1ページ 総閲覧数:381 閲覧ユーザー数:379 |
まったく砂粒ほどの感慨もない。
あるいは常人の領域に意識を根ざしていたら……
違う
その思考すらもまったく関心の埒外、彼の心はそのように動かないのだ。
プロに逡巡も後悔もない。
プロは……
「いってえ なにすんだコウ!」
「なんだよ!何で冬優聞なんだよ!」
俺の全力だった。
新堂門要先生のホームルームに入った生徒は、まず、徒手空拳での戦闘を行える技能を叩き込まれる。
俺は一発のパンチを繰り出すための筋肉に習熟していた。他のクラスメイトの誰よりも。
俺はいまこいつをしこたま殴りつけて叩きのめす気でいる。
「コウ!何を〓 やめてよ! 友達じゃない!……はっ!」
「気づいたかるい!こいつは知るはずが無いんだ!俺たちが先生に追われていることなんてな!」
「ぐぶぇっ……ぐえっ」
「私聞いたことがある。他者や、死者、人形を意のままに動かすことができる異能……ESAoB!そんな特異なアーク
はあいつらしかいない!この町に来ているの!?」
その時急激に気配が大きくなった。
足音が近づいてくる。
俺は殴るのをやめ、身構える。
「よお!」
闇から次第に輪郭があらわになり、俺はその人物を認識する。
一般的な成人よりも肥えたその身体はビールと、欧米的な食生活、不規則な生活によるものである。
「おっちゃん!」
「
そのおっちゃんは、近所にいる気のいいおっちゃんなのだが、深夜に散歩をする日課と、トランクスと下駄と木の枝
を持っていてこの体格のためか、この界隈では不審者扱いである。不審者である。
「なんだ喧嘩してたのか?ん?ん?おっちゃんに言ってみろ」
「そっ、れは……」
俺は思わず押し黙った。おっちゃんことヒュー・而今・サーンは親と離れて暮らしている俺たちには親父のような存在
で、俺たちが困っていると助けずに居られない。
話してしまえば巻き込む事になるかもしれないのだ。
それは、るいも同じなのか黙り込んで伏せていた。
「お前…らのや…りとり聞…いてたから俺知っ…てたから…」
壬生冬優聞が言った。
「ん?」
まさか・・・
「やっべ」
俺は、思わず逃げようとして。
昔、おっちゃんに始めて会ったときを回想していた。
あの時俺は、家族とわかれた不安のせいか、平穏に嫌悪感を募らせ、その日も友人を蔑ろにするような振る舞いをし、公園でぼっちになっていた。
その時は今のように不審人物ではなかったおっちゃんと出会い、話をしたら、叱られて、泣いた。
でも
「自分が悪かったら相手に謝るんだ。ごめんってな。そうすれば相手だって許してくれるさ。」
「本当か?」
「ああ、おっちゃんを信じろ」
ーーーー
「おっちゃんを信じろ・・か。」
俺はその後、冬優聞に頭を下げた。入院に掛かる費用は俺が負担することになったが許して貰えた。
そしてその日は解散した。
次の日。
制服に着替えた俺は、朝食を済ませ、玄関へと向かう。
不安だった。けど昨晩はおっちゃんが俺と冬優聞とるいの家の近くで寝ずの番をしてくれていたらしく、多少寝れた。
靴を履いて家を出ると。るいが不安そうな表情でポーチにもたれていた。
「いやな予感がする。空はこんなに澄んでいるのに。」
不安ながらも何気ない会話をしながら学校に近づくとこの近辺は明らかに異質な空気を発していた。
通い慣れた道だからこそわずかな変化にも違和感を感じる。
例えば通学路に新しい店ができていたり、道を工事していたりする時の違和感。それが些細な変化でも無意識が知覚するのだ。いずれ変化に慣れたとしても。
「この道はなんかやばいぞ。何か、空気がどんよりしていて、なんか腹のあたりがモヤモヤする。」
「コウ、昨日寝れたの?疲れているのかもよ。それより先生に出くわすかもしれないのに学校なんて」
「それは問題ない。」
昨日自宅でネットを調べていると、昨夜の一件は銃殺ミストという名前の事件として掲示板を賑わしていた。
銃殺は先生のアーク(俺に発砲した時は無音に近い銃声だったのだが)、ミストは泪華の異能のあまりの大規模さから人目を引くのも無理は無い。
銃殺された人間が霧散したとか、自宅が水浸しになったとかで特に気に留める書き込みはなかったが、更に調べていくと、日本刀を片手に完全にキレてる女を目撃したとか、帰宅途中に血だまりと火薬の様な匂い、小さな黒ずんだ鉄の粒が散乱していたなどの書き込みがあった。
銃のアークと日本刀の女?
つまり先生はあの後他の異能者と敵対したのでは?
それならあの後追跡が無かったのもうなづけるし、もしかしたら負傷しているかもしれず、昨日の今日でこの時間に学校で出くわす筈は無い。
この学校には異能者は少なからずいるのだ。
まとめて対処出来るなら俺を何故俺だけを攻めたのかわからん?
昨日何かがあの人の中で起こり、修羅に変貌した。
もう平穏無事な日常を送る気はないだろう、全ての異能者を殺害する事にしたのだきっと。
「なるほどね。でも特攻隊の精神でしゃにむに手当り次第殺しにかかってきたらどうすりね?」
「やらないさ、先生は自暴自棄になったんじゃない。慎重かつ確実に目的を遂行する戦闘力、敵の行動や地形を分析し戦略を立てる思考すらも持っている。狂ったんじゃない。決して。」
「べた褒めね。」
「待て!どうやら……しまった!」
校門の前に兵士の格好をした男が二人居た。
俺はその迷彩服やコンバットギアに見覚えがある。
全体に灰色がかったカモフラージュに、肩にその所属を表した紀章。青のベレー。
あのホルスターに収められているのは、着弾と同時に特殊な精製薬物を瞬間的に対象に注入する弾丸を装填した
異能を剥離され逃げ出す獲物を追い回す事から、拳銃、銃弾、それを用いる部隊を総じて……
「トレーサー‼ ESAoBの犬だ!」
俺はるいを瞬間的に庇うように移動し、背に隠す。
一瞬の判断で男たちは訓練された洗練された動きでホルスターの留め具を外し、拳銃を手に取るとスライドを操作して初弾を薬室に送り込み撃鉄を起こし、そのまま狙いをつけ、発砲した何発かの特殊銃弾は俺の胸部から腹部の正中線上に精密に命中した。
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高校生、海宁鴻樹はふとした事から命を狙われる。
両親や兄弟と引き離され、友人たちの反対をよそに、闇の組織との闘争に身を委ねていく。
海宁鴻樹 かいね こうじゅーーーー 高校生
新堂門要 しんどう ようーーーーー 高校教師・鴻樹と泪華の担任
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