No.417295

真・恋姫†無双 異伝 「伏龍は再び天高く舞う」外史編ノ十

お待たせしました。

今回展開と設定がかなり強引になっている部分があります。

それでも良ければ、ご覧くださると幸いです。

2012-05-02 21:47:35 投稿 / 全9ページ    総閲覧数:10115   閲覧ユーザー数:7582

 

 岳飛が仲間となり一ヶ月が過ぎようとしていた。

 

 その間にも黄巾党の勢力は強くなっていくばかりで、洛陽

 

 近辺にも現れ始めた。

 

 そしてようやく…。

 

「皇帝陛下より各諸侯宛に黄巾討伐の勅命が発せられたようです。

 

 遠からず私達の所にも命令が届くでしょう」

 

「ようやくかいな……」

 

「本当にようやくですよね……」

 

「自分の身に危険が及んで初めて危機に気付くものなんですよ。

 

 ああいう人達は」

 

 結局、何処の世界に行ってもお偉いさん達のやる事は一緒か。

 

「ともかく、これで他の諸侯の皆さんも大規模な軍事行動に移れる

 

 はずです。少しは黄巾党の力も弱まってくれれば良いのですが」

 

 朱里の言う通りではあるが、諸侯も自分の領地を中心にしか動かない

 

 だろうし、自分の領地に来る分は自分で何とかするしかないだろう。

 

「とりあえず、俺達としてはこれまで通り現れた賊を討伐するという方向

 

 で行こう。後は官軍や各諸侯の動きを見て決めていくしかないと思う」

 

「そうですね、私達の兵力じゃやれる事は限られてきますし」

 

「辛気臭い話やな~、もっとこうドカ~ンと行きたいけどな~」

 

「仕方ありませんよ、張遼様。諸葛亮様の言う通り、今の兵力では

 

 外へ討って出るというわけにもいきません」

 

「まあ、それはそうなんやけどな」

 

 実際、我が軍の兵力は二千。賊ごときに引けをとるつもりは無いが、

 

 大規模な軍事行動となると限界がある。

 

「義勇兵を募れば、兵力を増やす事は出来ますが……」

 

「それでは逆にここまで鍛えてきた精度を落とす可能性もあります」

 

「皆、しんどいだろうが踏ん張ってくれ。それしか言えなくて申し訳ないが」

 

「一刀が謝る事はないで。皆、今の状況はわかってるしな」

 

 

 

 それから程無く、俺達の所にも正式な命令が来た。

 

 これにより各地で命令を受けた諸侯が討伐を始め、状況が好転すると思われた。

 

 しかし…。

 

「一体どうなっている?日に日に黄巾の勢力が広がっていくばかりじゃないか」

 

「討伐が進んでいる所もあります。黄巾党は諸侯の足並みが揃ってない所を

 

 衝いているようです」

 

 黄巾党にも知恵がまわる奴がいるのか、討伐が遅々として進まない所へ重点的

 

 に大兵力を回し、その勢力を拡大させている。ここ荊州においても襄陽の劉表、

 

 南陽の袁術といった勢力の強い所を避け、他の郡へ攻撃を仕掛けている。

 

 本当であれば、今の二つの勢力が他へ兵を進めてくれれば討伐は進むはずなのだが…。

 

「劉表、袁術共に動き無しって本当か?」

 

「はい、袁術さんは客将の孫策さんに討伐を命じたのみで自分自身は小規模の部隊への

 

 攻撃のみを繰り返しています。そして劉表さんの所は…」

 

「どうした?何か問題でもあったのか?」

 

「劉表さん自身がご病気である事と、この期に及んでお家騒動に明け暮れているようです」

 

 朱里の話によると、劉表さんには子が二人いて本来は長子である劉琦さんが後継者なの

 

 だが、庶子である劉琮さんの外戚である蔡瑁という人が劉琦さんを廃嫡させようと画策

 

 しているようだ。そのせいで劉表さんの所は内部分裂を起こしかけてて、黄巾党の討伐

 

 どころではないらしい。

 

「…マジか、それ」

 

「そいつら、今の状況をわかっとるんか!?」

 

「わかってないから、そんな事をしているのでしょう。自分の所に黄巾の大軍でも来ない

 

 限りは気付く事もないのですよ」

 

 霞の言葉に輝里が答える。確かに輝里の言う通り目の前に敵が来ればわかるだろうが、

 

 それでは手遅れになってしまう。

 

「このままでは何も進展しない。何とか俺達だけでも動けるようにしたいけど」

 

「いっそ動いてしまうっちゅうのはどうや?ウチらが数倍の敵を打ち破ったんは結構

 

 知れ渡っているみたいやし、黄巾の連中もビビってくれるんちゃうか」

 

「あの時の賊と黄巾党では規模が違いすぎる。それに黄巾の展開の仕方を見れば、

 

 ある程度の知恵者がついているのは間違いないだろうし、そう簡単にはいかない

 

 だろう。無駄に損害を出すだけになりかねないよ」

 

 とは言ったものの、霞の言っている事に一理あるのも事実だ。このまま領内の

 

 守備に終始するだけでは、他の諸侯と大して変わらない。何かのきっかけが

 

 あればいいのだが、そうそう簡単には……。

 

「申し上げます!太守様よりの急使が参られました!」

 

「太守様の?すぐお通ししろ!」

 

 この県が属する南郷郡を治める太守様は俺が県令になった直後から何かと目を

 

 かけてくれて、政も自由にやらせてくれている。とはいっても実際その方が

 

 税収が増えているからという理由もあるらしいのだが。

 

 しかし、急使って一体何が……。

 

 

 

 やって来た使者の人は全身に怪我を負っていた。

 

「どうしました!?すぐに治療を…」

 

「いえ、ご心配なく……それよりも太守様は昨日の黄巾党との戦で大敗を喫し、

 

 ご自身も重傷を負われました。何とか城へは帰れたものの、指揮を執れる

 

 状態では無く、城も黄巾の軍勢に囲まれております。私は太守様の命により

 

 北郷様へ援軍の要請の為に、何とか囲みを突破してここまで…」

 

「太守様が!?わかりました、すぐに向かいましょう」

 

「ありがとう…ございます。何卒…よろしく……お願いします」

 

 使者の人はそう言うと深く平伏した。

 

「そんなにかしこまらなくても大丈夫ですよ。誰か、この人を医務室へ」

 

「わかった。ほれ、しっかりしいや」

 

 霞が使者の人を抱き起こそうとしたが、何か様子がおかしい。

 

「どうした、霞」

 

「あかん、この人もう死んでる」

 

「えっ!?」

 

 言われて近づいてみると…確かにその人は平伏した状態のまま死んでいた。

 

 死にかけの身体でここまで来たっていうのか……。

 

「命がけで来たこの人の遺志を無駄にはできない。皆、出撃準備!太守様の城へ

 

 向かうぞ!!」

 

 

 

 俺達は留守を丁奉さん・雛里・水鏡先生に頼むと千五百の兵を率いて太守様の

 

 城へと向かった。しかし城を囲む黄巾の軍勢は約七千、当然このまま行った

 

 のでは敵の大軍に太刀打ちできないのは明白なので策を講じる必要がある。

 

「朱里、どうだ?」

 

「本当ならば城に籠る兵隊さん達と呼応できればいいのですが、今の状況では

 

 難しいでしょう。ならば、私達だけで撃退する手立てが必要です」

 

「俺達だけで戦う術か……ならば、この方法はどうかな?」

 

「どんな方法ですか?」

 

「それはな……」

 

 ・・・・・・・・

 

 俺達は太守様の城が見える場所までたどり着いた。

 

「こりゃ完全に囲まれてるで。ウチらが何とかせんと早晩落ちてまうな」

 

「いいか皆、手筈通りにな。朱里、兵の指揮は任せる」

 

「はい。それでは、先鋒の霞さんは打ち合わせ通りに動いてください」

 

「応っ!」

 

「輝里さんはご主人様と動きを合わせてください」

 

「わかった」

 

「岳飛さんは私が合図をするまで本陣にて待機をお願いします」

 

「わかりました」

 

「すまないな、岳飛。本当なら俺が本陣にいなければならないんだが」

 

「いえ、私より北郷様の方がこの作戦に精通されています。確実に成功

 

 させる為にはこの方がいいと私も思います」

 

「ありがとう。では、行くぞ!」

 

 

 

「北郷一刀が臣、張文遠見参!!命が惜しかったら道を開けぇぃ!!」

 

 霞が敵の背後より攻撃を仕掛ける。

 

「大将!敵の援軍だ!」

 

「あの北郷軍ですぜ!」

 

「野郎共、落ち着け!相手はほんの数百だ!迎撃しろ!!」

 

 黄巾の軍は一瞬混乱したものの、霞が率いる軍勢が少数なのを見ると、

 

 反撃に転じてきた。

 

「お前ら相手にするんやったら、この程度の数で十分や!覚悟しい!!」

 

 しかし霞は臆する事無く、正面からぶち当たる。

 

 実際、霞の部隊は黄巾の連中よりも兵の強さでは遥かに勝っている。

 

 そして霞自身の武も完全に敵を圧倒している。このまま敵将を

 

 討ち取れそうな勢いだ。

 

「大将、こいつら強いですぜ!どうしたら…」

 

「くそっ、もっと兵を回せ!城の方は二千もあれば十分だ、数でぶちこめ!!」

 

 霞相手に劣勢を強いられた敵は城を囲んでいる兵の大半をこっちに回してきた。

 

「いくら出てこようが、同じや!」

 

 霞は敵の数が増えようとも変わる事無く、押しまくる。

 

「大将、こいつら強すぎる!」

 

「ええいっ、くそ!もう五百程こっちへ回せ!!」

 

 敵はさらに数を増やす。

 

「ほうっ、大分こっちに来たみたいやな…退却!!」

 

 敵の増援が来ると同時に霞は兵を引く。

 

「大将、あいつら引いていきやすぜ!!」

 

「けっ、手こずらせやがって。おいっ、追撃だ!!ここまで好きにされたお返しを

 

 してやれ!!」

 

 敵は霞の部隊を追って来る。

 

「よっしゃ、あいつら追ってきたで!後は手筈通りに一刀のいる所までおびきよせる

 

 だけや」

 

 霞は自ら殿を務めて部隊を退かせていく。

 

「そろそろやな…頼むで、一刀」

 

 

 

「よし、霞はうまく敵を誘導してくれたな」

 

 俺は伏兵を率いて誘導地点に待ち構えていた。ちなみに輝里は同じように部隊を率いて

 

 道を挟んだ反対側に潜んでいる。

 

 俺が朱里に提案したのは「釣り野伏せ」という先鋒が敵を引き付けて退却し、伏兵のいる

 

 地点までおびき寄せて討つ作戦だ。

 

 朱里はそれを聞いて、即座にこの場所での作戦決行を提案してきた。

 

 確かにこの作戦を行うのに最も適した場所だろう。

 

「いいか、張遼隊がここを駆け抜けて行った後にそれを追ってくる敵の横腹を衝く。

 

 但し、俺が合図するまで動くなよ」

 

『応っ!』

 

 霞の部隊はうまく敵を引き付けつつ、駆け抜けて行く。その後ろを黄巾の軍勢が追ってくる。

 

 もう、こいつらには周りが見えていないようだ。……良し!ここだ!!

 

「今だ!矢を放て!!」

 

 俺の号令と共に矢が放たれる。ほぼ同時に反対側の輝里の隊からも矢が放たれた。

 

「ぎゃあ!」

 

「大将!伏兵だ!!」

 

「なっ、くそっ!一旦引け!!」

 

 敵将は退こうとするが、混乱しているからか連絡が行き渡らない。

 

「敵が態勢を整える前に、全軍突撃!!」

 

 号令と共に旗を振らせる。

 

「合図です!こちらも一刀さんの隊と同時に攻撃!」

 

 俺の隊と輝里の隊が同時に敵に対して攻撃をかける。

 

「よっしゃ、ひっかかったで!部隊反転!!ウチらも突撃や!!」

 

 霞の部隊もそれに呼応して攻撃をかける。

 

 黄巾の軍勢は同時に三方から攻め立てられ、混乱に拍車がかかる。こうなると

 

 軍勢が多い方が不利となる。

 

「大将!どうしやしょう!!」

 

「畜生っ!動ける奴はここへ集まれ!」

 

 敵将の号令に残った敵兵があわてて集まろうとする。

 

「今です、岳飛さん!敵兵の集まろうとしている所の中心にいるのが敵将です!」

 

「はっ!これより我らも突撃する!!狙いは敵将の首一つ!!」

 

 朱里の指示で、岳飛も残った軍勢を率い敵将へ向けて突撃する。敵は兵を集め

 

 ようとしたのが仇になって逆に動きが取りづらくなっている。

 

「敵将、覚悟!!」

 

「くそっ、やられてたまるか!!」

 

 敵将は岳飛が来ると一目散に逃げようとするが、突然棒立ちになった馬から

 

 振り落とされた。その隙を岳飛は見逃さない。

 

「はああああああ!」

 

「た、助け……」

 

 ゴギャッッッッッ!

 

 何かが砕けるような音が聞こえたと同時に敵将は倒れた。岳飛の一撃は頭蓋骨を

 

 砕いていた。無意識の内に拳に気をこめていたようだ。

 

「敵将、討ち取った!」

 

 岳飛の声が戦場に響き渡る。

 

「げぇぇぇ!大将がやられた!!」

 

「逃げろぉぉ!!」

 

「助けてくれぇぇぇ!」

 

 その瞬間、敵は逃げていった。

 

 その勢いを駆って城の周りにいる残兵に攻撃をしかけようとしたが……。

 

「何や?人っ子一人おらへんやん」

 

「おそらく逃げてきた人から大将の討ち死にを聞いて逃げ去ったのでしょう」

 

「ならば、まずは太守様に報告だな。ちょっと行ってくる。朱里と岳飛は俺に同行、

 

 輝里と霞はこの場で待機して警戒にあたってくれ」

 

「御意です」

 

「はっ」

 

「わかった」

 

「了解です」

 

 

 

「太守様、北郷様が見えられました」

 

「ああ、ここまで通すように」

 

 太守様に呼ばれ、寝室に入る。

 

「…!太守様、大丈夫ですか?」

 

 太守様の顔は完全に血の気が無くなったように青白くなっている。

 

「大丈夫じゃ…と言いたい所ではあるが、どうやらそう長くもないらしい」

 

「そのような気弱な事を」

 

「自分の身体の事は自分が一番良くわかるものだ。ここまで持ったのが奇跡的な位だ。

 

 それはそうと黄巾の軍勢を撃退してくれたそうだな。儂の全軍のニ割程度の数だったのに、

 

 さすがという所だな。北郷よ、そんなお前を見込んで頼みたい事がある」

 

 太守様はそういうと小さな袋に入った物を持ってこさせた。

 

「これをお前に託す。受け取ってくれ」

 

 そう言って渡された物は、太守の印綬だった。

 

「太守様、これは!」

 

「儂には子がおらん。なので、ずっと儂の後を継いでくれる者を捜しておった。北郷、お前こそ

 

 儂の後継者としてふさわしい者じゃ」

 

「そんな、俺なんて!捜せば他に人は…」

 

「もう悠長に捜している時間も無い。儂亡き後、後継者をきちんと決めておかねばこの郡はまた

 

 黄巾の軍勢に狙われる。今、後を任せられるのはお前しかおらんのだ。何、心配する事は無い。

 

 誰も反対などしやせんよ。お前には強き将兵と優秀な軍師がおるでな。だから、頼む。南郷郡

 

 をより良き道へ導いてくれ」

 

 太守様はそう言って頭を下げる。そこまで言ってくれているのに断る事などできるわけは無い。

 

「わかりました。それでは『太守代理』の任を拝命させていただきます!」

 

「『代理』か、お前らしいな。ならば、よろしく頼むぞ北郷よ。この国に良き未来があらん事を……」

 

 俺を後継に任命して安心したのか、太守様はその二日後に亡くなられた。

 

 

 

 

 

 

 

 こうして俺は県令から代理とはいえ太守へと昇格した。だが、まだ黄巾の勢いは留まる所を

 

 知らない。これからこの苦難の時を乗り越えていかなければならない。でも、俺には頼れる

 

 仲間が、そして最高の軍師にしてパートナーと呼べる存在がいる。

 

「ご主人様、私はお側にいて、あなたの為にこの知識と知恵を役立てますからね。いつでも

 

 頼って来てください」

 

「ああ、ありがとう。朱里、頼りにしているよ」

 

 

                            

                           続く(ように頑張るつもりです)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 あとがき的なもの

 

 

 mokiti1976-2010です。

 

 今回、かなり強引な展開にしてしまいました…。

 

 もっとうまく書こうと思うのですが、私の残念な文才がそれを妨げてしまう。

 

 もっと精進を積まねばと思う毎日です。

 

 さて、次回は外へ討って出る力を得た北郷軍が他の勢力の誰かと出会う予定です。

 

 誰になるかはお楽しみという事で。

 

 それでは次回、外史編ノ十一でお会いいたしましょう。

 

 

 

 

 

 

 

 追伸 一刀が太守になった郡である「南郷郡」は本来は魏が荊州を支配した後で出来た郡なの

 

    ですが、ここでは南陽の西側、襄陽からは北西側に位置する郡に設定させていただきます。

 

    また、襄陽も魏の統治下に入ってから郡の名前になったのですが、ここでは郡の名前として

 

    設定させていただきます。

 

    不快に感じる方もいらっしゃるかとは思いますが、ご容赦の程をお願い申し上げます。

 

 


 
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