No.419035 真・恋姫†無双 異伝 「伏龍は再び天高く舞う」外史編ノ十一2012-05-06 08:27:41 投稿 / 全11ページ 総閲覧数:10804 閲覧ユーザー数:8037 |
俺が南郷郡の太守代理に就いてから二ヶ月が過ぎようとしていた。
当初は、ポッと出の俺が太守になる事に対する反対勢力が出るかと
思われたが、俺達の軍が数倍の黄巾の軍勢に対して完勝した事と
領民からの支持により、危惧するような事態にはならなかった。
問題があったとすれば、急激に膨れ上がった領土と兵士をいかに
して掌握していくかであったが、ここでも朱里の超人的な政務
能力と雛里・輝里・水鏡先生の補佐によって思った以上に早く
安定させていく事ができた。
しかし太守ともなれば、問題は領内の事に限って来ないのは
昔も今も変わりはないのであった……。
「それで?俺にどうしろというのですか?張勲さん」
「ですから、あなたの持っている南郷郡太守の印綬を、我が主
袁術様に渡していただきたいのですよ」
隣の南陽郡の太守である袁術さんの腹心である張勲さんがやって来て
太守の座を袁術さんに渡せと言ってきた。
実はこれが初めてではない。俺が太守代理になった直後にいきなり
書状が来て『南郷郡の太守は袁術様が正統なので印綬を渡せ』と
言ってきたのが最初だ。もちろん、そんな正当性は欠片も無いので
無視したら、いろいろな嫌がらせやあからさまな流言蜚語を流して
来たりしてきた。しかしそれも、朱里達の適切な対処によって
解決してきた。そして遂に今回、直接乗り込んで来たというわけだ。
正式な使者として来た以上は無視するわけにもいかないので、
こうして会っているわけだが……。
「しかし、何度言われても印綬は亡くなった前太守様より託された物。
渡す事はできません、お引き取りを」
「ですから、その前太守さんが袁術様より不法に簒奪した物なんですよ~。
北郷さんはその辺りをご存知無いのは仕方の無い事だとは思いますが、
これは紛れも無い事実でして~。ここは穏便に印綬をお渡し願えると
こちらとしても手荒な事をせずに済むのですが」
手荒な事ねぇ、それは『渡さなければ力ずくで』と言っているような
ものなのだが。そうやって脅せば従うと本気で思っているのだろうか?
「そりゃどういう意味や!ウチらがおとなしく従わなかったら兵を差し向ける
いうんか!!」
脇にいた霞は完全に食って掛かっていた。
「あらぁ~、そういう風に聞こえちゃいましたか?でも印綬を不法に所持して
いるのはそちらなのですから、このままお渡し願えないのでしたら皇帝陛下
の命で討伐に来なければならないでしょうねぇ~」
「何やと!!やれるもんなら…」
「そこまでだ、霞」
「せやかて一刀…」
「今は俺が張勲さんと話をしている所だ」
「そうですよ~、家臣の人は黙っててください」
張勲さんの完全な挑発とも言える言葉に霞はブチ切れ寸前だ。
この場で張勲さんを斬って事が済むのなら俺もそうしたい所だが、太守の使者と
して来た人間をその場の勢いで斬ってしまったら、それこそ侵攻の切欠を与える
ようなものだ。
「私達としてもそのような事はしたくないわけですし、ここはおとなしく従って
いただけると助かるのですが。もちろん、その後の皆さんの処遇に関しては
最大限の配慮をさせてもらいますよ~」
『最大限の配慮』というのは、おそらく袁術の配下に入れられてこき使われる
という事だろう。申し訳ないがそんな提案に乗るつもりは無い。
さて、そろそろ朱里から連絡があるはずなのだが……。
「遅くなりました!」
そこへ朱里が戻って来た。
「あらぁ~?こちらのお嬢さんはどちら様ですか?」
「彼女は我が軍の軍師を務めている諸葛亮です。朱里、こちらは袁術さんの
使者で来られた張勲さん」
「初めまして、張勲さん。諸葛亮と申します」
「は、初めまして…」
張勲さんの顔色が一瞬変わった。間違い無く『来てほしくない奴が来た』
という顔だった。それでも、すぐに元に戻るのはさすがだ。
「諸葛亮さんも来られたのなら、丁度いいですね。太守の印綬の件で来た所でして」
「申し訳ないですが、その件についてはお断りさせていただきます」
朱里は完全に言い切った。
「あらぁ~、いいのですか?そんな事を言っても。そうするとさっきも北郷さんには
言ったのですが…」
「実はその事に関して、洛陽より董卓将軍の使者が来られています。その人のお話を
伺ってからもう一度お話させていただいてよろしいでしょうか?」
「えっ……」
今度は完全に張勲さんの顔色が変わった。
「朱里、その使者の方は?」
「今、控えの間で準備してもらってますのでもうすぐ来られますよ」
「あ、あの~私はちょっと用事を思い出したので今日はこの辺で……」
「いえ、張勲さんもご同席を。その使者さんは張勲さんの言う『袁術さんの正当性』
についての回答も持って来られているはずですので」
「えっ!?…は、はあ」
そう言われては張勲さんも逃げるわけにもいかない。とても渋々な感じで留まった。
「呂布様のお成りですぞ~!」
おそらくお供で来たのであろう女の子の声と共に現れたのは……恋だった。
とても眠たそうにしている…こっちの世界でも恋は恋のようだ。
そして、その見た目とは裏腹に他を圧倒する武を持つのも変わりは無い。
『呂布が一人で黄巾党の軍勢三万人を退けた』という話は既に大陸中に響き渡っている。
そのせいか、呂布さんが入って来てからあんなに雄弁に語っていた張勲さんが一言も
発していない。一生懸命ここから逃げる口実を考えているのが丸分かりだ。
「呂布様、本日はお忙しい中このような所までお越しくださりまして、ありがとうございます」
「……」
「北郷殿、呂布様は『董卓将軍におかれましては、これまでの黄巾党討伐におけるそなたの
働き、真に大儀である。皇帝陛下・何進大将軍より南郷郡の新しい太守としてこれからも
より一層精進するようにとの仰せであったとお伝えするようにと承っている』と仰って
おられますぞ」
「はっ、ありがたき幸せにございます」
「……」
「呂布様は『そして皇帝陛下より正式に北郷殿を南郷郡の太守として認めるとの書状を賜り、
何進大将軍の命にて董卓将軍よりそれを届けるように仰せつかった』と仰っておられますぞ」
「重ね重ねのご配慮、恐悦至極にございます」
そしてその書状を受け取った。中を改めて見ると確かに玉璽の印が押してある正式な皇帝陛下
よりの書状だ。
「……」
「呂布様は『董卓将軍よりこれからも漢王朝の為に尽くすよう、より一層奮励努力せよとの仰せ
である』と仰っておられますぞ」
「ははっ、私の如き非才の者にかけていただいた期待に応えられるよう、これからも精進を重ね
ます。ですが……」
「……?」
「呂布様は『どうされた、何か問題でも?』と仰っておられますぞ」
俺は一瞬、張勲さんの方へ目を向けてから言葉を続ける。
「こちらにおられます南陽郡太守袁術様の腹心であられます張勲殿より『南郷郡の太守は袁術様が
正統なので印綬を渡すように』と言われておりまして……」
「……!」
「呂布様は『それは真の事か、張勲殿。洛陽にもそのような噂が流れていたが、皇帝陛下も何進
大将軍もそのような事を任じた覚えは全く無いと仰っておられたとの事。実際、宮中にそのような
記録は一切無かったと董卓将軍も仰っておられた』と仰っておられますぞ」
「何と、それは真の事ですか!ならば、袁術様と張勲殿が散々我らに対して言ってきた事は全くの事実
無根の脅しであったという事ですか!?」
俺はかなり大げさに張勲さんに詰め寄ってみた。張勲さんの顔色がみるみるうちに青くなっていく。
「え、えっと、そ、それはですね…そ、そう!私は北郷さんにそう言うよう命じられて来ただけ
ですので…」
「……」
「呂布様は『それはおかしい。張勲殿といえば、袁術殿の信頼厚き側近中の側近であると聞いている。
それほどの御方に命じるという事は袁術殿自身が皇帝陛下の命に背く行為をしたという事になるが』と
仰っておられますぞ」
「ひっ!……申し訳ございません。もしかしたら袁術様のお言葉を私が聞き間違えたのかもしれません
ので、一度南陽に戻って確認してまいります……」
張勲さんは必死に言い訳じみた事を言い出した。
「呂布様、張勲殿もそう言っておられることですので、後は我らと袁術様との間で」
「……」
「呂布様は『あい分かった。張勲殿、皇帝陛下よりの正式な辞令は北郷殿に今渡した通りであるので、
袁術殿によくよく伝えておくように。そして、袁術殿は黄巾党に対してあまり積極的に討伐を進めて
いないようであるが、皇帝陛下より黄巾党の討伐の勅命が下っている以上、それでは漢王朝に対する
反逆と取られかねない故、早々に積極的な討伐に動くようにとの何進大将軍よりの仰せであった』
と仰っておられますぞ」
「…はい、確かに。袁術様にお伝えいたします……」
張勲さんはそう言ってうなだれた。良し、完全勝利!!
「朱里、張勲殿がお帰りだ。城門の外までお送りするように」
「御意です」
~朱里が張勲さんを城門まで送る最中の事~
「諸葛亮さん、これは全てあなたが裏で手を回したのですか?」
「はい?何の事ですか?」
「とぼけないで下さい。私がここに乗り込んでくる日に洛陽より使者が来るなんて出来すぎです」
「いえ、本当は昨日に来られる予定だったのですが川止めで一日遅れたとか…」
「それに関してはそうかもしれませんが、最初から来る予定ではあったという事ですよね?」
「はい、私達は前太守様より印綬を授かっただけの代理の立場でしかなかったので、それが問題
無いかどうか洛陽に確認していました。幸い、我らの中に宮中に知り合いがいる者がいましたので
その伝手で。その回答が来たのが今日だっただけです。まさか呂布さんを使者に遣してくれるとは
思っていませんでしたが」
「ふう…どうやら、かなりあなた方を甘く見ていたようですね。今回は私共の負けです。諸葛亮さん、
あなたの事は完全に覚えました。次に相対する時は負けませんよ」
「えっ?…あなた方と相対する事なんて無いと思いますけど?」
「私としてもその方がありがたいですけどね」
後からこの話を朱里から聞いた時、いずれは戦う日が来るであろう事を思い、背筋に寒いものが
走り抜けたような感覚がした。
~その日の夜~
「呂布殿も陳宮殿も本日はありがとうございました。そのお礼といってはささやかな物ではありますが、
思う存分お召し上がりください」
使者として来られた呂布さんとそのお供の女の子…陳宮さんにはもう時間もかなり遅かったので、
城で一泊してもらう事になり、ささやかながら宴席を設けていた。
「それでは遠慮無くいただくのです」
「…いただきます。モグモグモグ……」
呂布さんは始まるや否や猛然と食べ始めた。この辺は別世界の恋でも変わりは無いようだ。
「しかし北郷殿、今回の手際は見事でしたぞ。袁術が南郷郡を狙っているのを逆に利用してしまったの
ですから」
「いえいえ、今回のは全て我が軍師、諸葛亮の考えた事。俺が考えたのではここまでうまく行ったか
どうかわかりません」
「なるほど、さすがは諸葛亮殿。賈駆殿が一目おいておられるだけの事はあるという事ですね」
「はわわ、そんな、一目おかれるなんて…」
陳宮さんが手放しで褒めると朱里は縮こまってしまった。
実際、今回の手筈は全て朱里の筋書き通りに行われたものであった。朱里は袁術側より書状が来た
当初より考えていたようだ。
董卓さん側との繋がりは黄巾の乱が始まって間もない頃、元々知り合いであった霞を通して董卓さん
が俺と会いたいと言ってきた事から始まった。しかし状況が状況だけに直接会う事は実現せず、
一、二度書状のやり取りをしただけだったりする。ただ、朱里と賈駆さんは軍師同士相通ずる所が
あったのか今では直接手紙のやり取りをする仲になっている。今回も朱里より賈駆さんを通じて
やってもらったものだった。(直接俺から董卓さんへ依頼すると袁術側に洩れる危険があった為)
「でも、今回は袁術さん側から洛陽の方へ対して働きかけが無かったのが幸いでした。もし、何進
大将軍や宦官の方々へ袁術さんから何かしらの根回しがあったらここまでうまくはいかなかった
でしょう」
「おそらく袁術側としては印綬さえ手にしてしまえば後は袁家の力でどうとでもなると踏んでいたの
でしょうな。本来、何進大将軍は袁家に近い人間ですからね」
確かに陳宮さんの言う通り、今回は袁術側が俺達を甘く見ていたのが幸いしただけだろう。これからも
気を緩めるわけにはいかない事は確かだ。
「それでは北郷殿、明日我々は洛陽に戻りますが、約束の方は違える事の無きように頼みましたぞ」
「援軍の件ですね、わかっております」
実を言えば董卓さん側も、今回の件はただで引き受けてくれたわけでは無く、司州と荊州の境付近に
いる黄巾の軍勢の討伐にこちらから援軍を出すという条件がついている。あくまでもメインは董卓軍を
中心とした官軍が行うので、こちらは黄巾党を背後から牽制する程度ではあるが。
「ただ、私共としましてもまだ完全に領内を掌握できているわけではないので、全軍というわけには
まいりません。兵三千と張遼・鳳統を派遣するので、それでご勘弁願いたいのですが」
「北郷殿の事情は理解しているつもりですぞ。その中から三千も派遣してくれるのですから十分ですぞ」
「ありがとうございます。陳宮さん」
ちなみにその間、呂布さんは……
「モグモグモグモグ…おかわり」
ひたすら食べ続けていた。
そして次の日、呂布さんと陳宮さんは帰っていった。
「霞、雛里、援軍を率いるのは二人に任せる。よろしく頼むよ」
「おおーっ、任せとき!!」
「あ、あの……」
「どうした、雛里?」
「本当に私でいいのですか?朱里ちゃんや輝里ちゃんではなくて…」
「何や、雛里。自信無いんか?大丈夫やって、雛里だって軍師として優秀やんか」
霞が励ましているが、雛里は不安を隠しきれていない。確かに雛里は今回初めて単独で軍師として
部隊の指揮にあたる。兵達の中でも朱里や輝里に比べて軍師としての評判は落ちるところはある。
兵達が自分の指揮に従ってくれるのか不安なのだろう。
「雛里が適役だと俺は思っているからお願いしてるんだよ。大丈夫、霞も一緒なんだから」
「そうや、ウチがおるさかいド~~ンと大船に乗ったつもりでいたらええで」
「は、はい、わかりました」
そして霞と雛里は兵を率いて出発していった。
・・・・・・・・・
「ありがとうございます、一刀さん」
「ん?何か輝里にお礼を言われるような事をしたかな?」
「雛里の事ですよ。あの娘はいつも私の後ろに隠れているような娘でしたから。ここに来てからも
ずっと朱里の後ろについてばかりでしたし、ちょっと心配していたんですよ」
「ああ、俺もそれはちょっと心配していた。誰かの影に隠れるのは性格上仕方の無い事なのかも
しれないけど、ずっとそのままというわけにもいかなくなるしね」
「というと?」
「これだけ領土が広がると場合によっては二方面作戦を執らなくてはならなくなる事も出てくる
可能性がある。その場合、雛里に一方の部隊の指揮を執ってもらわなきゃならないかもしれない
からね。その為にも雛里には朱里や輝里から離れた所で指揮を執ってもらう経験を積んでもらう
必要があると思っていたんだよ。今回の援軍はそれにうってつけだったというわけさ。これには、
朱里も賛成してくれたしね」
「朱里も?」
「はい、私は軍全体の戦略を考える場面が増えてくるでしょうし、その場合、前線における戦術に
ついては輝里さんと雛里ちゃんにお願いする事になります。その為にも雛里ちゃんには軍を指揮
する経験を積んでもらいたかったんです」
実の所はほとんど朱里からの提案によるものだったりするのだが。実際、俺としても折角軍師が
三人もいるのだからそれぞれに戦局を任せられる存在にはなってほしいと思って朱里の提案に
賛同したのだ。今回は援軍としての参戦なので経験を積んでもらうには丁度良い機会でもあった。
「なるほど、そういう発想は私には無かったな……」
「輝里は女学院の姉弟子であり、実際姉代わりだったのだから、それは仕方の無い事だと思うよ」
「私達はそういう意味では冷静に判断出来る存在ではあります」
「まあ、後は無事に帰って来てくれる事を祈るのみだな」
・・・・・・・・
それから五日後、霞と雛里は無事に戻ってきた。
「いや~、今回は雛里の大活躍だったで!」
「あわわ、そんな事は…」
霞の話によると、董卓さん側の大将であった華雄さんが勝手に突撃して敵中に孤立しかけた所を
雛里の作戦でうまく救出できたばかりか、黄巾の根拠地の一つを潰す事にも成功したらしいとの
事だった。
「雛里、大手柄じゃないか」
「良くやったわね、雛里」
「そ、そんな、私なんて…霞さんがおられたからです」
「そんな事ないで、ウチだけやったらあんなにうまくいってへんもん」
皆、口々に雛里を褒めたたえる。雛里は顔を真っ赤にしていたが、満更でもないようだ。
「ご主人様、予想以上にうまくいって良かったですね」
「ああ、これで朱里にも楽させてあげられる。正直頼りっぱなしだったしね」
「そんな事ないですよ。それにどんどん頼ってくれていいと言ったじゃないですか」
「そういえば、そうだった」
「でも、これなら雛里ちゃんに託せるかな…?」
「…?一体何を託すんだ?」
「私がおばあ様から受け継いだものをですよ」
朱里がばあちゃんから受け継いだものって……確か『太公望・呂尚』よりもらったっていう
真の『六韜』だったはず……。
「でも、それを託すって何でいきなり?」
「別にいきなりというわけではなく、こっちに来てからずっと考えていたんです。多分おじい様や
おばあ様と同じように、私達もいずれは現代へ帰る事になるはずです。その前に、私はこっちで
『六韜』を託せる人を捜そうと思ってました。とはいっても、いつ戻る事になるのかもわかりません
けどね。それにまだ雛里ちゃんに託すって決めたわけではないですし」
「そうか……俺、すっかり現代に帰るとか忘れてたよ。さすが朱里はいろいろ考えてるなぁ~」
「はわわ、そんなんじゃ…」
「おうおう、何や一刀も朱里も二人の世界に入ってもうて。そういうのは日が暮れてからにしてほしい
なぁ~。目のやり場に困るわ~」
霞のツッコミにその場が笑いに包まれる。
しかし、「いずれ現代に帰る」か…それは常に考えてなくてはならない事だな。でも朱里の言う通り
いつの事になるのかわからないわけだし、今はこの国が少しでも良くなるように頑張っていくのが
先決だろう。まずは、黄巾党の討伐だな。
~孫策side~
「ねえねえ、冥琳。聞いた?張勲の事」
「ああ、南郷郡での事だろう。例の軍師にいいようにやられてすごすごと帰ってきたらしいな」
「あはは、もう傑作よね~。その時の張勲の顔を見てみたかったわ」
孫策はそう言いながらうれしそうに酒を飲んでいる。すっかり出来上がっているようだ。
「雪蓮、あまり飲みすぎるなよ。…しかし、予想以上だな」
「何が?」
「その軍師の手腕がだ」
「へえ~っ、冥琳にそこまで言わせるなんてね。やっぱり冥琳より優れているんだ?」
「ほうっ、雪蓮は本気でそう思っているのか?」
「さあ、それはどうかしら?」
「ふっ、ならば私はここで『何故、諸葛孔明を私と同じ時代に生んだのだ!私一人ならば、雪蓮に
天下を取らせられるものを!!』とか叫べばいいのか?」
「きゃはははははははは」
「まあ、それは冗談だが…ごほっ、ごほっ…」
「どうしたの、冥琳?風邪?」
「いや、ちょっとむせただけだ。心配ない」
(…まずいな、もう薬でも抑えきれなくなってきている。しかし、悲願を叶える為にもまだ倒れる
わけには……しかし諸葛孔明か、奴をうまく利用すれば悲願の達成を早められるだろうか?
ふっ、私も弱気になったものだな、人を頼りにするとは)
~???side~
とある場所にある天幕の中で三人の女の子が密談をしている。…正確にいうと女の子は三人いるが、
実際に話し合っているのは二人だけのようであるが。
「どういう事よ、これ。荊州に続いて司州でもやられちゃったじゃない!」
「確かにこのままではジリ貧だわ。特に荊州は諸侯の足並みが揃ってなかったからもっと混乱させられる
と思ったのだけど……」
「南郷郡の方は後一歩だったっていうのに、何か新しい太守になってから全く入り込む余地が無い
じゃない」
「まさしくそこから計画が狂ってきたのよ。いくら揺さぶりをかけようとしても全く効かないし…余程
優秀な軍師がついてるとしか思えない」
「これからどうするのよ、一体」
「とりあえずは各地に散らばっている皆を呼び集めないと……」
「ねえ~っ、お姉ちゃんお腹すいた~」
「ちょっと、天和姉さん!今、そんな状況じゃないでしょう!ちょっとは姉さんも話し合いに
参加してよ!!」
「ええ~だって、お姉ちゃん難しい話なんてよくわからないし~」
「ああっ、もう!役に立たないわね!!」
「……もうこの辺りが潮時かしら……」
続く(可能性大です)
あとがき的なもの
mokiti1976-2010です。
GWという事で気合入れてすぐに書いてみました。
今回、初めて他の勢力の方々と一部ではありますが絡めてみました。
…えっ、覇王様やフリーダム様や大徳様とは直接絡まないのかって?
その方達とは、そのうちという事で一つ。
それでは次回、外史編ノ十二でお会いいたしましょう。
追伸 作中では語ってはいないですが、一刀の動員兵力は現在の段階で
一万二千余といったところです。
そして今回、正式に一刀が太守に任じられていますが、本人は
あくまでも「代理」のままのつもりでいますので、これからも
名乗る際は「南郷郡太守代理、北郷一刀」と名乗り続ける事に
なりますので、その旨よろしくお願いします。
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思ったより早く書けましたので投稿します。
今回は今までほとんど無かった他の勢力の方達との接触です。
朱里が智のチートぶりをちょっと発揮します。
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