No.410965

真・恋姫†無双 異伝 「伏龍は再び天高く舞う」外史編ノ八

お待たせしました!

今回より黄巾編となります。

新たな出会いがあるのですが・・・

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2012-04-19 16:16:26 投稿 / 全8ページ    総閲覧数:10429   閲覧ユーザー数:7740

 

 

 

 

「今や!陣形の崩れた所へ集中攻撃!」

 

「張遼様!敵勢、撤退していきます!」

 

「ちっ、またか・・・。毎度毎度、逃げ足だけは速い連中やな」

 

「張遼様、これを」

 

「またこの布かいな・・・」

 

 霞は渡された黄色い布を忌々しげに握りしめた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今日の朝議は霞が持って来た黄色の布が議題になっていた。

 

「また黄色い布を頭に巻いた賊の出現ですか・・・」

 

「私が遭遇した賊も同じく黄色い布を巻いていました」

 

 水鏡先生の言葉に丁奉さんが答える。

 

「この街では境目の辺りに出没しているだけのようですが、他の方の

 

 所では領内にも結構出没しているとの報告があります。賊の行動にも

 

 法則性が無く、一体何の目的なのか・・・」

 

「しかも、出現回数ばかり増えています・・・」

 

 輝里も雛里も困惑の度合いを深めるばかりだ。

 

 しかし、俺と朱里はこの一連の動きに心当たりがあった。

 

(なあ、朱里。これってやっぱり・・・)

 

(はい、黄巾党の乱で間違い無いと思います)

 

 となれば・・・

 

「おそらく、頭目は『張角』という人物のはずだ。そいつを討ち取るか

 

 捕らえるかすれば、この乱は収まると思う」

 

「何や、一刀はあいつらが何もんか知ってるんか?」

 

「詳しくは知らないけど・・・多少の知識程度はね」

 

「それでは、その張角という人の事を調べてみましょう。何か手がかり

 

 が見つかるかもしれません。輝里さんと雛里ちゃんも手伝ってください」

 

「わかったわ」

 

「うん」

 

「よろしく頼むよ、三人共」

 

「「「御意です」」」

 

 

 

 

 

 

 それからしばらく張角の事を調べつつ、出没する黄巾の軍勢の討伐に忙殺

 

 する毎日だった。しかし・・・

 

「わからない?」

 

「はい、その張角が頭目である事は間違い無いようですが、どこの誰で今どこで

 

 どのようにしているかは幾ら調べても・・・」

 

「でも、賊を何人か捕らえたんだろう?」

 

「あかん。あいつら、どんなに脅しても何にも吐きよらへん。すぐに喋りだす奴も

 

 おるけど、そういう奴の言ってる事はメチャクチャや。何の参考にもならへんで」

 

「おそらく、ある事ない事言ってる人は張角の事を知らないのだと思われます。

 

 黄巾の中には、混乱に乗じて暴れている山賊や盗賊もいるみたいですので」

 

「ならば、何にも話さない人が本当の黄巾党の人間という事になるな・・・」

 

「とはいえ、拷問にかけるわけにもいかないですし・・・」

 

「しかし、このままでは賊による被害は増えるばかりです」

 

「まだこの街には直接の被害は出ていませんが、他の街の中では賊に蹂躙されている

 

 所もあります。いつまでも放っておくわけにも・・・」

 

「それにしても、中央からはこの件に関してまだ何も言ってきてないけど・・・

 

 水鏡先生は何か聞いてない?」

 

「知り合いにあたってはみたのですが・・・この期に及んで宮中内部の権力闘争に

 

 明け暮れているようです。洛陽に直接被害が出ていないので、危機感がまったく

 

 といっていいほど感じられないようです。但し、最近洛陽に赴任してきた

 

 董卓将軍だけは奮闘されているようですが」

 

「月は相変わらずの真面目っ子やな~」

 

「?・・・霞さんは董卓将軍とお知り合いなのですか?」

 

「ああ、ここに来る前に少~しばかり世話になっててな。一刀や朱里に出会わん

 

 かったら、正式にあっちに仕官しとったかもしれん」

 

 霞が言っていた・・・『月』・・・間違い無く董卓の真名だろう。

 

 そうか、ここでも月なんだなぁ。霞の言葉より受ける感じからだと、前の外史

 

 の月と同じ位やさしい娘なんだろう・・・機会があったら会ってみたいものだ。

 

「しかし、そういう状況では中央からの援軍は望めそうにもないな」

 

「はい・・・各自の判断でやっていくしかないかと」

 

 その時、一人の兵士さんが駆け込んで来た。

 

「申し上げます!!北の境付近にて戦闘が発生している模様です!!」

 

「戦闘って、どこの軍勢がだ?」

 

「片方は黄巾の軍勢、もう片方はどこかの義勇軍と思われます!しかし、義勇軍

 

 の方が不利な状況になってます!」

 

「朱里、こっちの軍勢はすぐ出せる?」

 

「霞さんの騎兵隊とご主人様の親衛隊なら、すぐに出せますが・・・」

 

「なら迷っている時間は無い、霞!出撃準備!!」

 

「よっしゃ、任せとき!」

 

「俺も出る!皆は留守を頼む」

 

「待ってください、何も親衛隊まで出さなくても」

 

「霞の騎兵は全部で三百、親衛隊も出せば六百にはなる。さっきも言った通り

 

 迷っている暇も全軍を集結させてる暇も無いだろう?」

 

「それはそうですが・・・」

 

「ならば、もう決まりだ!親衛隊も出るぞ!」

 

 

 

 

~義勇軍side~

 

「くっ・・・完全に囲まれたか。他の隊の状況はどうなってる!?」

 

「李典隊、于禁隊共に敵の囲みから脱した模様です!」

 

「二人共無事に逃げれたようだな・・・すまない、私の勝手な行動に付き合わ

 

 せてしまって。私が囮になるから皆も脱出を」

 

「何を仰ってるのです、楽進様。ここにいる皆は他の味方を逃がす為に自ら残った

 

 者達です。今更生きて帰れるなんて思ってませんよ」

 

「そうです。それに味方が安全圏まで脱出する為にもう少しここで俺達が暴れてる

 

 必要があるでしょうし」

 

「すまない、ならば行くぞ!皆の命、無駄にはしない!!」

 

『応っ!!』

 

 

 

「何とか脱出できたようやな・・・皆、無事か!」

 

「真桜ちゃ~ん、凪ちゃんがいないの~!」

 

「!、まさかウチらへの攻撃の手が緩んだんは・・・」

 

「楽進様は『攻撃をこちらへ引き付ける』と言って隊を率いて敵中へと・・・」

 

「なっ・・・ど阿呆!何でここまで黙ってたんや!!」

 

「申し訳ありません。楽進様より安全圏に脱するまでお二人には言うなと・・・」

 

「あんの、ど阿呆が!今からでも遅くない、凪を連れ戻しに行くで!」

 

「ダメです、李典様!我らも皆、満身創痍です。今行っても全滅するだけです!」

 

「あいつ一人で死なせるよりは、ずっとマシや!」

 

「そうなの!沙和達は今までもこれからもずっと一緒なの!」

 

「・・・それでも通すわけにはいきません。楽進様より、お二人を通すなと

 

 言い付かっております故」

 

「お前一人でウチらを止められるって思うとるんか?」

 

「多分無理でしょう・・・それ故、御免!」

 

 その兵士はそう言うと剣を自らの首にあて、一気に押した。

 

「な、何しとるん!」

 

「こう・・でも・・・しないと・・多分、止まって・・くれ・・・ない・・と・・

 

 私の・・命に・・・免・じて・・こ・・こ・・・は・・・・・」

 

 その言葉を最後に兵士は事切れた。

 

「この、ど阿呆共が!!どいつもこいつも死に急ぎよって・・・」

 

「真桜ちゃん・・・どうするの?」

 

「どうするもこうするも、このまま突っ込んでいったら凪やこいつの努力が無駄に

 

 なってまう。ここは引くしかないやろ・・・」

 

「それじゃ、凪ちゃんは・・・」

 

「凪がそないに簡単に死ぬかいな!落ち着いたら、ちゃんと捜しに戻るで。

 

 一旦、退却するだけや」

 

「わかったの・・・」

 

(絶対、後で一発ぶん殴ったるさかいな。だから生きとれよ、凪・・・)

 

(死んじゃ嫌だからね、凪ちゃん・・・)

 

 

 

 

 

「北郷様、張遼様、あそこです!」

 

「よし、義勇軍の人達はまだ全滅したわけではないな」

 

「・・・!あかんで、もうほとんど全滅みたいな状態や!」

 

 霞に言われて見ると、義勇軍の人でまともに動いているのは、数人もいない

 

 という状況だ。

 

「ちぃっ、なら急がないと。霞は右手から、俺は左手から突っ込むぞ、いいな」

 

「わかった」

 

「では、行くぞ!」

 

 俺の号令と共に左右から敵軍に突っ込む。

 

 

「何だ?どこの軍勢だ!?」

 

「お頭!あの旗印を!」

 

「なっ、『十』だと!・・・まさか、あの噂の・・・やばいぞ!ここは引けぇ!」

 

 

 敵勢は俺の旗印を見ると恐れをなしたかのように引き揚げていった。

 

「北郷様!追撃を!」

 

「待て、ここで深追いは危険だ。それより生存者の確保を」

 

 はやる兵達を抑えて、生き残っている人達の救護にあたろうとしたが・・・

 

「あかん、生き残っとるんはこの娘だけや」

 

 霞が連れてきたのは全身傷だらけの女の子だった。

 

 元々傷だらけだったようだが、それ以上に満身創痍の状態だ。

 

「このままじゃ、やばいな。応急処置をしたら、すぐに城へ!霞は先に戻って

 

 朱里に治療の準備をするように言ってくれ!!」

 

「わかった!」

 

 

 

 

 

~楽進side~

 

「はぁっ、はぁっ、はぁっ・・・」

 

 どの位戦い続けたのだろうか。もう手も足も感覚がほとんど無い。

 

 そして体中が傷だらけだ。元々傷だらけだったが、今の戦いだけでどれだけ

 

 の傷を負ったのだろうか・・・。

 

 それでも、真桜や沙和達を逃がす為に、残った兵達が一人でも多く逃げれる

 

 ように少しでも敵を倒さねば・・・。

 

 しかし、周りを見ても味方の兵達はほとんど生き残っていない。まともに

 

 動けるのは私だけか・・・?

 

「こいつだけは、しぶといな。変に近寄って余計な犠牲が出ても面倒くさい。

 

 おい、弓隊!遠目から一斉に射掛けろ!」

 

 業をにやした敵の将の声が聞こえる。・・・くっ、ここまでか。

 

 その時、遠くから鬨の声が聞こえた。

 

「何だ?どこの軍勢だ!?」

 

「お頭!あの旗印を!」

 

「なっ、『十』だと、・・・まさか、あの噂の・・・やばいぞ!ここは引けぇ!」

 

 急に敵は何かを恐れるかのように引いていく。終わったのか・・・?

 

「・・・様!こちらにまだ生きてる者が!」

 

「おい、大丈夫か!しっかりせえ!!」

 

 誰かの声が聞こえたような気がしたが、もう動けない、何も感じない。

 

 ただ、もう疲れた・・・。

 

 私の意識はそのままぷっつり途絶えた・・・。

 

 

 

 

 

 

「あの娘の容態は?治るのか?」

 

「わかりません。止血は完了しましたが、傷が元で高熱を発しています。このまま

 

 長時間熱が引かないままだと・・・」

 

「何とかならへんのか!?」

 

「お医者様も出来るだけの事はしてくれたようですし、後はあの人の生命力に

 

 賭けるしか・・・」

 

「くっ、このまま手をこまねいてるしかないのか・・・」

 

 霞が連れてきた女の子をすぐに城に連れ帰り、治療はしたが容態は一進一退を

 

 繰り返して丸二日が経とうとしている。

 

「華佗さんならば或いはどうにかしてくれるかもしれませんが・・・」

 

「華佗?あの噂の?」

 

「はい。彼の医術ならば死人をも呼び戻すと専らの評判です」

 

「でも、どこにおるんかわからへん者を捜しとる暇もあらへんで」

 

「でも、このまま何もしないよりは『ご主人様~!』どうした、雛里?」

 

「さっきの人が目を覚まされました」

 

「そうか!それは良かった」

 

「でも・・・」

 

「何かあったのか?」

 

「とりあえずは行って見たほうがええやろ」

 

「そうだな」

 

 俺達が部屋に入ると女の子は目は開いているが虚ろげにどこかを見つめている

 

 だけのように見えた。

 

「大丈夫かい?・・・って大怪我している人に言う台詞でもないけど」

 

「・・・あの・・」

 

「ん?どうした?」

 

「私は誰ですか?・・・何も思い出せない・・・」

 

 

 

 

                            続く(ここも確定)

 

 

 

 

 

 

 あとがき的なもの

 

 

 mokiti1976-2010です。

 

 今回よりしばらくは黄巾編をお送りします。

 

 そして楽進こと凪が登場しましたが・・・大変な状況になってしまいました。

 

 記憶は戻るのか?仲間に加わるのか?さあ、これからどうなる?

 

 ・・・ってかなり他人事のように書いてしまいましたが、それは次回以降を

 

 お楽しみにという事で。

 

 ちなみに作中では細かく語ってないですが、北郷軍の兵二千の内訳は

 

 霞の率いる騎兵・三百、丁奉さんの率いる弓隊・三百、一刀の親衛隊・三百、

 

 残りが歩兵となっています。目下の所、歩兵を率いる武官の獲得が北郷軍の

 

 課題といった所です。(現状、歩兵の指揮は場合によって一刀・霞・丁奉が

 

 交代で行い、輝里が補佐をするという形です)

 

 それでは次回、外史編ノ九にてお会いいたしましょう。

 

 

 

 

 追伸 凪の記憶が戻らないままだったら何か名前をつけてあげる予定です。

 

    三国志とは関係無い辺りの時代の人間の名前を持ってくるつもり

 

    なのですが(当然、中国の歴史上の人間です)、やはり三国志の

 

    時代の人の名前がいいのかな・・・。

 

 

 

 

 

 


 
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