No.408824 真・恋姫†無双 異伝 「伏龍は再び天高く舞う」外史編ノ七2012-04-15 11:22:44 投稿 / 全10ページ 総閲覧数:12113 閲覧ユーザー数:8732 |
「ご主人様、朝ですよ。起きてください」
「んん~、もう朝か。おはよう、朱里」
「おはようございます、ご主人様。朝ごはんの用意ができてますよ」
筆頭軍師にして筆頭政務官になった今でも朱里は毎朝俺を起こして
くれる。・・・というよりほぼ毎日一緒に寝ているだけだったり
するという説もあるが。
そして朝食も朱里が準備してくれる。県令になった最初の頃は単に
人がいなかったので、朱里が食事係を引き受けてくれたのだ。
・・・なんせ城に残っていた侍女さんはわずか二人という状況だった。
まだあの豚(韓玄)が来る前はもう少しいたのだが、豚の度重なる
セクハラによってほとんどやめてしまったらしい。
(ちなみに残った侍女さんも、本当はもうやめるつもりだったようだ)
その後、やめた侍女さんが戻って来てくれたり、新たに侍女さんが入って
くれたりで、ある程度人手不足は解消されたのだが、朱里は『ご主人様の食事は
自分で作る』と譲らず今に至る。
「さあ、どうぞ召し上がれ」
今日の朝食は、ご飯・味噌汁・漬物・焼き魚と現代でいつも食べていた定番の
メニューだ。違う世界に来てもこうやって今までと同じような物が食べれるのは
ありがたい話だ。ただ、今までと違うのは・・・
「いや~、やっぱ毎日食べても朱里の味噌汁は飽きへんなぁ~」
「朱里ちゃんのお味噌汁は美味しいです」
「本当に、このお味噌汁の味は出せないわね」
「いつもすみません、私の分まで用意してもらって」
霞、雛里、水鏡先生、丁奉さんも一緒に朝食を食べている事だ。
朱里が『二人分作るのも六人分作るのも一緒ですから』と言った事からこの状況は
始まる。昼食や夕食は別々に食べる事が多いのだが、朝食に関しては何も言わずに
皆集まってくる。皆、口を揃えて言うには『朱里の味噌汁を食べないと一日を
乗り切れる気がしない』との事だ。まあ、確かにそれについては同感だが。
ちなみに、味噌汁は最初朱里が俺の為に作ってくれていたのを霞がつまみ食いして
その味を気に入ってから、一気に皆に広まった。今では侍女さん達や料理屋の人達も
作っており、この街のちょっとした名物料理になっている。
そしてそのまま朝議が始まる・・・最初はちゃんと別室でやっていたのだが、霞が
『どうせここに皆集まっとるんやし、このままやろうや』と言い出したのがきっかけで
皆が揃っている日は朝食後にそのまま行われるようになった。
「今日の街の見回りの当番は俺だったよね?」
「はい、よろしくお願いします」
「しかし北郷様、何も県令であるあなたが見回り当番までされずとも・・・」
「丁奉さん、これは皆で協議して決めた事です。まだまだ人手不足なのだから、県令といっても
やれる事はやらないとね」
「今日も異常無しっ、と」
一通り見回りし終わったがこれといった事件や事故は無かった。・・・まあ、あっても困るのだが。
「さて、もう少し見回りをしたら帰ろうか『きゃっ!』ごめん、大丈夫だった?」
横から何かぶつかったような衝撃があってそちらを見ると女の子が尻餅をついていた。
「いえ、こちらこそごめんなさい。よそ見をしてたもんで」
良く見るとなかなか可愛い娘だ。
「怪我は無い?」
「はい、そんなに強くぶつかったわけではないので。ありがとう」
女の子はそういうと去っていった。・・・ふむ、黒髪のツインテールが良く似合ってる。
「でも、見かけない娘だよな。旅の人かな?・・・あれ?この本、さっきの娘の落し物かな?」
道に落ちてた本を拾ってさっきの娘に声をかけようとしたが、既にいなかった。
「何処に行ったかわからないしな・・・仕方ない、こちらで預かっておこう。遺失物係に預けておけば
いいだろうし」
ちなみに遺失物係とは俺が県令になってから作った役職で、その名の通り落し物を預かっておく所だ。
この役職を作ろうとした際には皆から『落し物なんてした人間が悪い』、『どうせ誰も届けたりなんか
しない』などと反対されたが、実際作ってみると意外にちゃんと届けてくれて、今となっては『落し物
は遺失物係に届ける』というのがこの街では当たり前になっている。この制度の成功は、かなりの
衝撃だったらしく、ある瓦版屋が企画で『わざと落し物をして本当にこの街の人は届けるのか?』
という事をやった際に皆ちゃんと遺失物係に届けたので、驚きと共に大々的に取り上げてくれて、
より一層この制度は浸透している。
「でも、何の本だろう?題名は・・・『八百一』?・・・あれ?どこかで見た事あるような・・・?」
そう思い、中を見ると・・・
「何だこりゃ、完全にBL本だな・・・」
さっきの娘はこういう趣味があるのか・・・まあ、朱里も似たようなものだが。
~???side~
「ここが水鏡先生と雛里がいる街ね」
久しぶりに女学院に戻ってみると、水鏡先生の置手紙があり、雛里と一緒にここの新しい県令様の
お手伝いをする事になったと書いてあった。水鏡先生の手紙は私にも手伝ってほしいような事が
書いてあったが、私は自分が仕える主君は自分の目で見て選ぶと決めている。その為、
ここ数ヶ月大陸各地を回っていたのだ。
何人か候補に出来るような人はいたけど、これという決め手の無いまま旅を続けていた。
「いくら水鏡先生の推薦っていっても、たかだか県令じゃねぇ・・・とりあえず会うだけ会ってみようかな。
例の数倍の敵を打ち破ったっていう噂もあるしね。できれば、その策を考えだした軍師にも会えればね」
しかしこの街を見て回ると驚きだらけだ。他の街と治安が格段に違う。確かここは荒廃寸前
だったはず・・・
これもその新しい県令の力なのかしら。その県令も少しはやるようね・・・きゃっ!
よそ見をしていたせいで人にぶつかってしまった・・・「ごめん、大丈夫だった?」・・・えっ!?
そのぶつかった人から声をかけられ見上げると・・・ちょっとかっこいいかも・・・
私と同年代の男の子だった。ただ、見た事も無い白い服を着ていた。
「いえ、こちらこそごめんなさい。よそ見をしてたもんで」
冷静に答えたふりをしたが、内心ドキドキしている。どうしよう・・・
「怪我は無い?」
「はい、そんなに強くぶつかったわけではないので。ありがとう」
このままいたらドキドキし過ぎて心臓がどうにかなってしまいそう・・・私はそのまま足早に
その場を離れた。
「はあ~っ、びっくりした。でもこれって運命の出会い・・・なんちゃって。名前も聞いてないし、ね」
とりあえずは城に行って水鏡先生や雛里に会ってからそれからの事は考えよう・・・あれ?
「無い・・・ここに入れてあったはずの『八百一』が!さっき落としたんじゃ」
あわててさっきの場所に戻るが、どこにも落ちていない・・・。
「そんな~三ヶ月分の食費をはたいてようやく手に入れた限定版なのに・・・」
その場にへたり込んでいると・・・
「輝里ちゃん?」
声をかけてきたのは・・・
「雛里?」
「北郷さん、ちょっとよろしいでしょうか?」
俺が城へ戻るとすぐに水鏡先生から声をかけられた。
「どうしました?何か緊急の案件ですか?」
「いえ、会っていただきたい者がおりまして。前に言っていた雛里の姉弟子の・・・」
「もしかして徐庶さん?」
「はい。今こちらへ来ているので、是非に。間違いなく北郷さんのお役に立つ人材ですわ」
そうか、あの徐庶が・・・確かに仲間になってくれれば朱里も助かるよな。
「わかりました、会いましょう」
「では、こちらへ」
「お初にお目にかかります。徐庶と申します」
俺が入ると頭を下げていた女の子が名乗った。この娘が徐庶・・・って、あれ?
「俺が北郷一刀です。頭を上げてくれていいよ、徐庶さん。先程はどうも」
「えっ・・・ええっっっ!あなたが県令様!?」
「・・・? 北郷さん、彼女を知っていたのですか?」
「いや、さっき見回り中にぶつかっちゃってね。あの時はごめん」
「いえ、私がよそ見をしていたのが悪いのです」
「水鏡先生と雛里から話は聞いてるよ。軍師としてとても優秀だってね」
「そ、そんな優秀だなんて・・・」
「できれば、その能力をこの街の為に使ってくれるとうれしいのだけどね」
「この街の?県令様の為では無く?」
「この街の為になる事が、ひいては俺の為になるんだよ」
「へぇ~、・・・随分変わったお考えですね」
「・・・そんなに変わっているかな?」
「はい。どこのお偉い方も皆自分の事が第一な人ばかりでしたからね」
「まあ、それは前の県令を見てたらわかるけどね。でも、俺は民あってこその
支配者だと思っている」
「民あってこそ?」
「そうだよ。食べ物を作ってくれる人、服を作ってくれる人、家を建ててくれる人とか
そういう人達がいてくれてこそ、俺達は生きていけるんだよ。だからその人達への
感謝を忘れる事のないように政を行っているつもりだ」
「では、支配者は何の為にいるのですか?」
「それは、民が安寧に暮らせるように守る為に決まっている」
「民が安寧に暮らせるように守る・・・」
「まあ、今のご時世それが理想論なのはわかっているけどね。でも、俺はその理想に
少しでも近づけるように努力していきたいと思っている」
~輝里side~
「輝里ちゃん?」
捜し物が見つからなくてへたり込んでいた私に声をかけたのは雛里だった。
「久しぶりね、雛里」
「輝里ちゃんも元気そうだね。・・・ここにいるって事は水鏡先生のお手紙を読んで
くれたんだ」
「うん、でもここの県令様の手伝いをするかどうかはまだ決めてないから」
「大丈夫、ご主人様はいい人だよ」
「ご主人様?・・・それって県令様の事?」
「・・・ええっと、私はそう呼んでいるんだけど」
・・・『ご主人様』なんて呼ばせるなんて、どういう趣味してるのかしら?
「水鏡先生や雛里が推薦してくれているんだし、会うだけは会うわよ」
「じゃあ、案内するね」
「え、えっと・・・雛里、ちょっと待って」
「どうしたの?そういえば何か捜してるみたいだったけど・・・」
「・・・やっぱり何でもない!さあ、行こう」
「う、うん」
雛里に連れられ城へと入る。すると・・・
「朱里ちゃ~ん!」
「あっ、雛里ちゃん。そっちの人が?」
「うん、この間言ってた姉弟子の徐庶ちゃんだよ」
へえ、珍しい。雛里が積極的に話しかけてる。しかも真名まで交換してるし。
「初めまして、徐庶さん。諸葛亮と申します」
「初めまして、徐庶です。あの、あなたがここで軍師をしているっていう・・・?」
「はい、そうですけど?」
この子が諸葛亮・・・数倍の敵を打ち破った策を考えた天才軍師・・・
正直、見た目だけではとてもじゃないが信じられない。
「諸葛亮さん、あなたはどこで軍略を学んだの?」
「えっ、ええっと、ご主人様・・・県令様のおばあ様からです」
この子も『ご主人様』って・・・ここの県令ってまったくどういう趣味してるのだか。
「そのおばあ様っていうのは有名な先生なの?」
「い、いえ、そんな有名というわけでは・・・どうして、そのような事を?」
「あれだけ見事な策を考える位だし、さぞや高名な方に教わったのか思っただけで・・・
気に障ったのならごめんなさい」
「いえ、別にそういうわけでは・・・」
「あ、あの朱里ちゃん。案内しないと・・・」
「はわわ!そうだった。徐庶さん、どうぞこちらへ」
・・・・・・
「先程はどうも」
県令様が入ってくるなり私にそう声をかける。えっ?この声って・・・顔をあげると・・・
「えっ、ええっっっ!あなたが県令様!?」
さっきぶつかった人だった。・・・まさか、本当に運命の出会いだったりするのかしら・・・
・・・・・・・
その県令様・・・北郷様と話していると驚く事ばかりだった。
まず『その能力をこの街の為に』という言葉だ。今まで会った何人かの人は必ず『私の為に』、
『儂の為に』と言っていた。私も支配者とはそういうものだと思っていた、『支配者たる自分が
いるから民は暮らせているのだ』と。でもこの人は『民あってこその支配者』と言った。
・・・少し意地悪な質問をしてみようかな。
「では、支配者は何の為にいるのですか?」
どう答えるかな。『民あってこそ』ならば、支配者などという非生産階級は必要無いという事に
なるはずだ。・・・ふふ、少しは困った顔でもするかしら?
「それは、民が安寧に暮らせるように守る為に決まっている」
北郷様は悩む事無くそう答えた。
「民が安寧に暮らせるように守る・・・」
驚きだった。おそらくこんな事を考えている人はそんなにいないだろう。それだけ今、この国は
腐っている。
「まあ、今のご時世それが理想論なのはわかっているけどね。でも、俺はその理想に少しでも
近づけるように努力していきたいと思っている」
北郷様はそう笑顔で答えた。
その瞬間、私の体の中を何かが駆け抜けていった。・・・ああ、この人に大切なものを奪われた・・・
そんな感覚だ。でも、それが心地良かった。もう私に迷いは無かった。
「私も、北郷様の理想を叶える為のお手伝いがしたいです」
「私も、北郷様の理想を叶える為のお手伝いがしたいです」
「えっ、それって俺の仲間になってくれるって事?」
「仲間?・・・いえ、私は北郷様の臣下としてお仕えしたいと」
「俺はここにいる皆の事も臣下では無く、仲間だと思っている。だから徐庶さんも『輝里です』えっ!?」
「私の真名は輝里(かがり)と申します。今後はそうお呼びください」
「ありがとう、輝里。俺の事は一刀と呼んでくれ。それが俺の真名みたいなものだからね」
「わかりました・・・一刀さん、でよろしいでしょうか?」
一刀さん・・・斬新な響きだな。
「ああ、輝里の好きなように呼んでくれたらいいよ」
「はい!」
しかし、あの徐庶が仲間にねぇ・・・既に諸葛亮(朱里)、鳳統(雛里)がいて、そこに徐庶(輝里)
が加わるのか~。軍師だけなら天下も取れそうな気もしてきた。
「よろしくお願いします、徐庶さん。私の真名は朱里です」
「よろしく、朱里。輝里でいいわよ」
「はい、輝里さん」
「ここにいない面々は後で紹介させてもらうし、とりあえず輝里の仕事は朱里の補佐という事でいいかな」
「了解しました。一刀さん」
「御意です」
ふうっ、これで一件落着・・・あれ?何か忘れてるような。
「そうだ!!」
「はわわ!どうしました?ご主人様」
「輝里、さっき『八百一』って本落とさなかった?」
「へっ・・・えええええっっっっっ!ま、まさか、一刀さんがあの本拾ったんですか?」
「ああ、城の遺失物係に届けておいたから」
「遺失物係って、あの瓦版に書いてあった・・・?」
「うん」
「あ、あの、もしかして中を見ちゃったりはしてないですよね・・・?」
「・・・ごめんなさい」
「あ、あ、あ、うあああああああ~~~ん!いきなり一刀さんに見られるなんてーーー!幻滅されちゃう!
嫌われちゃうーーー!!!」
「落ち着け!輝里!!!。別にそんな事で嫌ったりはしないよ」
「・・・ふえ?だって、あの内容ですよ?」
「大丈夫、朱里もそんなものだから」
「はわわ!!何でそこで私が出てくるんでしゅか!?」
「だって、朱里も似たような本読んでるだろ?」
「み、み、見たんですか!?」
「いや、見たっつうか、前に及川が『ま〇だら〇で朱里がそういう本ばかり買っているのを見た』
って言ってたからだけど?」
「はわわわわわわ・・・」
「「「〇んだ〇け?」」」
「いや、俺達の国にはそういう店があったという話だよ」
「あわわ、そういう本ばかり売っているお店でしゅか?」
「そういう本ばかりというわけではないけどね」
「さすがは天の国、そういうものも充実しているのね。そういえば孔明さんの鞄の中にそういう
絵だらけの本があったような・・・」
「はわわ!水鏡先生、見たんでしゅか!?」
「いえ、孔明さんのお部屋に書類を届けた時に鞄の中からちょっとだけはみ出してるのを見ただけですけど」
「朱里・・・まさか、元の世界からそういう本持ってきたのか?」
「はわわ、違うんでしゅ!鞄の底に一冊だけ入ったままになってたんでしゅ!!」
「まあ、趣味に関しては人に迷惑がかからない限りは別に詮索するつもりは無いけどね。だから輝里も
気にしなくていいから」
「は、はい」
こうして徐庶こと輝里が仲間に加わった。
これからより一層賑やかになりそうだ。とりあえず明日の朝食から七人だな。
~朱里の部屋~
「これが、天の国の八百一本・・・すごい、言葉の意味はわからないけど(当然仮名まじりなので)絵で
表現するとここまでなるんだ」
「あわわ、しゅごいでしゅ」
「でも、輝里さんの『八百一』もすごいよ。さすがは限定品・・・」
こうして腐の交流も深まっていくのであった・・・。
続く(ように輝里さんからきつく言われております)
あとがき的なもの
mokiti1976-2010です。
今回新キャラとして徐庶こと輝里さんが登場しました。
許可をくださった狭乃 狼様、ありがとうございました。
これからもあなたの娘さんを大事に使わせていただきます。
それでは次回、外史編ノ八でお会いいたしましょう。
追伸 私の事をお気に入りにしてくれてる人が100人になっていました。
このような駄文を気に入っていただき、ありがとうございます。
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お待たせしました!
今回は新キャラ登場です!
それではご覧ください。