自然豊かな異世界フロニャルド。
無限に存在する世界の中でも異色を放つ世界である。
その世界では獣耳や尻尾を標準装備している人が暮らしていて、戦争が国民参加型の興行として成立しているのだ。
だが、どこででも行われているだけでなく、怪我や死傷を避けるためにフロニャ守護力と呼ばれる力の加護を受けている土地で戦争は行われている。
この戦興業が始まる時それぞれの国は国民から参加者を募り、軍の戦力として編成する。
ACE学園のギルドでもその情報は流れており、士樹はレイやアインハルトと共に犬っぽい人達の国であるビスコッティ共和国の側につき、猫科っぽい人達であるガレット獅子団との戦いに参加していた。
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アインハルトが目の前の敵兵に向けて拳を振り抜き、戦闘不能にする。
「もらったぁぁぁぁぁ!!」
攻撃直後の隙を狙い、2名がアインハルトに攻撃を仕掛けるが、どこからか飛んできた親指くらいの大きさの鉄玉で撃沈する。
ちなみに、戦闘不能になった人達はけものだま(ビスコッティはいぬだま)というぬいぐるみっぽいものに変身するだけなので心配する必要はない。
「さすがですね、士樹」
「これくらい朝飯前さ」
アクエリアスドライバーの代わりにヴァレリア島産のボウガンを構えた士樹が答える。
「しっかし、こういう戦もたまには良いな」
大剣で複数の敵を薙ぎ払いながらレイも会話に加わる。
『ビスコッティに勇者シンク・イズミ、軽やかな動きでガレット獅子団の兵士を次々とけものだまに変えていくぅ!!』
試合の実況を担当しているフランボワーズ・シャルレーが味方の活躍を告げる。
「勇者として召喚された中等部の奴も大活躍だな」
「確かシンク・イズミという名前でしたね」
「僕達も負けていられないね」
実況を聞き、会話している3人にビスコッティの伝令が走り寄る。
「ロラン騎士団長から伝言です。辺りの敵はあらかた一掃できたので前線の砦にいる勇者たちと合流してください」
「分かりまし――」
士樹達は発言の途中で咄嗟に飛び退る。その数瞬後に膨大な炎がビスコッティ兵を大勢飲み込んだ。
「シグナムさんは今フェイトさんと模擬戦しているから来ていないはずだし今のはまさか……」
脳内の知り合いリストから消去法で順番に検索していくと、1人の男性が引っかかった。そして、炎を放った黒い短髪の男性は、黒髪を後ろで束ねている細目の少年と一緒にゆっくり3人に近づいていった。
「やれやれ、君達も来ていたのか」
「悪いけど、今月の食費がピンチなんです。サクッとやられてくれませんか?」
ACE学園で錬金術兼風紀担当である焔の錬金術師ロイ・マスタング、高等部1年のリン・ヤオが堂々とやってきて宣戦布告した。
「私もリザへのプレゼントを買うためにお金が必要なんだ。 悪いが、とっとと消えてくれ」
「それ、教師が生徒に言っていいいいことじゃないだろ!!」
レイの突っ込みを無視し、ロイの炎が再び放たれるが、3人は難なくかわす。しかし、散り散りになってしまった。
「隙あり!!」
リンはまず3人の中で近接戦闘能力が柳葉刀で最も低い士樹に斬りかかり、ボウガンを弾き飛ばす。
「しまっ」
「ボーナスいただき!!」
リンが右手に持った柳葉刀で突きを繰り出すが、それは士樹をすり抜けた。
(いない……いったいどこへ行った!?)
リンは即座に辺りの気配を探り、殺気を感じた。振り返りざまに2つのくないを叩き落とし、紋章術で姿を消していた士樹に刀を突きつける。
「くっ!」
「まだまだですね、先輩」
リンが柳葉刀を上から振り降ろそうとした時アインハルトがリンを蹴り飛ばし、ノックアウトした。
「大丈夫ですか、士樹!?」
「なんとかね」
「ほらよ、落し物だ」
レイが投げてきたボウガンを士樹は受け止める。
「マスタング先生は俺が倒した。早く先に行くぞ!! 2人のせいでかなり遅れてしまったからな」
そう言うレイは所々煤けているが、たいしてダメージは受けていないようだった。
というか、ロイの護衛を残しておかなかったこと、アインハルトとレイがある程度射撃にも強いというのがロイの敗因だろうと士樹は思った。
★★★★★
【前線・敵の砦】
「くっ、なかなか手強いね」
「増援はまだか!!」
勇者シンク・イズミとビスコッティ親衛隊隊長のエクレール・マルティノッジが門を突破しようとしているが、敵の抵抗が激しくてなかなか進めず、味方の兵は徐々に削られていっている。
「このままだとジリ貧だ!!」
エクレールが叫ぶ中、砦の見張り塔から矢が放たれた。
「エクレール、危ない!!」
放たれた矢はぐんぐんエクレールに迫り、今にもあたろうとしたその時背後から飛んできた盾となってエクレールを守った。エクレールが後ろを振り向くと、セルクル(分かりやすく言えばチョコボもどき)に
乗ってやってくる士樹達がいた。
「ナイスコントロール」
「どうも」
士樹は騎乗したままボウガンを構え、紋章砲を使って見張り塔を破壊した。
「前杉先輩!!」
「悪いね、来るのが遅れてしまった」
「他の奴らはどうした!?」
エクレールが問いただす。
「ロイ先生の奇襲でほとんどがいぬだまになってしまったよ」
「なんだと!?」
「まあ良いじゃないですか。3人だけでも心強いですし」
苦い顔をするエクレールとは反対に明るく前向きなシンク。
「で、どうするんですか?」
「戦況は我が軍がじゃっかん不利だ。故に速攻で勝負をつけたい……が、あの門をなかなか突破出来ない」
アインハルトの質問に答え、エクレールは眼前にそびえたつ門を見据える。
「アインハルト、援護するから門を飛び越えて内側から開けてくれる?」
「分かりました」
「今から味方が突っ込む。第1~第4分隊は盾になれ!! 弓兵は援護に回れ!!」
士樹の提案をアインハルトが了解し、その意図を汲み取ったエクレールは部下に指示を飛ばす。レイが道を切り開き、士樹達が援護する中でアインハルトは紋章術で一気に飛び上がり、壁を飛び越えた。
★★★★★
その後に出てきた将軍との戦いもなんとか乗り越え、今回の戦はビスコッティ側の勝利で終わった。士樹達は戦勝イベントとして開かれるミルヒオーレ・F・ビスコッティ姫のコンサートに出る前に風呂で汗を流していた。
「今回も面白かったですね」
「途中でマスタング先生が出てきた時はどうなるかと思ったけどね」
「同感だ」
風呂で汗を流した3人は風呂から出て更衣室に入った。
「さてと、お姫様のコンサートを聞いて今日の疲れを吹き飛ばすとしますか」
「風呂上がりのアインハルトといちゃつきすぎてコンサートの雰囲気を壊すなよ」
「分かってるって」
着替えを終えた3人はアインハルトと合流し、コンサートホールに向かった。
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[そらのおとしもの~天使と仮面騎士の物語~]
設定集 http://www.tinami.com/view/401137
プロローグ http://www.tinami.com/view/401710
第1話『破壊の後継者/Iとの再会』 http://www.tinami.com/view/402298
第2話『驚愕の転校生/忍び寄るFの影』 http://www.tinami.com/view/402305
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