No.398454

真・恋姫無双 ~降りし天の御遣い伝~ 第4話 改訂版

rin1031さん

1ヶ月投稿できませんでした。すみません。急いで書いたのでおかしなところが多々あるかと思いますが、最後まで読んで下されば幸いです。

2012-03-26 22:28:27 投稿 / 全6ページ    総閲覧数:8715   閲覧ユーザー数:6948

第4話 旅立ち

 

 

???「周辺に賊は見当たりません!」

???「そうか。生き残った村人はどうした?」

???「村中央へ集めておきました。それと、倒れていた男は焼け残った家で寝ており、村長と村娘が1人付き添っております」

???「ご苦労。引き続き周囲の警戒と賊のねぐら探索を続けよ」

???「はっ!」

 

ズガーーーーン

 

???「将軍……」

???「みなまで言うな。はぁ~……やれやれ、あっちは私がいこう」

 

蒼い髪をし、服も髪に合わせた蒼の衣装を身に纏った彼女はそう言うと、右手を額に当てて溜息を吐き、しかし、顔には薄っすらと笑みがこぼれ、先程の轟音がした方へと歩いて行った。

 

 

一刀「(なんだ?うるさいな)……知らない天井だ」

老人「む?起きなさったか」

娘「御気分はいかがですか?」

一刀「(誰だ?)……大丈夫です」

 

一刀が目を覚ますと長い黒髪を後ろで束ねた女性とがこちらを不安そうな顔で覗きこんでおり、その後ろには杖を突いたお年寄りが立っていた。

一刀は平気だと言いながら起き上がろうとした。

 

娘「まだ起きちゃ駄目です!今はまだ安静にしていて下さい!」

一刀「は、はい!」

 

一刀は娘の気迫に負け、起き上がろうとしていた身体を再び横にした。

 

一刀「お二人にお聞きしたいことがあります」

老人「はて?何でございましょうか?」

一刀「先程から外が騒がしいようですが、また賊でも来ましたか?」

娘「いいえ、今外にはここの太守様が派遣してくださった部隊が来ております」

一刀「そうだったんですか。ところで、太守って言ってましたがここはどこですか?」

老人「ここは兗州陳留郡の中の小さな村じゃよ」

一刀「陳留?……ってことは、ここの太守って……」

娘「はい。ここは曹猛徳様が治めていらっしゃいます」

 

一刀は薄々ではあるが、勘づいていた。目を覚ましたのは自分の部屋では無く見知らぬ森の中。夢だと思い頬を抓っても痛みを感じた。いっそ感じない方が良かった。そして森を歩いていると村を襲っている賊。その賊は皆が黄色い布を身に纏っていた。ここである程度意識したのだろう。そして今、老人と娘からここが陳留であり、太守が曹猛徳であることが伝えられ、一刀ははっきりと理解した。自分は平和な平成の世から、争いの絶えない過去、しかも自分が最も好きな時代であり、好きな読み物である、三国志の舞台となる後漢へとタイムスリップして来てしまったことを。

 

一刀「そう……ですか」

娘「どうしました?」

一刀「いえ、驚いたので……」

娘「?」

老人「それにしても……そういえばまだお互いに名乗っておらんかったの」

娘「そうでした!私は授受と申します。助けていただいた感謝のしるしとして、私の真名を御受取りくださいませ。私の真名は優と申します」

老人「儂は玄陽と申します。儂もこの村を救っていただいたお礼として真名を送らせてもらいましょうかの。儂の真名は紳と申します。御受取りくださいませ」

一刀「おれは北郷一刀と言います。先程から、「まな」とおっしゃっていますが、それは一体何でしょうか?」

優「真名を知らないんですか!?」

一刀「え?あ、はい。でもそれってそんなに驚くことなんですか?」

優「当たり前ですよ!」

一刀「え~っと……」

 

一刀は困った。

お互いに自己紹介をしようという流れになり、いざしてみれば真名を知らないということでいきなり娘に怒られているのだ。

 

紳「北郷殿は本当に知らないようですな。……真名というのはその人が心を許した人に授ける神聖な名じゃ。じゃから、許しもなく呼ぶことは死罪にあたるのじゃ」

一刀「真名というのはとても大切なものなんですね」

優「そう思いますか?」

一刀「はい」

紳「やはり北郷殿は素晴らしいお方のようだ」

優「そうですね」

一刀「そんなに褒めないでくださいよ!/////」

優「/////」

 

2人に褒められ、顔を紅くして照れる一刀。

そんな一刀を見て見惚れて顔を紅くする優。

 

紳「ふぉふぉふぉ。今日は良い日になった」

 

 

一刀「お二人には真名をもらいました。ならば、自分も渡したい。しかし、自分に真名と呼べるものはありません。強いて言えば一刀が真名に当てはまるかと思います。なので、一刀とこれからは呼んでください」

優「一刀さん///」

紳「ところで一刀殿。曹猛徳様の名を聞いた時、驚かれておいでだったが、どうかされたのかの?」

一刀「今から話すことは簡単には信じられないと思います。自分でも先程お二人のお話を聞いて合点がいったところなんです。ですが、夢ではありませんし、信じてもらうしかありません」

 

そう言うと一刀は自分の考えを話した。

自分が今から1800年も後の時代からここへ来たこと。

なぜ、どうやって来たかは分からないが寝て起きたら森の中だったこと。

ここがどこか手掛かりを探す為に歩いていたら声が聞こえてきたので、来てみたら賊にこの村が襲われていて、気が付いたら賊を倒して今こうしてここにいること。

曹操の名前を聞いて自分が過去に来てしまい、もう家族や友達と会えなくなったこと。

この時代に1人っきりであること……。

一刀の話を2人は初めのうちは難しい顔をして、だけども幸運なことに2人はこの時代では珍しくある程度学があった。だから少しずつ理解していったようだ。そして2人は途中から涙を流して一刀の話を聞いていた。

 

一刀「……これが自分の考えです」

紳「……俄かには信じられない話じゃが……」

優「私は信じます!」

一刀「優さん……」

 

優は涙を流しながらも力強く一刀を抱き締めた。

 

優「私は一刀さんがお話してくださったことを信じます!他の誰も信じなくても私は信じます!それに一刀さんは一人ではありません!!私がいます!!」

紳「そうじゃな……。儂も一刀殿のことを信じますぞ」

一刀「ありがとう、ございます」

 

一刀は泣きそうだった。

優に1人じゃないと言われ、2人に信じてもらえたことが嬉しくて。

 

紳「一刀殿、その着ている御召し物、それにその籠は見たことも無い材質で出来ているようじゃが、それも一刀殿と一緒に?」

一刀「そのようですね」

優「これで先程賊を斬ってましたが、何ですか?」

一刀「それは『日本刀』と言って武器なんです」

優「こんなに細くて大丈夫なんですか!?」

 

優が驚くことは別に変なことではない。

この時代の主な武器は、剣や弓矢、それに斧や槌(いわゆるハンマー)などが一般的であり、相手を『斬る』という考えを全く想定していない。

むしろ、武器を重くしてその重さを利用して叩き切るということを想定している。

しかしこの『日本刀』は、『斬る』という考えの元に作られている。

何度も何度も折り返し叩き、不純物が混ざらないように鉄を伸ばしていきながら強くする。

元々鍛造の仕方は中国から日本へと入ってきた。

しかし、それを日本人が自分たちの文化に合うように改良していった結果がかの有名な『正宗』や『村正』の誕生である。

 

一刀「……と、言う訳なんだ」

優「そうだったんですかぁ」

紳「一刀殿は強いだけでなく、博識でもあらせられる。この先、行くあてが無いのであれば、ここで暮らして守っていただけると助かるんじゃがのぅ」

優「そうです!ぜひそうしてください!!」

一刀「で、ですが……」

 

紳の突然の一言に、優は目を輝かせ一刀に迫る。

それに一刀としてもこの申し出は願ってもないことだった。

行くあてもない自分がこの先どうやって生きていくか見当もつかなかったからである。

しかし、同時にせっかくこの時代へと来たのだから、名だたる武将を直に見たい!戦場となった数々の地が見たい!それに、全ての助けを求める人を救うことなんて無理なことだと分かっている。それを全員助けたいと言うのは簡単だが、言うほど簡単ではないことぐらい一刀は分かっている。それでも出来るだけのことがしたいというのは我儘だろうか?

 

一刀「少し、考えさせてもらってもよろしいですか?」

紳「ふむ。一刀殿にとってはこれからの人生を決めるということ。こんな大事なことはゆっくりと考えた方が良いじゃろう。いつまでいてもらっても構いませぬ。ゆっくり考えて自分なりの答えを出すことじゃ。一刀殿が出した答えに文句は言いませぬ」

一刀「ありがとうございます」

 

一刀は頭を下げ、お礼を言う。

紳は「良い良い」というが、一刀が出す答えが分かっているかのようにどこか複雑な表情をしている。

優は先程の輝くような表情が嘘のように落ち込んでいる。

 

 

一刀は今、寝ていた場所に1人で横になっている。

紳と優は一刀にゆっくり休んでおきなさい、と伝えて村の復興を手伝っている。

ただ、先程から聞こえてくる変な轟音に怒鳴り声。それが気になって仕方がないが……。

 

一刀「五月蝿くて無理だ!」

 

そういうと一刀は1人、家を出て歩きだした。

 

一刀(おれはここで何しようか……。見聞を広める為に旅に出てもいいし、でもそうすると優さんのさっきの顔を見ると悲しむんだろうなぁ。なんなら優さんも一緒に……いや駄目だな。それだと優さんが危ない目にあるかもしれない。いくらおれが北郷流を使えるからって、過信しては駄目だ。油断していたらあっという間に人質にされるか殺されるか。そんな時代なのだから。だったら1人で……)

 

???「見つけたぞ!」

一刀「ん?」

???「お前だな?お前が私の得物を取った無粋な奴だな!?」

一刀「は?いきなりなんですか?得物って何ですか?それよりあなたは誰ですか?」

???「なに!?そんなことも知らないのか!?お前は馬鹿なんだな!」

一刀「(言わせておけば……)貴様こそ、早くおれの質問に答えろ。それと、おれは馬鹿かもしれないが、それを貴様のような失礼な人に言われたくはない!」

???「なにぃ~!?誰が本当にどうしようもないくらい相手に失礼な程の馬鹿だ!!」

一刀「そこまで言ってないだろうが!」

???「くっ!ここまで侮辱されたのは桂花以外では初めてだ!」

一刀「(あれは誰かの真名だろうな)早く質問に答えろよ。こっちだって暇じゃないんだ」

???「いいだろう。質問に答えてやろう。……ん?」

一刀「どうした?」

???「お前は何が聞きたいんだ?」

一刀「……は?」

 

一刀はいきなりの馬鹿な発言に一瞬思考が停止してしまった。

 

???「だから、お前はさっき私に何を聞いてきた?」

一刀「あ、あぁ。え~っと、まずお前は誰だ?」

???「あいかわらず生意気な奴だ。本当ならそんな口の聞き方をしてきた時点でその首を切り落としてやっているところだが、お前はこの村を救ったようだからな。今回は勘弁してやる。それと、私が誰かだが、私はこの陳留太守曹操様の刀、夏侯元譲だ!」

 

一刀を追ってきたのは正史では曹操の従兄であり、曹操に尽くした猛将として有名な夏侯惇であった。

 

一刀「え?本当に?」

夏侯惇「なんだ!?私が父上と母上から授かった大事な名前を偽名だと言うのか!?」

一刀「い、いやそうじゃないけど……本当に、お前があの夏侯惇なのか?」

夏侯惇「あのとはどういう意味か知らないが、ってちょっと待て!今、お前私の名を言ったな?なぜ知っている!?私は名を教えた覚えはないぞ!」

一刀「(しまったな……まさか名を言ってしまうなんて。馬鹿のくせに意外とするどいな。それにしてもなんで夏侯惇が女になってるんだよ!男だったはずだろ!?それにこんなに馬鹿じゃないだろ!?いかにも猪突猛進っぽいし、何を言っても聞かなそうだし)「おい!」ごめんごめん。考え事してた」

夏侯惇「考え事だと!?早く私の名前を知っていた理由を話せ!」

一刀「教えてもいいけどたぶん理解できないと思うよ?」

夏侯惇「なんだと!?一度ならず二度までも!またも私が何にも理解していない馬鹿だと言ったな!?」

一刀「お前の耳は飾りか!」

夏侯惇「なっ!?父上と母上に頂き、今は華琳様の物である私の身体を侮辱したな?」

一刀「なんでそうなるの!?しかもさっきからおれ達のやりとり無限ループしてるし……」

夏侯惇「初めからこうすれば良かったのだ。それに元々その為にこいつを探していたのだ。おい!今から私と仕合え!そして私が勝てばなぜお前が私の名を知っていたのか教えたもらおう!そして華琳様の元へ行き、お前にふさわしい罪状をくれてやる!」

一刀「なぜそうなる!?……だが、いいだろう。おれもお前にはムカついていたところだ」

夏侯惇「私にむかでがついてる?そうやって私を脅してその隙に勝とうとする手だな?」

一刀「本当にお前は馬鹿だな!」

夏侯惇「また馬鹿と言ったな!?いいだろう!今ここで貴様を八つ裂きにしてくれる!」

一刀「はぁ~……」

夏侯惇「私は曹操様が剣、夏侯元譲!いざ尋常にその命を差し出せ!」

一刀「……おれは北郷流免許皆伝、北郷一刀!命を差し出すつもりはない!」

 

そんな2人を木陰から眺めているいくつかの影。

 

兵士「いいんですか?止めなくて」

???「別にいいさ。ここであの男が八つ裂きにされようとも私は姉者を馬鹿にした奴は好かん。いっそこの手で殺してやりたいぐらいだ」

兵士「そ、そうですか。しかし夏侯淵将軍、あの男はこの村を賊からたった1人で救ったようです。ですので殺せば村の連中が何を言い出すか」

夏侯淵「それもそうだな。ならば、気に食わないが危なくなったら私が止めに入ろう。お前たちは持ち場に戻り、村人がここに来ないようにしておけ」

兵士「「「はっ!」」」

 

兵士たちは各自の持ち場へと向かい、その場には夏侯淵ただ一人となった。

 

 

夏侯惇「くそっ!なぜ当たらん!?」

一刀「……」

夏侯惇「お前!避けているだけでは私には勝てぬぞ!それとも、避けることしか出来ぬのか!」

 

一刀は夏侯惇の攻撃を全て寸でのところでかわしていた。

しかし、夏侯惇は避けてばかりいて一向に攻撃してこない一刀に対してイライラしていた。

 

一刀「お前の一撃一撃は確かに重い。だから一撃でも当たってしまえばおれは無事では済まないだろうな」

夏侯惇「ふふん。そうだろうそうだろう」

 

一刀が褒めたことで夏侯惇は得意げになり、それを影から見ていた夏侯淵は「姉者……///」と言って悶えていた。

 

一刀「でもその分速さが足りない。だから今のおれのように簡単に避けることが出来る」

夏侯惇「なんだと~……言わせておけばぁぁぁ!!」

 

夏侯惇は一刀の言葉に今度は逆上し、武器を大きく振りかぶり、一刀へと振り降ろしてきた。

それを見ていた夏侯淵はまずいと思い、止めに入った。

 

夏侯淵「姉者!それはまずい!もうやめておけ!」

 

しかし、夏侯惇は頭に血が上っており、妹の言葉など聞こえておらず、そのまま一刀へと振り下ろした。

 

夏侯惇「死ねぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」

 

ズガーーーーーーン

 

と、大きな音と共に砂埃が舞い上がり、何も見えなくなっていた。

 

夏侯惇「?……所詮は男!私の武の前では何も出来んのだ!」

 

夏侯惇は手ごたえがないことに違和感を感じていたが、それでも勝利を確信し、一刀を跡形もなく消し飛ばしたのだろうと、あるいは逃げ出したのだろうと思った。

しかし……

 

夏侯淵「姉者!!」

夏侯惇「!?」

一刀「……北郷流抜刀術『風神』」

夏侯惇「ぐっ……」

夏侯淵「姉者!?おのれ~!」

 

勝利を確信していた夏侯惇は油断していた。

しかし、夏侯淵は元々目が良かった為に、砂埃の中に影が見えた為に異変に気がついて夏侯惇の名を叫び、急いで側に行こうとしたが、遅かった。一刀は夏侯惇の一撃を避け、砂埃が舞う中で夏侯惇の気配を察知し、攻撃に転じたのだ。

 

『風神』:斬られた相手はまるで風が通ったかのように感じる。しかし、実際は見ることが出来ない速度で斬っている為にそう感じる。

 

一刀「まぁ、待てよ。まだ夏侯惇は死んじゃいないよ」

夏侯淵「なに!?」

一刀「みねうちだ。でも加減はあまりしていないから今は気絶しているだけだろうな」

夏侯淵「なぜ止めを刺さないのだ?」

一刀「おれは元々殺生がほとんどないところから来た。いや、昔はあったんだが、おれがいた時代は無かった。だからおれは殺生が嫌いなんだ。それに夏侯惇を殺したら曹操にお前……夏侯淵も泣くだろう?」

夏侯淵「!!……な、なぜ私の名を!?」

一刀「まぁ、おれと夏侯惇が仕合う最初から気配は感じていた。それもおれが夏侯惇を馬鹿にしていたところで殺気がおれに向けられているのも分かった」

夏侯淵「しかし、それだけでは私は姉者の部下かもしれないだろう?」

一刀「まぁ、それだけならな。でもお前は夏侯惇を何と呼んでいる?」

夏侯淵「!!」

一刀「そういうことだ。夏侯惇を姉者と呼ぶのはその親類以外にはいないだろうし、おれの知識には夏侯淵以外にいないからな」

夏侯淵「そういうことだったのか」

一刀「そうだな。それよりも早く夏侯惇を寝かせてやらなくていいのか?」

夏侯淵「そうだな」

 

その後一刀と夏侯淵は夏侯惇を寝かせる為に村まで戻っていった。

村に向かう最中、一刀は夏侯淵に夏侯惇を馬鹿にしたことを謝り、夏侯淵は一刀に無理やり仕合を申しこんだことを夏侯惇に変わって謝り、お互いに意気投合をし、真名を交換しあった。

 

それから時は流れてこの世界に来てから早1週間

 

優「もう行かれるのですか?」

一刀「うん。この村の人たちにはお世話になったから出ていきにくいんだけど、でもおれは大陸を周ってもっと見聞を広めたいんだ」

優「で、でも!だったら私がこの大陸のことを教えます!だから、だから……」

一刀「優さん……」

 

優は一刀に惚れている。

だからこの村で一緒に生きていきたいと願っていたのだが、一刀が出した答えは旅に出るということだった。もちろん、優もそれに同行したいと名乗り出た。しかし一刀がそれを断ったのだ。危ないからと。

優はそれでも着いていきたいと自分の想いを一刀に伝えたが、一刀が答えを変えることはなかった。

 

紳「優よ、これ以上一刀殿を困らせてはならん。一刀殿も考えに考えた結果なのじゃからのぅ」

一刀「紳さん……ありがとうございます」

紳「よいのです。一刀殿には村のみんながお世話になりましたからのぅ。これからは村のみんなで力を合わせて頑張っていかないといかんのです」

一刀「そうですね」

紳「これは一刀殿への感謝の気持ちじゃ」

 

そう言って紳が村人へと目配せをすると、村人は大きな一頭の馬を連れてきた。

 

一刀「この馬って……」

紳「そうです。この村の近くで以前捕まえたのですが一刀殿しか世話を出来なかった馬です。今回一刀殿が旅立つと聞いて、この馬も一刀殿と一緒ならば幸せなのではないかと思い、こうして一刀殿へ贈らせていただきたいのじゃ」

一刀「そうですか……。お前はおれと一緒に行きたいか?」

馬「……」

 

馬は一刀を見て首を縦に降ろした。

まるで人の話している言葉が分かるかのように。

 

一刀「そうか。じゃあ、これから一緒に旅をするんだから名前をつけなくちゃいけないな」

馬「……♪」

 

馬は名前を付けてもらえるのが嬉しいのか喜んでいるようだ。

 

一刀「そうだなぁ。お前は雄だからなぁ……黒燕なんてどうだ?」

黒燕「ひひ~ん♪」

一刀「そうかそうか」

???「一刀ぉぉぉぉぉ!!」

一刀「ん?」

???「ちょっと待ってくれ一刀!」

一刀「どうしたんだ、春蘭?」

春蘭「一刀!もう行くのか!?」

一刀「うん。今日行くって前々から言っていたし、春蘭たちも早く戻らないと怒られちゃうんじゃないのか?」

春蘭「そ、そうだが……しかし!」

???「姉者、1人で先に行くとは酷いではないか」

春蘭「す、すまないな。秋蘭」

一刀「秋蘭も来てくれたのか」

秋蘭「当たり前だろう。それに姉者が一刀と別れるのがさ「わぁぁぁ!秋蘭言うなぁぁぁ!!」……ふふふっ」

一刀「まぁ、来てくれたのは嬉しいよ。ありがとう春蘭、秋蘭」

 

一刀は2人に笑顔で感謝を伝えた。

 

春蘭「う、うむ///」

秋蘭「気にするな///」

 

2人は顔を紅くして、春蘭は俯き、秋蘭は平静を装っている。

そんな2人を見て優は女の勘が発動していた。

 

秋蘭「本当にいいのか?一緒に行かなくて」

一刀「あぁ。おれが一緒に行ったら怪しまれるだろうし、春蘭と秋蘭は急ぐのかもしれないけど、おれはゆっくり景色でも楽しみながら行きたいからね」

春蘭「そんなぁ……」

秋蘭「そう肩を落とすこともあるまい姉者。目的地は同じなのだ。また会えるさ」

春蘭「そ、そうだな!だが秋蘭。私は別に一刀と一緒に行けなくて肩を落としていたのではないぞ!」

秋蘭「ふふふっ。そうだな」

一刀「春蘭らしいな」

 

 

 

一刀「じゃあ、あんまり長く居ても別れが辛くなるだけだからそろそろ行くよ」

 

そう言って荷物を持ち、黒燕に乗ろうとしたのだが

 

優「一刀様!」

一刀「ん?……んぅ!?」

 

後ろから優に呼ばれて立ち止まって振り返ってみれば、優に接吻、キス、口吸いをされた。

それを紳を始めとする村人はニヤニヤとして見ていたし、陳留の兵士もニヤニヤしていた。

しかし、そんな2人を見てフリーズしていた2人がいた。そう、春蘭と秋蘭の2人である。

 

春蘭「ああぁぁぁ!!」

秋蘭「むぅ……」

一刀「ちょ、ちょっと優さん!?」

優「これは私の一刀様への想い、そして本当は行ってほしくないけど無事でいてほしいという願いを込めたものです」

一刀「優さん……」

 

優の目には涙が滲んでいた。

 

一刀「優さん、さよならは言いませんよ」

優「え?」

一刀「まだおれは優さんの想いに答えていません。だからまた優さんに会えたらおれの想いを受け取ってくださいね」

優「はい!」

一刀「じゃあ、今度こそ本当に行くよ。じゃあねみんな!」

 

そう言って一刀は馬に乗り、駆けていく。

その後ろ姿が見えなくなるまでそこから立ち去るものはいなかった。

 

 

秋蘭「姉者……」

春蘭「なんだ、秋蘭」

秋蘭「姉者は一刀のことが……いや、何でもない」

春蘭「私は男で強い奴に初めて会った」

秋蘭「……そうだな」

春蘭「それも私よりも強いだけじゃなく、段違いに強い。最初は華琳様の為に強くなりたくて師事した。でも、いつの間にか私は一刀のことが頭から離れなくなっていたのだ。今までは華琳様のことしか考えていなかったのだが、今の私は一刀のことばかり考えてしまう。……あの娘が一刀にく、口吸いをした時に私は驚き、胸が痛くなったのだ。私は今までこんな感情になったことはない。秋蘭、この感情はなんだ?」

秋蘭「姉者、それは一刀のことが好きなのだ」

春蘭「一刀が好き?」

秋蘭「そうだ姉者。その胸が痛むのは嫉妬しているのだ、あの娘に。出来ることなら一刀にあの娘と同じことをしたいであろう?」

春蘭「う、うむ///」

秋蘭「実を言うとな、私も一刀のことを好いているのだ」

春蘭「なに?秋蘭も一刀を好いているのか!?」

秋蘭「そうだ。ここ数日一刀と話して、一刀を見続けてきて、私は一刀のことをいつの間にか自然と目で追うようになっていたのだ。それに私もさっきのことは驚いたのだぞ?」

春蘭「秋蘭……」

秋蘭「だがな、姉者。我らはこれから同じところに向かうのだ、だから陳留に着いたらさっきのことを後悔させてやろうではないか」

春蘭「そうだな!そうと決まれば私たちも早く行くぞ!」

秋蘭「元気のなかった姉者も可愛かったが、やはり元気な姉者の方が可愛いな」

春蘭「何をしているのだ秋蘭!早く帰るぞ!」

秋蘭「待ってくれ姉者!」

 

こうして2人は陳留で一刀に何をしてやろうか考えながら帰って行った。

それを村人は一刀へ合掌しながら無事を祈っていた。

 

優(一刀様、御無事で。またお会いしましょう)

 

 

あとがき

 

遅くなって申し訳ありません。

 

言い訳をさせてください。

 

理由としては3つあります。

 

1.あっぱれ!天下御免をやってました。私は桃子の胸とお尻に一目惚れし、想で新婚夫婦の初夜を妄想し、十兵衛を先輩にして毎日扱かれたいと夢に見て、雪那を委員長として冷たい目で見つめられながら足蹴にされたいと声を大に叫び、鼎先生と毎日放課後にイケない個人授業を開きたいと掲示板に書き込み、はじめを妹にしてお風呂でお互いに身体を洗いあいたいと同僚に話して白い目をされ、平良を母親に持って夜中に白い花火を打ち上げたいと友達に話してアドレスを消され、南国を父にしたいと父に話したら泣かれたからです。

私は吉音がそんなに好きじゃないです。

 

2.休みの日まで仕事が入っているから執筆する時間があまり取れなかったからです。

 

3.これが一番重要です。実は、仕事の合間に執筆していましたら、パソコンがフリーズしました。その時に上司が近づいてきました。パソコンの画面は書いてある途中です。バレたらヤバいと思って強制終了をしました。そして、パソコンを点けて見てみると……データが壊れているじゃないですか!!しかもまだ書きかけならまだしもほぼ終わりかけてた時にですよ?絶望でしたね。それで少し執筆を1週間辞めてました。

 

こんな理由から遅れました。

すみません。

実はもう次話はほとんど出来てます。

だから次は間に合います。

お楽しみに!!

 

間違いがあったり、おかしなところがあったら報告よろしくお願いします。

 

ではでは。

 


 
このエントリーをはてなブックマークに追加
 
 
36
2

コメントの閲覧と書き込みにはログインが必要です。

この作品について報告する

追加するフォルダを選択