No.483942

真・恋姫無双 ~降りし御遣い伝~ 第5話 改訂版

rin1031さん

約6ヶ月ぶりの投稿です。
申し訳ないです。
全てはあとがきで。では第5話、よろしくお願いします。

2012-09-14 22:32:55 投稿 / 全5ページ    総閲覧数:8774   閲覧ユーザー数:7021

第5話 覇王

 

 

 

時は戻り、一刀が外史に来た直後

 

 

「・・・流れ星?不吉ね・・・」

「華琳さま~~~」

「どうしたの桂花?騒々しいわね」

 

桂花と呼ばれたその少女は慌てた様子で華琳と呼ばれた少女に対し

 

「華琳様、今しがた流星が見られました!」

「えぇ、今私も見たわ」

「これは何か良くないことが起こる前触れでは?」

「吉と取るか凶と取るかは己次第よ」

「そう、ですね」

「それより、春蘭と秋蘭には伝えたかしら?」

「はい。すでに軍の準備を終え、出発いたしました。……華琳様」

「何かしら?」

「先ほどの流星の件ですが……」

「管輅の占いと酷似すると?」

「!」

「私も管輅の占いのことは知っていたわ。もし、あの流星が管輅の占い通り天の御遣いならば、私の目指す覇道に大きく近づけるでしょうね」

「それでは捜索隊の派遣を?」

「そうね。それじゃあ、お願いできるかしら」

「御意!」

「いい子ね。あとでご褒美をあげようかしら」

「華琳さま~///」

 

 

同じ時、ある場所では……

 

 

「キレイだね~……」

「はい。ですが桃香様、こんな時に流星が見られるなど不吉です!」

「そうかなぁ?私にはそんな風には思えないんだけどな……」

「にゃははは、愛紗は考え過ぎなのだ♪それに、愛紗はただ怖いだけなのだ」

「なっ///……鈴々!」

「それに、管輅ちゃん言ってたじゃない。東方より飛来する流星は、乱世を治める使者の乗り物だーって」

「ふむ……確かに、その占いからすると、あの流星には天の御遣いが乗っているということになりますが……」

「誰も乗っていないかもしれないのだ」

「そうです。桃香様、まずは天の御遣いらしき人物を探してみてはいかがかと」

「そうだね。じゃあ、まずは探して私たちの仲間になってくれるか頼んでみようよ」

「でもどうやって探すのだ?鈴々、天の御遣いのことなんて全然知らないのだ」

「「あっ……」」

 

 

 

また同じ時、ある場所で……

 

 

「ふむ……もう春じゃと言うのに肌寒いのぅ」

「気候が狂っているのかもね。世の中の動きに呼応して」

「……確かに最近の世の中の動きは少々狂ってきておりますからな」

「官匪の圧政、盗賊の横行。飢饉の兆候も出始めているようだし。……世も末よ、ホント」

「うむ。しかも王朝では宦官が好き勝手やっておる。……盗賊にでもなって好きにでも生きたいと望む奴が出るのも、分からんでもないな」

「真面目に生きるのが嫌になる、か。……ま、でも大乱は望むところよ。乱に乗じれば私の野望も達成しやすくなるもの」

「全くじゃな」

「今は袁術の客将に甘んじてるけど。……乱世の兆しが見え始めた今、早く独立しないとね」

「堅殿が死んだ後、うまうまと我らを組み入れたつもりだろうが……いい加減、奴らの下で働くのも飽きてきたしの」

「そういうこと。……だけどまだまだ私たちの力は脆弱。何か切っ掛けがあればいいんだけど」

「切っ掛け、か。……そういえば策殿。こんな噂があるのを知っておるか?」

「どんな噂よ?」

 

孫策に聞かれ、黄蓋という将が噂について語り始めた。

 

「黒天を切り裂いて、天より飛来する一筋の流星。その流星は天の御遣いを乗せ、乱世を鎮静す。……管輅という占い師の占いじゃ」

「管輅って、あのエセ占い師として名高い?……胡散臭いわね~」

「そういう胡散臭い占いを信じてしまうぐらい、世の中が乱れとるということだろう」

「縋りたいって気持ち、分からなくも無いけどね。……でもあんまりよろしくないんじゃない?そういうのって」

「妖言風説の類じゃからな。じゃが仕方無かろうて。明日がどうなるか。明後日がどうなるか。とんと見えん時代じゃからな」

「ホント、世も末だこと」

「うむ。……さて策殿。偵察も終了した。そろそろ帰ろう」

「そうね。さっさと帰らないと冥琳に――――」

「策殿!」

「ん?」

「流星じゃ!」

「本当に……流星が……」

「これはもしやすると……」

「そうね。天の御遣いがいるかもしれない。さっそく捜索の手筈を整えましょう」

 

 

 

時間は戻り、村から旅立ち数刻……

一刀と黒燕は小さな小川へと立ち寄り、小休止をしていた。

 

「それにしてもさっきはびっくりしたなぁ」

 

一刀はさっきのことを思い出していた。

 

「まさかキスされるなんて思わなかったからな。それに、おれが自惚れていなければ春蘭と秋蘭もだろうなぁ……黒燕、おれどうしたらいいと思う?」

「……」

 

黒燕は「知るか!死ねリア充!」とでも言っているかのように鋭い目で一刀を見ていた。

黒燕にそう思われているのがショックだったのか、現実逃避をする為に、一刀は春蘭が目覚めた後のことを思い出していた。

 

「……ん、んん?」

「おぉ、姉者!目が覚めたか!」

「秋蘭?何をそんなに……あぁぁぁ!!」

「元気じゃないか」

「貴様!なぜここに貴様がいる!」

 

目を覚ました春蘭は秋蘭の横にいる一刀を見ると、先程負けたのが悔しいのか、食ってかかった。

 

「やめろ姉者!一刀は姉者をここまで運ぶのを手伝ってくれたんだぞ?」

「し、しかし!」

「姉者」

「う、うむ。仕方ないな、うん」

 

秋蘭の気迫に負けて、春蘭はおとなしくなった。

 

「申し訳なかったな一刀」

「いや、秋蘭が悪いわけじゃないし、夏侯惇だっておれに負けたのが悔しいだけだろうからな。負けた時の悔しさはおれもよく分かるからさ」

「そうか。一刀は「おい!なぜお前が秋蘭の真名を呼んでいるんだ!」姉者……」

「ん?秋蘭が教えてくれたからだよ」

「な、何!?そうなのか秋蘭!?」

「あぁ。一刀には私の真名を呼ぶだけの資格があると私が判断したのだ」

「そうか。ならば仕方ないな。だが、私は秋蘭が預けたからといって、お前を認めたわけじゃない!」

「別に真名を呼びたいから何かをするわけじゃない。認めてもらいたいから何かをするわけじゃない。おれが自分でしたいと思ったことをした結果が、真名をもらうことであって、夏侯惇が今ここでおれを認めないことでおれが悔しがる事でもない。むしろ、何もしていないのに真名を授けられても受け取る気にはならない。おれには真名が無い。だから実感は湧かないけど、でもこの世界の人達にとってどれだけ重要で神聖なものかってことは理解しているつもりだ。だからおれが秋蘭の真名を気軽に呼ぶことはない」

 

そういうと、一刀はそこを離れて村人や兵士がしている復興作業を手伝いに向かった。

 

 

 

「姉者……あれはいくらなんでも無いのではないか?」

「ふん!」

「はぁ……。元々姉者が一刀を探して仕合を申し込んだのだろう?それも無理やりに」

「ぐっ」

 

図星なため、何も言い返せない春蘭。

 

「ならば謝りはしても、姉者が怒ることは無いのではないか?」

「……」

「一刀はな、姉者が目覚めるまで私と一緒に看病してくれたのだ。いくらすぐに目が覚めるといっても、一刀は自分がしたことだからと、頑なにここを離れず姉者を心配してくれていたのだ。それをあんな態度では私でもさすがに怒るぞ」

「……か?」

「なんだ?言いたいことがあるのならばはっきり言わないと駄目だぞ?」

「今からでも、あいつに謝ったら許してくれるだろうか?」

 

自分がしたことを理解したのだろう。

いつもは馬鹿みたいに元気(そこがいいところでもあるのだが)な春蘭が秋蘭には弱弱しく見えた。

 

「一刀は優しい奴だ。もう怒っていないかもしれないが、早く行って謝ったほうが「では行ってくる!」……って、話は最後まで聞いてもらいたいものだな」

 

秋蘭の助言の最中であるにもかかわらず、最後まで聞かずに飛び出していく春蘭。

呆れながらも、春蘭の行動に嬉しさを感じる秋蘭。

 

「だが、姉者はあぁでなくてはな」

 

姉には非常に甘い妹である。

 

 

「材はここでいいですか?」

「ありがとうございます。北郷殿が手伝ってくれて助かります!」

「よしてくださいよ。おれだけじゃなく、ここの兵士の人たちだって一緒にやっているんですから」

 

一刀が村人と一緒に村の修繕作業を行っていると突然兵士が騒ぎ出した。

 

「お待ちください夏侯惇将軍!」

「ん?」

「おい!」

「何か用かな?」

 

周りは気が気じゃない。

兵士は春蘭がいかに短気で、強いかを知っている。

まして一刀はその春蘭に仕合で勝っている。

そのまま春蘭が許すわけないのだと、再戦をしにきたのだと思っていたのだ。

村人にいたってはすでに2人から離れていた。

 

「あの、だな……」

「なんだ?言いたいことがあるならはっきり言ってくれ。だが、今ここで再戦するというのであれば断らせてもらうがな」

「い、いやそうではないのだ」

「?じゃあ、なんだ?」

 

一刀はあんまり気にしていなかったから気が付いていないかもしれない。

しかし、兵士たちは皆が信じられないものでも見ているかのように驚いた顔をしていた。

春蘭がしおらしくしており、再戦はしないといったのだ。

いつもの春蘭ならここで、「お前!さっきのはまぐれだ!今度こそぶちのめしてくれる!」と言ってくるはずなのに……。

 

「さっきはその……す、すまなかった!!」

 

春蘭は頭を地面に強く打ちつけ、謝ってきた。

いわゆる土下座をしているのだ。

もう兵士は何がなにやら分かっていない。隣同士でお互いの頬を引っ張り合う者、ぶつぶつ念仏を唱える者など、兵士も壊れた連中が多い。

 

「お、おい!」

「秋蘭にお前が私の看病をしてくれたことを聞いた!それに私がいきなり仕合を申し込んだことも怒っていないと。それなのに私はお前にあんな態度を取って嫌な思いをさせてしまった!すまなかった!!」

 

春蘭はそういうと、再度頭を地面に強く打ちつけた。

一刀は春蘭に近づき、肩に手を置いた。

ビクッと反応する春蘭。

 

「別に怒っていないよ。それにさっきはまた仕合を申しこまれると思って冷たく当たった。ごめんな」

「いいのだ。私が悪いから。だからと言ってはなんだが、私も真名を預けたいのだが……」

「そうか。ならば、素直に受け取ろう。かの有名な夏侯惇将軍から真名をもらえるとは嬉しいよ」

「そ、そうか///私の真名は春蘭だ。これからは秋蘭のように真名で呼んでほしい」

「分かった。じゃあ、おれもこれからはお前じゃなくて、一刀って呼んでくれ。真名は無いんだけど、一刀が真名にあたるからさ」

「うむ!一刀」

「なんだ?春蘭」

「うぅ~///父上以外の男に真名で呼ばれたことがないからなんだか、その、は、恥ずかしいな///」

「(か、可愛い///)そ、そうか」

 

この時、兵士はほとんどが春蘭を「可愛い」と思っていた。

ちなみに、秋蘭は「姉者……可愛すぎる」と言いながら、自分の鼻血で出来た池の中で倒れていた。

 

「そうだ!一刀!いや、師匠!!」

「師匠!?」

「い、嫌か?」

「(うっ、上目線で尚且つ潤ませた瞳は反則だ!)別に嫌じゃないぞ!でも普段は一刀って呼んでくれな」

「そうか!そうかそうか。ならば師匠!今から私の武を鍛えてほしい!!」

 

春蘭の精神攻撃をなんとか耐えたところに(若干1名生死の境を鼻血の出しすぎで彷徨っている)、春蘭は武を鍛えてほしいと頼んできた。

 

「(そういうことか)……今でも十分強いと思うけど?」

「いや、今のままじゃ駄目なのだ!私の主の華琳様はいずれはこの世に覇道を唱えられる。しかし、私は秋蘭や文官のように頭が良くない。私にはこの武しかないのだ。だから私はこの武で華琳様を支えていき、華琳様が覇道を成す為の力となりたいのだ!それなのに、私はこの地で師匠に負けた。速さが足りないとさえ言われた。それに私には師匠の一撃が全く見えなかったのだ。このままでは華琳様のお側に仕えていられない!ならば、師匠に弟子入りして今よりも強くなればいいと思ったのだ!頼む!」

 

春蘭は再び地面に頭を打ちつけて懇願してきた。

春蘭は今まで父から武を習ってきて、その天性の才を持ってみるみる腕を上げていった。

それまでは負けていた父にも今では一太刀も浴びること無く、余裕を持って勝利することが出来る。

そんな春蘭が父に負けて以来、初めて父以外の男に負けたのだ。

それも自分が信じ、主である華琳が信頼している『猛将、夏侯惇』の武が一刀のたったの一太刀によって気絶し、敗北をしたのだ。

今まで築き上げてきた春蘭の武がガラガラと音を立てて崩れていった。

このままでは華琳を守れない。覇道を成就させることが出来ない。

そう考えた春蘭は、一刀への弟子入りを志願した。

己よりも強いのならば、更なる高みを目指して鍛錬あるのみ!

 

「春蘭。頭を上げて」

「……」

 

春蘭は渋々頭を上げる。

 

「痛かっただろ?」

「う、うむ……」

 

一刀はハンカチを取り出し、春蘭の血が出ている額にあてた。

 

「もうこんなことはしないでくれ。春蘭が傷ついたらお前の主が悲しむぞ?もちろん、おれだって悲しい」

「一刀……」

 

春蘭の頭を撫でながら、一刀は春蘭に言い聞かせた。

 

「いいな?もっと自分のことを大事にしてくれ」

「うむ!まかせろ!私の身体はすでに華琳様に捧げている。ならばこの身体は華琳様の身体も同義!その身体を傷付けることは金輪際無い!それにこれからは……///」

「?」

「うぅ~……///」

 

春蘭は小声で言ったので一刀は聞き取れなかった。

そんな春蘭を見て顔色がどんどん危なくなっている秋蘭が兵士に運ばれている。

 

「姉者……最高だ!」

 

ガクッ

 

 

 

「まだおれも未熟な人間だ。だから2人でお互いを鍛えるつもりでやろうな」

「し、師匠~!!」

「ちょ、ちょっと春蘭!?」

 

春蘭は一刀に抱きつき、そのまま泣いた。

嬉しくて。

そんな春蘭が可愛くなり、頭を撫でながらも泣きやむまで抱き締めてあげた一刀。

 

 

「一応手当てはしたけどもう痛くない?」

「う、うむ。ありがとう///」

「春蘭の可愛いおでこが傷ついたら秋蘭も悲しむし、曹操様も悲しむと思うんだ」

「か、可愛いなどと///」

「て、照れる姉者も可愛いなぁ……///」

 

いつの間にか復活していた秋蘭がフラフラしながらも戻ってきていた。

 

「じゃあ、修行は明日からでいい?」

「う、うむ!」

「でもそんなに長い間は出来ないからね」

「そうだな。我らも帰らなければならんし、一刀もこれから旅に出るのであろう?」

「うん。悩んでたんだけど、やっぱり旅に出て見聞を広めたいんだ」

「そんなぁ~……」

「だから濃い修行をしような、春蘭」

「そうだな!師匠と共に強くなるのだ!何せ私は一番弟子だからな!わはははははははは!!」

 

こうして修行を始めたのだ。

 

 

 

「春蘭は頭じゃなくて身体で覚えるタイプだったなぁ。この後陳留にいったら会えるかな?」

 

そう言って一刀は黒燕に乗り、再び陳留へと歩を進めた。

しかし、一刀は陳留への道を知っているわけではない。

秋蘭に聞いたのだが、この時代に正確な地図やGPSがあるわけでもなかったので、まっすぐ陳留へ行けるわけでもなかった。

旅とはこういうものだと言い聞かせ、一刀は秋蘭に聞いた道を思い出しながらもゆっくりと黒燕に乗り進んでいた。

 

 

 

「また黄巾党か……」

 

一刀の周りには黄巾党の亡骸が転がっていた……。

 

(また人を斬った……)

 

いつの間にか人を斬ることになんの躊躇いもなくなっていた一刀。

 

(覚悟を決めるとこんなにも簡単に人を斬ってしまうのだろうか。じいちゃん……)

 

グイッグイッ

 

「ん?」

 

一刀が落ち込んでいると黒燕が後ろから一刀を押してきた。

 

「慰めてくれるのか?」

「……♪」

「ありがとうな」

 

黒燕を撫でながら感謝した。

 

 

「おう、そこのお前!」

「……」

「無視すんな!そこの馬に乗ってるキラキラしてる服着たお前だよ!」

「(おれのことかなぁ?)おれですか?」

「だからさっきから呼んでるだろうが!」

「いや、そう言われても……」

「まぁ、いい。とりあえず俺たちが誰だか分かるよな?」

「黄巾党か……」

「そうだぜ!黄巾党様だ!怖いだろ?」

 

アニキは剣を抜き、一刀に突き付けた。

 

「……」

「殺されたくなかったら今持ってる金ぜんぶおれによこしな。それと、そのキラキラの服に、腰に差してるもの剣とその後ろの袋もな」

「それは困るなぁ」

「なんだと!?アニキに逆らうってのか?」

「アニキには逆らわない方がいいんだな」

「いや、これをあげたらおれが生きていけないし……」

「お前なんてどうなってもいいんだよ!」

「そうか……」

 

一刀は腰の黒刀【白王虎】に手を掛けた。

 

「アニキ、こいつ生意気にも剣に手を掛けましたぜ。俺たちに歯向かうつもりですぜ」

「ほぅ~、俺たち黄巾党の怖さを知らないらしい。おい、やっちまえ!!」

「分かったんだな」

「はぁ、本当は嫌なんだけどな……」

「何ブツブツ言ってんだよ!」

 

チビが一刀に斬りかかってきた。

 

シュッ

 

バタンッ

 

しかし、チビは次の瞬間その場に倒れていた。

 

「「……えっ?」」

「隙だらけなんだよ」

「よくもやったんだなー」

「……遅い」

 

シュッ

ドスン

 

一刀は前に目にも見えぬ速さでデブを斬っていた。

 

「な、なな、なんなんだよお前はー!」

「おれはただの通りすがりの旅人だ」

「た、助けてくれ!もう悪い事はしない!黄巾党も辞めるから!」

「本当だな?じゃあ、もう行け」

 

一刀はアニキを許し、黒刀【白王虎】をしまい黒燕に乗ろうとした。

 

しかし・・・

 

「死ねぇぇぇぇ!」

「なにっ!?」

 

ザシュッ

 

 

 

「はっ、ははははははは!ざまぁみろ!黄巾党に、おれに逆らうからこうなるんだ!」

 

「甘いな!」

 

ザシュッ

 

「な、なぜ……」

「お前が斬ったのはおれじゃなく、ただの木だ」

「お前、妖術使いか……」

「妖術じゃなく、忍法と言う。……ん?」

 

アニキが倒れた拍子に何かが落ちてきた。

 

「なんだこれ?まぁ、いいや。持ってくか」

 

持ち帰ってしまった。

何であるか分からずに……。

 

 

 

 

黒燕を町の馬舎へと預け、街へ入って行った。

街へ入った一刀は活気ある街に自然と顔が綻んでいた。

 

(この街はみんなが笑顔だ。それだけ太守が善政を敷いているんだろうな)

 

と、一刀が歩いていると街の人たちがヒソヒソとこちらをちら見しながら何やら話している。

 

(なんだ?)

 

多少気にしながらも歩みを進めていくと、後ろから女性が凄い勢いでこちらへと向かって来て……

 

「私の伴侶に、なってぇ~~~~~」

「な、なんでだぁぁぁ!?」

 

女性は腕を広げて一刀を捕まえようとした。

伴侶とする為に。

 

路地へと逃げ込んだ一刀。

 

「はぁ、はぁ、なんなんだ?この街は」

 

すると逃げ込んだ路地で一刀の後ろから男連中が近寄ってきていた。

 

「!?……びっくりした。また女性かと思った。すみません。追われてるんです。助けてください」

「……」

 

男たちは一刀を無言で睨みつけている。

その威圧感は、一刀が怯えるほどであった。

 

「え~っと……急用を思い出したのでこれで失礼します!」

 

一刀はその場を立ち去ろうとしたが、男に肩を掴まれた。

 

「やっちまえぇぇぇ!!」

「なんでじゃぁぁぁぁ!!」

 

一刀は男たちに殴られそうになり、路地から飛び出した。

しかし、それは間違いだったとすぐに気付いた。

飛び出したところには女性たちが待ち構えていたのだ。

一刀はこのままだと捕まり、どっちに転んでも良いことは無いと考え、屋根へと飛ぶとそのまま逃げる。それを追いかける街の男性衆に女性衆。

そんな光景を城壁の上で眺めている3つの影。

 

「ふふふ。あれが貴女たちが言っていた男ね?」

「はい。名は北郷一刀と言います。ただ、字と真名がありませんが、一刀が真名に当たると言っていますので、気を付けてください華琳様」

「そう。字と真名が無いなんてね……これは管輅の占いも馬鹿には出来ないかもしれないわね」

「管輅ですか?」

「そうよ。私はあの男こそ、管輅の占いで言われていた天の御遣いなのではと思っているわ」

「!?……そうですか。やはり一刀が……」

「まだ決めつけては駄目よ。まだ確信は無いのだから。でもあの着ている物に、あの身のこなし。それに春蘭と戦った時に使っていたという武器。それらを総合するとあの男が天の御遣いだと私は思えて仕方がないの。だからあの男を捕まえたら私が直接聞いてあげる。それでもし答えなくてもあの村へ兵を派遣し、あの男のことを調べさせるわ。村人になら何かを話しているかもしれないもの。まぁ、今日貴女たちが聞いてくれるのならそんなことはしないのだけれどね」

 

秋蘭は華琳がどうやって聞くのか不安になりながらも村人に追われる一刀を見ていた。

 

 

 

「ところで秋蘭?」

「はい」

「さっきから春蘭の姿が見えないのだけれど……」

「……あそこに」

 

秋蘭が指差した方向には

 

「待て一刀ぉぉぉ!!」

「えぇぇ~!?なんで春蘭が!?」

 

秋蘭が指差した方向を見ると、村人と一緒になって一刀を追いかけている春蘭の姿があった。

 

「はぁ~……」

 

溜息を吐きながら頭に手をあてる華琳。

 

「恐らく村人に追われる一刀を見ていて取られるのでは?とでも思ったのでしょう」

「そう……可愛いのだけれど、なんであの子はいつも……はぁ~」

「姉者は一刀に惚れていますからな」

「あら、秋蘭は違うのかしら?」

「ふふふ。もちろん、私も惚れていますよ」

「嬉しいのやら悲しいのやら、何やら複雑ね」

「それでも我らは華琳様の元を去りはしませぬよ」

「知ってるわよ。貴女たち無しで私の覇道は完成しないもの」

「ありがたき幸せ」

 

 

その後村人は疲れてバタバタと倒れてゆき、残るは一刀と春蘭だけとなったが、そこへ秋蘭が来て、2人を連れて城へと向かった。

この時の春蘭は実に悔しげだったと、それがまた可愛かったと、のちに秋蘭は語る。

 

 

「はじめましてね。私は陳留の太守、曹猛徳よ」

「お初にお目にかかります。私は北郷一刀といいます。字と真名がありません。あえて言うならば、一刀がその真名にあたるかと思います。好きな呼び方で呼んでください」

「いきなり真名を預けるとはね。どういうつもりなのかしら?」

「どういうつもりとは?私は正直に事実を述べたまでのこと。それに曹操様は善政を敷き、民に愛されております。なので真名を預けたまでのこと」

「そう。ところでなぜ私の名を知っているのかしら?私はまだ名を言ってはいないわよ?」

 

試すかのように、見透かしているかのように話し、問いかけてくる華琳。

 

「これは申し訳ありません。以前旅の途中で曹操様の名を聞いたことがあり、それで口から出てしまいました」

「そう……。そうくるのね。まぁいいわ。あなたを呼んだのは、そこの2人があなたに会いたがっていたから。それに、私も興味が湧いたのよ。春蘭を倒す男がどのような男で、2人が惚れた男がどのような男なのかがね」

 

一刀は驚いた。

主に2人が一刀に惚れているということにだ。

一刀は2人から少なからず好意を寄せられているとは思っていたが、2人に惚れられていることは確信していなかった。自分の自惚れであったのかもしれないから。

それが今確信に変わった。

2人を見ると顔を紅くしながらもこちらを見て頷いてくれたのだ。

 

「そうですか。それで私は曹操様から見てどう映りましたか?」

「そうね。未だにあなたが春蘭に勝ったという事実は認められないわ。でも春蘭は良くも悪くも嘘をつけるような子じゃないわ」

 

春蘭は自分の主に褒められたと勘違いをして、「華琳様ぁ~」と言っている。

それに対して華琳は呆れながらも嬉しそうにしている。

 

「……それに、あなたは意外と頭がいいみたいね。春蘭と秋蘭をあなたにあげるのは無理だけど、私に仕えるというのであれば一緒にいられるわよ?」

 

華琳の言葉に一刀は驚いていた。

一刀だけでは無い。

春蘭に秋蘭、荀彧も驚いていた。

 

「おれは「私は反対です!!」……」

 

一刀が何か言おうとすると、そこに荀彧が割って入り反対した。

 

「あら?なぜかしら桂花」

「はっ。こいつは春蘭に勝ったとしても、それは1対1の仕合で。実際の戦になれば武もそうでしょうが、まずは数がものを言い、更には将としての統率力が無ければ戦場では蟻ほどの役にも立ちません。ましてや華琳様の覇道に男など必要ありません。武は夏侯姉妹が、知は私が支えましょう。このような凡人に頼る必要もございません」

(もの凄い言われようだな……)

「……抑えろ姉者」

「しかし秋蘭!私はここまでし、一刀が馬鹿にされるのを我慢出来るはずもない!!」

「私も我慢しているのだ。今ここで暴れれば、華琳様にも、一刀にも迷惑がかかる!」

「ぐぅぅぅ!」

 

春蘭は自分の武を鍛えてくれた一刀を馬鹿にされて怒っていた。

それだけでは無く、自分が初めて愛した、初めて胸が高鳴る感覚を教えてくれた男である一刀を馬鹿にされたのだ。

それはもちろん、秋蘭も怒っていた。だが、ここで春蘭が暴れてしまえば荀彧の命が危ないし、そうなったら軍令として春蘭が処刑されてしまうかもしれないし、一刀にも何かしらの罰が与えられるかもしれない。それを分かっていたからこそ秋蘭は我慢していた。

 

「……桂花」

「はっ!」

「あなたが言っていることも理解できるわ。でも、それだけが理由じゃないでしょう?」

「うっ……」

「あなたは男が嫌い。その理由を私は知っている、でもこういった場で私情を持ちこむのは頂けないわ。春蘭と秋蘭が私に会わせたい男がいると言ってきた時には驚いたわ。それは見てみたいと思ったわよ。でもね、それだけでここへ呼ぶわけないでしょ?春蘭が仕合で負けたというから呼んだのよ。その武が私の目指す覇道をより近づけるのではないかと思ってね。桂花、あなたは私の覇道が近づくのを喜んでくれないのかしら?」

「いえ!そんなことはありません!!私は誰よりも華琳様の目的成就を心から願っています。しかし、それでも私はこの男にその一旦を担うだけの実力があるのか分かりません」

「ならば桂花。あなたが自分自身の目で確認なさい。今度文官を新たに募集するんだったわよね?だったらそこに一刀を参加させなさい」

「はっ!」

「そういうことだから、貴方には後日この子が出す試験を受けてもらうわ」

「おれはまだここに士官するつもりはない。だが、今のおれがどこまで出来るのか知りたいし、何よりもあの曹猛徳の頼みだからな」

「ふふふ。そう。じゃあ、楽しみにしているわ。桂花。あなたはこの後私の部屋に来なさい。私情を挟んだ罰を与えなくてわね。たっぷり可愛がってあげるわ」

「華琳様ぁ~///」

「ここは百合の国か……」

 

 

 

「かじゅと。ここに仕官はしにゃいのか?」

 

ここは春蘭の部屋だ。華琳が気を利かせてくれたようで、お酒なども用意されていた。

そして今に至る。

 

「もう酔ったのか春蘭?村を出る時も言ったけどさ、おれは見聞を広める為に大陸を周ってみたいんだ」

「それは今で無ければならないのか?」

「たぶん今じゃなきゃ駄目なんだと思う。なぜって聞かれても明確な理由はないけど、思い立ったが吉日とも言うから。だからおれはこれからも旅をする。そして旅ももういいかなって思ったらどこに仕官するか決める」

「ここじゃ駄目なのか?」

「旅の中で色んな人に会うと思う。その中でこの人!って直感が働いたらその人のところにいこうかって思ってる。でも誰もいなければそのまま流浪の身として大陸を旅し続けるのもありかな」

「師匠がいないと寂しいにょらぁぁぁ」

 

春蘭はおれの膝の上にいて、対面しながら泣いていた。

それにしてもかなり酔ってるな。猫になってるぞ?

なぜ膝の上にいるかって?

それは春蘭が、飲み始めて少し立ってきたら「なでなでしる」と言いだして膝の上を陣取ったのだ。

 

「春蘭……」

「本音を言えば、私もいつまでもここにいてもらいたい。しかし、一刀には一刀のやりたい事をやってもらいたいと願う自分もいる」

「秋蘭……」

「一刀、玉座の間で華琳様が言っていたことは覚えているか?」

「あぁ……」

「そうか。私と姉者は一刀、お前のことが好きだ。この前あの娘と接吻をした時、どうしようもない程に胸が痛んだよ。こんな痛みは味わったことがない」

「う、う、うぐ、かじゅとは、私たちが、嫌いにゃにょか?」

「そんなことないさ。これ以上ない程に大好きだ!!でも、おれは優と……」

 

春蘭が泣きながら一刀に聞いてきた。一刀はそんな春蘭を愛おしく想い、強く抱きしめた。しかし、一刀は優に気持ちに答えると言ったのだ。

 

「一刀が心配しているのはあの娘と接吻したから責任を取らなければいけないとでも思っているのだろう?気持ちに答えるとも言っていたしな」

「そうだな。おれは優には世話になったし、それにおれは優を嫌いじゃない。むしろ好きだよ。でも、おれは春蘭と秋蘭も好きだ。だからおれはどうしたらいいのか分からない!!」

「一刀、お前は難しく考えすぎではないか?英雄は色を好む。一刀のような男には多くの女が惚れるだろうな。かく言う私たちもその女たちの1人だがな」

「へっ?」

「?ここでは普通のことであろう?それとも一刀のところは違うのか?」

「そっか……ここは後漢だったな」

「ん?なんだ?」

「いや、何でもないよ。おれのところは違ったな。昔はそうだったんだけど、今は違うよ」

「……一刀がどこから来たのか興味が尽きぬところなのだがな。しかし一刀、膝の上の猫が虎になっておるぞ?」

「え?虎?」

 

一刀は膝の上の猫、もとい春蘭を見た。

すると、春蘭は「がるるるるる」と今にも噛みつきそうな勢いで一刀を睨み、一刀の上から降りると、部屋の隅っこへと行ってしまった。

 

「え~っと……どうゆうこと?」

「おそらく一刀が私とばから喋っていて構ってもらえなくて寂しかったのだろうな。だいたい、あんな風に酔って猫になる姉者は華琳様の前でしか見たことがない」

「そうなの?」

「よほど一刀が好きなのだろうな。まぁ、私も負けないがな。ふふふ」

「それは嬉しい限りだよ。でもまずはあの虎をなんとかしないとな」

「私では無理だな。一刀、頼んだぞ」

「おれかよ!?」

 

一刀は嫌々ながらも、春蘭がこのままでは話も出来ないと、春蘭の機嫌を直す為に近寄って行った。

 

「フシャァァァ!」

「うわぁ!」

 

虎化した春蘭は一刀を引っ掻くようにして腕を振るう。

危うく避けられたが、当たっていれば深手を負っていたのは間違いない程の一撃だった。

 

「危ないなぁ。なぁ、春蘭。おれが悪かったよ。こっちに来ておれの相手をしてくれないかな?」

「ふんだ!」

 

春蘭はだいぶ御立腹のようである。

 

「秋蘭……」

「仕方ないな。一刀、ここに来てくれないか?」

 

秋蘭に言われるがまま、ベッドの上に腰をかける一刀。

 

「なぁ、来たはいいけどどうす……んぅ!?」

「ん……んぅ……はぁ……接吻とはこんなに満ち足りるものなのだな」

「な、何してるんだよ!?」

「好いた相手に接吻しただけだが?」

「そ、そうか」

 

開き直って話してくる秋蘭に何も言い返せない一刀。

元々2人は一刀が好きであるとすでに公言しているし、一刀も2人が好きである。

そんな2人を部屋の隅で見ていた虎は、涙を溢れさせながら茫然としていた。

 

「しゅ、春蘭!?」

「あ、姉者!?」

「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」

 

春蘭は大声で泣いてしまった。

まさかここまでとは思っていなかった秋蘭と一刀は焦った。

 

「すまなかった姉者!」

「ごめんな春蘭!」

 

謝るが一向に泣きやまない春蘭

どうしたものかと思案に耽る2人が行き付いたのは、一刀があやすこと。

 

「春蘭」

「かじゅとにゃんか大嫌いにゃにょらぁぁぁぁ」

「春蘭がおれを嫌っても、おれは春蘭を嫌いにならないし、いつまでも好きでいてやる」

 

一刀は春蘭を抱き締め、頭を撫でながらそう言った。

すると、春蘭は泣きやみ、一刀を抱き締めて、「ふにゃぁ~」となっていた。

 

「春蘭」

「にゃんら?んんぅ!?」

「ん、ちゅぷ……ぴちゅ……んぅ……はぁ……どうだ?」

「かじゅと~///もっと、もっとしてほしいのら~///」

 

その後、春蘭は一刀とのキスを何度も何度も繰り返し行った。

 

「ふふふ。このような姉者は華琳様の前でしか見たことがないな」

「秋蘭、この世界が一夫多妻制だと言うのなら、おれはお互いに愛し愛された人を幸せにするよ。だから、おいで秋蘭」

「あぁ。それでいいのだ一刀。私もお前のことを愛している」

「かじゅと~。わらひもおみゃえのことをあいちてるぞ~」

「そうかそうか。おれも2人を愛してるからな」

 

そして3人は想いを確かめ合うように激しく乱れた。

 

「ふ~……」

「ふふふ。どうした?」

「いや、初めてだったから疲れちゃった。秋蘭は大丈夫?」

「私なら大丈夫だ。姉者もこの寝顔を見る限りだと大丈夫そうだな」

「zzz…」

「春蘭は寝ちゃったか」

 

右をむけば春蘭が気持ちよさそうに寝息を立てている。

左からは秋蘭が

 

「姉者は8回もしたからな」

「どうした?不満か?」

「不満じゃないと言えば嘘になるかな」

「そうか。ならばこのまま再開といこうじゃないか」

「もっと私を愛してくれ、一刀」

 

そして秋蘭と一刀は隣で春蘭が寝ている中、再び交わった。

 

「かじゅと~、だいしゅきだ~……むにゃむにゃ……」

 

 

あとがき

 

6ヶ月間という長い間投稿出来ずに申し訳ありませんでした。

今やっている仕事の報告書だとか、発表会でのレポート作りが大変だったことがあり、中々投稿出来ませんでした。

今回投稿しましたが、黄巾党との戦闘シーンに限っては、納得がいっていませんが自分の実力ではこれが限界です。

申し訳ありません。

それと、前回まではセリフの前に人名を入れていました。

しかし、今回からは人名を無しにしてみました。

なぜならこっちの方が読みやすいと思ったからです。

どうでしょうか?

私は読みやすいと思ったのですが皆さんはどうでしょうか?

意見をもらえたらと思います。

 

それでは第6話でお会いしましょう。

 

 


 
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