No.390170 真・恋姫†無双 異伝 「伏龍は再び天高く舞う」序章ノ五2012-03-11 15:36:02 投稿 / 全8ページ 総閲覧数:10166 閲覧ユーザー数:7858 |
「どうした、一刀!もう終わりか!?」
「何の、まだまだ!もう一回!」
あの日以来、毎日俺はじいちゃんに稽古をつけてもらっている。
稽古自体俺からお願いしたことでもあるので問題はないのだが・・・
「今日はここまでじゃ、もうお前は足腰がいうことを利かぬようだしな」
「・・・ありがとうございました」
「良く鍛えた後は良く休めよ!はっはっはっはっは!」
・・・あれだけの稽古の後で息一つ切らしていないあのじいさんの
身体の構造はどうなっているのだろうか?
「ご主人様、大丈夫ですか?・・・はい、お茶です」
「ありがとう、大丈夫だ・・・と言いたいところではあるけど膝がガクガクだよ。
それより朱里の方こそどうなんだ?毎日ばあちゃんから『六韜』を習っているんだろう?」
「私は大丈夫です。むしろ毎日楽しい位ですから♪」
・・・すごいな。見た目だけだと忘れそうになるけどやっぱり諸葛孔明なだけは
あるってことか。
よし、俺も負けてられるか!と気合をこめて立ち上がろうとしたが、やはりまだ身体の
疲れは回復してなかったらしく・・・盛大に尻餅をついてしまった。
「はわわ!大丈夫ですか、ご主人様!」
「ははは・・・何とかね」
・・・・・・・・
「一刀の欠点は感情によって強さにムラがでることじゃ」
数日後、稽古が終わった後でじいちゃんは唐突に語り始めた。
「儂から一本とった時は怒りに身を任せていたといえ、速さも力も今より何倍も上じゃった。
あの強さを常時出せれば外史へ行ったとて十分やっていけるはずじゃ」
「・・・それは俺に『明鏡止水』の極意を掴めってことか?」
「はっはっは!そんなことは求めておらん。儂とてその極意に達するのに十数年の歳月を
費やした。それをこんなわずかの間に会得するなど天地がひっくり返ってもあり得ん。
儂が言いたいのはな、自らの意思で己の感情をコントロールするということじゃ」
「・・・? 普通自分の感情って自分でコントロールするんじゃないのか?」
「残念ながら、そんなことが出来る奴はあまりいない。自分じゃポーカーフェイスを
気取っているつもりでも、多かれ少なかれ心の中の感情が顔に出るものよ。別に感情
を持つことを否定するわけではないぞ。それに振り回されることなく平常心を保つ。
それが出来ればお前はもっと強くなる」
「そう簡単に言われても・・・『これは技術として修得できるものじゃ』・・・本当に?」
「ああ、儂が保証する。実を言えば儂も一刀と同じ年の頃に言われたことなのじゃ。
儂もあの頃は今のお前と同じく感情によって強さにムラが出ての。それを見かねたらしい
ある人から教わったんじゃよ」
「へえ、じいちゃんにもそんな時期があったんだ・・・その教えてくれた人って?」
「さあ、誰なのかは知らん。『通りすがりの釣り人じゃ』と言ってはいたが、釣り人というより
仙人みたいな風貌じゃった・・・実は初めて外史へ行ったときでの。今じゃ捜すこともできぬ」
「ふ~ん。・・・でも感情のコントロールは技術として修得できる、か。そういう風に考えた
こともなかったな」
「ま、修得できるといっても一朝一夕で出来ることではない。焦らぬことじゃ」
~その日の晩~
「・・・眠れない」
身体は疲れているはずなのに横になっても眠気がこない。・・・理由はわかっている。
稽古の後でじいちゃんに言われた『平常心を保つ』ということがどうやったらできる
ようになるのか、そればかりを考えてしまう。そんなことを考えている時点で無理
なんだろうけどね。
「仕方ない・・・ちょっと身体を動かしてこよう」
俺は素振りでもしようと道着に着替えて庭に出たら既に先客がいた。
「朱里?」
「あっ、ご主人様!どうされたのですか?こんな夜更けに」
「俺はちょっと寝付けないので素振りでもしようかと・・・朱里こそどうしたんだ?」
「私も寝付けなかったもので・・・」
「そうか、朱里も毎日大変だもんな。ばあちゃんの教えは厳しいか?」
「いいえ、おばあ様はお優しい方ですので。それに『六韜』はもう全て習い終わりました」
「ええっ!もう?・・・さすがは孔明ってところか」
「はわわ、おばあ様の教え方がすばらしかっただけです」
「・・・それにしては何か悩んでいるような感じがしたけど?」
「別に悩んでいたわけではないのです。ただ・・・」
「ただ?」
「おばあ様・・・張良様より受け継いだものの大きさについていけてない自分がいて・・・
本当に私がこれを受け継いで良かったのかと・・・」
「そんなにすごいものなの?その『六韜』って」
「すごいなんてものじゃないです!・・・って、ごめんなさい。内容はご主人様にも話せ
ないんです」
「いいんだよ。どうせ俺が聞いてもわからないしさ。でも、もし俺達がまた外史へ行った
時はそれを俺の為に生かしてくれるんだろ?」
「も、もちろんでしゅ!その為に受け継いだのですから」
本当に俺は幸せ者だよな・・・でも、朱里にばかり負担はかけられない。外史へ行った
時に俺が足手まといになるようでは意味がない。俺は、朱里を、その最高の笑顔を守る
為にならどんなことでも頑張るって決めたんだからな。・・・・・よし!
俺は竹刀を構えた。・・・あれ?何だか今までと感覚が違う。特に変わったことをした
わけではないのに、とても落ち着いてる・・・その感覚に戸惑いを感じながら竹刀を
振った。
ビュオン!!
・・・! 何かが違う。自分で振った剣なのに自分が振った感じがしない。実際剣の
スピードも力も今までの何倍もの手応えを感じる。
「はわわ、ご主人様すごいでしゅ」
「そこまでのものじゃないけどね。・・・ありがとう、朱里」
「はい?私何もしてないですけど・・・」
「側にいてくれてありがとうってことさ。さあ、もう寝るか。朱里も早く寝ないと朝起きれないぞ」
「はい♪」
「それじゃ、おやすみ・・・愛してるよ、朱里」
「はい、おやすみなさ・・・ええっ!?あの、その、私も、はわわわわ」
朱里は顔を真っ赤にしたまま混乱していた・・・ちょっと唐突すぎたかな?
・・・・・・・
~次の日~
「たぁ!」
「何の、まだまだ!」
昨日の晩のあの感覚を試してみたくて朝食の前にじいちゃんに稽古をお願いしたのだが・・・
「・・・ありがとうございました」
「はぁ、はぁ、ふふん。儂の勝ちじゃ」
・・・じいちゃんには手も足も出なかった。
「何があったのじゃ?たった一晩でここまでなるとは」
「昨日じいちゃんに教わったことを実践しただけだよ」
「・・・それはそう簡単に実践できるものではないのだが」
「まあ、朱里のおかげかな」
「ほう、そうか愛の力か」
「愛の・・・って、間違ってはいないな」
「よし、合格じゃ。あれだけの力が出せれば問題ないだろう」
「・・・でも、じいちゃんから一本とれてないけど」
「はっはっは!いくら強くなろうとも儂から一本とるなど百年はやいわ!この間のはご褒美にすぎんよ」
百年って・・・そこまで生きるつもりか?じいちゃんなら生きてそうだが。
「まだまだ儂には及ばんが、そんじょそこらの連中には引けをとらん位には強くなっとる、
安心せい。さあ、朝飯の時間じゃ」
・・・・・・・
「頼もうーー!」
朝食が終わってしばらくしてから玄関の方から大きな声が聞こえてきた。
「はわわ!何ですか、あれ」
「あら、天刀さん。久しぶりに来たみたいよ」
「確かに最近はめっきり減っておったが・・・」
「もしかして、道場破り?」
「ああ、・・・そうじゃ、一刀も来い」
じいちゃんに言われ一緒に玄関へ行くと、そこには剣道の道具を持った三十代半ば位の
大柄の男がいた。
「北郷 天刀殿とお見受けする。私は田中と申す全国を武者修行で渡り歩いている者。
高名なる北郷殿と一手お手合わせ願いたく参上した次第」
「ほう、今時にしては殊勝な心がけの御仁じゃの。良かろう。但し、ここにいる儂の孫に
勝ったらな」
「ええっ!ちょっ、待てってば」
「・・・北郷殿は私を馬鹿にしておいでか?」
「そのようなことはないぞ。儂の孫もなかなかの腕での。それに勝てるほどの腕である
ならば儂が手合わせしようと言っているだけじゃ・・・良いな、一刀も」
ううっ・・・田中さん俺のことものすごい睨んでる。しかし、この状況で断るわけにも
いかないし・・・
「わかりました。まずは俺・・・私がお相手させていただきます」
~道場にて~
「本当に良いのだな、少年。やめるなら今のうちだぞ。私はお主が生まれる前より剣に
生きてきた。ここで逃げても恥にはなるまい」
「・・・やると決めた以上は撤回はありません」
「手加減はしないぞ」
「望むところです」
防具をつけて田中さんと対峙する。
「それでは始め!」
審判役のじいちゃんの一声と共に田中さんはするどく踏み込んで来た・・・あれ?
何か変だな、するどいのはするどいがそんなに早くないぞ。
俺は田中さんの立て続けの攻撃を全てかわす。
この人は実は見掛け倒しなのか?・・・さっきから攻撃がゆっくりにしか見えない。
さらに隙だらけだ。今だって面打ちに来た大振りの剣をかわすと、どうぞ打って
くださいとばかりに胴ががら空きだ。
「胴っ!」
俺が竹刀を一閃するとあやまたず田中さんの胴に当たった。
「胴有り一本!それまで!」
じいちゃんの声が響くと同時に田中さんはその場に崩れ落ちる。
「田中さん!大丈夫ですか」
「・・・別にどこか怪我をしたわけではない。己の不見識に恥じただけです。
申しわけなかった、一刀殿。あなたが若年であることで見くびっていた。
さすがは天刀殿の御孫殿であられる。見事でございました」
田中さんはそれだけ言うと『修行のやり直しです』と去っていった。
「見事であった、一刀よ。あの田中殿とてかなりの腕前であったのにな」
「やっぱりあの人強かったんだな・・・」
「ああ、お前が勝ったのはお前の方が強かったからじゃ。本当に強くなった」
「でも、俺じいちゃんにはまったく・・・」
「それは儂の方がより強いからじゃ。気にするな、はっはっは」
・・・・・さりげなく自慢を入れてきやがった、このじじい・・・
「改めて言うが、合格じゃ、一刀よ。お前はもうあの刀を持つにふさわしい
人間になった。誇りに思って良いぞ」
・・・・・・・・・・
その日の夕方、俺は庭で佇んでいた。
「ご主人様?」
「朱里?どうした」
「いえ、ご主人様がさっきから庭でただ立っておられるように見えたので」
「ああ、正直俺が強くなったのが信じられない気持ちがあってね」
「私は初めて会った時からご主人様は強くてやさしい人だと思ってますよ・・・えっ?」
「ありがとう、朱里。・・・どうした?」
「あれ、あっちのお空のほうから何か飛んでくるような・・・」
「えっ?」
朱里の指差す方に目を向けると・・・
「うっふ~~~~~~~~ん!!」
何かあやしい物体が背筋が凍りつくような気味の悪い叫びと共に飛んできた。
「何だ、あれ?・・・って、もしかして・・・」
「やっぱりそうですよね・・・」
見忘れるわけがない。筋骨隆々たる体つきにピンクの紐パン一丁のあの姿は・・・
「「貂蝉(さん)?」」
どっか~~~ん!!
そして大音響と共に現れたのはやはり・・・
「どぅふふ!おひさしぶりねぇん、ご主人様、朱里ちゃん。美と愛の使者、
貂蝉ちゃんの参上よぉん♪」
「お前、本当にあの貂蝉なのか?」
「あら、失礼ねぇん。こんな極上の漢女が他にいるかしらぁん?」
「一刀、何かあったのか!さっきの音は・・・」
「じいちゃん!あの、えっと、この人は・・・」
「・・・お前、もしかして虞姫か!?」
「あらぁん、天刀様じゃない。おひさしぶりぃん」
「わわわ、本当に虞姫さん・・・」
「そうよぉん。樹里ちゃんも、おひさしぶりねぇん」
「「虞姫?」」
「何だ、お前達は初めてか?」
「ちがうのよぉん、天刀様。今、私は貂蝉って名乗っているのよぉん」
「「貂蝉?」」
「そうよぉん、私のあふれ出る美貌にとてもふさわしい名前でしょう?」
「じいちゃん達も知り合いなの?」
「知っているも何もこいつが前に言っていた『管理者』じゃ」
「「ええっ?」」
「しかし、虞姫、いや今は貂蝉だったか。お前が現れたのは・・・」
・・・・・・
「そうよぉん。ご主人様・・・一刀様と朱里ちゃんを新たな外史へ導く為よぉん」
続く・・・・・(と期待しておいてください)・・・
あとがき的なもの
意外に早く再会いたしました。mokiti1976-2010です。
今回ずっと????になっていた貂蝉さん登場です。
少々貂蝉さんの口調とかおかしいかもしれませんがそこはご容赦を。
さて、次回遂に二人は外史へ旅立つことになります。
(但し旅立つだけでまだ外史の方々と出会うわけではないですが)
それでは、次回序章ノ最終、六にてお会いできることを・・・
追伸 本当は一刀と朱里をあまりチートにするつもりはなかったのですが、
書いているうちにチートキャラになりつつあります・・・これからどうしよう。
Tweet |
|
|
64
|
2
|
追加するフォルダを選択
意外に早く出来ましたので、
序章ノ五、投稿です。
今回はずっと????になっていた人の登場です。
続きを表示