一刀たちが再会してしばらくたったある日、袁術の使者が一通の書簡を携えて館にやってきた。
書簡を受け取った雪蓮は、庭に皆を集めた………
「皆、袁術ちゃんからの書簡が届いたわ」
雪蓮は袁術からの書簡を皆に見せる………それは袁術からの雪蓮の召喚命令だった。
前の世界で孫呉独立への始まりだった、荊州で暴れている黄巾党の討伐。
その時がやってきたのだ。
「いよいよ始まるんだな」
一刀の言葉に皆黙って頷く。
「今度はどうするんだ?」
「現段階で分かっていることは、私たちの記憶と同じようだ。なら、前と同じで問題ないだろう」
一刀の質問に冥琳が答える。
「なら儂は出陣準備に取り掛かるかのぉ」
「私は輜重隊の準備をしておきますぅ♪」
「それじゃ私は袁術ちゃんの所に行ってくるわね」
「ええ。袁術との話に関してはあなたに任せるわ」
「了解!…あっ、そうだ…一刀!」
「なに?…“ちゅっ”…は…!?」
雪蓮は一刀の頬にキスをした。
「「「なっ(あっ)!!!」」」
突然の雪蓮の行動に、皆呆気にとられていた………
「ふふっ♪また後でね。あ・な・た♪」
そう言い残して、雪蓮は袁術の本城へ向かって行った。
「………………ちょっ!?」
「「「一刀(さん)っ!!!」」」
「はいっ!!!」
「どういうことか詳しく聞かせてもらいたいものじゃのぉ…」
「私も詳しく知りたいですねぇ…」
「いやっ!?あのっ!?………準備に取り掛かるんじゃぁ………」
「な~に、まだ時間なら大丈夫じゃ。じゃな、冥琳よ!」
「はい。それに………この前のことも含めて教えてもらおうか…」
「いっ!?あっ、あれはだな………」
「ほお、まだ何かあるようじゃのぉ…」
三人ともこめかみに青筋を浮かべながら、自分の武器を持ち、一刀に詰め寄る。
「ちょっ!?まっ!?………三人とも落ち着いてもらえるかな?」
「「「問答無用(です)っ!!!」」」
「ぎゃああああああぁぁぁぁぁぁ~~~~~~………………」
一刀の悲鳴が館中に響き渡っていた………
一方、袁術の本城に向かった雪蓮は城に着き、袁術と対面していた。
「うむうむ。よく来たのじゃ、孫策よ」
「で、袁術ちゃん。私を呼んだ用件ってのは何かしら?」
「うむ。今、荊州で暴れまわっておる黄巾党の本隊を討伐してもらいたいのじゃ」
「それならあなたたちで討伐したらいいじゃない」
「妾たちは分隊の方を討伐しに行くのじゃ」
「でも、今の私たちで本隊を討伐するのはかなり厳しいんだけど?…兵を貸してくれると言うのなら構わないけど」
「わかったのじゃ。七乃、孫策に兵を貸し与えてたも」
「はいは~い♪」
(あらっ!?ずいぶんあっさりね…)
「…それなら兵糧とかもかなりいるんだけど?」
「うむ。必要なものは七乃に言うてたも」
「(おかしいわね…)わかったわ。それじゃ張勲ちゃん、兵糧と軍資金をお願い出来るかしら?」
「はい♪城の外に用意させておきますね~♪」
(いったいどうなってるの?)
雪蓮はすんなりと話が進むことに疑問を抱いていた。
(一刀たちと合流したら皆に話した方が良さそうね)
とりあえず今はどうすることも出来ないので、雪蓮は皆と合流してから考えることにした。
「それじゃ私はもう行くわね」
「うむ。期待しておるのじゃ。………………すまぬが頼んだのじゃ………………」
「………………(えっ!?)」
袁術の最後の言葉は小声だったが、雪蓮の耳にしっかりと届いていた。
「………………美羽様………………さっ、美羽様。蜂蜜水の時間ですよ~♪」
「お~、そうなのじゃ。はよ妾に蜂蜜水を持ってまいるのじゃ」
「はいは~い♪わかりました~♪」
(…最後、確かに………それに一瞬だったけど二人の顔も………早く合流した方がいいわね)
雪蓮は城を出ると、袁術に貸してもらった兵たちを引き連れ、一刀たちとの合流場所へ向かった。
合流場所に到着した雪蓮は、すぐに一刀たちのもとへと向かった。
「たっだいま~♪」
「………………おかえり」
「あら?どうしたの、『北刀』?あなただけ戦が終わった後みたいにボロボロじゃない」
「………誰のせいだよ………」
「何のことかしら~♪」
「はぁ~。…もういいや。…それより、どうだったんだ?」
「あっ!そのことでちょっと話があるのよ。冥琳たちもこっちに来て」
「「「どうしたの(じゃ)(ですかぁ)?」」」
冥琳たちが一刀と雪蓮の傍に近寄る。
「何かあったのか?」
「実はね………」
雪蓮は袁術の城でのことを四人に説明した。
「いったいどういうことなのじゃ…」
「私にもわかんないのよねぇ…」
「ふむ。貂蝉殿は袁術たちもこっちに来ているとは言ってなかったはずだが…」
「そうですよねぇ…」
しばらく考え込んでいると、一刀が何か気が付いたのか声を出した。
「あっ、もしかして………」
「何かわかったの?」
「多分、だけど…」
「説明してくれるか?」
「うん。パラレルワールドのことはこの前話したよな?」
「ええ」
「多分…そういうことだと思う。俺達のいた外史と少し事情が違うのかもしれない…」
「なるほど。なら………雪蓮」
「なに?」
「この戦が終わったら、袁術に報告しに行くわね?」
「ええ」
「その時に少し探りを入れてみてもらえるかしら?」
「わかったわ!」
「この話をするのはその後の方がよさそうですねぇ♪」
「そうじゃの」
ひとまずこの話は後にして、黄巾党の本隊を目指すのであった。
しばらく軍を進めていると………
「孫策様!前方一里のところに黄巾党本隊とおぼしき部隊の陣地を発見しました!」
「ありがと。……さてっと、いよいよ始まるわね。…先鋒はもちろん私よね♪」
「ええ。祭殿は補佐をお願いします」
「心得た」
「私と『北刀』で左翼を、穏は右翼を率いてもらうわ」
「わかりましたぁ」
「え~~~!なんで『北刀』と冥琳が一緒なのよ~。私の傍でいいじゃない!ねぇ『北刀』?」
「あ~、ごめん。あきらめてくれ…(雪蓮が自分でまいた種なんだよな~…)」
「え~~~!祭~~~」
「すまぬが、儂も『北刀』に賛成じゃ。(今回は冥琳に持っていかれたが、次は儂が…)」
「穏~~~」
「あはは~。私も『北刀』さんに賛成ですう。(次は私が…)」
「う~~~!こうなったら大暴れしてやる~~~!!!」
実は雪蓮が袁術の城へ行ってる間に、冥琳たちから尋問を受けた一刀が事情を全て話した。
それを聞いた冥琳たちの間で、この戦で誰の傍に一刀を置いておくかで一騒動あったのだ…
なかなか決着がつかないので、一刀が三人に『じゃんけん』を教えた。
それにより冥琳が勝ったため、冥琳の傍に………ということであった。
「さて、それでは策殿。出陣の号令を」
「………了解!」
「勇敢なる孫家の兵たちよ!いよいよ我らの戦いを始める時が来た!」
「新しい呉のためにっ!!先王、孫文台の悲願を叶えるためにっ!」
「天に向かって高らかに歌い上げようでは無いか!誇り高き我らの勇と武を!」
「敵は無法無体に暴れる黄巾党!獣じみた賊共に、孫呉の力を見せつけよ!」
「剣を振るえっ!矢を放てっ!正義は我ら孫呉にあり!」
「全軍抜刀!突撃せよ!」
「うおおおぉぉぉぉぉぉ~~~~~~~っ!」
雄叫びをあげて孫呉の兵たちが黄巾党の群れへと突っ込んでいく。
戦場のいたる所で、剣や槍が激しくぶつかり合う音が響き渡る。
先頭に立って次々と黄巾党の賊共を討取っていく雪蓮の姿は鬼神のようであった。
「孫呉の兵たちよ!黄巾党の賊共に情けは無用!」
「奴らは無抵抗な民に悪逆非道の限りを尽くしてきた!」
「その身で持ってわからせよ!!」
「おおおおおぉぉぉぉぉ~~~~~っ!!」
雪蓮の檄に応えるように兵たちの士気も高まっていく。
「言わせておけば~~~~!!」
「遅いっ!!」
突っ込んできた黄巾党の兵を一瞬で切り捨てる。
「祭っ!こんな戦さっさと終わらせて『北刀』の傍に行くわよ!!」
「応っ!!」
戦場の様子は圧倒的だった…
「………なぁ、冥琳」
「なんだ?」
「これって………前よりすごくないか?」
「………ああ。まさかお前が私の傍にいるというだけで、ここまで雪蓮が暴れるとは………祭殿も………」
「はははは………」
しばらくして、前の外史と同じように黄巾党の陣地に火が放たれ、戦は終結していった…
戦が終わって合流した一刀たちは、袁術の居る荊州の本城へと向かって行った………
<座談会>
作者:いよいよ新たな外史が動き出しました。
一刀:いよいよだな。………ところで、なんか俺の扱い段々と酷くなってねえか?
作者:そんなことはないと思いますよ。
一刀:どうして?
作者:美女に取り合ってもらえるなんてうらやましい限りです!
一刀:それはお前が勝手に…
作者:おや?嬉しくないのですか?
一刀:いや、そりゃ嬉しいけど…
作者:ならいいじゃないですか。
一刀:なんか腑に落ちねえなぁ…
作者:そこは気にせずいきましょう。
一刀:はぁ~…もういいや。しかし、あの二人も変わってるんじゃ?
作者:それはまだ何とも…
一刀:今後の展開次第ってとこか。
作者:はい。お時間ですので、この辺で失礼します。
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この作品は真・恋姫✝無双の二次創作となっております。
第五話となりますが、いよいよ新たな外史が動き始めます。
そして、今回はあのお二人も登場します。
今後の物語にどのように関わってくるのか、ご期待いただければ嬉しい限りです。
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