「……んっ…う~~~~~~ん………」
朝の光が部屋に差し込んできて、寝台で眠っていた男性『北郷一刀』が目を覚ました。
「………あれっ?………ここは…いったい………」
まだ眠たいのか、半分開いた目をこすりながら、ゆっくりと『昨日』の自分を思い出していく………
「…たしか、昨日は皆で宴を開いて…その後俺は雪蓮と冥琳の………「…すぅ~、すぅ~…」…んっ?」
思いを巡らせているときに、不意に耳元で規則正しい寝息が聞こえてきたのでそちらに顔を向けた。
「……………なっ!?……………」
傍で眠っている人の顔を見た瞬間、一刀はガバッと起き上った。
「………しぇれ……ん………」
呟きながら、ゆっくりと手を伸ばしまだ眠っている雪蓮の頭を優しく撫でる。
「………んんっ………」
その仕草に反応して目が覚めたのか、雪蓮がゆっくりと顔を上げる。
「…しぇれ…ん…、ホントに…雪蓮…なの…か?」
「…か…ず…と…?」
「そうだよ」
雪蓮はずっと不安だった…、目が覚めたら最初に自分の真名を呼んでほしい…そう思っていた…。だが、不安が大きすぎた…。そのため、自分の真名が呼ばれたことで思い描いていた人の名前を呟いた。でもその不安な思いはすべて吹き飛んだ…。自分の呟きに優しい頬笑みで返事をしてくれた一刀の笑顔を…、あの戦いのときにもう二度と見ることとができないんだ…と思った、一刀の優しい笑顔を見たから。
その瞬間、雪蓮は…気が付いて、一刀を見つけてからの思いの全てが堰を切ったように溢れ出した。
「…うっ…ううっ…うわああああああぁぁぁぁぁぁぁん、かずとっ、かずとぉ~~~~~~」
雪蓮の思いはもう止まらなかった。一刀に抱きついて一刀の胸の上で子供のように泣きじゃくっていた。
一刀はそんな雪蓮を優しく抱きしめて、雪蓮が泣き止むまで優しく背中を撫で続けた。
一頻り泣いたあと、雪蓮は涙をぬぐいながら一刀の胸から顔をそっと離し、一刀の顔を見上げた。
「ふふっ♪なんだか恥ずかしいところを見られちゃったなぁ」
「そう?俺は嬉しかったけどなぁ。雪蓮の可愛らしい一面が見れてさ」
「………一刀………」
「………雪蓮………」
ゆっくりと二人の顔が近付いていく………
「………コホンッ………」
あともう少しで唇がふれあうというところで咳払いが聞こえ、ハッとなって二人は音のしたほうへ顔を向ける。
「「冥琳っ!!!」」
見事なぐらい綺麗に一刀と雪蓮、二人の声が重なった。
冥琳が急に現れて混乱している一刀をよそに雪蓮が話し掛ける。
「…んもぉ~、冥琳のばかぁ~、せっかくいいところだったのにぃ~」
可愛らしく頬を膨らまして拗ねたような顔をした雪蓮が冥琳を見る。
「…はぁ。雪蓮、そんな顔をしてもなんとも思わないわよ」
それを聞いた雪蓮は普段の表情に戻り、冥琳に問いかける。
「……で、冥琳はいつからそこにいたわけ?」
「…たしか、北郷が「ホントに雪蓮…なのか?」って言った辺りだったかしら?」
(…なによそれっ!ほとんど最初っからじゃない!)
冥琳の言葉を聞いて若干不機嫌そうになるが、自分がしていたことを思い出すと、顔から火が出そうになるほど真っ赤になって俯いてしまった。
(…フフッ。まさか雪蓮がああなってしまうとは。よっぽど嬉しかったようね)
「…さて、からかうのはこれぐらいにして、さっきの雪蓮の状態と私の真名を呼んだことから、私たちの知っている北郷ということで間違いないかしら?」
そう言って雪蓮の顔を見る。
「…む~。なんか最初に引っ掛かる言葉があったんだけどぉ~。…まぁいいわ。そうね♪間違いなく一刀よ♪」
それを聞いて冥琳は一刀に近寄り、床に両膝をついて一刀の顔を正面から見つめる。
「………冥琳………」
「………北郷………」
余計な言葉など要らなかった。
………冥琳も不安だったのだ…。部屋に戻って寝台に横になった途端、言い表せない不安に押し殺されそうになってしまった。それは一人になったせいなのか分からないが、これがホントは、妖の類に幻を見せられているのか?もしくは、自分が死ぬ間際に見ている夢であって現実ではないのではないか?寝てしまえば、夢から覚めて自分は死んでしまうのではないのか?そう考えると寝るのが怖くなってしまい眠れなくなってしまった…。
そのため、今の冥琳の顔には眼の下にうっすらとクマが出来てしまっていた。
だが、今はもうそんなことどうでもよかった。冥琳もまた、一刀の…優しい笑顔を見たから…。
「…ほん…ごう……かず…と…、か…ず…と…、うっ…ああっ、うわあああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ………」
冥琳もまた一刀の胸に顔を埋めて泣きじゃくった。…さきほどの雪蓮と同じように………
一刀もそんな冥琳を優しく抱きしめていた。
そんな二人の光景を雪蓮は優しい瞳で見つめていた………。
しばらくして泣きやんだ冥琳が一刀の胸から顔を上げようとした時、不意に扉のほうから声が掛けられる。
「…ほぉ~。あの冥琳がここまでおなごになるとはのぉ~。さすが北郷といったところかのぉ。なぁ、そう思わぬか、穏よ」
「あははっ♪そうですねぇ~。穏もこんな冥琳さま見たことありませんよぉ~♪」
「「…なっ!祭殿っ(祭さんっ)!穏まで!!」」
またしても綺麗に今度は一刀と冥琳の声が重なった。
冥琳は二人を見てさきほどのことが皆に見られていたと理解すると、一瞬で真っ赤になりその場から逃げ出そうとした………が、そうはさせてもらえなかった。雪蓮が冥琳に抱きついていたのであった。
「…なっ!…ちょっ…!雪蓮っ、放してっ!!」
「や~だも~ん♪今の冥琳ってばすっごくかわいいんだも~ん♪」
「…はぁ…、雪蓮も冥琳を放してあげなよ。それに冥琳も二人の顔をよく見てみたら?」
そう言われて冥琳は恐る恐る顔をあげて二人を見た。そこには、からかってニヤニヤしているのではなく、心から嬉しそうに優しい笑みを浮かべて涙を流している二人がいた。
「祭殿…、穏…」
「…ほらっ。二人もすっごく嬉しかったんだからさ♪」
「ええっ。そうね。ありがとう…北郷」
「あれぇ~?冥琳ってばさっき一刀って、名前で呼んでなかったかしら?」
「…なっ!?…それはだな、そのぉ………………雪蓮、それはさっきの仕返しのつもりか?」
「さぁ~?私はしーらないっと♪」
「…はぁ~。雪蓮、もうそのぐらいにしといて。それに冥琳、俺は冥琳に名前で呼んでもらえて、めちゃくちゃ嬉しかったんだから」
「それはどういうことだ?」
「真名ってのは自分だけの大切な名前だろ。それと同じで一刀ってのは俺だけの大切な名前だ。こっちでは、北郷ってのは珍しいみたいだからいないかもしれない。でも、俺がいた世界・天の国では北郷って姓を持つ人は何百人・何千人と存在するんだ。冥琳の周や雪蓮の孫みたいにね。だから大切な人には北郷ではなく出来れば一刀って呼んでもらいたい。」
「そういうことか。…わかった。ならこれからは私も…その……一刀……と呼ぶことにする。」
「うん。ありがとう。冥琳」
一刀は笑顔で冥琳にお礼を言う。
その笑顔を見て冥琳は再び真っ赤になってしまった。ただ、冥琳だけでなく、雪蓮・祭・穏も、その笑顔を見て真っ赤になってしまっていたが…。
((((…この笑顔は、反則ね(じゃな)(ですねぇ)…))))
四人とも同じ事を思っていた。お互いの顔を見ると自然と笑いがこぼれだした。
「???なんだ、いったい???」
只一人、一刀をのぞいてだったが………。
「ふむ。それじゃ一刀も目が覚めた「えっ!?祭さん?」なんじゃ!人の話を途中でさえぎりおって」
「ごめん。でも、祭さん今…一刀って?」
それには、祭以外全員が同じことを思った。
「なんじゃ。冥琳には一刀と呼ばせておいて、儂はダメじゃというのか?」
「ううん。すっげぇ嬉しいよ。ただいきなりで吃驚しただけで…ありがとう、祭さん」
「……うっ!……//////」
「あ~♪祭が照れてる~♪」
「ええいっ、それよりも今は全員揃っとることじゃし、改めて現状を確認するのが先じゃ!」
「それについては私が説明してあげるわよん♪」
「「「「「誰っ(誰じゃっ)(誰ですかぁ)!?」」」」」
全員一斉に声がした方へと振り返った。
そこには丸坊主だが、何故かもみあげだけ伸ばして三つ編みにし、筋肉ムキムキでビキニパンツを穿いたあまりにも怪しすぎる人物が立っていた。
「あらぁん♪こっちのご主人様も・い・い・お・と・こ・だわん♪」
「「「「ご主人様っ!?」」」」
今度は一刀に視線が集まる。
「…いやっ!ちょっと待て!俺はこんな変態知らねえぞっ!」
「ま~変態だなんて失礼しちゃうわねん。私の名前は『貂蝉』って言うのよん♪外史の管理者の一人よん♪」
「(貂蝉って!?それにご主人様?…考えるのはやめた方がよさそうだな)外史の管理者ってのはなんなんだ?」
皆を代表して一刀が質問する。
「それはねん、ご主人様のいた世界、こっちでは天の国って言った方がいいかしらん。天の国の世界のことを正史として、天の国の過去の歴史に沿った形の世界のことを外史と呼んでいるのよん。正史には様々な外史が存在するのよん。外史の管理者っていうのわぁん、外史で起きた様々な出来事を記録する者のことを言うのよん♪」
「外史ってのはパラレルワールドみたいなものか?」
「そうねぇん、少し違うけどそんな感じかしらぁん♪」
「それで、今の状況とその事がどう関係するというんだ?」
「単刀直入に言うと今この世界はご主人様達がいた世界とは違う世界、つまり別の外史っていうことになるわねん♪本来ならばぁ、この外史は存在するはずがないのよねぇん。でもぉ、ご主人様のぉ孫策ちゃんと周瑜ちゃん、二人に会いたいという思いが強すぎてぇ、本来なら生まれるはずのないこの外史が誕生しちゃったのよぉん♪」
後半の話を聞いて、雪蓮と冥琳は嬉しくなり優しい瞳で一刀を見つめていた。そんな二人を見て一刀は恥ずかしくて赤くなってしまった。対して祭と穏は若干不機嫌になる。
そんな祭と穏を見て、貂蝉は話しを続ける。
「ご主人様が願ったことってなにかしらん?」
「俺が願ったこと………俺は…たしかに雪蓮と冥琳にもう一度会いたいと願った。でもそれは、雪蓮・冥琳・祭さん・穏・蓮華・思春・明命・亞莎・小蓮…皆が傍にいる…笑顔でいられること…」
そんな一刀の言葉を聞いて祭と穏は宴の時のことを思い出していた。
((たしかにあの時の一刀(さん)は………))
「二人に会いたいというだけなら、ご主人様だけこの外史に飛ばされていたはずなのよねん」
「「「「「えっ!?」」」」」
「皆が傍にいる…皆傍にいてほしいというご主人様の思いに、皆引っ張られてきちゃったのよねん♪」
「…それじゃあ…今のこの状態ってのは…俺のせい…なのか…」
「それは違うわっ!!!」
一刀の自分を責めるような言い方に雪蓮が声をあげる。
「私はあの戦いのとき、もう二度と一刀にこうやって触れることができないんだって思った…」
そう言って雪蓮は一刀の手に自分の手を重ねる。
「…でも、一刀がそうやって願ってくれたからこそ私はまた一刀に出会えた…。一刀に触れることができる。一刀とおしゃべりができる。一刀の傍にいられる。それに一刀と過ごした大切な思い出を覚えたままね。だから………だからそんな悲しいこと言わないで!!」
「雪蓮………」
「雪蓮の言うとおりね。…一刀、私ももう一度お前に出会えるとは思ってなかったわ。でもこうして再び出会うことができた、それがすごく嬉しい。だが、お前がそんなことを言ってしまっては、私はどうすれば良いと言うのだ!?」
「冥琳………」
「そうじゃ。一刀よ、お主がそうやって願ってくれたからこそ、儂や穏は再び策殿と冥琳に出会えたのだからな」
「そうですよぉ~~~♪」
「祭さん、穏………皆…ごめん。俺が間違ってたよ」
「ううん。わかってもらえればそれでいいの」
そう言って、雪蓮は一刀を優しく抱きしめる。
「いやっ!あのっ、ちょっ…雪蓮さん!?」
「…雪蓮、抜け駆けは駄目よっ!!!」
「は~~~い♪」
冥琳に言われて雪蓮が素直に一刀から離れる。
(素直に言うことを聞く雪蓮もかわいいな~♪)
と一刀は一人違うことを思っていたりする。
「で、話を戻すわねん♪さっき本来この外史は存在するはずがないって言ったわよねん。それは少し違って、正史に沿った形で外史は存在している。だからぁ、このまま普通に時が進めば正史に近づいていくのよねん♪」
「えっ………それってつまり………」
「ご主人様の考えてるとおりよん♪」
一刀が考えていたこと…それは、このままいけば再び雪蓮と冥琳がいなくなってしまうということだった。
「ただしぃ、この外史は半分は正史から独立した世界に成り立っているのよん♪だ・か・らぁん………」
「………そうかっ!そういうことなんだな。貂蝉!!」
「さっすがご主人様ねぇん♪私が言いたいことを理解してくれるなんて感激だわん♪」
「ねぇ一刀、どういうことなの?」
「んっ!?それはまた改めて説明するよ」
「で、貂蝉、俺がこの世界に皆を連れてきたってことは蓮華たちも…」
「もちろん彼女たちもこの世界に来ているわよん♪」
「なら、蓮華たちにもちゃんと説明した方がいいな」
「それなら私が説明してきてあげるわよん♪」
「そうしてもらえると助かるよ。雪蓮もそれでいいだろ?」
「う~ん、でもあの子たちのことだからきっと………そうだっ!私が書簡を書くからそれを持っていって渡してから説明してもらえるかしら?」
「その方が私も助かるわねん♪」
それを聞いて雪蓮は穏に筆と新しい書簡を持ってきてもらい、机に向かって書き始める。
「ねぇ、皆ちょっと寄ってくれる?あっ、一刀はダメよっ♪」
「なんで?蓮華たちに書いているんだから俺もいいんじゃないのか?」
「ダ~~~メッ♪」
そう言われてしぶしぶ一刀は離れたところで皆の様子を見ていた。
そして一刀に聞こえないように小声で話し始める。
「ねぇねぇ、こうするのってどうかな?でね、こうしてこうしてこういうことにするの♪」
雪蓮は書簡を書きながらその内容について冥琳たちに説明する。
「ほぉ~。それはなかなか面白そうじゃのぉ」
「でしょでしょ♪さっすが祭!わかってるぅ~♪」
「ふむ、ならこういう風にした方が良いのでは?」
「お~!冥琳がのってきた~!」
「冥琳さま~、止めなくていいんですか~~?」
「私も一度はこの命尽きたと思った身。なら今度は悔いのないように楽しませてもらうわ」
「それじゃぁ穏も楽しませてもらいますぅ~~~~」
「あらぁん、その内容なら私もちょ~っと説明の仕方を変えなきゃならないみたいねぇん♪」
そうやっていろいろと話し合いながら、この場にいない蓮華たちに宛てた書簡を書いていく。
「できたっ!それじゃ貂蝉、これを持ってあの子たちへの説明お願いね♪」
「了解よん♪」
そう返事をして、貂蝉が部屋から出て行った。
「なぁ雪蓮、いったい書簡に何て書いたんだ?」
「ひ・み・つ♪」
なんとなく嫌な予感しかしない一刀だったがそれ以上聞いても無駄だと思い諦めた。
(………はぁ~~~。またどうせ俺が苦労することになるんだろうな………)
<座談会>
作者:………やってしまった………
一刀:どうしたんだいきなり?
作者:試行錯誤の末、何でもありのあの…人?を出したんですが…書くほどぐっちゃぐちゃに…(……若干キャラの崩壊も……)
一刀:あ~。
作者:何とかまとめたつもりなんですが…、内容が分かりにくい方ごめんなさい。
一刀:で、どうするんだ?
作者:一応次回で補足しておこうかなと…ただ、最早補足できるかも自信が…
一刀:まぁ俺からは頑張れとしかな…
作者:はい…
一刀:しかし、まぁ第二話でこの展開は…
作者:…言わないでください………
一刀:そうか。…ところで、最後の方で雪蓮たちは何をしていたんだ?
作者:そこは先の話に繋がる伏線を…と思いまして。
一刀:その内容は?
作者:それはですね…(サクッ!!…バタンッ…)
一刀:おいっ!どうした………これは………南海…覇王………いったいどこから!?
雪蓮:かずと~!
一刀:んっ!?…ああ、雪蓮か…(まさかっ!?)
雪蓮:祭と鍛錬してたら南海覇王が手からすっぽ抜けちゃって、…こっちに飛んできてない?
一刀:………ああ、これだろ。(…明日は我が身か!?…ご愁傷さま…)
雪蓮:よかった~。…そうだ!一刀も鍛錬に付き合いなさい!さっ、行くわよ~♪
一刀:へっ!?いやっ!ちょっ…ああああぁぁぁぁ~~~~………………
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この作品は真・恋姫✝無双の二次創作になります。
第二話になりますが、試行錯誤してなんとか仕上げることが出来ました…が、私の頭ではこれが限界でした…。
少しでも楽しんでいただければ嬉しい限りです。
それでは、第二話スタートです。