【CAUTION!】
この作品を読むかどうかは自己責任です。
気分を害しようと、それは自己責任です。
お金がないのも自己責任です。
彼女がいないのも自己責任です。
それでもいいという方は、文頭に
『(* ´Д`)ハァハァ』
と荒い息を書き込んでからコメントしてください。
ただし色々と否定的な※はなし。
作者の心が痛むから。
ではまた後書きにて。
#32
瞼を上げる。まず目に入ったのは、空の青だった。透き通る程に遠い空はその色を変えず、時折小さな雲が流れていく。
「………」
次に目についたのは、木々の緑。俺のいる場所からは見えないところにある太陽から燦々と光を受けて、キラキラと輝いていた。
「…………ふぅ」
耳に入るのは、小川のせせらぎ。サラサラと流れていくなか、時折濡れた音が聞こえてくる。きっと魚でも跳ねたのかもしれない。
「どうして………俺は寝転がっているんだろうな」
「どうして、って自分がしろって言ったんでしょー。変な一刀」
そして、頭の下には柔らかな感触と、新しく耳に届いた細く高い声。視線をずらせば、後頭部に遮られて影の出来た顔が俺の眼を覗き込んでいた。その紺碧の瞳は空の青にも海の青にも染まらないほどに力強い意志を孕み、あどけなさの残る顔の中にはわずかに花開き始めた女の片鱗が垣間見える。
「そういや、そうだった」
いい切り出し方を思いつかないからってシリアスに走るのもいい加減にしないとな。ただでさえ最近はっちゃけてない、って言われてるんだし。
「という訳で、頂きます」
「へ?あ…や……いやぁぁああぁああっ!!」
少女の膝枕からがばと起き上がると、俺はその薄い胸に飛び込――――――。
――――――めなかった。
「こら、周々!助けてくれたのは嬉しいけど、噛んじゃ駄目って言ったでしょー!」
「がるぅ……」
白虎は飼い主に叱られて尾と耳を垂らしながらも俺の顔を口から出そうとはしない。だからベッタベタになるんだよ。あと獣臭い。
「ほら、早く離すの。シャオ、怒るよ?」
「ぐる…」
主の叱責に、ようやく俺は解放された。あぁ、空気って美味しいんだな………獣の匂いが同時に鼻孔に流れ込むけど。
「まぁ、冗談はさておき」
「冗談だったの?」
再び四肢を曲げて横たわった周々の横腹にもたれて座る少女―――シャオの脚に、再び俺は頭を投げ出した。
「もう、一刀は子どもだね」
「男はいつまで経っても子どもなんだよ」
呆れたような物言いだが、シャオは俺の前髪を指で梳く。考えてみれば、こうやって幼女と落ち着いて過ごした事はなかったな。うちにも幼女はたくさんいるけど、このタイプはいない。
馬鹿(鈴々・季衣・美羽)に腐女子(朱里・雛里・月・詠・空)にツッコミ(流琉・ねね)くらいしかいない。………恋?恋は落ち着いて過ごせるけど、今の俺とシャオの位置が逆だ。要するに、俺が恋に膝枕をしてやってるのだ。
「そんな訳で、戦士には休息も必要なんだよ」
「雪蓮姉様もよく言ってるよ」
「………孫策か?」
「うん。冥琳…えと、周瑜ね。戦が終わったらいつも冥琳と閨にこもってるの。冥琳も大変だよね」
なんだ、あの女は百合だったのか。そういえば曹操もそんな感じがしたし、霞たちもベッドの上では俺だけじゃなく別の奴を攻めてるな。この世界の女はそんなのばっかなのか?
「それで、孫家の軍を確かめに来たって一刀は言ってたけど、どうするの?」
まったりとシャオの脚を堪能していると、ふと、そんな事を聞いてきた。
「どうする、って?」
「ほら、シャオたちって、一応袁術の客将なわけでしょ?反乱の意志あり、って事で罰したりするの?」
「んー…考えてなかった」
実際長沙に来たのも雛里への仕返しだしな。
「孫策が罰せられるのは、シャオは嫌か?」
「そりゃそうだよ。姉妹だもん。姉様だけじゃなくて、冥琳とか祭がやられても嫌だし、お姉ちゃんや思春がそんな事されても嫌だよ。孫家の将は絆が強いからね。きっと誰が捕まったり殺されたりしても、死にもの狂いで報復しようとすると思うよ」
「ふーん」
幼気な少女が言うのだから、きっとそうなのだろう。勝つ為には皆殺ししかないのかもな。でも、その後がいろいろとメンドクサイしな。
「でも、先に仕掛けようとしてるのは孫策だぞ。こっちには引く理由もない」
「シャオやヤダなぁ。一刀と戦争したくないもん」
「俺だってシャオと喧嘩したくないぞ」
あぁ、いじらしいなぁ。でもなー。
「とりあえず、孫策の話でも聞きに行くか」
「えっ!ダメだよ。見つかったら、姉様のことだからすぐにでも斬られちゃうよ?」
「そこは俺に策がある」
さて、まずは材料集めからだな。
―――長沙城、軍議の間。
「明命、小蓮様は見つかったか?」
「はぅ…すみません………」
隠密頭の返答に、周瑜は額に手を当てる。そこにはすでに、孫策軍の主だった将が集まっていた。文官は周瑜を筆頭に陸遜・呂蒙・諸葛瑾。武官は黄蓋を筆頭に孫権・甘寧・周泰。武官文官が作る列の中央最奥に、孫家の王である孫策が座っている。
「あの娘も奔放よね。きっと母様に似たのよ」
「どう考えても策殿に似たのじゃろうな」
「なによー」
先代から仕える宿将の笑いながらの言葉に、孫策は頬を膨らませる。
「まったく、シャオときたら…今日は午後から大事な会議があるというのに………」
その宿将の隣では、孫家の次女である孫権が眉間に皺を寄せている。姉とは違い、生真面目な性格をしているようだ。
もう一度探しに行かせるべきか。そんな会話をしていると、入り口の扉が開いた。
「ごっめーん!遅くなっちゃった!」
可愛らしい謝罪の言葉と共に現れたのは、孫策、孫権によく似た少女―――孫尚香だった。
「遅いぞ、シャオ!お前だって今日が何の集まり、なの…か………」
真っ先に叱ろうとした孫権は途中で言葉をすぼめてしまう。
「ひゃゎゎ……」
「あ、あぅぁぅぁぅ………」
「お、お猫…様………?」
文官側では呂蒙と諸葛瑾が抱き合いながら震え、武官側では周泰が歓喜と疑問と恐怖の入り混じった複雑な顔で首を傾げている。
「あー…策殿、どうやら儂は飲み過ぎのようじゃ。変なものが見えるのじゃが………」
「奇遇ね、祭。私もよ。昨日はそんなに深酒しなかった筈なんだけど」
孫策と黄蓋は目頭を抑え。
「冥琳様ぁ、穏は眼鏡が合わないようなので、ちょっと代えの眼鏡を取ってきますぅ」
「待て、私も行こう。どうやら曇り過ぎているようだ」
陸遜と周瑜は眼鏡を外して袖で拭いている。
既に集まっていた将の視線の先には、見慣れた―――それでいて見慣れない生き物がいた。眼光は鋭く、全身に白と黒の縞が入り、その頭部には三角形の耳がピンと立っている。四肢の先には鋭い爪があり、彼はいつものようにその力強い脚で主の隣に立っていた。
「………僭越ながら、小蓮様」
「なに、思春?」
誰もが現実逃避をするなか、甘寧だけは表情を変えずに主の妹に問いかける。
「その、横にいる生き物はいったい何なのですか?」
「何、って失礼だよ。いつも一緒にいるの見てるでしょ。周々だよ。ねー?」
「がる」
主の言葉に応えて右『手』を上げる姿。どう見ても二足歩行だった。
おまけ
「ねー、一刀。本当にやるの?」
「当り前だろ。面白そうじゃないか」
「確かに面白そうなんだけどさー」
街で材料を集めた一刀たちは再び城外の小川にやってきていた。
「一刀がいいならいいんだけどさ。じゃぁ、やるよ?」
「来い」
一刀の言葉に、シャオはペタペタと真っ白な顔料を塗る――― 下着1枚の一刀の身体に。全身を白で統一し、その後で墨で線を入れていく。塗られている間、一刀は小麦粉を手に広げ、髪にガシガシと絡ませていた。
「絶対バレる、って」
「大丈夫だ。シャオは孫家の三女なんだろ?だったら、孫策と孫権さえ黙らせれば他の奴らは何も言えないさ」
「立場的にはそうなんだけどさー」
背中を塗り終わり、真っ直ぐ伸ばした脚に顔料を塗られながら、一刀は顔にも同じように塗り、墨で隈取りをし、髭を描く。
「悪い、シャオ。荷物とって」
「はーい」
シャオから受け取った材料の入っている袋から猫耳を取り出すと、それも白く染め、頭に装着した。シャオは、腹や胸を白く塗っている。
「あとは、エルム街で買ったフ○ディ専用の爪を付けて………っと」
三本爪を装着したところで、シャオの方も終わったようだ。
「出来たよ、一刀………って怖っ!?」
「どうだ、周々にそっくりだろう?」
「見えなくもないけどさー……絶対、バレるよ?」
周々は警戒の唸り声をあげていた。
あとがき
という訳で、#32です。
某氏から、一刀はもっとはっちゃけろという※を頂き、一郎太も、最近コイツ大人しいなと思ってボケさせてみた。
うん、だいぶ昔の勘を取り戻したぜ。
いま自分のPCのディスプレイ見て思い出した。
初投稿から1年経った。
おめでとう、俺!
ではまた。
バイバイ。
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サクサクいきますよー。
というわけで#32です。
どぞ。