【CAUTION!】
この作品を読むかどうかは自己責任です。
気分を害しようと、それは自己責任です。
お金がないのも自己責任です。
彼女がいないのも自己責任です。
それでもいいという方は、文頭に
『(* ´Д`)ハァハァ』
と荒い息を書き込んでからコメントしてください。
ただし色々と否定的な※はなし。
作者の心が痛むから。
ではまた後書きにて。
#31
「手巻き寿司の具に使えそうなのって何があるかな?」
「そうですね…卵を焼いたものに、新鮮な野菜、川魚を酢でしめたものなんかもいいですね」
流琉と2人、厨房で会議中。
「アリだな。あ、でも酢飯に酢味の具ってどうなんだろう………海の幸がないのは残念だが、それでも美味そうだ。あぁ、あとは肉なんかもいいな。甘辛く炒めたやつ。あるいは肉を焼いてニンニク味噌と巻くのも美味いぞ」
「あ、それ美味しそうですね!」
新しく作った醤油と味噌を使って、料理を創作しようというものだった。もちろん手巻き寿司以外にも色々と案はある。元の世界の料理を持ってくればいいんだからな。
「ラーメンにも味噌を使えるぞ。醤だと辛すぎるが、味噌ならちょうどいい。豚骨でとった出汁と味噌で汁を作ればいけないかな」
「はい、今度試してみます」
『天の御遣い』として南陽を食文化の中心とすると宣言した以上、早速取りかからなければいけない。まずは流琉に基本的なレシピをまとめてもらい、城のみんなで試す。その後俺や流琉をよく知る街の食事処に広めるのだ。作り方がそんなに難しくなければ、きっと導入するだろう。
「でも、流石に全部を一度に教える訳にはいきませんね」
「そうだな。ただ与えられるだけでは発展はしない。新しいのを大体20種類は作って、それぞれの店に1種類ずつ教えていこう。人気が出れば、他の料理人も調べに行くだろうし、そこから独自の方法で料理を考え出せばいいわけだ」
醤油と味噌は既に量産体制に入っている。ただ作り方が手間暇を必要とするので、最初は公営にするつもりだ。調べられて困る訳でもないが、民営で独占状態になるのは頂けない。
「兄様」
「ん?」
「今回の独白はいつになく真面目ですね」
「拠点も終わったから、少しくらい楽したいんだ。ギャグを考えるのも大変なんだよ」
そういう事となった。
「孫策?」
とある日の軍議で、朱里の口から懐かしい名前が挙がった。雛里や詠を見れば、2人も頷き返す。どうやら3人での合意はとれているみたいだな。
「はい。どうやら孫策さんが秘密裏に軍を集めているみたいです」
「それがどうかしたの?」
さっそく鈴々が手を挙げた。何もわかっていない顔だな、アレは。
「うん、孫策さんはずっと美羽ちゃんの客将としてやってきたけど、元々江東の地は孫家が治めていたの。私達が南陽に来るずっと前のことだけど、向こうからすれば美羽ちゃんが領地を掠め取ったように見えるからね」
「そうだね。しかも呉の地をまとめ上げたのは孫策さんのお母さんの孫堅さん。きっと想い入れも強いんだと思う」
「でも、此処にきてようやく反旗を翻そうとしてるってわけ。ボク達が何も指示してないのに、軍を集める理由がないのよ。賊が出たなら、孫武の力があればこれほど大きな軍を集める必要はないわ」
朱里が説明し、雛里と詠も補足する。
「ですので、我々もそれを迎え撃たなければいけません。孫家はその武によって土地の豪族をまとめてきた家系です。話し合いをするにしても、まずはこちらも相応の力を見せなければ席にすらつかないでしょう」
「なるほどな………どうする、美羽?」
朱里が説明を終えたので、俺は美羽に向き直った。なんだかんだいってもうちのトップだからな。美羽に決めさせなければいけない事もある。
「そうじゃな…朱里、雛里、詠よ。伯符のところと戦って、勝率はどのくらいじゃ?」
どうやら戦う前提で話が進むようだ。軍師に伺いを立てる。
「十中八九我々が勝ちます」
朱里が頷き。
「曹操さんと手でも組まない限り、我々に負けはないでしょう」
雛里も肯定する。
「兵の数は、うちは向こうの1倍半。将の質は………一刀、孫策とアンタ、どっちが強い?」
「あ?そりゃ俺だ。
俺>恋>>>>>華雄・霞・愛紗・孫策>鈴々・季衣・流琉>(永遠に越えられない壁)>酢豚のパイナップル>及川って感じだろうな」
「……恋は、おにぃに負けたわけじゃない………ぷひゅっ」
負けず嫌いの恋たんがぷぅと頬を膨らませたので、指先でつついてやる。その可愛らしい唇から空気が漏れる音がした。
「誰よ、最後の?………将の質もうちが上。朱里、反董卓連合の時の孫呉の動きはどうだった?」
「はい、周瑜さんも神算鬼謀の智の持ち主だと評判ですが、孫家に仕えるが故に、その武に重きを置きがちです。もちろん油断はできませんが、私が正道、雛里ちゃんが奇道、そして詠ちゃんがその隙間を縫うように細道を埋めてくれます」
「こんな感じね。よっぽどの事が無い限り、負ける道理がないわ」
そして、詠も俺達の勝利に同意した。
だが、そこに待ったがかかる。
「「「はぁ……」」」
そして朱里と雛里、流琉が溜息をついた。
「何かあるのかや、主様?」
そう、俺だった。
「あぁ、俺からひとつ提案がある。もっと面白くしよう」
「却下」
「駄目ですよぅ」
「あわわ…ひとりで特攻して蹴散らされてくださいぃ………」
「なんだよぅ」
俺の案は、3軍師に却下されてしまった。
軍議の翌朝、袁術軍の1人の将が姿を消した。
「華雄、見つかった!?」
「いや、街の北側にはいない」
「はわわ……愛紗さん、見つかりましたか!?」
「いや、街の南にもいなかった。目撃情報もない」
「あわわわわ……霞さんはどうでしたか?」
「外もおらんかった。各方面に騎馬を飛ばしたけど、それらしき影はなかったて報告が来とる」
「ったく、どこにいんのよ、あの馬鹿は!?」
軍師が指示を出し、将がその姿を探すも、街の何処にも見つからない。城の中などとうに探し尽くしている。と、そんな慌てた将たちに、ゆっくりと歩み寄る影があった。
「くぁ……何かあった………?」
欠伸と共に現れたのは、恋だった。その手に、1枚の紙を持っている。
「一刀がいなくなったのよ!恋、アンタ知らない?」
そう、いなくなったのは国一番の紳士だった。詠の質問に暫し首を傾げると、恋は口を開く。
「………昨日、おにぃからこれ貰った。でも…恋は、字が読めない………」
「はぁ!?ちょっと貸しなさい!」
恋の手から奪い取るように紙片を受け取り、目を通すと、詠は目を見開いた。
「なんて書いとるんや?」
「………」
肩越しに覗き込む霞に、詠は無言で紙を渡す。
「んー、なになに?………『軍議で雛里に、一人で特攻して蹴散らされて来いと言われたので、長沙の街に行ってきます。 Byおにぃ』………………」
手紙を読み上げる霞の声が流れるにつれ、次第に皆の視線が1人の少女に向けられる。
「あ、あわわ…あわわわわわわ……………」
小学生レベルの負け惜しみだった。
「さて、ここが長沙か」
恋に言伝を預けた夜、俺は馬を走らせていた。数日間旅をし、ようやくたどり着いたのは長江に近い大きな街。ここが敵の居城という訳だ。
「でもどうやって会いにいこう……」
そうなんだよなー。なんせ、向こうは戦争するぞーって言ってるし。これだから体育会系は。隅っこの方で『ディーフェンスディーフェンス』って言いながらドリブルでもしてろよ。もしくは大豚W頼んで道端で吐いてろ。
「ま、いっか」
考えても仕方がない。人生、日々是楽しく。出たトコ勝負でいいだろう。
「さて、それじゃ―――」
「ガジ」
ガジ?
「あー!コラ、周々!知らない人に噛み付いたら駄目って言ったでしょー!」
知ってる人ならいいのかよ。そんな事を突っ込む俺の顔は、生暖かい空間にあった。というか暗い。でも、俺は知っている。この感触は何度か味わった事がある。
「―――そいやっ!」
両手を首の後ろに回し、2つの突起の列を掴むと、グイとそれを押し広げた。
「ったく、いくら俺がイケメンだからって、虎に犯されるのは勘弁だ。あー、顔も髪もベッタベタじゃねぇか」
「はー…」
「ん?」
いまだ俺に噛み付こうとする白い虎の上顎と下顎を両手で抑えつつ、声のした方を見る―――見下ろす。
「貴方、凄いんだねー」
「………」
そこにいたのは、白い衣服に身を包んだ、色黒の少女だった。桃色の髪は器用に2つの円を描くように結われ、その瞳は紺碧の海のようだ。というか、どっかで見た事あるけど………誰だ?
「まぁ、俺がやる事はひとつだな」
「?」
俺は再び噛み付いてきた虎の口に、つっかえ棒をして難を逃れるのだった。
「へぇ、貴方南陽から来たのね」
隣で口を閉じられない白虎に乗った幼女が話しかけてくる。
「あぁ、大きな街だから寄らせてもらった。活気のある街だな」
「でしょう?シャオのお姉ちゃんが治めてるんだよー」
ん?
「すごいんだな、君のお姉さんは。城に仕えているのか?」
「違うよー。お姉ちゃん『が』治めてるって言ったでしょ?文字通り、お姉ちゃんが一番偉いんだよ」
………あぁ、思い出した。この幼女、孫策に似てるんだ。そういえば、連合の時に言ってたな。妹がいるって。
「ってことは、君は孫家の人間なのか?」
俺が問うと、幼女は誇らしげに薄い胸を張って言った。
「そうだよ!シャオは孫尚香。この長沙の街を治める孫策伯符の妹なんだから!」
くくく、こいつは思わぬ拾いものをしたものだ。
「そうか、俺は北郷一刀。南陽を治める袁術の側近だ」
「え…それって………」
俺の言葉に、幼女―――孫尚香は上半身を後ろに引く。虎に乗ったままだと後ずさりも出来まい。
「孫策が軍を秘密裏に集めているって情報が入ってきてね。俺が直々に真偽を調べに来たわけだ」
「そう、なんだ……」
そして俺の目的を聞き、少女は何やら決断したようだ。俺にバレないように―――と言ってもバレバレなんだけど―――背中に手を回すと。
「おっと、動くなよ、お嬢ちゃん」
「っ!」
俺はその腕を掴み、空いた手で幼女の口を塞いだ。
「チャクラムか。また変わった武器を使うんだな」
「………」
俺に口を塞がれているというのもあるが、少女は口を開かない。白虎は口を閉じられない。主の危機もそっちのけで、なんとか前脚で口の中の棒を取り除こうと画策している。
「さて、仮にも客将先の将に手を出そうとしたんだ。それ相応の覚悟をしてもらうぞ」
「っ!?」
俺は口元を獰猛に歪めるのであった。
あとがき
というわけで#31でした。
これから一気にエンディングまで書けたらにゃーとか思ってます。
ではまた次回。
バイバイ。
………さて、勉強するか。
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という訳で月曜なのに軽く酔っている駄目人間です。
テキーラって熱いよね。
どぞ。