恋のキューピッドだろうか。
いや、ボクの立ち位置を示す名称の事なんだけどね。
そもそも、ヒトの感情なんて複雑なものを、ボク達『天使』の意図で変えちゃっても良いのだろうか?
「神様、お願いします」なんて頼まれても、少し気が引ける。
正直言って、貧乏くじだ。
頭の輪っかさえ無ければ、ボクは自由気ままなエンジェルライフを手に入れ、この純白の羽毛で世界を飛びまわれたはずなのに。
ああ、また参拝者が…
「天使さま、どうか、私も天使にしてください」
…へ?
「天使さまの様に、なりたいんです」
見た目は普通の高校生…かな。今の発言でかなり痛い子になってしまったけれど。
どうしたらいいのかな?
「どのようにすれば、天使になれますか?」
いや、そんな事聞かれても…まあ悪人じゃなかったらなれるんじゃない?
「教えてください」
…もしかして、ボクの事見えてる?
そんなワケ無いか。仮に見えているとしたら、彼女は既に死んでいる。生き霊だ。
「私は、ヒトを殺めてしまいました」
…マジですか。それなら天使は諦め…
「ですが、今はその事を悔やんでいます。事件は内密に処理され、表立って報道などはされてませんが、私の中には最早自身に対する悔恨しか残されていないのです。
お願いします、天使さま、私を
…参ったな、これは。
嘘は吐いてない。彼女は、本心から屈折しそうなほど悔やみ切っている。
でも、勘違いしている。
光だけの世界なんてものは、存在しない。
光があれば陰があり、その中では得体の知れない何かが、常に蠢いている。これは、否定できない『世界のルール』なのだ。
光が強ければ、当然陰も濃くなってしまう。
良いイメージが強い程、相対した感情も強くなるのだ。
もし、光を望むのなら、
まず、陰に身を埋めなさい。
その後、光が眩しく感じられても、目を背けずにいなさい。
自分の過去から、逃げない事です。
彼女はこっくりと頷き、そのまま踵を返して去っていった。
ふう。
勉強していて、良かった。
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要するに、世界は常に平行線です。死後の世界も、我々と同じく学び、生きているのです。…だと思います。