No.341086

天使に生まれたボク

蝋燭さん

要するに、世界は常に平行線です。死後の世界も、我々と同じく学び、生きているのです。…だと思います。

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2011-11-29 12:31:19 投稿 / 全3ページ    総閲覧数:237   閲覧ユーザー数:237

 

 恋のキューピッドだろうか。

 

 いや、ボクの立ち位置を示す名称の事なんだけどね。

 そもそも、ヒトの感情なんて複雑なものを、ボク達『天使』の意図で変えちゃっても良いのだろうか?

「神様、お願いします」なんて頼まれても、少し気が引ける。

 

 正直言って、貧乏くじだ。

 

 頭の輪っかさえ無ければ、ボクは自由気ままなエンジェルライフを手に入れ、この純白の羽毛で世界を飛びまわれたはずなのに。

 ああ、また参拝者が…

 

 

「天使さま、どうか、私も天使にしてください」

 …へ?

「天使さまの様に、なりたいんです」

 

 見た目は普通の高校生…かな。今の発言でかなり痛い子になってしまったけれど。

 どうしたらいいのかな?

「どのようにすれば、天使になれますか?」

 いや、そんな事聞かれても…まあ悪人じゃなかったらなれるんじゃない?

「教えてください」

 …もしかして、ボクの事見えてる?

 そんなワケ無いか。仮に見えているとしたら、彼女は既に死んでいる。生き霊だ。

 

「私は、ヒトを殺めてしまいました」

 

 …マジですか。それなら天使は諦め…

「ですが、今はその事を悔やんでいます。事件は内密に処理され、表立って報道などはされてませんが、私の中には最早自身に対する悔恨しか残されていないのです。

 お願いします、天使さま、私を(しがらみ)の無い世界へと、お導きください』

 

 

 …参ったな、これは。

 嘘は吐いてない。彼女は、本心から屈折しそうなほど悔やみ切っている。

 

 でも、勘違いしている。

 

 光だけの世界なんてものは、存在しない。

 光があれば陰があり、その中では得体の知れない何かが、常に蠢いている。これは、否定できない『世界のルール』なのだ。

 

 光が強ければ、当然陰も濃くなってしまう。

 良いイメージが強い程、相対した感情も強くなるのだ。

 

 もし、光を望むのなら、

 

 まず、陰に身を埋めなさい。

 

 その後、光が眩しく感じられても、目を背けずにいなさい。

 

 

 自分の過去から、逃げない事です。

 

 

 彼女はこっくりと頷き、そのまま踵を返して去っていった。

 

 ふう。

 

 勉強していて、良かった。

 


 
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