【CAUTION!】
この作品を読むかどうかは自己責任です。
気分を害しようと、それは自己責任です。
お金がないのも自己責任です。
彼女がいないのも自己責任です。
それでもいいという方は、文頭に
『(`・ω・´)シャキーン』
と書き込んでからコメントしてください。
ただし色々と否定的な※はなし。
作者の心が痛むから。
ではまた後書きにて。
#14
「うりゃりゃりゃー!」
「えーい!」
「やぁああっ!!」
可愛らしい掛け声が戦場に響き渡る。最前線では、3人の少女が得物を振るっていた。ただし、彼女たちが相手取るのは、1人の将。真紅の髪を持ち、右手には戟を携えている。彼女がひとつ得物を振るえば3方向からの武器を払い、もうひとつ振るえば、3人の少女を吹き飛ばす。
「『そう、彼女こそ万夫不当にして一騎当千。大陸一の武を誇ると言われた、呂奉先である――――――』」
「主様、何を書いておるのじゃ?」
「いやぁ、帰ったら出版しようと思って」
本陣にて、俺は美羽の隣で竹簡に筆を走らせる。売れるかどうかは分からないが、本自体が少ないこの世界だ。小遣い稼ぎくらいにはなるだろう。
「ふむ。完成したら、妾にも読ませてたも」
「勿論だ。美羽は勉強熱心でいい娘だな。どれ、撫で撫でしてやろう」
「くすぐったいのじゃー」
俺は美羽とイチャイチャしていた。
さて、何故このような事になっているかというと、時は朝に遡る。
「こないだは朱里が出たんだから、今度は鈴々が出たいのだ!」
「そんなのボクだって同じだよ!ボクが出ていいでしょ、兄ちゃん!」
「ちょっと2人共……」
起きて早々、鈴々と季衣が喧嘩をしていた。どうやら、どっちが前線に出るかで揉めているらしい。
「どうするのだ、北郷様?」
隣にやって来た華雄が尋ねる。
「ちなみに、3人で当たって呂布に勝てるか?」
「そうだな…まず無理だろうな。だが、3人が協力すれば、死ぬ事はないだろう」
「………ふむ、これも兄心か」
俺は決心した。
「はい、そこまで。そんなに前線に出たいか?」
「「うん!」」
俺の問いに、鈴々と季衣は揃って首を縦に振る。
「じゃぁ、決まりだな。鈴々と季衣、そして流琉の3人で呂布を捕らえて来い」
「兄様っ!?」
まさか自分にまでその矛先が向かってくるとは思っていなかったのだろう。流琉がばっと振り向いた。
「わかったのだ!」
「頑張ろうね、流琉!」
「そんなぁ……」
ま、ヤバくなったら助けに行くんだけどな。
「それで、私はどうすればいい?」
「華雄は張遼を捕らえて来い。降ったフリでもいい。董卓を助けるために協力してもらおう」
「ふっ、任せろ」
そういう事になった。
呂布と鈴々たちが対峙する扉前より少し離れた場所でも、2人の武人が対峙していた。
「なんや、生きとったんか、華雄」
「無様にもな」
張遼と華雄であった。2人は武器を構えながらも言葉を交わす。
「そんで、袁術んとこはどういうつもりなんや?わざわざアンタをウチにあてがうっちゅー事は、なんか意図があるんやろ?」
「さすがは張遼だな。その通りだ………張遼よ、降れ」
元々性格的にも交渉事には向いていない華雄である。彼女は率直に切り出した。
「んな事できるかい!なにアホ抜かしとるんや!」
「それが新しい主の命令だからだ。私は彼の者に負けた。それも、無手の相手にな」
「………なんやて」
張遼は言葉を無くす。いかに猪武者とはいえ、董卓軍の将軍を務めていた一人である。その華雄が、まさか武器を持たない相手に負けるなどとは、想像もつかない。
「そか…だったらしゃーないわ」
そして、同時に理解する。張遼もまた武人だ。武で負けたのならば、従う事に異存がなくなるのも頷ける。
「でもな、華雄」
「わかってるさ、張遼」
「ウチかて月の為に命張っとるんや。アンタがウチを倒したら、素直に話聞いたるわ」
2人の武将は、まったくの同時に飛び出した。
張遼は考える。華雄との対戦成績は五分五分。勝つ事もあれば、負ける事もある。だが、今は背負っているものが違う。長らく武人として生きてきた張遼は、その重さが、そのまま武に直結する事を理解していた。
だが、これはどういう事だ。華雄が構えた戦斧を振るおうと腕に力を込めたところまでは見えていた。それを受けようと、自身も偃月刀を振るった。それなのに。その筈なのに――――――
「………………アンタ、この数日で何があった?」
――――――張遼の手には何も握られていない。数m離れた場所に、彼女の得物は突き刺さっていた。
「ふっ…主が私を変えた。それだけの事だ」
華雄は斧を張遼の首に突き付け、不適に笑う。
「変えた言うても―――――」
そして張遼は気づく。新しい主を語る時に浮かんだ、華雄の初めて見る表情を。
「――――――アンタ、まさか」
「それ以上言うな。まだ恥ずかしいのだ」
彼女は理解した。そして同時に涙を流す。
「……なんでや、華雄!なんでなんやぁっ!」
「……………」
「ウチは男っ気のない人生送ってきたのに………それでも、ウチより年上のアンタが処女やったから、ウチかて安心して武の道に生きてきたのに……………嘘やったんか?ウチらは共に武のみに生きよう、いう約束は嘘やったんか!?」
「………………すまない、我が友よ」
胸にすがり、拳を打ちつけてくるかつての同僚に、謝罪の言葉を呟く。
「『――――――だが、その瞳は明らかに優越感を湛えていたマル』」
「何を書いてるんですか、一刀さん?」
本陣にて、俺は竹簡に筆を走らせる。
「あぁ、さっき書いてた本の二次創作だ。原作が成功したら、オタク向けにギャグ路線で売ろうと思っている」
「なるほど。商人には収集癖のあるオタクも多いと聞きますし、ある程度売ったら、希少価値をつけるために販売を抑えるというのもありですね」
「いいな、それ。写本代を差し引いた純利益で、今度こそデカい寝台を買う事にしよう」
俺は七乃と計画を立てていた。
「さて、そろそろ俺が行くとしよう」
「はわわっ、大丈夫なのですか、ご主人様?」
「あわわ、呂布さんはまさに万夫不当と聞きます。ご主人様でも危険じゃないですかぁ!」
連日の軍議の間に落ちた朱里と雛里が縋りつく。すまない、妹たちよ。だが、俺は行かねばならないのだ。
「大丈夫だ。俺は必ず還ってくる………お前達のもとにな」
「「ご主人様ぁ……」」
2人を抱き締めて、俺は立ち上がった。
「張遼、お前の武器を貸せ。捕虜のお前には、今は必要のないものだ」
「えぇけど、アンタ使えるん?」
「任せておけ」
一言だけ返すと、俺は前線で戦う妹たちのもとへと向かうのだった。
おまけ
「「ねぇ……」
「なんでしょう、桃香様?」
ここは連合軍後方。
「………暇だね」
「輜重隊も立派な仕事です。我らは少勢なのですから、仕方のない事です」
「なにか
「おぉ、それは面白そうですな」
「なんでそうなるのですかっ!?」
1500と連合軍最少勢力の劉備率いる義勇軍は、関羽と趙雲を将に、再び輜重の見張りをしていた。
「じゃぁ、モノマネ大会ね」
「桃香様!人の話を――――――」
「では某から」
趙雲はおもむろに槍を構え、そして振るった。
「『我が名は関羽雲長!劉備が一の矛!』………違う。そもそも私の武器は、矛ではない………『我は関羽雲長!劉備様が大義を貫く武なり!』………む、これはいいかも」
「 そ れ は 誰 の 真 似 だ ? 」
「天幕でひとり口上を考える愛紗」
「似てるよ、星ちゃん!」
「………………#」
後方は平和だった。
あとがき
愛紗がオチ要員なのはいつもの通り。
あと1個。
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というわけで#14。
#11~#15のなかでは一番ギャグに走ってるかと思う。
どぞ。