「董卓様…賈駆…」
「…月……詠……」
「月殿ー!?詠ー!?」
しんと静まり返った部屋で最初に口を開いたのは元董卓軍の3人であった。
「お久しぶりです。華雄さん、恋さん、ねねちゃん」
月はそんな3人の顔を見ると微笑んだ。
「生きて居られたのですね……良かった…本当に良かった……」
華雄は涙を袖で拭い、月の方へと駆け寄る。
恋と音々音も涙を流し喜んでいた。
「ええ、私は本当なら洛陽で死んでいたことでしょう。でもあの時、孫権さんに助けてもらったのです」
「「え?」」
桃香や華雄の疑問の声に月は洛陽での経緯を話し始めた。
「あの時、燃える洛陽を逃げている途中で孫権さん…一刀さんと出会いました。
一刀さんは私たちを助けるために桃香さまのことを紹介してくれました」
「そこで桃香の事を聞いた私と月は桃香の陣営に事情を話して匿ってもらうこととなったのよ」
月の隣の詠が引き継ぐかたちで説明をした。
「しかし、此奴等のせいで董卓様が不自由な思いをしたのも事実!
此奴等を倒せと命令してください!
さすれば私が…「おやめなさい!」…董卓様…?」
「やめてください、華雄さん。もう、いいのです」
「しかし!」
月の静止の言葉に華雄はそれでも食い下がる。
そんな華雄に月は首を振り、
「復讐などしても意味が無いのです。
確かにあの戦いは私たちにとって不幸なことでした。
でも、だからと言ってここで仕返しをしても時間が戻ることは無いのです。
復讐は新たな憎悪を生み、この世界を不幸にねじ曲げてしまいます。だから……」
「それでは!それでは、月様はどうなるのですか!
私は貴方の為に……」
月の前でうずくまり泣き叫ぶ華雄の肩に手を置き月は、
「華雄さん、私は今とても幸せです。何の不自由もしていません。
毎日がとても楽しいです。
ですから、貴方にも私なんかに囚われず自分の為に生きて欲しいのです」
「月様……」
「董仲穎から華雄へ最後の命です。
自由に生きなさい。自分の為に幸せになりなさい」
「月様……う、うぁぁぁぁ!」
号泣する華雄を月はそっと優しく両手で包み込む。
「復讐は新たな憎悪を生む、か……」
そう思うことは簡単だが実際に行うことは難しい。
人間、傷つけられたらそいつが憎いし復讐を考える。
しかし月は相手を許し、復讐の連鎖を止めることを考えた。
この度量はやはり王としての器であろう。
ただ部屋には華雄の泣き声とそれをあやす月の声のみが聞こえた。
華雄も落ち着き、恋と音々音の3人は月と詠に連れられて用意された部屋へと行った。
俺と思春は、なぜか
ダダダダダダダっ
「ん?なんか騒がしいな。演習か何かか?」
「いえ、今日はそのような予定は無いはずですが…」
首を傾げる関羽であったが、その物音はこちらに近づいて来ているようであった。
「にょほほほほほ~!」「うふふふふふ~!」
後ろから聞こえる聞いたことのある笑い声に振り返ると、
「一刀ー!」「一刀さーん!」
「美羽!?七乃!?」
振り向いた俺の胸に飛び込んできたのはかつて自らの願いのために寿春の城を去った美羽と七乃であった。
「やっぱり一刀じゃー!
呉から王が来ると聞いてもしやと思っとったんじゃ!」
「良かったですね!お嬢様」
胸の中でうれしそうに顔をすり寄せる美羽を見て七乃の顔はだらしなく綻んでいる。
「どうし「どうしてお前たちがここに居る!」…思春」
思春は殺気をあらわに鈴音を美羽と七乃に向ける。
「ひぃっ!か、一刀~」
「思春、とりあえず落ち着け。
それよりも美羽、何故こんなところに」
とりあえず美羽たちを睨みつける思春を落ち着かせ、美羽たちにここに居る理由を聞いた。
「ふう~。それはですね、私たち桃香様たちに拾われたんです」
「そうなのじゃ。
寿春で一刀たちと別れた後、妾と七乃はこの大陸を回ろうと思って各地を旅しておったんじゃ。
その途中で食料が尽きて行き倒れそうになっての…」
「そこに益州に向かっていた桃香様たちと出会って、助けてもらったんです。
それでその恩としてここで侍女として働いているんです♪」
見ると2人は月たちと同じ様なひらひらがたくさんついた格好をしていた。
そういえば月たちも侍女として働いているって言ってたな。
「うむ、どうじゃ一刀似合っておるか?可愛いか?」
くるりと回り服を俺に見せながら美羽は聞いてきた。
「ああ、可愛いよ」
「ぬふふっ。そうか~」
そう答えると美羽は嬉しそうに微笑んだ。
その後、美羽と七乃も一緒に部屋へと案内してくれた。
その夜は俺達の歓迎と同盟を祝して宴会を開くこととなった。
見ると恋は張飛と大食いをを競い、音々音は恋の応援をしていた。
華雄は酔っているのか杯を片手に泣きながら月と話していた。
「皆楽しそうですね」
隣に座る桃香がその光景を見て楽しそうに言った。
「そうだな」
今はただこの穏やかな一時を楽しもう、そう思った。
翌日、朝早く華雄が出発すると言い出した。
「何もこんなに早く旅立たなくても」
「いえ、月様。私はこれからは自分が何を出来るか、それを探しに旅に出ようと思います。
それに早いに越したことはありません。
いつまでも月様のそばにいては決意が鈍るかもしれません」
華雄の言葉に月は「そうですか」と答える。
「孫権、我が主、董卓様を助けてくれたこと感謝する。
しかし、私はお前たちの事を月様みたいに許せるのかまだわからん。
だから、私は私でこの大陸の平和について考えようと思う」
華雄は踵を返し城門に向かい足を進めた。
「華雄さん!お元気で!」
「月様もお体にお気を付けて!
この華雄、月様のためならば例え地の果てからでも飛んで参りましょう!」
そう言い右手を挙げ大きく手を振りながら華雄は旅立った。
【??? side】
「あ~あ、失敗か……」
せっかく孫権が通る場所を教えてあげたのに、華雄のやつ倒せなかったか。
「でも、別にいいもんね」
そう、これは余興。
単なる暇つぶしさ。
この外史もそろそろエンディングに向かっている。
そんな終焉になるんだろうね。
先輩、もうすぐですからね。
僕が
「さてさて、楽しみはこれからだ。どうなるのやら」
本当に楽しみだよ。
「ねぇ、劉協様」
部屋の寝台で眠る彼女に話しかけても返事は返って来なかった。
【??? side end】
今回は美羽と七乃が再登場!美羽ー!可愛いよ!美羽ー!
でも、これで袁家の皆は劉備陣営に集合というカオスな状態に……
いや、でもこの美羽ちゃんはいい娘ですよ。だから大丈夫大丈夫……か?
最後の???でもうすぐエンディングって書きましたがまだまだ続きますよ!
次回は蜀での拠点!ではまたノシ
Tweet |
|
|
52
|
3
|
追加するフォルダを選択
月たん登場!そしていろいろ再登場!