No.228941

鳳凰一双舞い上がるまで 第二章 2話

TAPEtさん

真・恋姫無双の雛里√です。
雛里ちゃんが嫌いな方及び韓国人のダサい文章を見ることが我慢ならないという方は戻るを押してください。
それでも我慢して読んで頂けるなら嬉しいです。
コメントは外史の作り手たちの心の安らぎ場です。

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2011-07-19 21:16:39 投稿 / 全5ページ    総閲覧数:3875   閲覧ユーザー数:3273

一刀SIDE

 

ちょっとしたハプニングが通り過ぎた後、僕は雛里ちゃんにあの日俺が孫策の重傷を負った後どうやって今に至るかについて説明してもらった。

雛里ちゃんが言ったことは信じがたいことが多かったが、雛里ちゃんが嘘を言うはずもなければつく必要もない。

僕は雛里ちゃんのことが好きだから、彼女が言うことは絶対に信用する。そういう思考をしていた。

 

「……雛里ちゃんの話を聞いて分かったことがいくつかある」

「なんですか?」

「まず、あの鞘の事だけど…あれは『鳳雛』と名付けられた僕の家の家宝なんだ。『鳳雛』は妖剣『氷龍』を封じるために造られた記録されてある。あの女の人が『名が力を持つ』と言っていた。なら、『鳳雛』はその名通り、「鳳凰」の力がこもっていた、という話なのかもしれない」

「鳳凰……でもそんなことが?」

「……あのね、雛里ちゃん、僕は流星から流れ落ちてきたんだ。ほとんどのありえない話ぐらいは信用できるよ」

「あ」

 

あまりにも非常識な考え方ではある。

でも、この世界に落ちた僕は、既に許容範囲がすごく広がっていた。

しかも鞘が僕の中に吸収されたという話が出た時点で、もう常識とかそんなん諦めなければ僕の存在自体危うい。

 

「鳳凰は記録では龍と鶴の間で生まれたという伝説の鳥にして鳥の頂点。鳳凰が一度舞い上がると他の鳥たちがその尻尾の後を追って飛んだという」

「水鏡先生は、羅馬という国に伝わる『フェニックス』という伝説の鳥のことを言っていました」

「そう、『フェニックス』あるいは『フィニックス』と呼ばれる鳥は元々ローマの南にあるエジプトという国から伝承され、ローマにまで広まった。フィニックスは数百年に一度自分の身をもやし、その燃えた後の灰から新しいフィニックス幼鳥が生まれる形で永遠に生きたって言うよ。そのせいで不死鳥とも呼ばれた」

 

記録によれば、鳳凰は不死鳥ではない。

鳳凰が死ぬと、全ての動物たちが悲しんだという話があって、鳳凰は不死鳥ではないことがわかる。

だけど、もし僕がフィニックスみたいに自分の体を燃やして新しい体に変わったというのなら、まだこの状況を説明できる。

 

「それと、真理ちゃんが言っていた『さっきも聞いたんですけど誰ですか、それ?』……とにかく俺の呼吸から五色色に光る粉みたいなのが出てきたという話があったんだけど……っ」

「どうしたんですか?」

「ちょっと……」

 

今奥からなんか吐きそうな……

 

「がはー…っ!」

「あ」

 

何かが気道を這い上がってくるような感覚があって、その息をそのまま吐き捨てると、真理ちゃんが言った通り、閃く粉みたなものが息と共に出てきた。

 

「……そう、これなんだけど…」

「なんですか…これ?」

「この粉が、人の傷を癒せるみたいだ」

「あわわ…そんなことも出来るんですか?」

 

僕の仮説はこうだ。

不死鳥が蘇る時に自分の体を燃やすように、僕もまた体を燃やすように黄金色の炎が上がったという。

そして、僕は姿を変えた。(あの女は『再生成』と言った)

 

でも、それほどのエネルギーがどこから出てきたのか。

おそらくそれは、僕の中に吸収された『鳳雛』から出てきている。

もし、一度に発散されるそのエネルギーが、僕の体を変えてまだ余っているとしたらどうなる。

一種の治療能力を持ったエネルギーが僕の中にまだ残っているのだ。

そして、僕の体の『再生成』の後もまだその力が残っているとすれば、それはまるえフェニックスの涙のように人の傷を癒すことができるのかもしれない。

この粉がまだ僕の中に漂っているということは、まだ僕の『再生成』がまだ終わっていないということだ。さっき僕の体の傷が自然に消えたのも、多分そのせい。

 

「僕はまだ『作られてる』途中なんだ」

「……それじゃあ、まだ変わったりするんですか?」

「さあ?頭斬ったら生えなおるとか?」

 

いや、雛里さん、冗談ですよ。だからそんな殺すような視線で睨まないでください。

 

「ゲフン、とにかく、僕が『再生成』してる間は、まだ僕がどういう存在なのか不確かって話だよ」

 

まだ、僕の存在は確実に決まってない。

外見はもう形が決まったけど、あの『再生成』というものが心までも変えるのだとしたら、僕の性格はまだ変更される可能性もある。

今の僕の中には、僕を裏切った街の連中に対しての憎悪がいっぱいだ。

それはきっと以前の僕とは正反対の気持ち。

 

「雛里ちゃんは、これからどうしたい?」

「どうって……街のことですか?」

 

僕が頷くと、雛里ちゃんは難しそうな顔をした。

 

「水鏡先生は、恐らく塾を閉じることをお考えになっておられるでしょう。それはこの街の人たちにも大きな被害になります。この塾がなくなると、この街の経済は一気に後退、下手すれば貧困になる状態までも陥るかもしれません」

「それだけで十分だって?」

「私たちがしようとしたことは人を助けるための仕業でした。失敗したといって、これ以上私たちの手で被害者を増やす必要はありません」

「だけど、それだけではあいつらは自分たちの過ちを知らない。単に八つ当たりされたとしか思えないだろ。自分たちが裴元紹たちのことを孫家に知らせたことに彼らは罪悪感を持っているのか?」

「だからと言って、これ以上街人たちに追い打ちをかけてどうするのですか?下手すればこの街もまた餓死するか賊の群れと化してしまうかもしれません」

「どうせ目の前の利しか追えない愚衆です。その罰は私たちの手でなく水鏡先生によって既に下されてますし、私たちが助けの手を伸びる必要も、更なる復讐を企む必要もありません」

 

雛里ちゃんにも街の連中を擁護するつもりはない。

ただ、雛里ちゃんは既に彼らが十分な罰を受けているといっているのだ。

僕も彼らを全部殺してその罪を剥がさせようと言うつもりではない。

ただ、僕たちとの話とは裏腹にあんなことを企んでおいて、あいつらはまだ明日を生きるだろう。

裴元紹たちがあれほど望んでいた平和な明日を、あいつらは自分たちが犯した罪のせいで汚せて、貶めておいてはそれをまた『天』のせいだと叫ぶだろう。

 

お前らがそれほど望んでいた『天』ならここにあった。

その伸ばした手に伸ばす手の反対側に短剣を潜めていたのは貴様らだ、と僕は叫びたかった。

あいつらは一生自分たちの罪に気づくことはないだろ。

一生自分たちが受けた被害だけを考え、自分たちが加害者だと言う事には気付けないだろう。

 

それが悔しい。

なんて甚だしい姿だ。

二度とみたくも、会いたくもない。

 

「倉ちゃんに決めてもらいましょう」

「!」

 

そうだ。

僕は大事なことを忘れていた。

一番の被害者は倉だった。

あの娘もまた、これからのことを決めてもらう資格はある。

 

 

 

 

雛里SIDE

 

がちゃ

 

「…あ」

「……鳳統ちゃん」

「士元さま……」

 

ちょっとしたハプニング(事件という意味だそうです)の後、私と一刀さんはこれからどうするかという話を真面目に考えあいました。

が、この事件の最も大きな被害者である倉ちゃんをおいておいて話をするのも良くないと言うことで、私たちは倉ちゃんが居る部屋へ向かいました。

でも、倉ちゃんは部屋にはなく、元直ちゃんに聞いてみたら、倉ちゃんは私たちに裴元紹さんが襲われていると伝えてくれた、裴元紹さんの群れの唯一の生存者の方の様子に見に行ったということで、私たちもそこへ向かいました。

 

部屋に入ると、倉ちゃんとその人は話をしていたらしく、私たちが入ってくるのを見て驚いた様子もせず席から立ちました。

 

「……待ってた」

「私たちが来るって分かっていたの?」

「……<<コクッ>>」

 

そう言う倉ちゃんたちが座っていた席には、私たちのための席もちゃんと用意されてありました。

 

「士元さま、そちらの方は……」

 

裴元紹さんのところの残りの男の方が、後の一刀さんを見て言いました。

 

「………この人が、一刀さんです」

「……はい?」

「信じてもらえないかもしれないけど、僕が北郷一刀です。それはまぁ……色々事情があって…」

「いえ、…しかし、全然違う人……」

「……一刀」

「倉?」

 

男の人は、倉ちゃんが一刀さんのことを分かるのを見て驚きました。

私も、倉ちゃんが一見に一刀ちゃんを本人だと見抜いたという話を一刀さんから聞いた時には信じられませんでしたが、何もかも、今回の出来事は人知を越えてることばかりです。

それに、倉ちゃんの場合、あの炎の中で確かに火を操って………人を殺していました。

あくまでの推測ですが、倉ちゃんも只者ではないかもしれません。

 

「……一刀は一刀」

「…倉がそういうのなら……」

「信じてくれるのですか?」

 

倉の話を聞いたら男の方は案外あっさりと信じてくれました。

 

「倉とはあまり話はしていませんが、嘘をつくような奴でないことは十分知っています」

 

男の人は、初めてここに着いた時には、致命傷はないものの体にまともなところがないほどだったといいます。

まだ一日しか過ぎてないので、その様子はまだ全然好転したとは言えませんでしたが、意地をはっているのか、包帯に包まれているその体はしっかりと姿勢を保って椅子に座っていました。

 

「…座る?」

「そうですね。取り敢えず、座って話を……」

「そうだな」

 

私と一刀さんは各々席に座りました。

 

「……酷い傷ですね」

「…こんなもの……大したことありません」

 

死んでいった仲間たちを考えれば……と、男の人は拳を強く握り締めながら言いました。

 

「…あ、そういや今まで名前も知らなかったな…なんと呼べば?」

「……波才って言います」

「!」

 

一刀さんの眉が少し動きました。

 

「……ちょっとこっちを向いてもらえますか」

「…?なんですか?」

「理由は聞かずに……」

 

一刀さんの言葉に、波才さんは隣に座っていた一刀さんの方へ体を向きました。

それを見て、一刀さんは目を閉じて少し呼吸を整える様子を見せて……

 

「はぁ………」

 

吐息を出しました。

そうすると、一刀さんの息と一緖に金色にキラキラしている粉みたいなものが滲み出てきました。

 

「!」

「……」

 

その粉は、波才さんの体を巡るように漂い、どんどん波才さんの体の中に入って行きました。

 

「………これは…一体……」

「……包帯、解いてみてください」

「………?……!!」

 

波才さんは一刀さんの話に追いつかない様子をしながらも、言う通りに従いました。

そして、包帯の下にあるはずの傷がなくなっているのを見て驚きのあまりに椅子から立ち上がりました。

 

「こ、これは……!一体…!」

「……命を賭けて僕たちにお伝えに来てくれたお礼です。そして……倉以外に誰も助けることができなかった自分の無能さに対しての謝罪です」

「………」

 

波才さんは、そう言う一刀さんを、まるで神様でも見ているかのように見つめていました。

実際、そうなのかもしれないと思うぐらい、一刀さんがやっていることは奇跡そのものでした。

 

 

 

 

私たちは倉ちゃんと波才さんに、この事件の終始を全て話しました。

どうして孫家が裴元紹さんたちを打ったのか。

街人たちはなんのために協力するようにして裏腹で孫家に彼らの居場所をバラしたのか。

 

ダン!!

 

話の途中で、波才さんは座っていた円卓をおもいっきり叩きました。

 

「あの野郎どもが!たかがそんなことのために……俺たちを全て殺そうとしたという言うのか!」

「………」

 

倉ちゃんは何も言わないまま下をむいて居ました。

 

「これからどうしたいか、波才さんと倉ちゃんの意見を聞こうと思ってきました」

「……どうと言われても……気持ちだけでは、俺一人でも街でこの事件を仕組んだ連中を……」

「僕が手を加われば…奴らがあの街を倉たちが居た森にそうしたように一握りの灰を変えることは難しいことでもないです」

 

波才さんの声を遮った一刀さんは静かに、でも冷たく言いました。

 

「今僕に任せれば、あの連中が惨めに許しを乞いながら僕の足を掴んでくる構図にさせる方法なんていくらでもあります」

「………!」

 

波才さんも一刀さんの以前とは違うその気配に息を飲みました。

 

「が、これ以上血を流したところで意味はないでしょう。生きたものは生きることを考えるべきです。負の感情に惑わされ、せっかく救われた命を無駄に捨てては、あの世に先に旅立った裴元紹さんたちの顔をどうやって見るつもりですか」

「……………」

「復讐なんて、誰にでもできます。人間何かを無くすことには持ち前の器用さがありますから…」

「…一刀」

 

倉ちゃんもそんな一刀さんの姿に違和感を感じたのか、心配げに一刀さんを見つめます。

 

「……倉ちゃん」

 

私はそんな倉ちゃんに話をかけます。

 

「今この世は乱れて、多くの人たちが明日を生きるために様々な生き方をしてるよ。昔の裴元紹さんたちは他の人たちを殺してまでも生きることを選んだ。それは仕方がなかったとしか言うようがないよ。裴元紹さんたちがもし賊をやっていなければ、きっとどこかで飢え死にしているか、それとも他の賊に襲われ殺された。明日を欲しがるためには他の人の明日を奪わなければいけない、今はこんな時代なの」

「……どうして…」

「…分からない」

 

どうして、私たちはこんな風になってしまったんだろう。

天のせい?

それはもうとっくにありえないと分かっていた。

今回だってそう。

両方生きる方法があったのに、その天の伸ばした手を振り切ったのは人。

 

結局、こんな目にあったのもまた人のせい。

でも、本当にその原因を作った者たちは今頃豊かに生きながらこの民たちには厳しい時代を自分たちの晴れ舞台にしている。

その中でまた苦しんでいた人たちも同じ姿になりつつあるのだろう。

人が人としてしてはいけないことを繰り返して、やがては人とはなんだったのかすら薄らになってくる。

 

自分はどうしてこんな時代に生まれてきたのだろうって、自分が呪わしく思ってくる。

 

「……鳳統ちゃん」

「うん?」

「……あたし…正直どうでもいい」

「…!」

「許さないとか……許してあげるとか…そういうのはどうでもいい…復讐したところで、おじさまたちが帰ってくることもないし、許してあげたところであんな人たちが本気でごめんなさいと言ってくるとも思わない。……だから…もうあんな奴ら、この先どうなっても、あたしとは関係ない」

「……倉ちゃん」

 

倉ちゃんの答えはどうなんだろう。

一片みると私の答えと似ている。

でも、許してはあげない。忘れもしない。

ただ、二度と関わりたくないと思ってる。

あんな奴ら、もう二度と会いたくない。

結局倉ちゃんは、答えを放棄しているのだろうと思う。

結果は出たし、死んだ人たちが皿なる復讐戻ってくることはない。

できることは、こんなことが起きる前に止めることが出来なかったことをくやしがるだけ……。

 

「倉」

 

そんな時、一刀さんが口を開けました。

 

 

 

 

一刀SIDE

 

倉は落ち込んでいた。

いや、それだけでは言葉が足りないだろう。

倉ちゃんはあの幼い体で、人が一生負っても返すことができない負の感情を背負ってしまったと言ってもいい。

自分を知っていてくれた人たちが全て居なくなってしまったのだ。

僕はその気持ちを良く知っていた。

 

それは、苦しい感情とかではない。

もう苦しくもなんともないんだ。そんな無力な感覚。その先、何かをつかむことができなければ、その人は直ぐにダメになってしまう。

だから、家族を失った人たちは常に復讐を自分の目標として考える。それもまた自分が壊れることを防ぐ自己防御だ。

でも、倉はそれを望まなかった。それは、倉が優しいからだ。優しいから、これ以上人が苦しむことが見たくないんだ。それが例え自分の大切は人たちを殺した者どもだとしても。

でも、そんなに優しい人ほど、これからの負の感情を耐え切れず壊れることは目に見えている。

だから、新しい何かを与えてくれなければならない。

 

「倉」

 

だから、僕は思う。

これからどうするべきか。

倉に必要なことは、僕たちがこれからすべきことはなんなのか。

復讐でなければ、何をしたらいいのか。

 

もう二度と、こんなことが起きないようにすればいい。

こんなことを、もう二度と見ないようにすればいい。

 

「僕はね、旅をしようと思っているよ」

「!」

「……旅?」

「そう、旅だ。大陸を回る旅。そこで、人たちを助けるんだ。昨日助けられなかった分。その何十倍も、何百倍も……人を助けることができると僕は思っている」

「………助ける?」

「そうだ。大陸のあっちこっちを回りながら、苦しむ人たちを助け、自分たちを傷つけないために人を傷つける人たちに新しい道を与えてあげたい。今回の裴元紹たちのように………そして、今度は絶対に失敗しない」

「……」

「二度と関わりたくないと思うのは構わない。でも、関わりたくないからってそんなことが起きないわけではない。今でも、どこかで今回の裴元紹と街人たちのような出来事が起きて、人が死んでゆく……それは目を逸らしたところで起きないわけではない」

「…だから……助ける?」

「そう、力いっぱいに、手が届かないほど遠くにある人々まで、全て助けてあげたいと思ってる」

「………」

 

全てを助けようだなんて、理想でしかないかもしれない。

だけど、理想は妥協してはいけない。

理想はいつも天高いところにある。それを掴むために、僕は手を伸ばしたい。羽ばたきたい。

そのなかで、今日死んだ人たちより多くの人たちを助けることが叶うのなら、それが例え叶わぬ理想だとしても、僕がやることは無駄ではないはずだ。

 

だから、

 

「雛里ちゃん、倉一緖に行こう」

「!」

「ここから出て、僕と一緖に旅をしながら、人たちを助けよう。裴元紹を助けられなかった分、また人たちを生きるようにしてあげよう。それが、人を殺すよりも何倍も……価値あることだと僕は思う」

 

僕はそう思っていた。

それが今の僕……

復讐の感情に陥っていた僕はもう居なくなり、新しい希望を見つけようと思う僕がここにいる。

 

そしてそれはきっと、目の前にいる二人の女の子のおかげだ。

同じく傷ついた心を持って、同じく前が見えない暗闇の中に落ちているから、一緖に行きたい。進みたい。

もう一人はたくさんだった。

失うだけ失ったし、失いたくないから得ないと思った時もあった。

でも、やっぱり得たものを離すことなんて、誰によって奪われるより何倍も苦しいから……

 

「僕と一緖に、旅をしよう」

 

 

 

 

雛里SIDE

 

それからの話をすると、

 

次の日、街の人が私塾に来ました。

その人が言ったことは、驚くも街の長老たちが全員一緖の部屋で死体になっていたという話でした。

私たちは長老さんたちの今回の事件を仕組んだ街の人に終始の話を聞くことが出来ました。

 

長老さんたちが初めて私たちを裏切ったのは、以前街を襲った裴元紹さんの小隊長だった人の入れ知恵だったそうです。

その人が近くに孫家の人が居ると聞いて、裴元紹さんに復讐するために長老たちとこの事件を仕組んだそうです。

多分、山が燃やされて、畑も使えなくなったせいで長老たちがあの人を私たちに突きつけようとして返り討ちにされ、あの人は逃げたのだと推測します。

後ほど一刀さんは悔しそうに、あの街が賊に襲われる前にも、その人を街で見たことがあると言ってました。

「あの時奴を殺していたなら……」と一刀さんは拳を血が出るほど握りしめながら言いましたけど、私と倉ちゃんが居たからなんとか落ち着いてくれました。

 

一刀さんは倉ちゃんと話す前では街人たちに復讐しようと思っていました。

でも、倉ちゃんの無気力が姿を見て、復讐なんてことより倉ちゃんのことを大事にする方がずっと良いと思ったのだと思います。

だから、倉ちゃんと一緖に旅しようとか行ったのだと思います。

 

…………

私のことは誘ってくれないんですか?

 

あわわ

 

まぁ……それは今は別に良いです。

なにせ、水鏡先生から倉ちゃんのことをもうちょっと勉強させたいとおっしゃっていましたから。

 

あ、結局、塾のことは閉ざされることになりました。

街への罰とかそういうものではなく、最近荊州ば物騒になりつつあったため、水鏡先生は以前から豪族の人たちから娘を帰してくださいという書簡をいくつかもらっていたそうです。

そして今回の事件を見て、水鏡先生はこのままだとここも安全ではないと確信したようです。

それで、他の娘たちは全て塾を出ることになりました。

残ったのは、私と倉ちゃん、朱里ちゃんに元直ちゃん……そして一刀さんと波才さんだけです。

 

波才さんは、一刀さんの能力で体が完全に回復して、その後一刀さんと一緖に剣の鍛錬をしています。

一刀さんの剣の実力は、文官目指しと私でも分かるほどに波才さんとは天と地の差がありました。

一刀さんは「僕が居なくなった後も、ここを守る者は必要だ」と言いながら、倉ちゃんの勉強が終わるまで、波才さんを鍛錬させるそうです。

 

倉ちゃんの勉強ですが、水鏡先生は元々ある水準を越えてくれなければ出るのを認めてくれなさそうです。

仮にも水鏡先生の弟子として世に出るために、最小限の嗜みを持たせるそうで……

元直ちゃんは倉ちゃんは飲み込みが中々早いけど、文官とかはあまり向いてなさそうだと言っていました。

元直ちゃんの言うには、多分一年ほどはかかるだろうと、そう言っていました。

一刀さんにそう言っていたら「うへぇー」としか言いませんでした。私が「流石に短いですよね」と言ったら、「え?!」と返されて…私は良く分かりません。

 

朱里ちゃんは、元直ちゃんと一緖に倉ちゃんの勉強を見てくれながら、私とも仲良くしてくれました。

元直ちゃんがまた朱里ちゃんと一緖に居るようになってから、私も一刀さんと出回るのが忙しくて、中々話とか出来なかったから、ちょっと疎くなっちゃったのかと心配していたけど、朱里ちゃんはやっぱり朱里ちゃんでした。いつも優しくて、ちょっとお姉ちゃんっぽくしようとするところか、朱里ちゃんのいいところです。

 

それから一年、

 

いろんなことが起きました。

私たちの旅が始まるまで一年。

 

いろんなことが起きますけど、それは別の機会に教えてあげたいと思います。

その間、私も倉ちゃんも、そして一刀さん自身も、新しい一刀さんについて一つ一つ知っていくことができました。

他にもいろんな出来事があって、旅に出るまでの一年が全然長く思えませんでした。

後で、一刀さんはなんかカッコ付けてこう言ってました。

 

『これが、鳳凰一双が卵から生まれて、羽ばたき始まるまでの物語』だって

 

「あわわ…一刀さんその言い方やめてください」

「えー、なんで?」

「なんでって…恥ずかしいからに決まってます」

「どの辺がだよ」

「だって、鳳凰とかそういう話…自分で言って恥ずかしくないですか?」

「全然<<きっぱり>>」

「…もう一刀さんと一緖に話すこと自体恥ずかしいです」

「……(´;ω;`)ブワッ」

「あわわ、冗談、冗談ですからー!」

 

 

P.S.この一刀さん、実は良く泣きます。

 

・・・

 

・・

 

 


 
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