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真・恋姫†無双~赤龍伝~第64話「七縦七禽?(三)」

さん

ただ今、赤斗が虎になってしまい、劉備のもとに厄介になる事になったので、いまだに蜀?√に脱線中です。

主人公も含めてオリジナルキャラクターが多数出てきます。
未熟なため文章におかしな部分が多々あるとは思いますが、長い目で見てくださると助かります。

2011-06-06 21:50:26 投稿 / 全7ページ    総閲覧数:3590   閲覧ユーザー数:3087

真・恋姫†無双~赤龍伝~第64話「七縦七禽?(三)」

 

 

 

木鹿大王と兀突骨を退けた、その夜……

 

孟獲「離すにゃーーっ!」

 

兀突骨によって劉備たちに引き渡され、縄で縛られた孟獲が大声で叫ぶ。

 

趙雲「朱里よ。どうするのだ? 今回もやはり逃がすのか?」

 

諸葛亮「はい。孟獲さんは、まだ私たちに負けたと思っていません。ですので今回も孟獲さんを逃がします。桃香様。よろしいですね」

 

劉備「うん。朱里ちゃんに任せるよ♪」

 

諸葛亮「はい」

 

そう言うと諸葛亮は、合図して兵士に孟獲の縄を解くように命令する。

 

関羽「何だか、納得しかねるな……」

 

諸葛亮「孟獲さん」

 

孟獲「な、何なのにゃ」

 

諸葛亮「これで、あなたは自由です。どうぞお帰り下さい」

 

孟獲「ふんっ。覚えていろにゃ! 次こそはお前たちを倒してやるのにゃ!」

 

解放された孟獲は、捨て台詞を吐きながら全速力で逃げていった。

 

張飛「行っちゃったのだ」

 

諸葛亮「また、すぐにやってくるでしょうから、迎え撃つ準備をしましょう」

 

劉備「うん。そうだね」

 

関羽「だが、朱里よ。今回は今までとは全く違っていたぞ?」

 

張飛「今日は怪我人がたくさん出たのだ」

 

趙雲「孟獲は良いように操られていたようだったな」

 

劉備「あの女の人……」

 

趙雲「うむ。桃香様や月たちを襲った女が、孟獲を操っていたのでしょう。まあ、あの氷雨とかいう女も、誰かの命令で動いているようですが……」

 

関羽「今度、現れた時は我が刀のさびにしてくれる」

 

月「あのぉ、失礼します」

 

月が天幕の中に入ってきた。

 

劉備「あっ、月ちゃん」

 

月「虎さんの手当が終わりました」

 

趙雲「おっ、今日の立役者の登場か」

 

月に続いて、虎の姿の赤斗と詠が天幕の中に入ってきた。

 

劉備「虎さん。今日は本当にありがとうね♪」

 

劉備が赤斗に近づき、赤斗の頭を撫でる。

 

関羽「………………」

 

関羽は何やら気に入らない様子だった。

 

趙雲「何故、そのような顔をしておるのだ愛紗よ? この虎殿が居らなければ、桃香様の命が危うかったのだぞ」

 

関羽「それは、そうだが……まだ、その虎が奴らの密偵ともかぎらないだろ」

 

赤斗(…………)

 

月「そんな……!」

 

劉備「愛紗ちゃん!」

 

詠「ちょっと、あんた! いい加減にしなさいよね! こいつは命がけで僕たちを守ってくれたのよ! そんな仲間を疑うなんて、どういつもりよ!」

 

赤斗(……仲間)

 

関羽「な、なんだと、虎や豹を操る敵がいたんだ。だから、私はもっとその虎を警戒すべきだと言っているのだ!」

 

詠と関羽が激しく睨み合いを始めた。

 

劉備「ちょっと二人とも落ち着いて、ね」

 

関羽「……はい。申し訳ありません」

 

詠「ふん」

 

劉備「愛紗ちゃん。私もその虎さんは敵じゃないと思うの。だって、私たちを守ろうとしてくれた虎さんは、愛紗ちゃんたちと同じだったから」

 

関羽「私と同じ……?」

 

劉備「うん。あの時、私ね。虎さんの声が聞こえた気がするの。私たちを守るって」

 

関羽「…………」

 

劉備「ね、愛紗ちゃんと一緒でしょ♪」

 

関羽「それは………」

 

月「愛紗さん、お願いです。虎さんを信じてあげて下さい」

 

関羽「…………」

 

張飛「……愛紗?」

 

趙雲「…………」

 

関羽「……………分かった。全部、私が悪いのだな」

 

そう言うと関羽は、天幕の外へと出ていってしまった。

 

 

諸葛亮「愛紗さん」

 

劉備「愛紗ちゃん、待って!」

 

趙雲「追わなくてもよい!」

 

関羽の後を追いかけようとした劉備たちを趙雲が制止した。

 

劉備「えっ、どうしてですか。星さん?」

 

趙雲「愛紗の奴は、ただ子供のように、拗ねているだけなのですから」

 

劉備「うぅ、でも心配ですよ」

 

趙雲「桃香様。今は放っておけば良いのです。そのうち頭も冷えるでしょう」

 

劉備「……分かりました」

 

劉備は趙雲に言われ、関羽を追いかけるのを諦めた。

 

月「どうしよう詠ちゃん。私のせいかな?」

 

詠「違うわよ。悪いのは愛紗の奴よ。自分が桃香を守れなかったから、虎に嫉妬しているのよ!」

 

赤斗(…………)

 

詠「あんたも気にする必要はないわよ」

 

関羽が出ていった天幕の出口を見ていた赤斗に、詠が話しかけてきた。

 

赤斗(ありがとう)

 

赤斗も詠を見てお礼を言う。

 

月「くすっ。二人はすっかり仲良しさんだね♪」

 

赤斗と詠の様子を見て、董卓は微笑んだ。

 

赤斗(でも、やっぱり……)

 

月「あ、虎さん?」

 

詠「はあー、やっぱり行くのね。あんたは……」

 

詠は目の前の虎が、関羽の後を追いかけていくのではないかと予想していた。

 

そして、予想通りに不思議な魅力を持つ虎は、関羽の後を追いかけていった。

 

詠はそれを月と一緒に見送るのだった。

 

 

赤斗(この辺りにいると思うんだけど……)

 

赤斗は関羽の匂いを辿っていた。

 

すでに本陣からも出て、夜の森の中を進んでいく。

 

赤斗(……いた)

 

赤斗は泉の横で、俯いて座っている関羽を見つけた。

 

関羽「誰だ!」

 

気配を感じた関羽が赤斗の方に振り向く。

 

関羽「………………お前か)

 

赤斗(…………)

 

黙って赤斗は関羽の横に座る。

 

関羽「……何しにきた。私を笑いにきたのか?」

 

赤斗(ふるふる)

 

黙って首を横に振る。

 

関羽「お前は本当に不思議な奴だな。まるで人間のようだ。だから……」

 

赤斗(うん?)

 

関羽「だから……、私はお前に嫉妬したのかもな」

 

赤斗(関羽さん)

 

関羽「本来なら私が桃香様を守らなければならないのに、桃香様の身に危険が迫っている時に居たのは、私ではなくお前だった」

 

赤斗(…………)

 

関羽「…………………………………………悪かったな」

 

赤斗(はい?)

 

関羽「さっきは密偵と疑って悪かった。本当なら、桃香様を守ってくれた礼を言わなければならなかったのに」

 

赤斗(別に気にしてないよ)

 

関羽「今ここで礼を言わせてほしい。我が主を守ってくれて、ありが……!!」

 

関羽が礼を言い終える前に、何者かの気配を察知して、関羽と赤斗に向かって襲いかかってきた。

 

咄嗟に関羽と赤斗は躱して、襲いかかってきた者を確認した。

 

木鹿大王「見つけたぞ」

 

関羽「お前は!!」

 

現れたのは、無精髭を生やし頭から虎の毛皮を纏った大男だった。

 

木鹿大王「我が名は木鹿大王。我が獣が世話になった礼をしにきた」

 

赤斗(……木鹿大王!)

 

関羽「なるほど。だが、こちらこそ貴様の獣にやられた、兵士の仇を取らせてもらうぞ!」

 

木鹿大王「…………」

 

無言で木鹿大王は、地面に両手を突く。

 

赤斗(土下座?)

 

関羽「何のつもりだ?」

 

木鹿大王「我が獣たちの恨み、思い知るがいい」

 

そう言うと木鹿大王の身体が変化を始めた。

 

 

関羽「何だ……これは?」

 

赤斗(!?)

 

目の前で木鹿大王の姿が変貌していく様を、二人は茫然と見ていた。

 

そして、木鹿大王は完全に人間の姿でなくなった。

 

まるで、その姿は全身に黒い鋼鉄の鎧を身に纏った獣だった。

 

しかし、本当の鎧を纏っているのではない。

 

木鹿大王の皮膚は鉄のように硬く。爪や歯は剣のように鋭くなっていた。

 

もともと巨体だった木鹿大王の身体は更に巨大になり、三㍍近くになっていた。

 

口からは涎がだらしなく溢れ、目は狂気に満ちている。

 

もうそこに居るのは、さっきまで居た無精髭を生やした大男ではなく、この世に居るはずのない怪物だった。

 

赤斗(狼男か! こんなのありえない!)

 

関羽「バケモノめ!」

 

木鹿大王「ぐるるるっぅぅぅぅぅっ!」

 

黒い巨獣と化した木鹿大王は、唸り声をあげて赤斗と関羽に襲いかかった。

 

赤斗(うっ!)

 

赤斗は躱しきる事が出来ずに、右前足に傷を負ってしまう。

 

関羽「はああぁぁーーーーーーっ!!」

 

青龍偃月刀で関羽が反撃するも、木鹿大王はその巨体と裏腹に素早い動きで躱していく。

 

赤斗(速い!)

 

関羽「おのれーー!」

 

木鹿大王「がるるるっ!」

 

しかし、ついに武神とも謳われる関羽の攻撃は、木鹿大王に命中した。

 

関羽の一撃を受けた木鹿大王は、左肩から僅かだが血を流す。

 

関羽「ふっ、血が流れるのなら、倒せるという事だな。覚悟しろ!」

 

関羽が冷静さを取り戻していく。

 

木鹿大王「ぐるるっ、ちょ、調子にののの乗るなよ」

 

赤斗(へえ。あの姿になっても喋れるんだ)

 

木鹿大王「か、覚悟すするのは、おおお前たちだ……」

 

関羽「なに!」

 

赤斗(姿が……消えていく)

 

木鹿大王の姿が闇夜に溶け込んでいく。

 

関羽「に、逃がすか!」

 

消えていく木鹿大王に関羽が斬りかかる。

 

しかし、木鹿大王の姿は消え、関羽の青龍偃月刀は空を切った。

 

 

関羽「消えた……」

 

赤斗(……逃げた? いや、そんなはずはない!)

 

関羽と赤斗は周辺を見回すが、木鹿大王の姿も気配も匂いも見つからない。

 

関羽「いったいドコに行ったのだ!」

 

赤斗(もしかして擬態か何かか?)

 

関羽「きゃっ!」

 

赤斗がそんな風に考えていると関羽の悲鳴が聞こえた。

 

赤斗(関羽さん!?)

 

赤斗はすぐに関羽のもとに駆けつける。

 

関羽「うぅ、大丈夫だ……心配するな」

 

関羽は顔面蒼白になり、辛そうな表情を見せ、青龍偃月刀を杖代わりにしていた。

 

赤斗(うっ、これは……!)

 

関羽の背中には、大きな獣の爪痕があり、そこからは血が次から次へと流れていた。

 

関羽「はぁはぁ、姿が見えなかった。……だが、奴はいる!」

 

赤斗(見えない敵か。ならば……“月空”)

 

赤斗は奥義“月空”を発動される。

 

自分の気を周囲に張り巡らせレーダーの役割をする“月空”なら、たとえ姿が見えずとも月空の範囲内なら見逃さない。

 

関羽「この感じは…………お前なのか?」

 

赤斗のすぐ横にいる関羽は、“月空”の発動に気が付く。

 

関羽「この感じ、この気、以前どこかで………………そうか! この気は……風見殿と同じ……!?」

 

赤斗(え? 気が付いてくれた?……っ!!)

 

関羽に名前を呼ばれ、関羽の顔を見ると同時に“月空”の範囲内に見えない何かが侵入してきた。

 

赤斗(あぶない!)

 

関羽「なっ!」

 

赤斗は関羽に体当たりして攻撃を躱した。

 

関羽が居た場所に大きな爪痕だけが残る。

 

関羽「お前、もしかして今の攻撃が分かったのか?」

 

赤斗は首を縦にふる。

 

関羽「はぁはぁ、やはり、そうか」

 

赤斗(だけど、僕の爪や牙じゃ奴は倒せない。関羽さんの協力が必要だよ)

 

赤斗は目で関羽に訴える。

 

関羽「ふっ……任せろ」

 

赤斗(え?)

 

関羽「奴を仕留めるのは私がやる。お前は奴がどこから来るのか教えてくれ!」

 

赤斗(でも、教えるってどうやって…………そうだ! 関羽さん、こっち!)

 

関羽「ど、どこへ行くのだ!」

 

赤斗は関羽の服の裾をくわえて、泉へと誘導する。

 

関羽「あっ、なるほど!」

 

関羽も赤斗の考えが分かったようで、自分から泉の中へと進む。

 

赤斗(怪我していて、辛いかもしれないけど……泉の中なら)

 

関羽「心配するな。この程度の傷。ここなら姿が見えずとも、泉に入ってきたらすぐに分かる!」

 

関羽は膝まで水に浸かり、青龍偃月刀を構える。

 

赤斗(やっぱり、足が着いても溺れそうで水は嫌だな……)

 

赤斗は胴体のすぐ下まで水に浸かりながら、“月空”は発動させて敵の攻撃に備える。

 

赤斗(長期戦はこちらが明らかに不利。奴もそれは分かっているはず……どうする?)

 

二人には時間がなかった。

 

背中の傷から出血が止まらない関羽。

 

奥義を発動させたままで、どんどんと体力を消耗させていく赤斗。

 

このままじゃ、木鹿大王の爪や牙で殺される前に、二人は力尽きるだろう。

 

関羽「はぁ、はぁ……」

 

赤斗(来ない。ならば…………)

 

赤斗「があああぁぁーーーーーっ!!」

 

赤斗は天に向かって、雄叫びをあげる。

 

ただの雄叫びではない。龍が咆哮するが如く、相手に覇気をぶつける技“龍咆”だった。

 

関羽「これは覇気か!」

 

赤斗(これなら……)

 

関羽(今の覇気なら、鈴々や星が気がつくな。そうでなくとも、誰かしら偵察にくるはず。そうなったら奴も動かざるおえなくなる。この虎はそんな事まで……)

 

関羽が考えた通り、今の膠着状態が動かすのが赤斗の狙いだった。

 

 

木鹿大王「ぐるるっ」

 

先程までは長期戦に持ち込んで、関羽たちの消耗を待つだけで良かった。

 

しかし、先程の虎の尋常でない咆哮で誰かが必ず来る。

 

たとえ誰が来ようとも、今の木鹿大王は負けない自信はある。

 

だが、援軍が来る事よりも、援軍が来た事により、せっかく追い詰めた関羽を取り逃がしまう事の方が心配だった。

 

木鹿大王の目的は、自分が手塩に育てた獣たちの仇打ち。

 

仇である関羽をこのまま逃がすわけにはいかなかった。

 

木鹿大王は援軍が来る前に、関羽を仕留める事に決めた。

 

 

赤斗(……来た!)

 

月空の範囲内に木鹿大王が入った事に赤斗は気がついた。

 

赤斗「がるるる!」

 

関羽「……来たのか」

 

小声で関羽が尋ねる。

 

赤斗も首を縦にふって答える。

 

木鹿大王は月空の範囲を出たり入ったりを繰り返している。

 

攻め込むタイミングを計っているようだ。

 

赤斗(来ないなら、こっちから行くぞ!)

 

月空の範囲内に再び木鹿大王が侵入したと同時に赤斗は動く。

 

関羽「おい、待て!」

 

関羽の声を後ろに聞きながら、赤斗は木鹿大王に向かって走り出した。

 

赤斗「があああーーーっ!」

 

木鹿大王「!!」

 

自分が攻め込む事ばかり考えていたのか、木鹿大王は赤斗への反応が遅れた。

 

赤斗の牙は木鹿大王の首へと食い込む。

 

木鹿大王「ぐぐぐっ、ぎぎ貴様ぁぁ!」

 

木鹿大王と赤斗とでは圧倒的に体格も力も違う。

 

赤斗は首に咬みついたまま、身体ごと振り回され地面に叩きつけられる。

 

しかし、決して赤斗は離さなかった。

 

赤斗(関羽さん!!)

 

関羽「はああああぁぁぁーーーーっ!」

 

気合とともに関羽の青龍偃月刀が、木鹿大王に振り下ろされた。

 

 

 

つづく


 
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