No.210290

真・恋姫†無双‐天遣伝‐ IF現代編(3)

どうも、結局IF現代編にしました。

自分の作品はやはり皆様に支えられています。
どうか、これからも応援をお願いします。

2011-04-06 16:33:35 投稿 / 全10ページ    総閲覧数:10174   閲覧ユーザー数:7998

・Caution!!・

 

この作品は、真・恋姫†無双の二次創作小説です。

 

オリジナルキャラにオリジナル設定が大量に出てくる上、ネタやパロディも多分に含む予定です。

 

また、投稿者本人が余り恋姫をやりこんでいない事もあり、原作崩壊や、キャラ崩壊を引き起こしている可能性があります。

 

ですので、そういった事が許容できない方々は、大変申し訳ございませんが、ブラウザのバックボタンを押して戻って下さい。

 

それでは、初めます。

 

 

 

 

昔から思っていた事がある。

何故、【正義の味方】だなんて概念が生まれたのかって事。

それはきっと・・・

 

 

「皆の衆!! 水着は新調したかー!?」

 

『サーイエッサー!!』

 

「勝負下着の用意は!? 悩殺ポーズの練習はOK!? まさか太っただなんて(ピー!)は居ないだろうな!?」

 

『サー! 無論でありますサー!!!』

 

 

救われないと分かっていたとしても尚救われたいと思ったからなんだろうな、うん。

目の前にある大型レジャープールの門を見上げながら思った次第だった。

 

 

「よーし、(ピー!)共総員戦闘準備! 今夜の閨はこれからにかかっていると思え!!」

 

『サーイエッサー!!』

 

「・・・・・・ゆっくり寝られるとかは・・・無理なんだろうな」

 

 

沙和の罵声をバックコーラスに、俺は空を見上げた。

・・・チクショウ、青い空が無性に憎らしいぜ。

 

 

真・恋姫†無双

―天遣伝―

IF現代編第三話「深愛/乙女の愛情・家族の愛情」

 

 

――― 一刀が恋姫達を現代へと引き摺り込んでから約四カ月。

 

聖フランチェスカ学園は、既に夏休みに入っていた。

終了時の成績が悪かった子達は補習に喘ぐ事となり、それ以外は実に普段通り。

一刀をデートに誘いに来て朝帰りになったり、一刀を夜這いに来たり、一刀の部屋に遊びに来ては泊まっていったり、一刀をライブに招待して泊まりがけになったり―あれ? 俺、全然休『息』出来てなくね?

とか思った辺りで、頭の上から声をかけられた。

 

 

「場所取りありがとね、一刀」

 

「・・・うん」

 

 

その逞しくも豊満な肢体を黒く中々際どいビキニに包んだ女性が、パラソルの下に敷かれたシートに寝そべった一刀の隣に腰を下ろした。

 

 

「・・・・・・歳、考えろよな」

 

「助平、上から下まで舐める様に見た後で言っても、まるで説得力が無いわよ」

 

「くそぅ」

 

 

不貞腐れた様に身体を起こして、両足を抱える。

所謂体育座の格好だ。

一方の女性の方は、面白そうに笑った。

 

 

「それにしても・・・」

 

「ん、何?」

 

「私が知らない間に、どうやってあんなに大勢誑し込んだんだか」

 

 

ピッと女性が指差した先には、各々が異なった意匠の水着を着込んだ美女集団が。

先程から、他の客がナンパする度にこっ酷くふられていた。

時に宙を舞っているのは、見なかった事にしてやった方がいいだろう。

当然、その美女軍団の正体は、『一刀の嫁達』こと恋姫の皆である訳だが。

 

 

「う~む、それは・・・」

 

「あ、いいのいいの、別に出会った経緯を聞きたいと思ってる訳じゃなくってね。

あの中に、将来『娘』になるかも知れない子がいるんでしょ?

その内本命を教えてちょうだい」

 

「・・・あ~」

 

 

『母』―北郷愛香の言葉に、一刀は首を竦めた。

まさか、全員に対して責任を取るつもりだとは言えない。

ハーレムの道はかくも厳しいのである。

 

 

「御主人様、いこ?」

 

「あー、うん、分かった」

 

「♪」

 

 

一刀の手を取ってふにゃりと顔を綻ばしたのは、黒いセパレートに身を包んだ恋。

何時もならば、「恋殿を誑かすなのです! このち○こー!!」とか言いながら、ちんきゅーきっくが飛来する筈だが、今日は来ない。

何故ならば、ねねは夏風邪の所為で泣く泣く留守番中だからだ。

土産でも買って帰ってやらなきゃと思う一刀であった。

 

 

「んじゃ、行って来る」

 

「行ってらっしゃい、荷物は任せてね」

 

 

・・・そう笑顔で言った愛香の左手が、暁そっくりな刀の鞘を握り締めていた事に一抹の不安を感じながらも、一刀は恋に引っ張られてプールへと向かった。

 

 

 

 

 

「遅いわ」

 

「―――いきなりだな、おい」

 

 

プールサイドに到着した一刀を出迎えたのは、上記の通り華琳の辛辣な言葉だった。

 

 

「どうせ、あっちこっちの水着を着た女にうつつを抜かしていたんでしょうけど。

全く、貴方が「どうしても」と言うから来て上げたって言うのに。

誘った人間らしく、誘われた者に最大限の誠意を持って歓待しなさいな」

 

「昨日の晩、今日が楽しみ過ぎて眠れなかったお前が言える事では」

 

「っ!? 黙りなさい!!」

 

「ひらり」

 

「避けるなー!!」

 

 

華蘭のおちょくりにも似た軽口が放たれると同時に、華琳の正拳突きが華蘭の顔に放たれたが、いとも容易く躱される。

その光景を、微笑ましいものを見る目で見ていたら、急に眼を塞がれた。

 

 

「だ~れだっ」

 

「七乃さん、けど隠してるのは美羽」

 

「正解じゃ! 流石は主様じゃの!」

 

 

パッと光が戻り振り向けば、そこにいたのは美羽と七乃、それから稟だった。

最近ブレイク中のアイドルユニット『勇星乱舞』の三人だ。

 

 

「本当に、来て良かったのか? ツアーの予定とか入ってるんじゃ」

 

「大丈夫ですよぉ。

ちょお~っと『お願い』したら、快く予定を空けてくれましたから」

 

「うむ! 七乃と稟にかかれば、容易い!

それに、妾達をクビにしたくは無いじゃろうしな!」

 

 

七乃の笑顔の中に見える薄目の所為で、少し背筋が寒くなった。

と、稟が一言も喋っていない事に気付き、其方を見た。

稟は少し視線を伏し目にしながら、鼻元を抑えていた。

 

 

「・・・し、下着一丁の私に一刀殿に華琳様・・・・・・あぁ、駄目です。

こ、こんなに人が見ているのに、そこに触れては・・・・・・・・・あっ!!」

 

「あ、これヤバいな」

 

 

小声で言っていた妄想の一部を聞いてしまい、今にも鼻血の関が決壊しかかっているのを理解した。

下手したら、即強制退場を喰らいかねない。

稟には悪いと思ったが、一刀は即座に判断を下した。

 

 

「ごめんな、ちょっと我慢してくれ」

 

「はふっ・・・」

 

 

背後に回り込み、首筋の静脈を締めて落とした。

少し鼻血が漏れたが、これなら然程目立たないだろう。

 

 

「すまん、ちょっと母さんの所に置いて来る」

 

「いや、私が変わろう」

 

「華蘭、いいのか?」

 

「構わんよ、この程度労力にもならない。

それに、お前は最近閨が忙しかったのだ、疲労は溜めないに越した事はない」

 

「ああ、んじゃ頼む」

 

「任せろ」

 

 

華蘭に稟を託し、一刀は再びプール側を振り返った。

何気に直射日光が辛い。

 

よく準備運動を行ってから、水に入った。

 

 

「冷たいな」

 

「夏の水辺ってそういうものじゃないかしら?」

 

「だよなぁ」

 

“ブクブクブク・・・・・・”

 

「ん?」

 

 

何やら、気体が漏れる音が聞こえ、其方を見れば気泡が少しずつ近付いて来ているではないか。

そして次の瞬間。

 

 

「御主人様っへぶっ!?」

 

「あ、すまん。

つい反射的に」

 

「ひたひ・・・」

 

 

桃色の髪を揺らしながら、同様にボリュームたっぷりな胸を揺らして水中から現れた桃香の額に弱めの突っ込みを入れてしまった。

涙目で此方を睨んでいる。

ややながら赤くなった額を撫でてやると、ふにゃふにゃと破顔したが。

そしてあちこちから注がれる、視線と視線、そして視線。

気が重くなり、同様に重い溜息を吐かざるを得なかった。

 

桃香はずっと幸せそうにふにゃふにゃしていた。

 

 

 

 

 

――暫く経ち。

 

一刀は少しげんなりしていた。

体力を付けているとは言っても、流石に一騎当千級の強者達を連日夜相手にして尚平然とする事は不可能である。

 

 

「つ、疲れた・・・」

 

「まだ水に浸かってから一刻も経っていないじゃん?

昼食にも早過ぎるんじゃないか」

 

「ふざけんな。

毎晩の様に布団に潜り込みやがって」

 

「たはー、ごめんごめん」

 

 

プールサイドに上半身を任せてぐったりしている一刀に声をかけたのは、隠すべき所以外を透けさせたセパレート水着姿の悠。

色気ムンムンです、本当にありがとうございました。

 

此方をプールサイドの上から覗き込むようにして、舌をちょっとだけ出している。

語調から見ても、まるで反省してはいないだろう。

 

少しばかり身を起こして、一刀は一息吐いた。

 

 

「それにしても、何人位だ?

来てないの」

 

「大体二十人とかそこらだと思う」

 

「そんなもんか」

 

 

ふと気になった事を問うてみるが、悠は考え込んだ節さえ見せずに言い切った。

元々数えていたから当然だが。

一刀は知らなかったが、今日のこのプールイベントに際し、皆は厳しいスケジュール統制を、主導者の下行っていた。

因みに件の主導者は蓮華である。

 

まあ、最初の沙和の発破で、多少はそう言った裏に気付いていたりするが。

 

 

「かーずとー♪」

 

「ぷわっ!?」

 

 

急に背後から引っ張られ、強制的にプール中央へと引っ張られる。

不覚―そう一刀は思ったのだが、最初から気配を消して近付かれていたので、幾ら武人とは言え気付く方が難しいというものだ。

余りにもいきなりだったので、目を閉じてしまっていたが、顔に空気、後頭部に柔らかさを感じて目を開けた。

 

 

「ふふん、つーかまーえたー♪」

 

「し、雪蓮・・・・・・」

 

 

自分の胸を枕代わりにし、自分は一刀の顔を覗き込んでいた、何時ぞやの赤ビキニ姿の雪蓮がそこにいた。

但し、妙に寒気を感じる。

急に水に引き込まれたからとか、そんな軽い理由では決してない。

腹の奥底が縮み上がりそうな、本能的な恐怖を伴っていた。

それを裏付ける様に、雪蓮の頬には薄らと朱が差しているではないか。

 

 

「は、はな・・・」

 

「はい、黙って」

 

「むがっ!?」

 

 

何時の間にやら入って来ていた悠によって、拒絶の意を放とうとした口を塞がれる。

更に悪寒は加速する。

 

 

「雪蓮、人気の無い良い場所でも?」

 

「そうよ、実に良い場所を、ね」

 

 

予想通りだった。

雪蓮と悠の表情がニヤリと歪んだ。

 

 

「むがー!! むがむがー!!!(助けてー!! ヤられるー!!!)」

 

「ああもう、暴れなさんなって」

 

「大人しく頂かれちゃいなさいよ」

 

「むごむががごー!!!(断固拒否するー!!!)」

 

「・・・拉致が明かない、とっとと連れて行こう」

 

「うん、そうしましょ」

 

 

残り少ない体力を総動員して、一刀は拘束から抜け出そうともがく。

しかし元気ビンビンな狩人二人に敵う訳も無く、結局は人気の無い場所へと連行されてしまった。

・・・・・・後は御想像にお任せします。

 

 

「アッー!!!!!」

 

 

南無三。

 

 

 

 

 

「ち、畜生・・・や、休みたい」

 

 

雪蓮と悠に拉致され、げっそりごっそり搾り取られた一刀だったが、結局KOした後二人を救護室に運んだ。

その際、救護室内の男性が息を飲み、女性が眉を顰めたのは実に良くない思い出になりそうだ。

 

フラフラと足下覚束無く進み、下手をすると倒れそうにも見える。

それでも気力で何とか保たせる。

 

 

「もう誰にも文句言わせるかよ・・・パラソル下の日陰でたっぷりがっつり休むんだ」

 

 

目には狂気さえ孕んでいる様に見えるのは、決して間違いではない。

事実、先程から逆ナンしようと狙っていたおねいさん方が引いてしまっていた。

もう暫く行き、漸く自分達が確保したパラソルを見付けた。

 

 

「・・・・・・只今」

 

「あっ、御主人様・・・って大丈夫!?」

 

「一刀殿! 一体何が!?」

 

 

何故か愛香は居らず、桃香と稟が迎えてくれた。

それを確認し、一度だけ笑顔を浮かべてから、一刀は糸が切れた傀儡の様に前のめりに倒れ伏した。

行き先は桃香。

それ故に。

 

 

「きゃんっ」

 

「・・・くっ!! やはり、これ(胸)なのですか!?」

 

「え、えへへ・・・・・・」

 

 

桃香の胸をクッション代わりに、押し倒す様に倒れた。

そのまますぐに寝息を立て始める。

 

桃香は身を起こそうともせずに、一刀の頭をギュッと抱き締め―その為、一刀の頭は更に桃香の胸に沈み込んだ。

稟はそれを羨ましそうに横目で見ながら、自分の決して大きいとは言えない胸部を擦っていた。

 

 

「只今ー・・・ってあら?」

 

「あっ、お帰りなさい、お義母さん」

 

「・・・」

 

 

両手に大量の食べ物の入ったビニル袋を抱えた愛香が戻って来ていた。

桃香は何処か、何かを思わせる言葉の入った挨拶をし。

稟はそんな桃香を横目のジト目で見やりながらも、会釈を返した。

 

 

「・・・・・・一刀もいい子達に好かれたわね」

 

「え、えっと、えへへ」

 

 

愛香は袋を置いてゆっくりと座り込むが、桃香は身を未だ横たえたまま。

しいては一刀の頭を胸に抱え込んだままだ。

そして桃香は故にこそ、幸せ一杯で色んな事に注意を向けられなかった。

そんな余裕があれば、例え桃香でも隣からだけでなく、周囲から照射されるレーザービームの如き視線に気付いた筈だ。

愛香がわざわざ注意を促す為に、いい子『達』と言っていたにも関わらず、だ。

 

 

「・・・・・・・・・・・」

 

「・・・? あの、桃香さん」

 

「ん、何、稟ちゃん?」

 

「一刀殿の寝息が聞こえないのですが・・・・・・」

 

「・・・へっ?」

 

 

稟に言われ、一刀の頭を胸から離して見る。

しかし、少し途切れ途切れだったがちゃんと寝息は聞こえた。

 

 

「何だ、驚かさないでよ。

今の冗談は心臓に悪いよ」

 

「は、はぁ(・・・胸で窒息していたのでは?)」

 

 

頬を膨らませてプンプンと迫力無く怒る桃香だったが、すぐにその調子を収めて再び一刀の頭を胸に抱き抱え様として―愛香に止められた。

結構真剣な目をしている事から、稟は自分と同じ答えに行き着いたのだと思った。

 

 

「あー、もう止めた方が」

 

「えー、どうしてですか?」

 

「あー、うん、まー、むむむ・・・」

 

 

中々良い誤魔化し文句が思い付かないのか、悩んでいた。

そして何かを思い付いたのか、愛香の口を突いて出たきたのは、衝撃的なものであった。

 

 

「私が膝枕してやりたい」

 

「―――へっ!?」

 

「―――――!?」

 

 

どもる事も無く、あっさりと放たれた。

ポカーンとしている桃香と、正に絶句している稟。

周囲の視線も少し揺らぎを見せた。

 

 

「だから、私がその子を膝枕してやりたいんだ、いい?」

 

「は、はははははい!」

 

 

真剣な目で言われ、桃香は即座に一刀の頭を差し出した。

 

 

「ありがとう、ふふっ――」

 

 

その魅惑の大腿に一刀の頭を乗せ、嬉しそうにかつ愛おしそうに優しく撫でる。

撫で方に一刀の面影を見た者は多かった。

 

結局一刀が目覚めるまで膝枕は続いた。

おかげで一刀は昼飯を食いっぱぐれ、数多の恋する乙女はアピールの機会を軒並み失ったのであった。

 

余談であるが。

何故なのか、帰る時の愛香の肌は艶が良かった。

謎である。

 

 

第三話:了

 

 

 

 

 

デート! それは乙女の夢!

デート! それは魅惑の一時!

デート! そしてそれは恋する乙女の聖戦!!

 

 

「うむ、実に正鵠を射た言葉だな」

 

「待ちなさい華蘭、何処かおかしいとは思わないの?」

 

「? 何処がだ?」

 

「・・・ああもう」

 

 

鏡を前にビシッと決めたデート用装備を確認しつつ言っていた言葉、それに華琳が突っ込むが、正直華蘭には何の効果もない。

恋する女は強いのである。

 

 

「では、行って来る」

 

「行ってらっしゃい、夕食は?」

 

「一刀と決める」

 

「あっそ、じゃあどっちにするか決まったら連絡を寄越しなさい」

 

「了解だ!!」

 

 

そう言い、女子寮の扉が軋む程勢いよく閉められる。

閉められた扉を見ながら、華琳は大きな溜息を吐いた。

華蘭の浮かれ様に呆れたのだろう。

 

 

「ハァ、何下らない意地を張っているのよ私は。

ここは乱世でも何でも無いんだから、もっと押したって・・・ブツブツ」

 

 

―――でも無かったようである。

 

 

真・恋姫†無双

―天遣伝―

IF現代編第四話「聖戦/デートの邪魔をする奴は一切の希望を捨てよ!」

 

 

―――午前9時20分。

 

デートである。

何の脈絡も無いが、デートである。

文句あっか。

 

―――御無礼

 

デートの待ち合わせ場所に駅前の時計を選んだのは一刀で、待ち合わせ時間を10時としたのは華蘭だったが、一刀は既に到着しようとしていた。

歩きではあるが、早目に到着して待っていようとした為だ。

で、丁度着いた辺りで。

 

 

「「よし、到着・・・ってあれ?」」

 

 

互いに良く聞き知っている声に驚き顔を上げた。

そして互いに見る。

これまた良く知る顔を。

そう、今日のデートの相手の姿だ。

 

 

「・・・・・・早目に着いて待つつもりだったんだがなあ」

 

 

ポリポリと恥ずかしそうに後頭部を掻く。

一方の華蘭も恥ずかし気に頬を掻いていた。

 

 

「はは、私もだ。

後で来る一刀に、『待たせて済まない』と言わせたかったのに」

 

「こんにゃろ、生意気な」

 

 

笑いながら、額を人差し指で軽く突く。

華蘭も笑う。

二人して大いに笑った。

だが、何時までも笑い続けている訳にもいかない。

デートの時間は多いに越した事はないが、こう言う事で潰すと後に響くのだ。

 

 

「んじゃ、ちょっと早目だけど行くか」

 

「うん、手を繋いでいいか?」

 

「今日はデートだ、お好きにどうぞお姫様」

 

「ふふっ、私がお姫様なんて柄か?」

 

「俺から見れば、皆均等にお姫様だよ」

 

「・・・・・・ずるい」

 

 

一刀のキザ科白同然のからかい文句に、華蘭は顔を真っ赤にして俯いてしまう。

どうも、何が琴線に響くのか、相当長い付き合いになった今でも今一良く分からない。

そして更に、そんな風に真っ赤にした顔で此方を見上げて― 一刀は以前に比べ背が4cm程伸びた―来られると、中々にクるものがある。

故に、慌てて華蘭の手を引いて歩き出す。

同様に染まってしまう自分の頬を隠す為にも。

 

 

「一刀、照れてるのか? 可愛いじゃないか」

 

「・・・・・・お前が言うな」

 

 

照れ隠しのつもりだったが、二人とも再び顔に朱が差した。

傍にいた人間達は、口の中が甘ったるくなったと後に語ったそうだが、真実は如何に。

 

 

 

 

 

デートの定番と言えば。

映画。

ショッピング。

食事。

遊園地。

水族館。

ドライブ―二人とも学生故に除外。

等々、他にもetcあるが、概ねこんな所だろうか。

しかし、二人は今回の事に関して事前に計画を立てていない。

華蘭曰く、「良く調べて行くと、デートの新鮮味が薄れる」との事。

だからこそ、そこらのカフェに入ってマップと睨めっこしている訳だ。

 

 

「どうだ?」

 

「うむ、一緒に楽しめると言うならば、別に定番にこだわる必要も無いしな。

自然公園に行って一遊びした後、しっぽり(バキューン!!)して帰ると言うのもありか」

 

『ぶっ!?』

 

 

因みに、今のは一刀だけでなく、カフェ内の他の客や店員のものも多く含まれていた。

唯でさえ美男美女カップルな為に注目されていたので、大勢が噴き出す事になった。

その所為で。

 

 

「パ、パソコンがぁぁぁぁぁぁっ!? 書類のデータがー!?」

 

「うおおおおおおおおおおおお!!! あっちいいいいいいいいいいい!!!!!」

 

「目が! 目がぁ~!?」

 

 

大惨事である。

その一方で、此方は殆ど無害と言っても良かったが。

 

 

「華蘭、頼むから多くの人がいる所でそう言う事を言わないでくれ」

 

「あ、ああ、済まない。

まさか、こんなに酷い事になるとは思わなかった」

 

 

一刀の言葉にシュンと小さくなる。

可愛いなあと思いつつ、頭を撫でてやった。

当然華蘭は気持ち良さそうに目を細めていた。

 

 

「さて、と。

それで、自然公園でいいんだな?」

 

「ああ、安上がりだし、暗がりも多いだろう?」

 

 

キラーン!と華蘭の目が輝いた。

瞳が雄弁に「襲ってもいいんだぞ」と語っていた。

肩を竦める。

 

 

「いやいや、そういう場所に目を付けている奴は多いんじゃないか?」

 

「はっ!? そ、そうか・・・私が考え付くと言う事は、他人も考え付く可能性が高い。

何と言う事だ・・・・・・迂闊だった!」

 

「やれやれ」

 

 

愕然とした表情でテーブルに視線を落とす。

握り締められた拳はワナワナと震えていた。

苦笑いしつつ、一刀は伝票をレジに差し出して勘定を済ませ、連れ立ってカフェを後にした。

因みに、混乱は収まっていなかった。

 

 

「自然公園までどれ位かかる?」

 

「歩いても二十分弱だ、問題ないな」

 

 

二人揃って悠々と歩いている最中、それは起こった。

 

 

「よぉよぉ姉ちゃん、ちょっと遊ばない?」

 

「そうそう、そんな男放っておいて俺達と、プギャッ!!?」

 

「どうした華蘭?」

 

「いや、煩く腹に据え兼ねる雑音がしたので封じただけだ」

 

「へ、へー、お姉さん華蘭って言うんだ、強いねぇ~、惚れちゃいそう・・・」

 

「あっ・・・」

 

 

仲間を一人打っ飛ばされたと言うのに、それでも尚絡んで来る不良三人集-1が、大いなる墓穴を掘った。

根性があるのかそれともマゾなのか、判断に困る所だったが、今はそれよりも。

目の前で不良に向かってマジモンの殺気を向ける華蘭をどうにかしないとならないだろう。

 

 

「――――“スッ”」

 

「あ、あえ? それどっから?」

 

「飛べ」

 

「ほへっ? おごふぉっ!!?」

 

 

何処からともなく【天魔】を取り出して装着した華蘭が、盾のビンタとも言おう一撃で不良の一人を大きく吹き飛ばしていた。

そいつはそのままゴミ捨て場のポリバケツにホールインワンした。

死んではいない。

それを見て確かめ、少し安堵した。

 

 

「ひっ、ヒィィィィィィィ!!」

 

「私の名前を呼ぶな。

【それ】を呼んでいいのは、私が許した者達だけだ。

―――理解したか?」

 

 

腰を抜かし、壊れた様に首をガックンガックン前後に振る最後の一人に心中で祈りを捧げ、いざという時の為に【暁】を使える様用意する。

 

 

「よろしい、では飛べ」

 

 

そして最後の一人もゴミ捨て場に直行した。

こっちは、生ごみパンパンなポリ袋の上だ。

 

終わり、また天魔を何処かへと仕舞った華蘭は一刀に向き直った。

その表情は素晴らしい笑顔。

先程のあの殺気を出していた人間と同一人物とは思えない。

しかし、一刀はそんな事を気にする程器の小さい男では無かった。

 

 

「行こう、デート再開だ」

 

「OK、承った」

 

 

差し出された手を取り、二人は再び自然公園への道のりを急いだ。

 

 

 

 

 

―――自然公園にて。

―――鳩の餌やり

 

 

「凄いな、一刀がまるで鳩の塔だ」

 

「呑気に言ってないで助けてくれー、糞の被害が起こるかと思うと怖過ぎる」

 

「威圧をかければいいんじゃないか?」

 

「その瞬間集中爆撃を浴びそうだ・・・」

 

「こら鳩共。

魅力的なのは分かるが、私の男はやらんぞ。

シッシッ」

 

「ありがとよ、もう駄目かと思った」

 

「気にするな」

 

 

華蘭が丁寧に払ってくれた御蔭で、何とか糞攻撃は免れた。

 

 

 

―――ボート。

 

 

「実は、これもデートの定番らしいが」

 

「そう言えばドラマで見た覚えがあるな」

 

「華蘭もドラマ見るのか。

正直意外だ」

 

「華琳が好きなのさ、私はそれに付き合っているだけだ。

最も、役者の演技の批評ばかりだがな」

 

「うわー、華琳らしい・・・」

 

「それはそうと、デートの定番と言う事はもしや?」

 

「いや、ドラマみたいな事は無理だな。

寝っ転がるには手狭だよ、この中は」

 

「・・・・・・そうか、残念だ」

 

 

ボートにややながら期待を寄せていた華蘭だった。

 

 

 

―――昼食

 

 

「弁当を作って来たぞ」

 

「俺も作ったんだが、消費し切れるか?」

 

「大丈夫だ、きっと作って来ると思って、少なめにしておいた」

 

「読まれてた、何気にすげぇ!?」

 

「よし、早速玉子焼きから行こう。

はい、あーん」

 

「いきなりハードル高っ!?」

 

「む、いやデートなんだから、こっちの方が。

・・・ふぁい、はーん」

 

「口移し!? 更にハードルが高く!」

 

 

結局唇毎味わったが。

誰も見ていなかったのが、不幸中の幸いだったか。

 

 

 

―――ふれあい広場

 

 

「ほほぅ、可愛い兎だ」

 

「本当だなー。

それはそれとして、助けてくれー」

 

「そして何故一刀は兎にまみれているんだ?

と言うより、午前中にも似た光景を見た覚えがあるぞ」

 

「俺も良く知らん、何でか昔っから動物に埋もれるのが日常茶飯事だ」

 

「明命が聞いたら羨みそうだな」

 

「猫に囲まれた時はバリバリ引っ掻かれたぜ?」

 

「でもないか」

 

「流石の明命でも、猫に引っ掻かれるのは嫌・・・な筈だ」

 

「うん、私も自信を持って言い切れないな」

 

 

何故か、ここにはいない隠密少女の話になってしまった。

 

 

 

―――散歩

 

 

「アトラクションで遊ぶのは、流石に大人気無いしな」

 

「ああ、あれは子供達の特権だ。

・・・何時か、私達の子もあそこで遊ばせてやりたいな」

 

「気が早くないか?」

 

「もう何度もそういった行為に及んでいるくせに、一体何を言っているんだ」

 

「・・・・・・返す言葉もございません」

 

「よろしい、素直なのは好ましい。

まあ、一刀ならば何であっても好ましいんだが」

 

「あー、恥ずかしいな」

 

「全く、何時も言っている事だろう」

 

「いや、デートの時は特別だ」

 

「・・・私も特別と思えて来たよ。

これがデートの新鮮さとやらか」

 

「だな」

 

「ママー、『ばかっぷる』がいるよー」

 

「しっ! 見ちゃいけません! 糖尿病になるわよ!!」

 

 

何処ぞの教育ママに糖分過多扱いされた。

 

まあ、大体こんな感じ。

時間が過ぎるのはあっと言う間で、辺りが暗くなり始めるまでそれ程かからなかった。

 

 

 

 

 

―――女子寮

それなりに夜が深まってから。

 

 

「帰ったぞ」

 

「あら、意外と早かったわね、てっきり(禁則事項です)でもして帰って来る分、泊まりがけかと思っていたのに」

 

 

何故か奇妙な形状の煎餅を齧りながら、華琳が出迎えた。

何で煎餅なのかと首を傾げるが、答えは出ないので、放っておく事にした。

実は、春蘭が作るのに失敗したクッキーの成れの果てなのだが、味だけはセーフだったので、処理しているだけだ。

閑話休題。

 

 

「そう言う考えもあったのだが、一刀は明日も予定があるからな、私個人の我儘で体力を奪う訳にもいかん。

だから、キスで留めた」

 

「・・・・・・雪蓮とか悠とか、教師共に聞かせてやりたい言葉ね」

 

 

一齧りしつつ、華琳は基本フリーダムな連中を思い浮かべる。

何故か胸がバインバイン震えている光景だったので、想像中の絶で刈り取ってやった。

いい気味だ。

 

 

「でもいいの?」

 

「何がだ?」

 

「無沙汰になるわよ」

 

 

華琳の目が細められた。

自分自身それなので、少し気になった。

唯でさえ、普段からアプローチ豊かな身だ。

「そういった行為」が次に巡って来るのは、次の月かもしれない。

だが、それに対し華蘭は鼻で哂って言って魅せた。

 

 

「待った分だけ、廻って来た時間はより甘美になる。

それに一刀は、待たせはするが飽きさせない男だよ」

 

「・・・・・・・・・色々と負けた気がするわ」

 

「ん?」

 

「何でも無いわ、気にしないで」

 

 

自分とて滅多に表に出さないが、一刀に依存したくなる程愛している。

だが、それでも女として、華蘭に負けた気がするのだ。

自分は待たせるなと発破をかける。

が、しかし。

華蘭の場合は向こうからそうしてくるかのように成立する。

 

策も無く。

唯それが常であるが如く。

長恨歌に在る『在天願作比翼鳥、在地願爲連理枝』の一節を思い出させる。

 

無性に悔しくなった。

なので。

 

 

「華琳、どうした?」

 

「飲むわよ、華蘭」

 

 

晩酌に付き合わせる事に決めた。

 

 

「やれやれ・・・分かったよ」

 

「最初に謝っておくわ。

―済まないわね」

 

「いや、いいさ。

さて、今夜は気が済むまで付き合うよ」

 

 

台所の下辺りから、元空壜の中で秘密裏に醸造しておいた酒を引っ張り出す。

華蘭の所へ持って行くと、華蘭は既に二人分のグラスを出していた。

栓を抜き、透き通った液体を注いだ。

 

 

「乾杯」

 

「ええ、正直何に対してなのか、自分でも分からないけど」

 

 

自嘲する様に言ってからグラスを鳴らし、一気に流し込む。

あっと言う間にアルコールが染み入る。

 

 

「ふぅ・・・我ながら巧くいったけど、正直きついわね」

 

「そうだなぁ、もう少し酒の部分を抑えた方がいいだろう」

 

「ふふっ、勉強になるわ」

 

「もう酔ったのか? 早過ぎるぞ」

 

「大丈夫よ、曹孟徳は酒に等呑まれないわ」

 

「呑まれた輩は、皆そう言うぞ?」

 

 

頬をほんのりと染めつつ、華琳はクックッと笑いを漏らす。

一方の華蘭は呆れ顔。

強さで言えば、華蘭の方が華琳よりもよっぽど強い。

 

 

「久し振りね。

酒も、貴女と二人だけでこうゆっくりと語り合うのも」

 

「そう言われてみればそうだな、昔は然程珍しくなかったのに」

 

「・・・・・・一刀に出会ったから、かしらね」

 

「ああ、そうだろう。

私も新しい想いに生きられる切欠を作ってくれた恩人だ。

そして」

 

「私達が最も愛する男、か」

 

「華琳から聞けるとは思わなかったな」

 

「ふふふ・・・酔いの所為としておいてちょうだい」

 

「任せろ」

 

 

色っぽく笑い、華琳は更に酒を煽る。

今まで素直に言えなかった事をポツリポツリと零しながら、夜は更けていった。

 

因みに。

 

余談ではあるが、華琳は翌日二日酔いでベッドから出て来なかった。

 

―――オチは付きません?

 

 

 

 

第四話:了

 

 

 

 

 

後書きの様な物

 

うむ、安心の低クオリティー!!

・・・ゲハッ!!

いかん、言ってて自爆しかねない。

 

そんなこんなで、現代編です。

新しい試みの、短編二部構成としてみました。

短編二部構成か、従来通り長いの一本かは、毎回の出来とネタ出しで決まりますので、悪しからずです。

 

言っておきます。

4pのは誤字と違います。

わざとです、仕様です。

 

コメ返し

 

 

・はりまえ様:乙女の勘は脳量子波クラスw 越は、お姉ちゃん大好きっ子なので、出来る限りお姉ちゃんの影を濃くしようと、日夜頑張っています。 うーん、キャラ図は出来ればSirius様にお願いしたいと思っているのですが・・・どうすればいいのかな?

 

・2828様:いえいえ、寧ろ黒蓮の方が「姉より優れた妹なんかいません!!」と言う方が早いです。

 

・アロンアルファ様:惚れた相手故に、と思って下さい。

 

・KU-様:そのアイデア貰ったぁぁぁぁぁ!! 返しませんよ!? いいんですね!?

 

・村主7様:連合内部とかでは無くって、とある諸侯中限定になるでしょう。 まあ、董卓軍内部ではほぼ確実w

 

・mighty様:さて、次回からはまた本編ですが・・・補給は充分ですか?

 

・悠なるかな様:その通りです、二人で二人前の存在感を分け合っていると考えるといいかな?

 

・究極時械神ヒトヤ犬様:申し訳ありません、現代編です。 クイックストライクネタはこれからもちょくちょく登場予定だったり。

 

・poyy様:乙女の勘は無類無敵ぃ!!

 

・nameneko様:兵士達からは「御遣い様が男になったぜー! ヒャッハー!!」とか思われてるので大丈夫ですよ。

 

・流浪人様:おお、良かった。 早く好くなって下さいませ。 華蘭は狂ったりしないよ!

 

・闇羽様:キャーエツサーン! 分かり易いですね。 あれ程ニコニコ歴史戦略ゲーで一気に株を上げたのは、丁奉閣下と越さん位しか思い付かんです。

 

・ryu様:あれです、飯ごう一杯の米をおにぎりに圧縮出来るレベルの雪玉が亜音速で命中したと思って下さい。

 

・O-kawa様:えっ? 二回目は何だ? 自分でも分かりません。

 

・砂のお城様:葵にヤンデレの気? 全くもって正解です、彼女は他の女との情事の最中ずっと扉の前で立ち尽くす事が出来ます。 でも、報われなかったら一刀の名折れなんだぜ。

 

・yosi様:ギックゥ!!? な、ななななななな何故バレたし!!!

 

・F97様:くっ、余り言うとネタバレになっちまう・・・我慢だ!

 

・shirou様:二気読み? 読み返して貰えたのかな? だったら益々もってありがとうございます!

 

・TK様:これが結束の力だ!!

 

・ダイ様:翠を敵認定・・・大体あってますねー、でもこれ以上はネタバレなので言えないんだぜ。

 

・きのすけ様:次にかかるのも決まってます。 但し、ちょっと意外かもしれませんが。

 

・無双様:ええ、洒落にならないマジモンの死に物狂いですから。 一刀は中っちゃ駄目ー!! ある意味モゲロより痛いから!

 

 

最近随分と話数も溜まって来まして、ふと思い付いた事があります。

 

それは・・・オリジナルの恋姫達を混ぜた乳比べや、身長比べの早見表の様な物を作ろうかと言う事。

 

どう思います?

良ければご意見いただけるとありがたいです。

 

では。

 

 

 


 
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