「…………うぅ……うぁあ…………」
僕は夢を見ていた。
「はぁはぁ……うおおおおおおおお!」
叫び声をあげて大勢の人に走って行く僕。
「相棒! 2時の方向から魔法だ!」
僕に話しかける剣。
「ぐっ……はあっ!」
飛んでくる炎、氷、土、風。
それを剣で消していく僕。
炎が僕を焼き、氷が僕を貫き、土が僕の動きを鈍くさせ、風が僕を切り裂く。
でも僕は止まらずに大勢の人に向かって剣を振るう。
「はぁ……はぁ……ここ……まで……か……」
ついに僕は力つきて倒れる。
周りの人たちが僕に向けて光を放つ。
僕に徐々に迫る光。
当たったら僕は死んでしまうだろう。
……怖い。怖い怖い怖い!
何で僕は逃げていないんだ。あんな大勢の人に勝てるわけ無い! 死にたくない。なんでこんな……
「う、うわああああああああ!」
「うわああああああああ!?」
僕は目を覚ました。
「あ、あああああ!」
どこ!? あの大勢の人は!?
僕が大勢の人たちを探していると隣の家から声が聞こえてきた。
『うおおおおおおおお!』
「ひっ!?」
逃げなきゃ。ここじゃあダメだ! もっと遠くに!
僕は部屋の扉を開けて一階に下りた。
玄関のドアを開けて靴も履かずに外へと飛び出した。
どのくらい走っただろうか?
わからないけどもっと、もっと遠くに!
「うわっ!?」
「痛って!?」
走っていたら僕は誰かにぶつかった。
ごめんなさい! でも遠くに逃げなきゃ!
そう思っていた僕は頭を下げて走っていこうとした。
「おい待てガキ。」
僕は襟をつかまれて引っ張られた。
「げうっ!?」
「人にぶつかっといて謝りもなしかよ?」
「あ……ああっ!」
逃げなきゃ、もっと遠くに。僕はそう思って、何とか逃げようとする
「おいガキ!」
「うるさい! クソジジイ!」
「うっ……」
もっと遠くに逃げたくて僕は気付いたらそう叫んで腕を振り回していた。その時男の人に僕の腕が当たっちゃった。
「てめえ……ガキが!」
「がっ!?」
急に頭に痛みがはしる。
ぶたれたというのに気付いたのは僕が倒れてからだった。
「痛えじゃねーか。ガキが!」
「かふっ!」
「おいおい大ちゃん。そんなことやったら死んじゃうんじゃねーの?」
「うるせーよ。くそっ! こっちがイラついてるときによ~ああっ!?」
「うっ!? あう……けふっ!?」
何回もぶたれて蹴られた。
「これで終わりにしてやるよ。」
僕は首をつかんで腕を振り上げている男の人を見あげる。
「おらっ!」
男の人が僕に向けて腕を振り下ろす。
それは偶然、僕の夢の最後とどこかダブった。
僕はここで死んじゃうんだ。
そう思って僕は目を瞑った。
…………あれ? おかしい。いつまで経っても殴られた痛みがこない。
「な!? 何だてめえ!?」
「ふう、全く。何やってるんだか。良い年した若者がさ。」
今までしなかった声が聞こえて僕はゆっくり目を空ける。
僕の目の前には拳があと少しで当たるところまで迫っていた。
「てめえ! 何なんだ!? ああ!?」
「うるさいな。サルは動物園の檻にでも居ろ。おい、大丈夫か?」
僕はその声にうなずいた。
「サ、サルだと!?」
「喋るな。空気が汚れる。酸素が減る。いつまでこんな事やっている。いい加減サルから人間に進化しろ。」
「て、てめえ!」
「大ちゃん、こいつやっちまおうぜ!?」
男の人は僕を掴んでいた手を離してその人を仲間と一緒に囲んだ。
「謝るなら今のうちだぜ? 大ちゃんはボクシングをやってるんだ。」
「ふん。随分軽い拳をお持ちのようで。通信ボクシングですか~?」
「くっ、調子に乗ってられるのも今のうちだ。よく見たら良い顔してるじゃねえか。ボコボコにした後で犯してやるよ。」
「? ……万が一君が勝てたらな? 通信ボクシング君?」
「くっ! てめえええええ!」
「ほら、ほら、全く当たっていないぞ?」
男の人は僕を助けてくれた人に殴りかかるけど。助けてくれた人は全部ギリギリで避けている。その時、もう一人の男の人が助けてくれた人に殴りかかる。
危ない! 僕はそう言おうとしたけど助けてくれた人は後ろに目があるかのように避ける。
「そろそろ、こっちから行くぞ? ほれ。」
「がっ!?」
――ドサッ!
一撃。助けてくれた人が腕を振るうと男の人は何の抵抗も無く倒れた。
「で? 君はどうするんだい?」
「うっ!」
もう一人の男の人は後ずさる。
当然だと思う。だって、さっきから後ろから攻撃して一回も当たってないんだから。
「やらないなら。こいつを持ってとっとと帰れ。」
「くっ! 顔は覚えたからな……てめえ、覚えておけ…っ!?」
「面白いこと言うな? 君は……」
「ひっ!」
「この場で二人とも……」
「あ……ああっ……」
「さっさと行け。次来たら……容赦はしない。」
「う、うわああああ!?」
そう言って男の人は仲間を連れて逃げていった。
「さて、大丈夫か?」
「う、うん。ありがとう。お姉さん。」
「え?」
「え?」
「いやいや。俺はお姉さんじゃない。……さっきの奴もそれで俺を……はあ。」
お姉さんもといお兄さんはため息をついた。
「それで? 君はどうしてこんな時間に一人でいるんだ?」
お兄さんにそう聞かれた瞬間、僕は夢のことを思い出した。
大勢の人に向かう僕。どうしてか分からないけど。夢だとは思えないほどリアルだった。
怖い。それに何故かいつかあんな事になりそうな予感がした。
あれは予知夢って奴ではないんだろうか?
僕はお兄さんを見上げる。この人、さっき2人を相手に凄く余裕そうだった。もしかしたら……
「お兄さん。お兄さんは大勢の人を倒せる?」
「は? ……何人くらいだ?」
お兄さんは微笑みながら聞いてきた。僕が子供だからゲームの話だと思ってるんだろうか?
えっと、某三国史のゲームがあれだから。
「……えっと、3万とかもっとたくさんの人と……」
「3万以上ね……できるよ。」
「やっぱり無理ですよね……え!?」
「だから出来るって。」
「本当ですか!? 嘘じゃなくて!?」
「何でそんなに必死なのか知らないけど本当だよ。」
「じゃ、じゃあ僕を弟子にしてください!」
「え?」
「お願いします!」
僕はそう言って頭を下げた。
僕はあんな風に死にたくない!
「……とりあえず。どうして俺に弟子入りしたいと思ったのか理由を聞こうか……」
「はい。」
僕は夢の内容をお兄さんに話した。
「なるほど……」
そう言うとお兄さんは黙ってしまった。
勢いで言っちゃったけど……夢で見たことを理由に三万人とかを倒せるようになりたいって言うのは……
頭がおかしい子とか思われてないかな?
僕がそう思っているとお兄さんが口を開く。
「……いくつか条件がある。それが飲めたら俺の技を教えてやる。」
「条件?」
「ああ、俺の技を犯罪で使わないこと、そして、自分の身と大切な人を守ることに技を使うなら教えてやろう。」
「はい! 約束します!」
「良いだろう! 君を俺の弟子にしよう。」
やった!
「では修行は明日からとする! とりあえず今日は君の家まで送っていこう。案内してくれ。」
「はい! お兄さん!」
「俺のことは師匠と呼べ。」
「はい! 師匠!」
俺は師匠を連れて家まで帰った。
「それじゃあ。また明日。」
「はい!」
「む、そう言えば君の名前を聞き忘れていたな。君の名前は?」
「はい! 僕の名前は……」
僕の名前を言うと師匠は驚いた顔をして微笑む。
「そうか。俺が君の師になるのは運命だったのかもしれないな。」
「え?」
「ふふっ。いつか分かるさ。じゃあまた明日な。」
「はい、師匠!」
僕がそう言うと師匠は微笑み、闇に消えていった。
そして……12年の月日が流れた。
俺は17歳になった。あれから師匠は次の日に俺の家に来て両親を説得してくれた。
どうやって説得したのだろうか? 口先の魔術発動とか言ってた様な気がするが気のせいだろう。
師匠は俺に本当にいろいろな事を教えてくれた。
空手、柔術、中国拳法、ムエタイ、剣術、槍術、魔術などを教えてくれた。
何度も死に掛けた。”修行で”
正直、魔術を教えるとか言われた時には驚いたけど。
そして、去年。師匠は次の世界に行くとか分けの分からん事を言って、俺に免許皆伝と言って奥義を全部教えて去っていった。
と言ってもまだ全て完成した訳じゃないから本当に教えてもらっただけなんだが……
まあ、それは置いておいて、今の俺の状況はと言うと……
「好きです!」
……これでこの学校に入ってから5回目か……
「ごめんなさい。」
俺は素直に頭を下げる。
今、俺は学校の屋上にいるんだけど、夏なのに冷たい風が吹いた。
「…………理由を聞いてもいいかな?」
「君の事を全く知らないから。」
どこの組かも知らない子と付き合えるほど俺は器用じゃないです。
「……えぅ……」
やばい。女の子が泣きそうになってる。
「あああえっと……そうだ! お友達から始めようぜ! なっ!?」
「うぅ……お友達?」
「そうそう。さすがに彼氏にはなれないけど。友達になればほら、いろいろ話したりも出来るし……その……ほら……」
なんて言おうか……考えろ! 俺! 頭は帽子を乗っけるだけの所じゃないんだぞ!
「……ぷっ! ……ふふふっ。」
俺が何て言おうか迷っているといきなり笑い声がした。
俺が女の子を見ると笑っていた。
「ふふっ……ご、ごめんなさい……いつも冷静って言うか慌てない人が……こんなに慌ててるから……ふふふっ。」
どうやら俺の慌てっぷりが彼女のつぼに入ったらしい。
「う、うるせーな。俺だって慌てることくらいあるよ!」
師匠が俺に修行を付けにきた時とかな!
「ご、ごめんね?」
「……いいよ。別に。」
正直納得できないが。
「私。愛沢歩。よろしくね?」
「ああ。よろしく。」
互いに自己紹介をする。
「あ、もう休み時間も終わるね。じゃあね。」
そう言って歩ちゃんは校舎に向かう。
俺も校舎に入ろうと歩き出した瞬間に歩ちゃんが振り返って言った。
「私は一途でしつこいぞ♪」
上目遣いでそう言われた。ちょっとドキッとした。
今日も学校が終わった。
家に帰ったらまた修行が始まる。
正直、サボりたいと思ったことは何度もある。ってか何度かサボったが次の日に師匠が笑顔で修行をつけにきたから絶対にサボらない。
と言っても、修行をサボってもやることがないし、やりたいことは並列思考で片付ければ良いからアニメとかも複数の画面で見ればおkだし。
と、言う感じで俺は今日も修行をしに家に帰るのであった。
帰る途中。後ろから急速に魔力が収束していくのを感じた。
俺はすぐにその場を離れ後ろを見る。
「……なんだ? あれ……」
俺の前方になにやら鏡のような物が見える。
それから凄まじいくらいの魔力が放たれている。
師匠の旅の扉に似ているけど、あれはこんなに魔力が篭められていない。
ならなんだ? 師匠の仕業……違うな。師匠なら完全に魔力を隠してやってくるから絶対に違う。
……とりあえず追いかけては来ないみたいだから、そのまま帰るとしよう。俺は何も見なかった。
俺は無視して帰路を急ぐ。俺が曲がり角を曲がろうとすると曲がり角の先で魔力が収束したのを感じた。
俺は立ち止まり、そーっと曲がり角の先を覗く。
「…………」
案の定鏡のような物が待ち構えていた。
とりあえずこの鏡は俺を狙ってきているようだ。
面倒な……取り合えず他の道を……
そう思ったときだった。
「っ!」
俺の足元に魔力の集束を感じ、俺は慌てて跳び上がる。
下を見ると俺の居た場所に鏡が現れていた。
「っ!?」
今度は上!
俺は虚空瞬動で前方下に跳ぶ。
前!
さらに瞬動で斜め前に跳ぶ。
また前! 今度は近い!
上に……まずっ!?
俺の上に魔力の集束を感じる。
俺は鏡のような物に捕まってしまった。
「くっ!」
抜け出そうにも体が動かない。
……師匠
「あんた誰?」
俺の目の前にピンク色なんていう変な髪の色をした女の子がいた。
いや、師匠も銀色の髪だったけどさ。
とりあえず言語が日本語じゃなかったから俺は翻訳魔法を自分にかける。
てか、ここ何処だ?
俺は周りを見る。石造りの建物。ローブを着た人間。しかも、この場にいる全員が魔力持ち。俺と師匠以外に魔力をこれだけ多く持った人達ははじめて見た。
……さて、雷の傷跡がある男の子は何処かなっと。
なんて俺が一人でぼけているとピンク色の髪の毛の女の子が俺に話しかけてきた。
「言葉が通じないの? 何処の平民?」
平民。商人や農民などの身分の低い位置にいる人のこと。
俺を平民と言ったからにはこの人は貴族……か。
しかし、言葉が通じないなら、この人が言う平民に俺が当てはまらない可能性もあるのに凄い高圧的だな。
とりあえず、ジャッ○ー・チ○ンも話せない振りをしていたほうが相手はペラペラと情報を話す。的なことを言っていたから、とりあえずこのまま様子を見るか。
「くすくす……大見得切ったことはあるわね。まさか、平民を呼び出すなんて」
と、向こうにいる赤毛の巨乳の女の…子?が言った。
『呼び出す』『まさか』『平民』
つまり、この場所には平民は呼び出されることはありえない? ならなんで俺がこの場所に呼ばれた?
「ちょっと間違えただけよ!」
『間違えた』
つまり、俺を呼び出す気は無かったという事。
「ミスタ・コルベール」
「なんだね?」
女の子が禿げ話しかけた。
「あの、もう一度召喚させてください!」
『召喚』
よく見ると周りに変な動物が多数いる。なるほど召喚で呼び出された使い魔ってことか。
「それは出来ない」
「何故ですか!?」
「この儀式はメイジの一生を決める神聖なもの。やり直すなど。儀式その物に対する冒涜ですぞ! 君が好むと好まざるとに関わらず彼は君の使い魔に決まったのです」
なるほど、大体分かった。この儀式は生物を何処かから拉致って来て使い魔にする儀式なわけか。
「でも、平民を使い魔にするなんて聞いたことありません!」
ピンクの子がそう言うと周りから嘲笑の声が上がる。
「平民だろうと何だろうと例外は認められません。儀式を続けなさい」
「ええ~これと?」
「早くしなさい! でないと君は本当に退学になってしまいますぞ!」
「わ、分かりました……」
女の子が俺をにらみつける。
俺は立っている状態なので俺より小さい女の子ににらみつけられても上目遣いになり、ちっとも怖くない。むしろ萌える。
女の子が俺に近づいてくる。
「ちょっと屈みなさいよ」
俺は言われたとおり屈む。
「感謝しなさいよね。貴族にこんな事されるなんて普通は一生無いんだから!」
そう言って女の子は杖を取り出す。たぶんこれが魔法の媒介だな。
「我が名は、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。五つの力を司るペンタゴン。この者に祝福を与え、我の使い魔となせ」
そう言うとルイズさんは俺に顔を近づけてくる。
なるほど、キスで契約か。
俺はルイズさんの両襟を掴む。
「えっ!?」
「ところがぎっちょん!(cv野原ひろ(ry」
俺は巴投げでルイズさんと俺の後ろに投げ飛ばす。
俺はすばやく立ち上がり。ルイズさんを縮地で追う。
ルイズさんが地面と仲良しになる前にルイズさんを受け止め、地面に組み伏せ、杖を奪う。
ルイズを投げたことで禿げが俺に向かって杖を向ける。が……
「動くな!」
俺は持っていたクナイを取り出しルイズさんに突きつける。
そうすると禿げは戸惑った顔をした。
思ったとおり。さすがに他の貴族は傷つけられないか。
「彼女を解放しなさい!」
禿が俺に向かって叫ぶ。
「断る! 俺を元の場所に返せ! この拉致集団が!」
「あ、あなたは拉致されたわけではなく、使い魔としてここに召喚されたのですぞ!」
「アホか! 人間を使い魔にしようとするな! その辺の猫かフクロウでも連れて来い!」
「ちょっとあんた!喋れたの!?」
俺の下にいるピンク色の髪の女の子が叫ぶ。
「ああ、喋れないとは言ってないな」
「ききき貴族にここここんな事してただで済むと思ってるの!?」
かなり怒っているようでうまく口が動いていない。
「思ってる」
俺は胸を張っていった。
こいつらをざっと見渡しても魔力が多いのは禿と赤毛と青い髪の女の子だ。
ちなみに一番大きい子は俺の下にいる子だ。この子だけは俺より魔力が大きい。
「てか、君は人質なんだから喋っちゃダメだよ。おい禿。次、魔力を集束しようとしたらこの子を殺すんで。そこんとこよろしく」
俺がそう言うと禿は杖をしまって話しかけてきた。
「……何が望みですか?」
「俺を元の場所に戻してくれるならそれでいい。」
「……元の場所と言うと何処ですか?」
「日本の〇〇県だ」
「日本? ……申し訳ありません。聞いたことがありません」
聞いたことが無い? ありえないだろう。県の名前を知らなくても日本は世界有数の経済大国だぞ?
「もう一度聞く。日本。つまりはジャパンだ。さっさと俺をそこに帰せ」
俺はピンク色の髪の女の子にクナイを強く押し当てて言う。
「ひっ!」
「ままま待ってください! ほ、本当に知らないのです!」
禿が慌てながら言ってきた。……本当に知らないのか? じゃあ、ここは異世界? いやいや、そんな事はないだろう。
「まあ、いい。分からないなら俺を召喚した魔法があるだろう。 それを使って元の場所に送り届けろ」
召喚魔法なら送る呪文と帰す呪文が両方あるはずだ。
「申し訳ありません。それは出来ないのです」
「なに?」
「使い魔を召喚する呪文はあっても送り返す呪文はないのよ! 分かったらさっさと契約しなさい!」
ピンク色の髪の子が言う。
「なんじゃそりゃ!? おいおい、どんな馬鹿が作った呪文だそりゃ!?」
危ないもんが召喚されたらどうするつもりだよ!?
「なっ! 平民の癖に始祖ブリミルを馬鹿にする気!?」
だって馬鹿なんだもん。もしくは改良できないやつらがアホ。
「……とりあえずここの最高責任者に合わせろ」
わざとではないにしろ人間を召喚したんだから責任を取ってほしい。
「……分かりました。着いてきてください。」
「ああ。」
俺はそう言うとルイズさんを放した。
「すまんなルイズさん。俺も必死なんだ。」
そう言って俺は禿もといコルベールについていく。
「ではこちらです。」
「俺を罠にはめようとするなよ? そんな事をすれば……」
「分かっています。ミス・ヴァリエール。君も来なさい。」
「はい。」
俺は最高責任者とやらがいる場所に向かった。
――コンコン
コルベールが最上階の一室のドアをノックする。
「入りたまえ。」
中から入室を促す声がした。かなりの老齢な人のようだ。
「失礼します学園長。」
「うむ。……その子は何者かね? 見た所うちの生徒じゃないようだが?」
中にいたのはダンブルドア見たいなお爺さんだった。魔力が多い。ルイズさんほどではないにしろかなりの量だ。
「こちらはミス・ヴァリエールの使いm「召喚という名の拉致をされたものだ。」……という事です。」
「なるほど。それで君は私に何のようかね?」
学園長は俺に向かって問いかける。
「俺の要求は一つ。俺を元の場所に帰せ」
「元の場所とな?」
「ああ、しかも確証はないが、ここは俺が居た世界じゃない。」
「はあ? 何わけ分かんない事言ってんのよ。」
ルイズさんが俺をバカにしたような口調で言う。
「ちなみに俺がいた世界は国が100以上あって俺の国は経済に関して言えば世界で3番目にすごい国だぞ? 知らないって事は違う世界か、もしくは過去か未来かどっちかだろうな」
「ふぅむ。だが君の言葉だけではただの妄想かもしれんしの~。なにかこの世界には無い物を持っておらんか?」
この世界に無いもの……
「これなんかどうだ? 携帯電話という代物だ。」
俺はそう言って携帯を取り出す。
「ケイタイデンワ? 何よそれ。」
「簡単に言えば遠くの人と会話できる道具。原理は知らん。」
「へえ~やってみてよ。」
「たぶん無理。どう考えても電波が飛んでない。」
「やっぱり嘘じゃない!」
「ちなみにこれ一つで音楽聴けて、写真を取れて計算できると言うものだがこの世界にあるのか?」
「ないけど……」
「一応、音楽を鳴らすか?」
「やってみてくれたまえ。」
♪♪♪~~~!
「なるほどの~。どうやら確かに違う世界の物のようじゃの。魔力も感じんし。」
とりあえずは信じてもらえたようだ。
「じゃが君を元の世界に送り返す呪文は我々は知らんのじゃよ。」
「この子もそう言ってたしな」
俺は女の子を指差しながら言った。
「じゃからミス・ヴァリエールの使い魔になってくれんか?」
「絶対ヤダ♪」
俺はジジイの戯言を笑顔返す。
「ちょっと! 私、あんたが使い魔になってくれなきゃ学校を退学になっちゃうんだけど!」
「使い魔なんてまた召喚すればいいじゃんか。あ、俺をまた呼ぶなよ?」
「……残念ですがミス・ヴァリエール。君は退学ということに……」
「そんな!?」
う、さすがに俺が使い魔に成らないせいで女の子が退学って言うのはちょっと……
「可哀想にの~ミス・ヴァリエールは。使い魔に成ってくれない者を召喚してしまったせいで退学とは……」
くっ! ジジイの罠だと分かっていても心が痛い。
「君が使い魔に成ってくれればワシらも君の世界に帰る方法が見つかるのがははかどるかも知れんな~? じゃが使い魔に成ってくれなければもしかしたら一生見つからんかも知れんの~?」
ジジイが足下見やがって。
「ちっ。おいジジイ。」
「なんじゃ?」
「使い魔の身分は別に構わんが、契約だけは絶対に嫌だ。」
「ほう?」
「契約なしっていう条件で使い魔に成る事を認めよう。」
「ワシとしては契約して欲しいんじゃがの~?」
「別にルイズさんは俺を召喚したんだ。召喚できれば問題あるまい? 俺が帰ったら新たな使い魔を召喚すれば良い。」
「ふぅむ……まあ良いじゃろ。認めよう。ミス・ヴァリエールもそれで良いかね?」
「…………」
「嫌なら退学という事になるが……」
「……分かりました。」
「ふむ、これで万事解決。それではわしはこれからまだ仕事があるでの? 退室しなさい。」
「はい。」
「失礼しました。」
俺はそう頭を下げて退室した。
side out
オスマン side
「ふぅむ。」
わしは今退室した少年の事を思い返す。
彼はかなり強力な魔法使いのようじゃの体内の魔力の流れも整っておったし、かなりの量がある。
それにわしが使った探査魔法にも気付いておったようじゃしの。
彼がやろうと思えばこの学園の教師はほぼ全滅じゃな。
いや、全員でかかっても倒せんかもしれん。
とにかくどんな形でもミス・ヴァリエールの使い魔に成ってくれてよかったわい。
「やれやれこれから大変な事になりそうじゃの~」
わしは煙管をふかしながらそう思った。
side out
俺とルイズさんは学園長室の外に出た。
「ふぅ……」
疲れた。闘気を放ちながら話すのってめんどくさいな。
「全くこれだから平民は……ブツブツ……」
「ルイズさん。これからよろしくな。」
俺は出来るだけさわやかに話しかけた。
「くっ! 煩いわよ!」
怒られてしまった。しょぼん。
「ああもう! 最悪の日だわ! 呼び出した使い魔は平民だし、貴族に刃向かうし、おまけに使い魔は嫌? ふざけるんじゃないわよ!」
「正直すまないと思っている。まあ、元気出せよ。その辺の使い魔よりは強いからさ! たぶん。」
「はあ~? 平民が? 他の使い魔より強い? 笑わせんじゃないわよ!」
そう言ってルイズさんは俺の息子に向かって蹴りを放ってくる。
「ほっ、三戦立ち! ガード!」
はっはっはっ。なかなかのスピードだけど俺の息子を攻撃できるにはまだ足りない。
「くっ~! バカにして~! あんた何なのよ!?」
「ん? 俺か? 俺はだな……」
師匠の名前が入った流派の名前を高らかに宣言する。
「俺は流派、高科天地魔闘流、免許皆伝の平賀才人。よろしくな、ご主人様♪」
あとがき
ははっ、やっちまったぜ☆
つい、衝動書きをしてしまいましたこの作品。
とりあえず続きます。
この話の才人の師匠が主人公の異世界冒険譚もよろしくお願いします!
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僕は夢を見た。とってもリアルな夢を。
その夢が現実になるかもしれない、そう思って僕は……
俺は夢に見たここに来た。