No.207967

牙狼say殿慰安之宴

タイトル通りの内容です。
要はお祭り企画。
取りあえず好き放題やってます。
では、どうぞ。

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2011-03-24 22:57:31 投稿 / 全20ページ    総閲覧数:8149   閲覧ユーザー数:7001

初めまして、俺は狭乃 征。紺色スーツを着こなす、金縁眼鏡がトレードマークの頼れるお兄さんだ。

 

これからありのままに、俺の身に起こった事を話すぜ。

 

今日の仕事帰り、趣味でちまちま続けていたものが全部おじゃんになったんだ……

 

何を言ってるのか解らんと思うが、俺も何が起きたのか解らなかった。

 

頭がどうにかなりそうだった。

 

催眠術だとか超スピードだとか、そんなちゃちなものじゃあ―――――あるな、うん。

 

まぁ兎に角、それはかなり精神的にくるものだった訳で、

 

こういう時、大体行く場所は決まってる。

 

そう、あの店だ。

 

 

某外史、某街の某通りにある『瑚裏拉麺(ごりらーめん)』。

ガラガラとなる引き戸の先を満たす、嗅ぎ慣れたスープの香り。

立ち込める湯気の奥に、相変わらずの背中を見つけた。

 

「気力転~身~♪変幻じz、っとお客さん、表の看板見えなかった?今日は休みで―――どうした征、今日は随分早いな」

 

「よぉ、丈二」

 

黒Tシャツにジーンズ姿、これだけなら普通のラーメン屋と大差無い。

が、特徴的なのが『ター○ネーターかよ』と突っ込みたくなる筋骨隆々なボディと決して外さないサングラス。

峠崎丈二。御想像の通りこの店『瑚裏拉麺』の店長にして、とある趣味で知り合って以来、割とこの店に通う事になった。

 

「まぁ、お前さんならいいか。何か食ってくか?」

 

「ん~……じゃお好み焼き。広島風で」

 

「……ホント、お前さん等ぐらいだよ、ラーメン屋来てラーメン頼まねぇのは」

 

「そう言いながらも作ってくれるのが丈二じゃん?」

 

そう渋々言いながらもキャベツやら中華麺やら引っ張り出して来て調理始めてくれるんだから流石である。

大体何を言っても直ぐに作れるってんだから、一度蔵の中を見てみたいもんだ。

……ちなみに以前、駄目元でビーフストロガノフを頼んでみたら普通に出て来た。ホントにコイツ何者なんだと思う。

やがて出て来たのは注文通りの広島風お好み焼きと、

 

「……あれ?俺、泡盛なんて頼んでないよ?」

 

いや、そもそもラーメン屋になんで酒まであるのかと小一時間ほど問いたいけど。確か丈二は見かけに反して下戸だった筈だし。

俺がそう訊くと丈二は台所からのっそりと出て来て、俺の隣に腰を落とした。その手に瓶コーラを携えて。

 

「何かあったろ、征。話くらい聞くぜ?」

 

……ちゃんとロックで出してくる辺り、本当に鋭い奴である。侮れない。

 

「……ん。聞いてもらっていいかな」

 

「おう、どんと来い」

 

泡盛を一気に仰いで、俺は思いっきり愚痴を溢す事にした。

……丈二がチョップで瓶コーラの口を文字通り『切断して』封を切っていたのは見なかった事にして。

 

 

「―――――でよぉ、俺が落としちまった所に思いっきり車が走ってきてよ?」

 

「……そいつぁ災難だったな」

 

自分に重ねてるんだろう、流石の丈二も少し顔を曇らせていた。

お好み焼きを貪りながら(滅茶苦茶美味かった)の泡盛は物凄く進んだせいもあったんだろう、自分でも完全に酔っ払ってると自覚出来るくらいまでアルコールが回り始めた頃だったか。

ガラガラと引き戸の音。

入って来たのは、栗色の長髪をゴム紐で無造作に束ねている好青年。

よく見知った顔だった。

 

「あれ、今日は休みじゃなかったんですか?」

 

「んを、『戦国』。うぉ~っす」

 

「よぉ。その筈だったんだがな」

 

 

 

―――――丈二、かくかくしかじかまるまるうまうま中…………

 

 

 

「うわぁ……それは何と言うか、御愁傷様でした。僕も付き合いますよ征さん。……未成年なのでお酒は無理ですけど」

 

「ありがとなぁ、戦国ぅ……」

 

戦国は隣の席に腰を降ろしながら励ましの言葉を掛け、酔いで涙もろくなっているのだろう、征は嬉し泣き状態である。

 

「うし、お前も何か食ってけ。今日は奢ってやる」

 

「お、本当ですか丈二さん。……じゃあ、カレーで」

 

「だから、ラーメン屋なんだからラーメン頼めっつの、ったく……さて、携帯取り出しポパピプペっと」

 

「? 丈二さん、何処に電話してるんですか?」

 

「ん?どうせ飲むんならよ、」

 

丈二は携帯を耳に当てながら笑みを深め、入口の方へと歩いて行って、

 

 

 

―――――大人数の方がいいだろ?

 

 

 

表の看板を『貸切中』へと変更した。

 

 

で、丈二が集合を掛けると、僅か一刻ほどで結構な人数が集まった。

 

「んぐっ、んぐっ、んぐっ……うぇぇい。丈二、もう一本開けてくれ~い」

 

「まだ飲むんすかぁ、征さん。肝臓壊しますよぉ?」

 

「まぁいいじゃん。飲まなきゃやってらんない時もあるさ。なぁ、征ちゃん」

 

次々に泡盛を飲み干す征の右隣で『甘露』は苦笑気味に癖っ毛頭をポリポリと掻く。

その眼鏡が微妙にずり落ちているのを直さない辺り、彼も少々酔いが回り始めているらしい。

そんな征を挟んで左隣、酒に強い『森羅』は焼酎をロックで平然と空けながら征の肩をポンポンと叩いていた。

で、その背後。

 

「あっ、お前そこでト○ゾーは汚ぇぞ、プーちゃん!!」

 

「ふふっ、マ○カは3周目からが勝負なのですよ、スターダストさん」

 

「泣きっ面に蜂だ。ほれ、赤コ○ラ」

 

「おわっ、止めろ関p―――――ぎゃああああああコースから落ちたああああああ!!」

 

「えげつないなぁ、二人とも……」

 

店内のテレビの前、繋がれたWi○を囲んで騒いでいるのはスターダスト、プーすけ、関平、サラダの4人。

先程までトップを独走していた『スターダスト』は端整な顔立ちを崩しながら絶叫し、その隣の『関平』は長く伸ばした特徴的な髭の下でにやりと唇の端を釣り上げる。

その後、立て続けに抜かされるスターダストのMi○を見ながらクスクスと笑う、白蓮と華雄を足して2で割ったような少女が『プーすけ』、そんな3人を見ながら苦笑を浮かべるパッと見優等生な青年が『サラダ』である。

で、一方台所では、

 

「あの、丈二さん」

 

「ん? 何だ、戦国」

 

「このお店、こんなに広かったですかね?」

 

「増築した。3pと4pの間に」

 

「……どうやってですか?」

 

「そこはほれ、俺、作者だから」

 

「ちょ、メタ発言は止めときましょうよっ!!」

 

注文された料理(結局ラーメンは誰一人として頼まなかった)を慣れた手つきで作る丈二と、それを手伝う戦国の二人。

 

「しかし、物凄いカオスな事になってますね……」

 

「まぁ、アイツ等が来たらいつもの事だからな、もう慣れたよ。……はい、うたまるさん。メシですよ」

 

「いつもありがとね、丈二君。君の御飯は美味しいし、栄養バランスもいいからね~♪」

 

丈二がしゃがみこんだ足下、やたらと丸々っとした猫(?)がそう喋ると、丈二の差し出した食事(鶏のささみと昆布、ソラマメとカボチャで作った丈二オリジナルの猫用バランス栄養食)に齧り付く。

『うたまる』。ある意味オスの三毛猫よりもよっぽど珍しい存在である彼がどういう存在なのかはよく解っていない。

解っている事と言えば(一応)ネコである事と人の言葉を話せる事くらいである。

 

「さて、アイツもそろそろ来るかな?」

 

「他にも誰か呼んでるんですか?」

 

「あぁ。多分、こいつ等も喜ぶと思うぜ?」

 

「……あぁ。彼だね、丈二君」

 

「流石にうたまるさんには解りますか」

 

「??」

 

頭上に疑問符を浮かべ続ける戦国を尻目に、丈二とうたまるが笑みを深めた、その時だった。

ガラガラと再びなる入口の引き戸。

そして、入って来たのは、ここにいる皆が良く知る人物だった。

 

「やぁ。久しぶりですね、丈二」

 

「よぉ老仙。悪ぃな、急に呼び出したりしてよ」

 

「いえいえ、丁度僕も彼女達も時間が空いてましたから」

 

「南華老仙さんだったんだ……でも『彼女達』って?」

 

「皆さん、どうぞ。ここですよ」

 

首を傾げる戦国に応えた南華老仙が背後を振り返ると、

 

「へぇ、ここが貴方の勧める店ね。面白いじゃない」

 

「うわ、男ばっかりじゃない!!華琳様、本当にここでお食事なされるんですか!?」

 

珍しげに店内を見回す華琳に、飲んだくれてる面子に思わず表情を歪ませる桂花。

 

「わぁ、いい匂い。お腹すいてきちゃったなぁ」

 

「桃香様、あまりはしゃがないでください……」

 

「ほ、ホントに、私も来てよかったのか?」

 

「いいんじゃない?態々誘ってくれたんだから、素直に喜ぼうよ!!」

 

目を輝かせる桃香に、呆れながらもそれを諌める愛紗。

その後ろからおずおずと入って来る白蓮と、その背中をぐいぐいと押す蒲公英。

 

「ここか?天の酒が飲める店というのは」

 

「佳き肴もあるといいんじゃがのう」

 

「あまり飲み過ぎないで頂戴ね、二人とも」

 

熟j、ゲフンゲフン……え~お姉さん's。

 

そんな面子を筆頭に、ぞろぞろと店内を訪れる恋姫達―――――

 

「って、おいおい老仙、随分連れて来たな」

 

「大人数の方が、いいんでしょう?」

 

「確かにそうは言ったけどよ……まぁいいや」

 

ニヤリと揚げ足をとる南華老仙に、丈二は苦笑を溢すのであった。

 

 

 

 

とまぁ、こうなれば後はどうなるか、想像するのは難しくないだろう。

 

 

 

各人好きに飲み食いし、好きに言葉を交わし、好きに絡み合う。

 

 

 

その様、実に混沌たる様であり、賑々しい事この上なし。

 

 

 

では、そんな彼等の様子を、少しずつ覗いていってみよう。

 

 

 

 

≪其の壱、白蓮とプーすけの場合≫

 

カウンター席の一角で、二人は酒瓶を片手に愚痴を溢し合っていた。

 

「北郷が忙しいのは解ってるよ。桃香達もアイツの事が好きなのも、アタシなんかじゃ到底皆に叶わないのもさ。それでも……ほんの少しでいいから、アタシを見てくれたっていいじゃないかと思うのは、我儘なのかなぁ?」

 

「華雄さん、どうしてアタシじゃなくて征さんを選んだんですかっ!?どうしてアタシじゃ駄目だったんですかっ!?アタシの何が駄目だったんですかっ!?」

 

「そりゃあアタシは普通だよ。武では愛紗や恋には勝てないし、頭だって朱里や雛里にはまるで敵わないさ。でも、でもな、アタシだって精一杯頑張ってるんだぞ?それでも敵わないじゃ、アタシはどうすればいいんだよぉ……」

 

「理由を教えてくれなきゃ、納得なんて出来る訳ないじゃないですか!!まぁ納得する積もりはありませんけどね!!大体、失恋って言葉自体間違ってるんですよ!!例え振られたとしても、アタシの恋心は消えたりしないんだから!!」

 

「器用貧乏の何が悪いんだよ?そりゃ麗羽からしてみればさ、たかが街一つかもしれないよ。でもさ、アタシにとっては大切な守るべき場所だったんだ。それをあんな、あんな簡単に…………」

 

「アタシは諦めませんからね、華雄さん!!絶対、絶対貴女を振り向かせてやるんだからあああああああああああああああ!!!!」

 

 

『『うあああああああああああああああああああああああああああああああああああん!!!』』

 

 

……話は全く噛み合っていない筈なのだが、酔っ払いという生物には得てして常識の物差しは役割を果たさないらしい。

 

取り敢えず、互いに抱き合い泣き上戸と化した二人には、新しい酒瓶を差し出してやる事にした。

 

肴に、前以てプーすけが注文していたイカの塩辛を添えて。

 

 

≪其の弐、愛紗と関平の場合≫

 

「今ならば、ここでなら、強さに代わり明日へ続くよ~♪」

 

「うおおおおおおおおお本物だああああああああああ!!」

 

「愛紗ちゃ~ん、可愛いよ~♪」

 

何時の間にやらW○iは某カラオケ用ソフトに変わっており、テレビの周辺ではプチカラオケ大会が行われていた。

で、今は酒の入った愛紗が桃香に乗せられて……まぁ、例のあのアニメのOPを歌わされており、周囲の面子も盛り上がっていた。

そして、

 

「恥ずかしいですけど、中々に楽しいものですね、からおけというものは」

 

「おし、次は誰が歌う?」

 

「それじゃ、今度は俺が行こう」

 

「関平さん、頑張れ~!!」

 

ゆっくりと立ち上がる関平。

 

「頑張れよ、関平」

 

「あぁ」

 

愛紗から擦れ違いざまにマイクを渡され、短く返答。

 

(よし、母さんもいるし、あれにしよう)

 

そして、入れた曲は、

 

チャララララ~ランララ~♪

 

「……ん、このイントロは」

 

「?どうかしました、スターダストさん?」

 

チャラランラ~♪

 

「おいちょっと待て関平!!この曲は、」

 

深く息を吸い込んで、

 

 

 

―――――おふくろっさんよぉ……

 

 

 

「お前のそれは洒落になんないから!!」

 

結局スターダストの制止も聞かず関平はそのまま森○一をこぶしをきかせて大熱唱。

 

愛紗は感動で大号泣し、酒の入った親子は互いに仲睦まじく語り明かすのであった。

 

……ちなみに、46点だったそうな。

 

 

≪其の参、真桜と甘露の場合≫

 

「料理?ウチが?」

 

「そ。お願いできないかなぁ?」

 

畳の席での一角で、甘露は真桜にとある頼み事をしていた。

というのも『手料理が食べてみたい』という実にシンプルなもの。

しかし、真桜は表情を曇らせていた。

 

「う~ん……聞いてあげたいんは山々なんやけど、ウチ料理はさっぱりでけへんよ?そゆのは凪の方がよっぽど上手いし」

 

「俺は真桜ちゃんの料理が食べてみたいんだよ。ね、この通り」

 

「ちょ、頭なんか下げんでええって……えぇよ、作ったるから。あんまし期待はせんでよ?」

 

「マジ!?マジで!?おっしゃあああああああああああああああああああああああ!!!!」

 

「そんなに喜ばれんのもアレなんやけど……丈二はん、台所貸してぇな」

 

「あいよ。で、何作るかは決めてるのか?」

 

「さっぱり……丈二はん、何かあらへん?」

 

「ん~……」

 

問われ、丈二は食材を漁りながら考える。

で、数分後。

エプロン姿で台所に立つ真桜と、その隣に立つ丈二。

 

「これは俺の私見なんだがな『料理は卵から』だ」

 

「はいっ、先生!!」

 

「先生て……取り敢えず、下手に手の込んだものより、単純なものから始めるべきだろう。で、卵焼きにしようと思う」

 

「卵焼き?」

 

「あぁ。取り敢えず、俺が作るのを見てろ」

 

言うや否や丈二は卵を両手に一つずつ取り、

 

「おわ、卵って片手で割れるんや……」

 

「こんなもん慣れだ。お前さんは一つずつ割れよ」

 

「はいっ、先生!!」

 

で、30分ほど経った頃。

 

「……甘露は~ん」

 

「おっ、出来たのっ!?」

 

「一応は……こんなんやけど」

 

おずおずと真桜が差し出した皿の上には、形は随分と偏り、所々の焦げた卵焼きが乗せられていた。

 

「丈二はんの見様見真似で頑張ってみたんやけど、やっぱ上手くいかへんかったわ。こんなん、食いたくあらへんやろ」

 

「………(ぱく)」

 

「って、甘露はん!?」

 

「(ゴリッ)……殻入ってるね、これ」

 

「うっ」

 

「塩入れ過ぎたのかな、ちょっとしょっぱいし」

 

「うぅ」

 

「……でも」

 

「…………?」

 

甘露はそこで箸を置いて、

 

「頑張ってくれたのは、すっげぇよく解った」

 

「っ!!」

 

「有難う、真桜ちゃん。美味いよ、これ」

 

「……そか。なんや、嬉しいな。凪が料理好きになるんも、解る気がするわ」

 

実に和やかな空気が漂いましたとさ。

 

 

≪其の肆、桂花とサラダの場合≫

 

「丈二さん、金木犀茶を使った料理って出来ますか?」

 

「サラダ、お前さんなぁ……あぁ、あるよ。ちょっと待ってろ」

 

「マジですか!?……言ってみるもんだなぁ」

 

苦笑を溢し、厨房の奥へ消えていく丈二をサラダが見送ると、

 

「……『きんもくせい』って、何よ?」

 

「うぇっ!?あ、いや、えっと……」

 

「何うろたえてるのよ?」

 

「……いやさ。この前、金木犀について調べる機会があってさ」

 

「それが?」

 

「金木犀茶ってのは、俺達の国での名前でさ…………『桂花茶』の事なんだよね」

 

「っ!?」

 

「俺達の国じゃ手に入れにくいんだけど、丈二さんなら何でも作ってくれるからさ、一度食べてみたいなぁって、ね……」

 

「……………………」

 

「……………………」

 

互いに仄かに顔を赤らめ、黙り込む二人。

 

周囲の喧騒が何処か遠くに感じられ、外界から遮断されたような―――――

 

 

 

「…………何してんだ、お前さん等」

 

 

 

「うわっ!?」「きゃっ!?」

 

「くくくっ……取り敢えず、桂花ちゃんも座んな」

 

そう言いながら丈二がテーブルに並べたのは、

 

「……茶器、空っぽですよ?」

 

「慌てんな。淹れんのはこれからだ」

 

そう言いながら、随分慣れた手付きで茶器へ茶葉を淹れ、お湯を注ぐと、

 

「おぉ……綺麗な黄金色だ」

 

「……中々いい香りじゃない」

 

「茶器は予め温めておいて、淹れる時のお湯は沸騰直後のものを使う。茶葉3gに対してお湯は100cc程度、約60秒ほど蒸らしてからが飲み頃だ。ちなみに一回分の茶葉で5回は煎じて飲める。覚えておいて損はない。……これ、お茶受けな。メインはもう少し待ってろ」

 

出て来たのはグリーンレーズンに生姜の砂糖漬け、バナナのチップスだった。

 

「……あの~、丈二さん?」

 

「何だ?」

 

「ここ、ラーメン屋ですよね?」

 

「そうだが?」

 

「……もういいです」

 

あっけらかんとした返答に質問を止めてお茶受けに手を伸ばすと、丈二さんはまた奥に消えていった。

 

「ホント何者なんだろ、あの人……あ、これ美味い」

 

「知らないし、知りたくもないわよ……確かにこれは美味しいけど」

 

そのまま、お茶受けをつまみつつ約30分程が経過して、

 

「ほれ、食え」

 

そう言って丈二さんが出して来たのは、

 

「スペアリブ、ですか」

 

「……何よ、『すぺありぶ』って?」

 

「排骨の事だ。骨は抜いてあるけどな。白琳功夫っつう林檎の香りの紅茶があってな、それと金木犀茶をブレンドした美香紅茶ってのがある。そいつを濃い目に抽出したものに砂糖、醤油、生姜、白ネギと油を加えて漬けダレを作る。で、そいつに暫く漬け込んだ豚肉焼いて、焼き色ついたら漬けダレ加えて煮詰めて完成だ。ま、ゆっくり食え」

 

そう言って、丈二さんは他の調理に戻っていって、

 

「……………………」

 

「……………………」

 

「………食べようか」

 

「………えぇ」

 

「………美味いね」

 

「………えぇ」

 

「………食べさせたげようか?」

 

「………馬鹿じゃないの」

 

暫し、こんな感じのぎこちないやりとりが続いたそうな。

 

 

≪其の伍、祭と森羅の場合≫

 

各々自由に騒ぐその外れで、森羅は祭達年上メンバーと飲み交わしてた。

 

「いやぁ、賑やかですねぇ祭さん」

 

「全くじゃのう……ふむ、これが柿の種というやつか」

 

「はい。関平が酔いつぶれちゃったので、余ったのを貰って来ました」

 

「(ぽりぽり)ほぉ、仄かに辛くて中々佳いの。酒によく合うわい」

 

「祭さんの牛のたたきも美味いっすよ。初めて作ったとは思えないですって」

 

「特に難しくはなかったからの。しかし、半分とはいえ肉を生で食うのは少し抵抗があったが、中々悪くないのう」

 

「まぁたたきは俺達の国独自の食べ方ですからね。殆どは魚に使う調理法ですし」

 

「魚も生で食うのか?儂等からは考えられんのぅ」

 

「衛生面の問題がありますからねぇ。香辛料もこの時代じゃ珍しいですし、そもそもそういう用途があるって知られてないですし」

 

「森羅殿、この『びいる』とやら、中々いけますなぁ」

 

「あれ、桔梗さんは炭酸平気なんですか?」

 

「最初は驚きましたが、慣れて来るとこれが却って癖になってきましてな、この『そおせえじ』とやらがまた美味くて堪りませぬぞ」

 

「うわ、いいなぁ。俺にも下さいよ」

 

「中々卑猥な形ですけれど……ふふふっ」

 

「……紫苑さん、だからってあんまし卑猥な食い方しないで貰えません?」

 

……どうもここが一番飲み会らしい光景のようである。

で、そんな感じで数分後。

 

「ふむ、興が乗って来たわい。……森羅殿、確か武術を嗜んでおったそうじゃな」

 

「へっ?あ、はい、一応は」

 

「よかろう。儂が実力をみてやろうではないか。店主、表を借りさせて貰いますぞ」

 

「ちょ、えっ、祭さん?」

 

「どうぞ。ご近所さんには迷惑かけんで下さい」

 

「なっ、丈二さんまで!?」

 

「男ならば、言いたい事は拳で語ってみせよ、森羅殿」

 

「うわ~い、拳で語りたくないから言ってるのに~!!(半泣)」

 

 

 

 

 

 

 

 

で、店の前に連れて来られた訳ですが、

 

「さぁ、何処からでも懸かって来なされ!!」

 

(何処からでもって、何処にも隙なんてないじゃないですか……)

 

ただ仁王立ちしているだけだというのに、何と言う気迫だろうか。

 

(ぬぅ……隙が無いなら作るしかないか)

 

「それじゃ、行きますよ」

 

「うむ」

 

呼吸を整え、腰を落として拳を構える。

シンプルな正拳突きの構え。

しかし、十二分に引いた足に力を貯め、

 

「はぁっ!!」

 

裂帛と共に地を蹴り奔る。

同時に突き出す拳。

箭疾歩。別名、絶招歩法。

本来は奇襲等に用いられる、八極拳や蟷螂拳に代表される技の一つ。

用途から想像できる通り、相手を怯ませる為の技なのだが、

 

「ふむ、狙いは良いが、」

 

祭は軽く身体を逸らし、伸びた腕を弾くだけで軌道をずらし、

 

「技が正直過ぎるの」

 

その勢いを後押しするように軽く森羅の背中を押し、

 

「どわっ!!」

 

加速した慣性は止まらず森羅はそのまま地面に激突しかけて、

 

「くっ、おりゃっ!!」

 

「おっと、その調子じゃ」

 

咄嗟に両手をつき、そのまま放つ後ろ回し蹴り。

 

祭はそれを平然と受け止めながらそう返し―――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――――とまぁこんな感じで頑張ってはみたものの、ぶっちゃけ『昔取った杵柄』で後の世に名を馳せる英雄豪傑に勝てる訳も無く、結局一撃すら入れられずぼろくそにやられました。

 

酒も武もそこそこ強い積もりだったんですが、流石にレベルが違い過ぎたみたいです、ハイ。

 

「はっはっはっは、精進なされ森羅殿!!」

 

「はい、頑張ります…………」

 

地面に大の字に寝転がりながら差し伸べられた手を握り、何とか身体を引っ張り起こして、

 

「そうじゃのぅ……儂に一撃入れられるようになったら、何か褒美を考えてやろうかの」

 

「……ホントですか?」

 

「くくくっ、ほんに正直な奴じゃのぅ。そういう若造は、嫌いではないぞ?」

 

回っているアルコールのせいか、仄かに赤らんだ妖艶な笑みに、思わず動悸を激しくさせてしまう森羅なのであった。

 

 

≪其の陸、華琳とスターダストの場合≫

 

「あぁ……なんかすげぇ疲れた」

 

マ○オカートやその後のボ○バーマンでも完全なる袋叩きを喰らい、続いて始まったカラオケ大会では大暴走した面子のブレーキ役。

損な役回りばかり任されたスターダストは心身共に疲労困憊であった。

……ちなみに今はプーすけが中島み○きの『慟哭』を大熱唱していたりする。

 

「丈二さん、俺も何か頼んでいいっすか?」

 

「いいぞ、何食うんだ?」

 

「じゃあ……アレにします『店主のおススメ』ってやつ」

 

「あいよ。……やっとラーメンの注文来たよ」

 

最後の方は何を言っていたのかは聴き取り辛かったが、厨房に入ってくれたのだから待っていればいいのだろう。

カウンター席に座り、未だ冷めやらぬ喧噪を呆然と見ていると、

 

「店主、私にも一つ戴けるかしら」

 

「ん?華琳ちゃんもか?」

 

「(ちゃん……)えぇ、何かいけない?」

 

「別にいけなかないが……まぁいい、無理して全部食わなくてもいいからな」

 

「あら、南華老仙の勧める店の店主が推すのだから、余程自信があるんでしょう?」

 

「そりゃあな。ラーメン屋やってんだ、味に自信なけりゃ態々『おススメ』なんて書かねぇさ」

 

「なら、戴くわ。不味いのなら、話は別だけれどね」

 

「……その言葉、忘れんなよ」

 

華琳の挑発的な笑みに応え、丈二は厨房へと消えていく。

そんな店主の背中に、スターダストは眉を顰めた。

 

(……何で一瞬躊躇ったんだろ?)

 

そして、その疑問は程なく氷解する事となる。

やがて出て来た二つの丼。その中身は、

 

「……あぁ、成程ね」

 

「っ」

 

ほんの微かに固まる華琳。

それもそのはず、丼の中に広がっていたスープの色は、それはもう見事な唐辛子のそれだったのである。

正確には、赤いのはスープの表面に浮いている油だけで、スープそのものはとろみのついた白いスープだった。

盛られているのはふわりと広がった溶き卵に豆腐、韮に椎茸。

とはいえ、皆さん御存知の通り、食通で知られる華琳も辛いものだけは苦手な訳で、

 

「…………」

 

無言で現れたスープを見つめる覇王様。

その表情は完全に硬直、細められた瞳には心中の葛藤が如実に確認出来た。

 

「……スターダスト、アンタ先に食べなさい」

 

……毒見役ですか?まぁ俺は辛いの嫌いじゃないから食べるけど。

で、取り敢えず一口食べてみた。

辛口のラーメンというと、やはり真っ先に思い浮かべるのは担担麺である。

あの真赤でこってりとした辛口スープに絡んだ縮れ麺の、あの口の中でぴりっとくる辛味を想像していた。

 

 

 

だから、物凄く吃驚した。

 

 

 

「……全然辛くない」

 

「……はぁ?」

 

想像していた唐辛子のピリッとした辛さは殆ど無い。ってか、辛いというよりむしろ、

 

「何か、ちょっと甘酸っぱいですね、これ」

 

「だろ?」

 

丈二さんは何処か得意げな表情。

何とも不思議な味に箸が止まらなくなる俺を余所に、ゆっくりと隣の華琳へと視線を向けて、

 

「食わないのか?」

 

「……スターダスト、嘘じゃないでしょうね?」

 

「いや、これホントに美味いって、食ってみなよ。他に例えようがないから何とも言い様がないんだけど、兎に角不思議な味でさ」

 

「……いいわ、頼んだのは私だもの。食べてやるわよ」

 

二組の視線に居た堪れなくなったのか、先の言葉で引っ込みがつかなくもなっているのだろう、華琳は恐る恐る麺を2、3本つるつると口に含んで、

 

「…………………」

 

「…………………」

 

「…………………」

 

「…………………やるじゃない。少し辛いけど」

 

「っしゃ」

 

丈二さん、小さくガッツポーズ。

 

「これ、なんていうんですか?」

 

「酸辣湯麺(サンラータンメン)だ。豆板醤をごま油で炒めて、その油だけを使ってるからな、香り付けしてるだけであまり辛くない。酢のバランスが中々難しいんだがな……んじゃ、ごゆっくり」

 

そう言って、丈二さんは再び厨房の奥に消えていった。

 

「いやぁ、しかし美味いなこれ。えっと、確か豆板醤をごま油で炒めて……」

 

「…………(ぱく、つるつるつる)」

 

「……どったの、華琳」

 

「何か、少し屈辱ね。店主、私がこういう反応するって解ってたんでしょうし」

 

「これを機に、辛いものも食べてみるようにしてみたら?」

 

「……魏で辛いものって言ったら、あの娘が黙っていないのよ?」

 

「……あぁ、あの娘ね」

 

「…………………」

 

「…………………」

 

「…………………」

 

「…………取り敢えず、これは美味いよね」

 

「…………えぇ、そうね」

 

微妙な雰囲気になりましたとさ。

 

 

≪其の漆、狭乃 征とうたまるの場合≫

 

「…………」

 

「……せ、征君、どうしたの?」

 

それは畳の席での光景。

酔いが回っているにも関わらず完全に目の据わった征は座布団の上に正座している。

その正面、座布団の上にちょこんと乗っかっているうたまるは、彼のただならぬ雰囲気に少々たじろいてしまっていた。

やがて、

 

「うたまるさん、お願いがあります」

 

「な、なにかな?」

 

嚥下する固唾。

無限のような一瞬。

やがて、重く閉ざされていた唇をゆっくりと開いて、

 

 

 

 

 

「抱き締めさせて下さいお願いしますっっ!!!!!」

 

 

 

 

 

初めて、ジャンピング土下座というものを目の当たりにしました。

 

「だ、抱き?」

 

「うたまる先生……もふもふが、したいです……」

 

「いや、私は白髪仏先生じゃないでしょ?」

 

「拙者の名は狭乃 征! 丸猫を知り己の欲望を満たすため参上した武士にござる!」

 

「君は某爽やか侍少年じゃないでしょ?」

 

「うたまる好きです超好きですうたまるもふらせて絶対幸せにしてやるから」

 

「それ、何処のハーレム志望の残念イケメンかな?」

 

「人は金のみで生きるものではない!例えばお犬様とか、お猫様とか、あと特にうたまるとかああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!」

 

「だめだビョーキだ」

 

呆然と硬直するうたまるの背後で、明命が賛同の意を大声で主張していたのは言うまでもない。

で、そんな彼に一種の諦観を決めたのか、

 

「はぁ……いいですよ。今回は君も災難でしたし、私なんかでよければ少しくらいは―――――むぎゅ」

 

その言葉は最後まで続かず、

 

「うああああああああふわふわでさらさらでふにゅふにゅだああああああああ!!!」

 

「ちょ、征く、ちょっと苦し、」

 

「気持ちえええええええええええええごっつ気持ちええええええええええええ!!」

 

「何で関西弁なの、ってだから苦しいって征君っ!?」

 

「堪んねえええええええええええええマジで堪んねええええええええええええ!!」

 

「ちょ、丈二君なんとかしてえええええええええ!!」

 

その後、酔いが回ってブレーキが緩んだ明命や可愛いもの好きな愛紗達までもが参戦し、丈二が駆け付けた頃にはくんずほぐれずでぐったりとした、失敗したシュークリームのようなうたまるが発見されたそうな。

 

 

 

《注意》

 

 

次からの数ページは完全に作者の個人的趣味、及び過大妄想より成り立つ、実にカオスな空間と化しております。

 

 

解らない人にとっては非常に退屈になってしまいかねません。

 

 

それでも『いいですとも』な方のみ次のページへお進み下さい。

 

 

『だったらいいや』って人は飛ばして戴いて結構です。

 

 

では、どうぞ。

 

 

≪其の捌、戦国と丈二の場合≫

 

 

 

 

ふむ、一段落ついたかね……

 

 

―――――お疲れ様でした、丈二さん

 

 

戦国こそ、態々手伝ってくれて助かった。

 

 

―――――いえいえ……所で、丈二さん?

 

 

ん?

 

 

―――――そろそろ、僕達も遊びません?

 

 

……そうだな、やるか。

 

 

―――――はい、やりましょう。スターダストさん、W○i貸してもらえませんか?

 

 

 

 

《せんごく》

 

スターミー トゲキッス

ガブリアス リザードン

ラグラージ ゲンガー

 

 

《ジョージ》

 

エアームド ハガネール

エンペルト ジバコイル

ハッサム  ドータクン

 

 

《NOW LOADING》…………

 

 

 

「(鋼オンリーかぁ、拘ってるなぁ丈二さん)……よし、コイツで行こう」

 

―――――「(ふむ、先手は恐らくアイツだろうな。技構成も何となく想像がつくし)……んじゃ、コイツにしておくか」

 

テレビ画面がとある闘技場を映し出す。

その中心には大きな円形の印が描かれており、左右が赤と青に塗り分けられている。

そして、赤い方にはスタイリッシュな少年、青い方には筋肉質な青年のアバターが堂々と立っており、

やがて二人は闘技場の中心に向け、あの真赤なボールを投げ込み、

輝きと共に現れたのは、紅き宝玉をその身の中心に宿した星型の生命体と、真紅の鎧を身に纏った巨大な蟷螂であった。

 

「ハッサムかぁ……(読まれてたのかなぁ?ここは変更しておこう)」

 

―――――(やはりスターミーで来たか。コイツがやる事は大体決まってるからな。となれば、持ち物も多分アレだろうし、恐らくは……)

 

指示を終え、画面が対峙する二匹を映し出す。

やがてカメラは先にハッサムを捉え、表示されたのは、

 

(なっ、『おいうち』!?これも読まれてた!!)

 

―――――(だと思ったよ。スターミーが覚える技は幅広いタイプで尚且つ強力なものが多いからな、少しでも削っておくとしよう)

 

スターミーのHPゲージは半分以下に減少、それからボールへと戻った。

同時、ハッサムのHPも僅かに減少し、画面は待機中のそれへと移行する。

 

(しくじった……素直に攻撃しておくんだったなぁ。交代時の『おいうち』でもこれだけ削られたんだ……あのハッサム、間違いなく『テクニシャン』だな、しかも『たま』持ちかぁ)

 

―――――(さて、これで持ち物もばれたし、恐らく出てくるのは炎のアイツだろうな。となれば……)

 

画面は再び闘技場へ。

アバターの少年の手から放たれたボールの中から現れたのは真紅の炎龍、リザードン。

 

(間違いなく交代させてくるだろうな。コイツの攻撃ならエンペルト以外には効果抜群だし、エンペルトでも狙える技はある。……さぁ、どうしますか、丈二さん)

 

―――――「(やっぱりな)なら、コイツだ」

 

光に包まれ戻っていくハッサム。

そして、筋肉青年が繰り出したのは、

 

(ドータクン?……あっ、まさか!?)

 

リザードンが放つ『ねっぷう』。

しかし、ヒット直前に発動したのは、

 

「オッカのみ!?」

 

―――――「鋼タイプパーティを組んでて、弱点対策をしてない訳がないだろう。しかもコイツは『たいねつ』だ。後1発なら耐えられる」

 

ドータクンの体力は僅か4分の1程度しか減らなかった。

特性の『たいねつ』に加え『オッカのみ』により本来与えるダメージは相当軽減されている。

もう一度リザードンの『ねっぷう』を喰らい、後1撃で落ちてしまうという状況でドータクンが放ったのは、

 

「『じゅうりょく』?(……ってことは、次はハガネールかな?)」

 

戦国は首を傾げた。

『じゅうりょく』は主に飛行タイプや特性『ふゆう』のポケモンに地面技を当てられるようにする為の技である。

よって、地面技を持っているであろうハガネールを予想し、再び『ねっぷう』でドータクンを倒したが、次に出て来たのが、

 

―――――「さぁ、出番だ」

 

「エンペルト?」

 

出て来たのは、巨大なとさかが特徴的な皇帝ペンギン。

恐らく使って来るのは間違いなく水の技だろう。

がしかし、間違いなくこっちの方が先手である為、戦国はそのまま攻撃に移った。

 

―――――「うぉ、『きあいだま』か。こりゃしくじったかな……?」

 

「?」

 

流石にダメージは大きく、一発でやられはしなかったものの、エンペルトの体力は半分以下まで削られた。

しかし、

 

「うわっ、『ハイドロポンプ』!?」

 

―――――「ふむ……この際だから明かすが、『じゅうりょく』を使ったのは浮かんでる奴に地面技を当てる為だけじゃねえんだよ」

 

「えっ?」

 

―――――「『じゅうりょく』には、技の命中率を上げる効果もあるんだよな。『じゅうりょく』中なら『きあいだま』も『ハイドロポンプ』も必中になるんだ。ちなみに『あさのひざし』とかの回復量を減らす効果もあったりする」

 

「そうだったんですか……」

 

―――――「更に付け加えさせてもらうとな、体力が持てばさっきのドータクンには更に『トリックルーム』と『あまごい』を使わせる予定だった。あわよくば『だいばくはつ』もな」

 

「うわぁ……」

 

リザードンがここで落ち、残りポケモンの数もこれでイーブンに。

 

―――――「さぁ、こっからが本番だぜ、戦国」

 

「負けませんよ、丈二さん!!」

 

 

とまぁ、こんな感じでバトルは白熱の一途を辿っていた。

 

メンバーを変え、戦略を変え、一進一退の攻防を繰り返す。

 

全てを事細かに説明すると非常に長くなるので省略するが、対戦中に二人が漏らした台詞を一部抜粋してみよう。

 

「ちょ、『まきびし』重ねがけに『ステルスロック』って、そこまでやりますか!?」

 

「『てんのめぐみ』トゲキッスに『しるし』持たせて『エアスラ』連発させるお前も充分に鬼畜じゃねえかな、戦国……」

 

「丈二さん、どんだけパーティメンバーに『だいばくはつ』覚えさせてんですか!?」

 

「爆発には漢のロマンが詰まってんだよ、死なば諸共ってなぁ!!」

 

「フォレトスって『でんじほう』覚えたんですか!?また麻痺させられたよ……」

 

「やっぱ堅ぇなぁ、ラグラージ。草タイプ覚えてんの、1匹しかいねぇんだよなぁ……」

 

「うわ、ヒードランって準伝説じゃないですか、ずるいですよ!!」

 

「いいじゃねぇかよ、お前のパーティだって600族ばっかじゃねえか」

 

……解らん人にはさっぱりでしょうが、まぁ楽しそうなのは伝わったと思います。

 

 

≪其の玖、南華老仙の場合≫

 

「ふふっ、皆さん楽しそうですねぇ」

 

店内の喧噪から一歩離れ、一人酌をしながら楽しむ老仙。

その視線は慈愛に満ち溢れており、その焦点は何処か遠くへと向けられているようだった。

 

「ふぅ……こういうのもいいですけど、やっぱり私は、貴女と飲み交わしたいですね」

 

視線はとっぷりと更けた夜空へと向け、その彼方に見るのは恋焦がれる姿。

 

「今頃、何処で何をしてるんでしょう……?」

 

「さぁな。気になるなら追っかけりゃいいじゃねえか」

 

「おや、丈二。もう試合はいいのですか?」

 

「あぁ。やっぱポケモンの醍醐味は対人戦だな。手の内の読み合いが堪らんね」

 

言いながら隣に腰を落とし、再び瓶コーラの口をチョップで切断し、ラッパ飲み。

 

「ふぅ……こうしてゆっくり話すのも、いつ振りだろうなぁ」

 

「そうですねぇ……修行時代以来かもしれません」

 

「そんなになるか。あの頃は色々無茶したっけなぁ」

 

「ですねぇ、滝を素手で割ってみたり」

 

「チョップで鎌鼬起こしてみたり」

 

「音より速く走ってみたり」

 

「島一つ地図から消しちまったり」

 

「今となっては、実に懐かしいものです」

 

「だな」

 

……偶々漏れ聞いていた周囲の面子が顔を青ざめさせたのは言うまでもないだろう。

 

 

 

夜がとっぷり更けようと、

 

 

彼等の喧騒は衰えない。

 

 

日々の疲労を掻き消すように。

 

 

日々の鬱憤を吐き出すように。

 

 

月が昇る。

 

 

風が吹く。

 

 

とある外史のとある街、とある通りのとある一角で、謎の店主が営む謎のラーメン屋『瑚裏拉麺』。

 

 

今日も密かに営業中。皆様のご来店を、心待ちにしております。

 

 

(終幕)

 

後書きです、ハイ。

 

やりたい放題だよwwww

 

他に言う事ねぇよwwww

 

書き始めてから気付けば3日も経ってたよwwww

 

……まぁ、ものっそい気分転換にはなりました。

 

色々と話の濃度や扱いに差があるのは勘弁して下さい、今の俺にはこれが精一杯でした。

 

 

最後に、牙狼say殿。

 

『貴方の外史の桂花』から届いたメッセージをどうぞ。

 

――――アンタの御蔭で、最近アイツが私を見てくれる事が増えて来たのよね……まぁ日記を見られるのは癪だけど、これからも頑張って頂戴(ボソリ)

 

 

 

では、次は『盲目』次話でお会いしましょう。

 

でわでわノシ

 

 

 

…………最近は専ら、スーパー戦隊シリーズのOP(恐竜~海賊)無限リピートしながら執筆しています。


 
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